JP2871191B2 - ミシンの針棒制御装置 - Google Patents

ミシンの針棒制御装置

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JP2871191B2 JP19064391A JP19064391A JP2871191B2 JP 2871191 B2 JP2871191 B2 JP 2871191B2 JP 19064391 A JP19064391 A JP 19064391A JP 19064391 A JP19064391 A JP 19064391A JP 2871191 B2 JP2871191 B2 JP 2871191B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はミシンの針棒制御装置に
関するものであり、特に、針棒速度を制御する装置に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、ミシンの針棒は下端に縫針を保
持しており、針棒駆動モータにより設定サイクル数で上
下方向に往復運動させられる。針棒の下降により、上糸
が挿通された縫針の先端が縫製すべき被加工布を貫通す
る。そして、針棒の上昇により上糸の糸輪が形成され、
送り歯の下方に設けられた外釜によりその糸輪が捕捉さ
れた後、外釜が一回転することにより上糸と下糸とが絡
まされて縫目が形成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ようなミシンにおいて、被加工布の厚さがかなり厚い場
合や、織目がごく細かく詰まっている場合には、針棒駆
動モータのトルクが小さいと縫針が貫通し難い、あるい
は貫通し得ないことがあった。そのため、このような被
加工布の縫製を行うためには、針棒駆動モータを大形に
しなければならなず、コストが高くなるという問題があ
った。本発明はこの問題に鑑み、針棒駆動モータを大形
にすることなく、従来では縫製が困難であった被加工布
の縫製をも良好に行い得るように針棒速度を制御する装
置を得ることを課題として為されたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
に、本発明に係るミシンの針棒制御装置は、図1に示す
ように、針棒下降速度増加の必要性の有無を検出する
増加必要性検出手段と、その増加必要性検出手段の検
出結果が必要性有りの場合に、前記設定サイクル数を変
化させることなく、少なくとも縫針の先端が被加工布を
貫通する時期の針棒駆動モータの作動速度を増加させる
針棒速度制御手段とを含むように構成される。増加必要
性検出手段は、例えば、被加工布の一定厚さを基準とし
て、その基準厚さを超えるか否かにより速度増加の必要
性の有無を決定するようにしてもよく、また、特に1つ
の条件を設けずに、一サイクルの縫製を行った際の縫針
の貫通し難さの度合等から必要性の有無を決定するもの
としてもよい。さらに、作業者が被加工布の状態を観て
速度増加必要性の有無を決定し、必要性が有る場合にス
イッチ等の操作により電気信号を発生させ、その信号の
有無を検出する手段を増加必要性検出手段としてもよ
い。
【0005】
【作用】上記のように構成された針棒制御装置におい
て、被加工布の厚さや織目の細かさの程度等が一般的な
ものである場合には、増加必要性検出手段の検出結果
が、針棒下降速度増加の必要性無しとなるため、針棒速
度制御手段は針棒駆動モータの速度増加を行わない。そ
れに対して、被加工布が厚かったり重ねられている場合
や、織目がごく詰まっている場合等には、検出結果が必
要性有りとなるため、針棒速度制御手段により針棒駆動
モータの作動速度が増加させられ、針棒の下降速度が増
加させられる。針棒の下降速度は、少なくとも縫針の先
端が被加工布を貫通する時期、すなわち、縫針の被加工
布貫通時に大きければよく、針棒の下降開始当初から増
速されても、針棒がある一定高さに達した時点から増速
されてもよい。また、縫針が被加工布を貫通した後は、
ミシンの振動や騒音を低減するために下降速度を減少さ
せることが望ましいが、不可欠ではない。縫針の被加工
布貫通時の速度を大きくすれば、針棒の慣性力が大きく
なり、縫針が従来は容易に貫通し得なかった被加工布を
貫通することが可能となる。また、針棒下降速度が増さ
れても、針棒の往復運動自体は設定サイクル数で行われ
るようになっているため、所望の布送り速度で縫製を行
うことができる。
【0006】
【発明の効果】このように、本発明によれば、従来は縫
製が困難または不可能であった被加工布の縫製を容易に
行うことができ、縫製可能な被加工布の範囲が拡がる効
果が得られる。しかも、針棒駆動モータを大形とする必
要がないため、装置全体の大形化を回避することがで
き、コストを低く抑え得る。
【0007】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳
細に説明する。図2において、10はミシンの機枠であ
り、上方のアーム部12と下方のベッド部14とを備え
ている。アーム部12内には針棒台16が設けられてい
る。針棒台16は上下方向に延びた板部材であり、その
上下両端部には水平方向に延び出す一対のフランジ部が
形成されている。この上側のフランジ部はさらに上方に
延び出しており、この部分において、針棒台16がピン
18によりアーム部12に揺動可能に取り付けられてい
る。両フランジ部にはそれぞれ貫通穴が形成されてお
り、この貫通穴に針棒24が摺動可能に嵌合されてい
る。針棒24は下端部に縫針26を保持している。ま
た、針棒台16の中央部には上下方向に延びるスロット
30が形成されており、ピン32がスロット30の長手
方向にのみ移動可能に係合させられている。ピン32の
軸部は針棒24に固着されており、ピン32と針棒24
とが一体的に移動するようになっている。
【0008】ピン32の頭部は、ラック部材36のフラ
ンジ38に形成された切欠40に左右方向にのみ移動可
能に係合させられている。また、ラック部材36の近傍
には、針棒駆動用サーボモータ42が配設されており、
ラック部材36のラック部44が、サーボモータ42の
回転軸に相対回転不能に取り付けられたピニオン46と
噛み合わされている。サーボモータ42は正逆両方向に
回転するものであり、サーボモータ42の正逆両回転に
より、ピニオン46を介してラック部材36が昇降させ
られ、ラック部材36の切欠40に係合されたピン32
を介して針棒24が針棒台16に支持されつつ、上下方
向に往復運動させられる。
【0009】ラック部材36の近傍にはまた、ポテンシ
ョメータ50が配設されており、その回転軸に相対回転
不能に取り付けられたピニオン52がラック部44と噛
み合わされている。ポテンショメータ50は、図3に示
すように、A/D変換器54を介してコンピュータ56
の入出力インタフェース58に接続されており、その出
力信号がデジタル変換されてコンピュータ56に入力さ
れるようになっている。また、サーボモータ42の回転
軸にはエンコーダ60が接続されており、エンコーダ6
0も入出力インタフェース58に接続されて、そのパル
ス信号がコンピュータ56に入力されるようになってい
る。
【0010】針棒台16の下端部は連杆64を介して針
棒揺動用パルスモータ66(図3参照)に連結されてお
り、パルスモータ66の駆動により針棒台16がピン1
8まわりに回動させられ、針棒24および縫針26が左
右方向に揺動させられるようになっている。
【0011】アーム部12にはまた支持軸70が配設さ
れており、セクタギヤ72が回動可能に支持されてい
る。図2から明らかなように、セクタギヤ72の一端部
には天秤74が形成されている。また、セクタギヤ72
の近傍には天秤駆動用パルスモータ76が配設されてお
り、その回転軸に相対回転不能に取り付けられたピニオ
ン78がセクタギヤ72のギヤ部80に噛み合わされて
いる。したがって、パルスモータ76の正逆両回転によ
りセクタギヤ72が支持軸70まわりに回動させられ、
天秤74が上下方向に往復運動させられる。
【0012】縫針26近傍には布押さえ82が設けられ
ている。布押さえ82は針棒24と平行に延びる押さえ
棒84の先端にねじ86により取り付けられており、押
さえ棒84の他端はアーム部12内において、押さえ棒
抱き88により支持されている。押さえ棒抱き88は図
示しないばね部材により押し下げ方向に付勢されるとと
もに、押さえ上げレバー90のカム面94と係合するこ
とにより、その下降端位置を規定されている。押さえ上
げレバー90はカム形状を成し、ピン92により機枠1
0に回動可能に取り付けられている。したがって、押さ
え上げレバー90を反時計方向に回動させることによ
り、ばね部材の付勢力に抗して押さえ棒84が上昇させ
られ、布押さえ82が非作用位置に位置させられる。一
方、押さえ上げレバー90を時計方向に回動させること
により、布押さえ82が下降して被加工布を押さえる作
用位置に位置させられる。
【0013】また、押さえ棒抱き88の近傍にはポテン
ショメータ98(図3参照)が配設されており、その回
転軸に相対回転不能に取り付けられた図示しないピニオ
ンが、押さえ棒抱き88の他端に形成されたギヤ部と噛
み合わされている。布押さえ82が作用位置において被
加工布を押さえた状態で、被加工布の厚さが異なること
により布押さえ82の高さも異なる。この布押さえ82
の高さが押さえ棒抱き88およびピニオンを介してポテ
ンショメータ98により検出される。ポテンショメータ
98はA/D変換器100を介してコンピュータ56の
入出力インタフェース58に接続されている。ポテンシ
ョメータ98からの電気信号に基づいてコンピュータ5
6内で被加工布の厚さが演算されるようになっているの
である。
【0014】ベッド部14内には、水平釜106が配設
されている。水平釜106の外釜108は支持軸110
を介してベッド部14に水平面内で回転可能に支持され
ている。外釜108の外周面にはギヤ部112が形成さ
れており、釜駆動用パルスモータ114の回転軸に相対
回転不能に取り付けられたピニオン116に噛み合わさ
れている。したがって、パルスモータ114の駆動によ
り外釜108が一定方向に回転させられる。
【0015】水平釜106の上方には送り歯120が設
けられている。送り歯120は、送り台122に固着さ
れており、送り台122は前後送りレバー124の一端
に連結されている。前後送りレバー124は支持軸12
6を介してベッド部14により回動可能に支持されてお
り、他端にはギヤ部128が形成されている。また、ベ
ッド部14には前後送り用パルスモータ130が配設さ
れており、その回転軸に相対回転不能に取り付けられた
ピニオン132とギヤ部128とが噛み合わされてい
る。したがって、パルスモータ130の正逆両回転によ
り、前後送りレバー124が支持軸126を支点として
回動し、送り台122と共に送り歯120が前後に往復
運動させられる。
【0016】前後送りレバー124の近傍には、上下送
りレバー136が支持軸138によりベッド部14に揺
動可能に取り付けられている。上下送りレバー136の
一端には図示しないローラが回転可能に取り付けられて
おり、その外周面が送り台122の底面に当接させられ
ている。また、上下送りレバー136の他端にはギヤ部
140が形成されており、上下送り用パルスモータ14
2の回転軸に相対回転不能に取り付けられたピニオン1
44と噛み合わされている。したがって、パルスモータ
142の正逆両回転により上下送りレバー136が支持
軸138を中心として所定角度で揺動し、ローラにより
送り台122が所要のストロークで上下方向に往復運動
させられる。
【0017】機枠10にはさらに、起動・停止ボタン1
48およびテンキー式の模様選択ボタン(図3参照)1
50が設けられている。模様選択ボタン150は、所望
の縫製模様を選択するためのものである。
【0018】本実施例のミシンの制御系を図3に示す。
図から明らかなように、サーボモータ42および各パル
スモータ66,76,114,130,142は、各駆
動回路154〜164を介してコンピュータ56の入出
力インタフェース58に接続されている。また、起動・
停止ボタン148に対応して起動・停止スイッチ170
が設けられ、入出力インタフェース58に接続されてい
る。起動・停止スイッチ170は作業者が起動・停止ボ
タン148を1回操作する毎に交互にON状態とOFF
状態とになるものである。模様選択ボタン150は10
個設けられており、各模様選択ボタン150に対応して
1個ずつの模様選択スイッチ172が設けられ、入出力
インタフェース58に接続れている。
【0019】コンピュータ56は、入出力インタフェー
ス58の他、CPU176,ROM178,RAM18
0を備えており、これらがバス182により接続されて
いる。ROM178はプログラムメモリ186および縫
目模様データメモリ188を備えている。縫目模様デー
タメモリ188には、模様選択スイッチ172で選択可
能な縫目模様の各々に対応する縫目模様データが格納さ
れており、プログラムメモリ186にはそれら縫目模様
データに基づいて各モータをそれぞれ制御する制御プロ
グラム,図4〜6のフローチャートで表される縫目形成
制御プログラム,サーボモータ42の設定速度に対応し
た出力データテーブル,各パルスモータ66,76等の
設定速度に対応したパルス数テーブル等が格納されてい
る。また、RAM180には、CPU176の演算処理
結果を一時的に記憶する各種のメモリの他、図9に示す
タイマT1 やフラグF1 等が設けられている。
【0020】以上のように構成されたミシンにおける縫
目形成制御を図4〜図6のフローチャートに基づいて説
明する。縫目形成制御プログラムは、全体のタイミング
制御を行う図4のメインルーチン,針棒24のサイクル
数を制御する図5のサイクル数制御ルーチンおよびエン
コーダ60のパルスの立ち下がり時の割込みにより針棒
24の下降速度を制御する図6の針棒速度制御ルーチン
等から成っている。なお、針棒24のサイクル数は毎分
200サイクル(1サイクルタイム=300msec)に設
定されているものとする。
【0021】電源投入と同時に図4に示すメイン制御が
開始される。まず、ステップS1(以下、単にS1で表
す。他のステップについても同様)において初期設定が
行われ、各フラグF1 ,F2 等がOFFとされる。ま
た、初期位置制御が行われ、針棒24,外釜108,天
秤74等が各駆動回路およびモータにより初期位置に位
置させられる。縫製時以外には針棒24等はこの初期位
置に維持される。
【0022】次に、S2において縫製開始が待たれる。
作業者により起動・停止ボタン148が押されれば起動
・停止スイッチ170がON状態となるため、判定の結
果がYESとなって、S3においてタイマT1 がリセッ
トされ、図5のフローチャートで示すサイクル数制御処
理が開始される。このサイクル数制御処理は、1msec経
過する毎に割込みで実行される。S101において、カ
ウント値nが1ずつインクリメントされ、カウント値n
が300に達するまではS102の判定結果がNOとな
って、S103,S104がスキップされ、1回の実行
が終了する。そして、n=300となればS102の判
定結果がYESとなって、S103においてスタートフ
ラグF1 がONとされる。そして、S104においてカ
ウント値nが0にリセットされる。すなわち、タイマT
1 のスタート後、300msec経過する毎にスタートフラ
グF1 がONとされるのであり、このサイクル数制御処
理は、起動・停止スイッチ170がOFFとなり、図4
のS24でタイマT1 が停止させられるまで続けられ
る。
【0023】S3の実行後、S4において、ポテンショ
メータ98の出力値が読み込まれて被加工布の厚さの検
出が行われる。起動・停止スイッチ170が操作される
前に、作業者により押さえ上げレバー90が時計方向に
回動させられることによって、布押さえ82が作用位置
へ下降させられるため、S4の実行時には布押さえ82
がベッド部14上に載置された被加工布を押さえてお
り、その状態の布押さえ82の高さを表すポテンショメ
ータ98の出力値が読み込まれるのである。読み込まれ
た被加工布の厚さが2mm以上であればS5の判定結果が
YESとなり、S6において速度変更フラグF2 がON
とされる。一方、被加工布の厚さが2mmより薄ければS
5の判定結果がNOとなり、速度変更フラグF2 はON
とされない。すなわち、本実施例においては、『被加工
布の厚さが2mm』が針棒24の下降速度増加必要性の有
無の判定基準とされているのであり、2mm以上の場合に
は、縫針26が被加工布を貫通することが難しく、針棒
24の下降速度増加の必要性有りと決定され、速度変更
フラグF2 がONとされるのである。
【0024】本実施例においては、布押さえ82,ポテ
ンショメータ98,A/D変換器100,CPU176
のメインルーチンのS4,S5およびS6を実行する部
分等が針棒下降速度の増加必要性検出手段を構成してい
るのである。
【0025】続いて、S7において、駆動回路154に
駆動指令信号が出力され、サーボモータ42が起動させ
られて針棒24の下降が開始されるとともに、S8にお
いてエンコーダ60のパルス信号の割込みが許可され
る。その後、S9においてポテンショメータ50により
検出される針棒24の位置が速度変更開始高さまで下降
するのが待たれる。本実施例においては、速度変更開始
高さは図8のA点に決められている。針棒24の高さが
速度変更開始高さに達すればS9の判定結果がYESと
なって、S10において速度変更フラグF2 がONとさ
れているか否かの判定が行われる。S6において速度変
更フラグF2 がONされていれば判定結果がYESとな
り、S11において速度変更開始位置フラグF3 がON
とされるが、速度変更フラグF2 がOFFのままであれ
ばS10の判定結果がNOとなり、S11をスキップし
てS12が実行される。
【0026】前記S8の実行後は、エンコーダ60から
のパルス信号の立ち下がりに応じて割込みにより図6に
示す針棒速度制御ルーチンが1回ずつ実行される。ま
ず、S201において、立ち下がり信号の時間間隔が測
定され、その時間間隔から針棒24の速度が演算され
る。そして、S202において、速度変更開始位置フラ
グF3 がONとされているか否かの判定が行われ、判定
結果がYESであれば、S203において針棒24の目
標速度が予め定められた速度に増加させられる。次にS
204において速度変更開始位置フラグF3 がOFFと
された後、S205において、S201で演算された針
棒24の現在速度と設定された目標速度とが比較され
る。最初は、速度変更開始指令が発せられた直後である
ため、現在速度が目標速度より小さくなり、S206に
おいて増速処理が行われる。駆動回路154からのサー
ボモータ42の駆動電流が目標速度と現在速度との差に
比例する量だけ増加させられるのである。
【0027】次のエンコーダ60のパルス信号の割込み
時には、S202の判定結果がNOとなり、S207に
おいて速度変更終了フラグF4 がONとされているか否
かの判定が行われる。メインルーチンにおいて速度変更
終了フラグF4 がONされていなければ判定結果がNO
となり、S208〜S210がスキップされて再びS2
05において、針棒24の現在速度と目標速度との比較
が行われる。前回のS206の実行により現在速度が目
標速度とほぼ同じ速度に達していればそのままプログラ
ムの実行が終了するが、まだ、目標速度に達していなけ
れば再びS206において増速処理が行われる。また、
現在速度が既に目標速度を超えている場合には、S21
1において減速処理が行われ、サーボモータ42の駆動
電流が減少させられて針棒24の下降速度が減少させら
れる。その後、パルス信号の割込み毎に、S201,S
202,S207,S205が繰り返し実行され、針棒
24の現在速度に応じてS206またはS211が行わ
れ、針棒24が図8に示すように通常より大きい速度で
下降させられる。
【0028】本実施例においては、サーボモータ42,
エンコーダ60,駆動回路154およびCPU176の
針棒速度制御ルーチンを実行する部分が針棒速度制御手
段を構成しているのである。
【0029】メインルーチンにおいては、S11の実行
後S12が繰り返し実行され、ポテンショメータ50の
出力信号に基づいて針棒24の高さが速度変更終了位置
に達するのが待たれる。この速度変更終了位置は、縫針
26が被加工布を貫通した後一定量下降した図8のB点
の位置に決められている。針棒24が速度変更終了位置
まで下降すれば、S12の判定結果がYESとなり、S
13において速度変更フラグF2 がONとされているか
否かの判定が行われる。判定結果がYESであればS1
4において速度変更終了フラグF4 がONとされ、判定
結果がNOであればS14がスキップされてS15が実
行される。
【0030】速度変更終了フラグF4 がONとされれ
ば、図6の針棒速度制御ルーチンにおいて、S207の
判定結果がYESとなり、S208において、目標速度
が通常速度に減少させられる。そして、S209におい
て速度変更フラグF2 がOFFとされるとともに、S2
10において速度変更終了フラグF4 がOFFとされた
後、S205において、針棒24の現在速度と目標速度
とが比較される。目標速度が減少させられたことによ
り、現在速度が目標速度より大きくなり、S211の減
速処理が実行される。したがって、駆動回路154から
サーボモータ42に供給される駆動電流が減少させら
れ、針棒24の下降速度が減少させられる。その後、S
201,S202,S207およびS205が実行さ
れ、針棒24の速度に応じてS206あるいはS211
が実行され、針棒24は図8に示すように、再び通常の
速度で下降させられる状態に戻る。
【0031】針棒24が下降させられるうちに最下点、
すなわち図8に示すC点に達すれば、メインルーチンの
S15の判定結果がYESとなり、S16において針棒
上昇開始指令が発せられる。したがって、駆動回路15
4によりサーボモータ42が逆方向に駆動され、針棒2
4が上昇させられる。続いてS17において釜駆動開始
指令が発せられ、駆動回路160により釜駆動用パルス
モータ114に外釜108の1回転分に相当するパルス
電流が供給され始める。これによりパルスモータ114
が起動され、外釜108の回転が開始される。針棒24
の上昇により縫針26に挿通された図示しない上糸の糸
輪が形成され、外釜108の回転によりその上糸の糸輪
が捕捉された後、外釜108が一回転させられることに
より上糸と下糸とが絡まされて被加工布に縫目が形成さ
れる。外釜108の1回転後、パルスモータ114への
パルス信号が絶たれるため、パルスモータ114の駆動
が停止し、外釜108が初期位置で停止させられる。
【0032】S18において、針棒24が最上点、すな
わち図8に示すD点に達するのが待たれ、S18の判定
結果がYESとなれば、S19において針棒駆動停止指
令が発せられ、針棒24が上昇端位置において停止させ
られる。続いて、S20においてエンコーダ60のパル
ス割込みが禁止され、針棒速度制御ルーチンの実行が停
止させられる。そして、S21において、スタートフラ
グF1がONされているか否か、すなわち、サイクル数
制御ルーチンにおいて、カウント値nが300に達した
か、換言すれば、針棒24の下降開始から300msecが
経過したか否かの判定が行われる。S21の判定結果が
NOであれば、S22において、作業者により起動・停
止ボタン148が再び押され、起動・停止スイッチ17
0がOFFとされたか否かが判定される。起動・停止ス
イッチ170がON状態のままであれば判定結果がNO
となり、再びS21が実行される。
【0033】300msec経過後、サイクル数制御ルーチ
ンにおいてスタートフラグF1 がONとされれば、S2
1の判定結果がYESとなり、S23においてスタート
フラグF1 がOFFされた後、プログラムの実行はS4
に戻り、次の縫目が形成される。
【0034】本実施例においては、図8に実線で示す針
棒24の下降状況と一点鎖線で示す通常の針棒の下降状
況とから明らかなように、針棒24の下降速度が増加さ
せられることにより、針棒24が通常より早い時期に上
昇端位置に達しても、300msecが経過するまでは針棒
24の次の下降が行われないのである。つまり、下降途
中における針棒24の下降速度増加にもかかわらず、針
棒24が300msecで上下に1往復動させられるように
なっているのであり、針棒24が正確に毎分200サイ
クルという設定サイクル数で往復運動させられるように
なっているのである。
【0035】一方、作業者により起動・停止ボタン14
8が押されて起動・停止スイッチ170がOFFとされ
れば、S22の判定結果がYESとなって、S24にお
いてサイクル数制御ルーチンの実行が停止させられる。
そして、プログラムの実行がS2に戻り、再び起動・停
止ボタン148が押されるのが待たれる。
【0036】以上の説明から明らかなように、本実施例
においては、図8に示すように、針棒24の下降が開始
された後、針棒24が速度変更開始位置A点から速度変
更終了位置B点に達する間の下降速度が増加させられ
る。このAB間には縫針26の先端が被加工布を貫通す
る時期が含まれているため、針棒24が増速されること
により生ずる大きい慣性力によって、縫針26が厚い被
加工布をそれの大きい負荷抵抗に打ち勝って良好に貫通
し得る。
【0037】また、本実施例においては、針棒24が増
速されることにより、最下点Cに達する時期が通常に比
較して早くなるが、コンピュータ56により、天秤7
4,外釜108,送り歯120等の駆動が針棒24の下
降時期に合わせて制御されるようになっているため、縫
製を支障なく行うことができる。
【0038】なお、針棒24の増速終了後、下降速度を
通常の下降速度よりも減速して、増速が行われない通常
の場合と同一時期に最下点Cに到達するように針棒24
の速度を制御することも可能であり、このようにすれ
ば、図5のサイクル数制御ルーチンを省略してもミシン
をほぼ設定サイクル数で作動させることができる。
【0039】また、本実施例においては、針棒の下降速
度が2段階にのみ変えられるようになっているが、多段
階に変えられるようにすることも可能であり、被加工布
の厚さ等に応じて連続的に変えられるようにすることも
可能である。
【0040】さらに、本実施例においてはエンコーダ6
0のパルス立ち下がり信号の間隔により針棒24の速度
を検出するようになっていたが、立ち上がり信号により
検出することも可能である。また、エンコーダ60に代
えて、タコジェネレータにより直接針棒24の速度を検
出することも可能であり、ポテンショメータ50の出力
信号を微分して速度を検出することも可能である。
【0041】逆に、エンコーダ60を針棒の絶対位置を
検出し得るアブソリュートエンコーダに変えてポテンシ
ョメータ50を省略し、あるいはエンコーダ60と針棒
24の上昇端への到達を検出する光電スイッチとにより
針棒24の位置を検出することも可能である。
【0042】また、本実施例においては、針棒24の下
降速度増加の必要性の有無を決定するための判定基準が
『被加工布の厚さが2mm』とされていたが、縫針が被加
工布を貫通した直後の針棒の下降速度を実測し、その速
度が基準値以下である場合に下降速度増加の必要性があ
るとすることも可能である。
【0043】さらに、下降速度増加の必要条件を『被加
工布の織目が細かい』等、他の特徴を設定することも可
能であり、その設定条件を検出し得る検出手段を設け、
針棒24の速度制御を行うようにしてもよい。
【0044】また、本実施例におけるように、針棒24
の上下運動がラック部材36とサーボモータ42のギヤ
46との噛合により行われるミシンにおいては、クラン
ク機構を用いて針棒を上下運動させる型のミシンに比較
して、縫針が被加工布を貫通する瞬間の速度が小さいた
め、本発明の針棒制御装置を適用することにより、縫針
26の被加工布の貫通力が増大する顕著が効果がある
が、クランク機構を備えたミシンに本発明を適用するこ
とも可能である。
【0045】その他、当業者の知識に基づいて種々の変
形,改良を施した態様で、本発明を実施することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成を概念的に示す図である。
【図2】本発明の一実施例である針棒制御装置を備えた
ミシンの要部を示す斜視図である。
【図3】上記針棒制御装置を備えたミシンの構成を電子
制御部を中心として示すブロック図である。
【図4】上記ミシンのコンピュータのROMに格納され
たメインルーチンを示すフローチャートである。
【図5】上記コンピュータのROMに格納されたサイク
ル数制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】上記コンピュータのROMに格納された針棒速
度制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】上記コンピュータのRAMの構成を示すブロッ
ク図である。
【図8】上記針棒制御装置により制御された針棒の上下
運動を通常の針棒の上下運動と共に示すグラフである。
【符号の説明】
24 針棒 26 縫針 42 針棒駆動用サーボモータ 56 コンピュータ 60 エンコーダ 82 布押さえ 98 ポテンショメータ 100 A/D変換器 154 駆動回路

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下端に縫針を保持した針棒を針棒駆動モ
    ータにより設定サイクル数で上下方向に往復運動させる
    ミシンの針棒制御装置であって、 針棒下降速度増加の必要性の有無を検出する増加必要性
    検出手段と、 その増加必要性検出手段の検出結果が必要性有りの場合
    に、前記設定サイクル数を変化させることなく、少なく
    とも前記縫針の先端が被加工布を貫通する時期の前記針
    棒駆動モータの作動速度を増加させる針棒速度制御手段
    とを含むことを特徴とする針棒制御装置。
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