JP2872902B2 - 緑色真珠光沢顔料 - Google Patents

緑色真珠光沢顔料

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、真珠光沢顔料に関し、
更に詳しくは従来の光の干渉色のみの色調を有する真珠
光沢顔料と比べ、特に下地が白色の場合強い緑色を呈
し、光輝性があり且つより強く発色した色調を有する緑
色真珠光沢顔料であって、これらの色調を求める分野、
例えば、樹脂、塗料、インキ、建材等の分野の他、意匠
性を求める分野に有用な真珠光沢顔料の提供を目的とす
る。
【0002】
【従来の技術】従来知られている着色した真珠光沢顔料
において最もポピュラーなものは、雲母フレーク上に被
覆する二酸化チタンの膜厚を変化させることにより色調
を変える、いわゆる虹彩色によるものが一般的である。
しかしながら、これらの方法によって得られる真珠光沢
顔料の色相は全般に淡く且つソフトな感じのものでり、
濃色を出すことは出来ない。この理由は全体の光の中で
干渉色として利用される光が、ごく一部に限られている
からである。
【0003】上記従来の真珠光沢顔料を用いた塗料を塗
布した場合、下地を黒くすることにより散乱光が取り除
かれる為、全体として色調がやや強くなるが、下地が白
い場合は錯乱光の影響で白っぽくなり、僅かに虹彩色が
現れるという状況である。又、比較的強い色調を有する
ものとしては、二酸化チタンと同様に高い隠蔽性のある
酸化鉄を雲母フレークに被覆した顔料があるが、この真
珠光沢顔料は黄色から茶色系のいわゆるゴールドからラ
ッセット系の色調であり、強い色彩のバリエーションに
欠ける面があった。
【0004】
【発明が解決しようとしている問題点】上述の様に雲母
フレークの被覆層として二酸化チタンをベースとした従
来の真珠光沢顔料は、虹彩色を利用するのみで色調が弱
く、被覆層として二酸化チタンをベースとしたもの以外
では、比較的色の強い酸化鉄系があるが、黄色又は茶色
系の色調で、色調のバリエーションに欠ける嫌いがあっ
た。従って本発明の目的は、上記従来技術の状況に鑑
み、二酸化チタンの有する強い光輝性を保ちつつ、より
強い色調で且つ色彩のバリエーションも多い緑色真珠光
沢顔料を提供することである。
【0005】
【問題点を解決する為の手段】上記目的は以下の本発明
によって達成される。即ち、本発明は、雲母フレーク上
に二酸化チタン層を、その上に金属換算比でコバルト:
ニッケル:亜鉛が1:2:1の酸化コバルト、酸化ニッ
ケル及び酸化亜鉛からなる複合酸化物膜層被覆したなる
ことを特徴とする緑色真珠光沢顔料である。
【0006】
【作用】雲母フレーク上に二酸化チタン層を、その上に
酸化コバルト、酸化ニッケル及び酸化亜鉛からなる複合
酸化物層を被覆することによって、隠蔽力が高く且つ光
輝性が出やすい二酸化チタン層の優れた光輝性を維持し
つつ、該二酸化チタン層の表面に着色成分としてより強
い緑色の発色を示すコバルト、ニッケル及び亜鉛の複合
酸化物層を被覆して熱処理し、複合酸化物層をスピネル
相を形成させることによって、緑色真珠光沢顔料として
の特性を出現させると同時に、上記複合酸化物層の有す
る諸特性も併せ有させることが出来る。
【0007】
【好ましい実施態様】次に好ましい実施態様を挙げて本
発明を更に詳しく説明する。本発明の緑色真珠光沢顔料
に用いる被覆母体である雲母フレ−クとしては、一般に
使われている白雲母を使用することが出来る。しかしな
がら、被覆母体として使用することが出来る雲母フレー
クは、この白雲母に限定される訳ではなく、表面の平滑
性やアスペクト比が上記白雲母と類似であれば、他の雲
母フレークも同様に使用可能なことは云うまでもない。
上記白雲母の粒径は1〜100μm程度のものが使用さ
れるが、好ましくは20〜50μmの比較的粒子の揃っ
た厚さ0.1μm程度の薄いものが良好である。
【0008】雲母フレークの表面にコーティングする二
酸化チタンは、チタン源としてチタン塩を用い、より具
体的には硫酸チタニル、四塩化チタン等の試薬若しくは
工業用材料を使用することが出来る。白雲母フレークに
二酸化チタンを被覆する方法としては、予め加熱してあ
る白雲母懸濁液に、予め溶解したチタン溶液を添加し、
チタン塩を加水分解することにより白雲母フレーク上に
チタンの水和物若しくは酸化物を沈着させる方法であ
り、この方法自体は公知である。
【0009】この様にして得られた二酸化チタン被覆雲
母スラリーは、水洗し、更にその表面に酸化コバルト、
酸化ニッケル及び酸化亜鉛からなる複合酸化物層を形成
する為の被覆母体に供される。又、この際、スラリーを
一旦濾過し、得られたケーキを120℃で12時間程度
乾燥し、その後この乾燥フレークを700〜900℃で
1時間程度熱処理し、前述の複合酸化物の被覆に供する
ことも可能である。
【0010】上述の如くして得られた二酸化チタン被覆
雲母フレークは、緑色の虹彩色を発し、熱処理するしな
いに拘わらず、優れた光輝性を発揮する。雲母フレーク
上の二酸化チタン層に被覆される複合酸化物としては、
最終的に二酸化チタンとも反応して二次的複合酸化物を
形成する。その際に選ばれる複合酸化物は、その形成後
今までに無い強い発色を示し、且つ諸耐性、即ち耐候性
や耐薬品性等が優れたものとなる金属の組み合わせが選
ばれる。
【0011】より具体的には、従来技術の複合酸化物系
顔料中で強い発色を示し、スピネル系結晶構造を有する
コバルト、ニッケル、亜鉛及びチタン系の複合酸化物が
選ばれる。この系は無機顔料として、他の複合酸化物
系、例えば、ルチル型のチタン、アンチモン、ニッケル
系や、チタン、アンチモン、クロム系の黄色顔料に比べ
発色が強いばかりでなく、それらの系と同様に諸耐性が
極めて優れている。又、二酸化チタンベースである為、
光輝性も充分に確保される。
【0012】本発明では、以上の理由により着色成分と
して二酸化チタン以外に、コバルト、ニッケル及び亜鉛
の複合酸化物が選択された。これら被覆の際に利用され
る金属塩は、従来の複合酸化物顔料を製造する際に使用
される硫酸塩、硝酸塩、塩化物、酢酸塩等は総て利用可
能で、これら金属の好ましい割合は、化学量論的にはチ
タン:コバルト:ニッケル:亜鉛=2:1:2:1であ
るが、光輝性を確保しつつ、顔料粒子表面への被覆とい
う性格と、各金属の沈澱特性の違いを考慮すれば、チタ
ンに対し最高でコバルト:ニッケル:亜鉛=1:2:1
と考えられる。
【0013】つまり、二酸化チタンを雲母フレークに被
覆後、新たに被覆される複合金属酸化物は、量的に少な
い方がより効果的に雲母フレークの二酸化チタン層の表
面に付着し易いと考えられる。従って、二酸化チタンに
対する金属の量的関係は、最終的な色調の強さを考慮す
れば、0.1/1<(コバルト+ニッケル+亜鉛)/チ
タン<0.5/1が望ましい。この範囲より多い場合
は、被覆反応中に雲母フレーク同士の凝集が生じ、著し
く光輝性を損ねる。又、0.1/1より少ないと強い色
調のものは得られない。
【0014】チタンを除く各金属の配合割合は、基本的
に化学量論的配合によるが、多少この割合よりずれても
色調への影響は少ない。しかし、大きくずれると発色が
弱かったり、くすみの原因となる為注意が必要である。
この様な金属塩は、予め二酸化チタンにより被覆された
光輝性緑色雲母フレークの水性懸濁液中に投入及び溶解
されるが、この緑色雲母フレーク懸濁液の濃度は100
g/リットル以下が望ましい。濃度が濃すぎると被覆反
応中に雲母フレーク同士の凝集が起こり、著しく光輝性
を損ねる。
【0015】又、この様な金属塩を雲母フレークの二酸
化チタン層表面に折出させる沈澱剤として、本発明で
は、加熱によってアンモニアを生じる化合物、例えば、
尿素又はその誘導体を使用する。上述の雲母フレーク懸
濁液に尿素又はその誘導体を投入及び溶解することによ
り、室温付近では何の変化も生じないが、撹拌しながら
加熱すると、系全体に均一に溶解している尿素又はその
誘導体が分解を始め、全体に均一且つ微細な複合酸化物
又はその水和物粒子が雲母フレーク上に折出してくる。
この理由は、沈澱剤である尿素又はその誘導体が溶液中
で局所的な濃度匂配が無い為であり、従来から採用され
ている滴下法により沈澱剤を逐次投入する方法では決し
て得られない完全な均一性が保証される。
【0016】以上の様な尿素又はその誘導体は、金属塩
に対し金属1当量につき1〜5モルの使用が好適であ
る。この範囲より多いと複合金属酸化物被膜に亀裂が入
ったり、表面の荒れや、雲母同士の凝集が起きる様にな
る。この様にして光輝性緑色雲母フレークと金属塩及び
尿素又はその誘導体の混合懸濁液は、好ましくは70〜
100℃の温度範囲で0.5〜12時間加熱撹拌するこ
とにより、雲母フレーク上の二酸化チタン層に金属の酸
化物又はその水和物の折出が行われる。
【0017】次に酸化物又はその水和物が沈着したスラ
リーを水洗及び濾過し120℃にて12時間程度乾燥
し、この乾燥雲母フレークを酸化性の雰囲気で600〜
1,000℃にて0.5〜2時間熱処理することによ
り、二酸化チタンを含む複合酸化物からスピネル相を形
成させ、本発明の光輝性のある強い発色の緑色真珠光沢
顔料を得ることが出来る。
【0018】
【実施例】次に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体
的に説明する。尚、文中にある部又は%は断り無い限
り重量基準である。 実施例1 下記比較例1の光輝性緑色雲母フレーク顔料45部を
1,000部の水に懸濁させ、次いで塩化ニッケル6水
塩6.7部、硝酸亜鉛6水塩4.2部及び硝酸コバルト
6水塩4.1部を100部の水に溶解し懸濁液に投入す
る。この混合懸濁液を良く撹拌し、各成分を均一に溶解
させた後昇温を開始し、100℃になったら一定に保
ち、そのままの状態を保持する。しばらくすると、二酸
化チタン被覆雲母フレーク上に各金属の酸化物又はその
水和物の沈澱が折出してくるが、その後も加熱撹拌を続
け、3時間経過したら反応を終了させ、水洗及び濾過す
る。得られたケーキを120℃で12時間以上乾燥させ
る。
【0019】この乾燥した雲母フレークを酸化性雰囲気
にて700℃で1時間熱処理し、本発明の光輝性緑色真
珠光沢顔料を得た。このものをアクリルクラッカーにて
塗料化し、6ミルフィルムアプリケーターにて黒帯付き
アート紙に塗布したところ、黒帯部分は比較例1と同様
の光輝性のある緑色を発色し、下地が白い部分は光輝性
を保持しつつ、強い発色の緑色の色調を示した。
【0020】 比較例1 厚さ0.05〜0.2μm及び平均粒径40μmの鱗片
状白雲母20部に550部の水を加え撹拌しながら懸濁
させこれをA液とした。次に硫酸チタニル70部(二酸
化チタン32%)と水150部を混合し、チタンを溶解
させ、更に98%硫酸100部を加えB液とした。上記
A液を撹拌しながら加熱し、95℃になった時点でB液
を投入し3時間加熱熟成した後、生成した二酸化チタン
被覆雲母スラリーを水洗及び濾過し、得られたケーキを
120℃で12時間乾燥した。
【0021】次いでこの乾燥ケーキを酸化性雰囲気で8
00℃で1時間熱処理し、二酸化チタンで被覆された光
輝性のある緑色の虹彩色を発生する白色雲母フレーク顔
料を得た。このものをアクリルクラッカーにて塗料化
し、6ミルフィルムアプリケーターにて黒帯付アート紙
に塗布したところ、黒帯部分は光輝性のある緑色を発色
し、下地が白い部分は光輝性はあるものの、殆ど白色に
近い色調であった。
【0022】
【効果】以上の如き本発明によれば、雲母フレーク上に
二酸化チタン層、及び金属換算比で1:2:1の酸化コ
バルト、酸化ニッケル及び酸化亜鉛からなる複合酸化物
層を被覆することによって、隠蔽力が高く且つ光輝性が
出やすい二酸化チタン層の優れた光輝性を維持しつつ、
該二酸化チタン層の表面に着色成分としてより強い緑色
の発色を示すコバルト、ニッケル及び亜鉛の複合酸化物
層を被覆して熱処理し、スピネル相を形成させることに
よって緑色真珠光沢顔料としての特性を出現させると同
時に、上記複合酸化物層の有する諸特性も併せ有させる
ことが出来る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 待鳥 峰喜 東京都中央区日本橋馬喰町1丁目7番6 号 大日精化工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−65471(JP,A) 特開 平4−183756(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C09C 1/00 - 3/12

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 雲母フレーク上に二酸化チタン層を、そ
    の上に金属換算比でコバルト:ニッケル:亜鉛が1:
    2:1の酸化コバルト、酸化ニッケル及び酸化亜鉛から
    なる複合酸化物層を被覆してなることを特徴とする緑色
    真珠光沢顔料。
  2. 【請求項2】 酸化コバルト、酸化ニッケル及び酸化亜
    鉛からなる複合酸化物の被覆量が、二酸化チタン被覆量
    に対し、元素比で0.1:1<(Co+Ni+Zn):
    Ti<0.5:1の範囲にある請求項1に記載の緑色真
    珠光沢顔料。
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