JP2860203B2 - インクリボンカセット - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、熱転写プリンタに使用
されるインクリボンカセットに係り、特にそのコア形状
の改良に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】図３は一般的なインクリボンカセットを
示したものである。

【０００３】図３において、インクリボンカセットのカ
セット本体１には、左右対称位置にそれぞれ孔部２，２
が形成されており、前面中央部には図示しないサーマル
ヘッドを内側に位置させるように凹部３が形成されてい
る。前記各孔部２，２に対応する位置には、中心部に係
合孔４が穿設されたほぼ円筒形状の巻取り用コア５と引
出し用コア６とがそれぞれ回転自在に配設されており、
前記各コア５，６の係合孔４の内側には、このインクリ
ボンカセットがキャリッジ７に搭載されたとき、このキ
ャリッジ７上のリボン巻取りボビン８およびリボン引出
しボビン９に係合する複数の係合突起１０が円周方向に
間隔を隔てて形成されている。また、前記各コア５，６
には、インクリボン１１がその両端から巻回されてお
り、このインクリボン１１は前記凹部３内において、カ
セット本体１の外部に露出されるようになっている。

【０００４】前記インクリボンカセットを用いて印字を
行なうには、前記キャリッジ７上に前記インクリボンカ
セットを、各コア５，６の係合孔４，４が各ボビン８，
９に係合し、かつ、前記凹部３内に図示しないサーマル
ヘッドが位置するように装着し、その後、所望の印字信
号に基づいて、前記キャリッジ７を駆動するとともに、
前記巻取ボビン８を図示しないモータなどにより回転さ
せてインクリボン１１を巻取りながら、サーマルヘッド
の発熱素子に選択的に通電することにより、記録紙に所
望の印字を行なうことができる。

【０００５】ところで、通常、前記インクリボン１１に
は、普通紙用インクリボン１１ａとオーバーヘッドプロ
ジェクタ（ＯＨＰ）紙用インクリボン１１ｂとがある。
前記普通紙用のインクリボン１１ａは、図４（ａ）に示
すように、プラスチックフィルム等からなる基材１２の
上にインク層１３を形成し、このインク層１３の上に前
記インク層１３のインクが用紙に浸透することを防止す
るオーバーコート層１４を形成したものであるか、ある
いは、図４（ｂ）に示すように、前記基材１２とインク
層１３との間にさらにインク層１３が剥離しやすいよう
に剥離層１５を形成したものである。

【０００６】そして、前記普通紙用インクリボン１１ａ
を用いて印字を行う場合は、前記サーマルヘッドの各発
熱素子とインクリボン１１ａの記録紙からの剥離位置と
の距離をできる限り短く設定し、図５（ａ）に示すよう
に、インクリボン１１ａのインクがまだ溶融状態にある
ときに、記録紙から剥離させるようにしており、１００
ｃｐｓ程度の高速印字を行っている。これは、前記イン
クリボン１１ａのインクが冷却固化した後に剥離させる
と、図５（ｂ）に示すように、インクリボン１１ａのイ
ンク層１３が基材１２から剥離せず、適正な印字を行う
ことができなくなってしまうためである。

【０００７】また、ＯＨＰ紙用インクリボン１１ｂは、
インクが記録紙に浸透しないため、図４（ｃ）に示すよ
うに、基材１２の上にインク層１３のみを形成した構造
になっている。そして、このＯＨＰ紙用インクリボンを
用いて、ＯＨＰ紙に印字を行う場合に、前記普通紙用イ
ンクリボン１１ａの場合と同様にインクが溶融している
状態で剥離させると、図５（ｃ）に示すように、転写さ
れたインク層１３の表面に凹凸が生じ、乱反射すること
により透明な印字を得ることができなくなる。そのた
め、図５（ｄ）に示すように、前記サーマルヘッドの各
発熱素子とインクリボン１１ｂの記録紙からの剥離位置
との距離を長くすることにより、表面が平滑で透明な印
字を行うようにしている。

【０００８】

【発明が解決しようとする手段】ところで、前述した従
来のインクリボンカセットにおいて、前記普通紙用イン
クリボン１１ａを用いて高速印字を行なう場合は、イン
クリボンの引出しに要するトルクが軽いと、インクリボ
ンが斜行し、印字不良となるおそれがあるので、前記引
出しボビン９に巻取りホビン８による巻取りトルクより
も小さい一定の引出し負荷トルクを付与して斜行しない
ようにしている。しかしながら、前記ＯＨＰ紙用インク
リボン１１ｂを用いて印字を行なう場合は、前記普通紙
用インクリボン１１ａを用いて高速印字を行なう場合と
同様に、前記引出しボビン９に巻取りホビン８による巻
取りトルクよりも小さい一定の引出し負荷トルクを付与
すると、引出し負荷トルクが重すぎてインクリボンが適
性に引き出されず、インクリボン１１ｂがＯＨＰ紙上を
スリップして印字不良が発生してしまうという問題を有
している。

【０００９】本発明は、これらの点に鑑みてなされたも
のであり、普通紙用インクリボンあるいはＯＨＰ紙用イ
ンクリボンを用いた場合でも適性な引出し負荷トルクを
得ることができ、印字不良の発生を防止することのでき
るインクリボンカセットを提供することを目的とするも
のである。

【００１０】

【課題を解決するための手段】前述した目的を達成する
ために本発明の請求項１のインクリボンカセットは、キ
ャリツジに取付けられたリボン巻取りボビンおよびリボ
ン引出しボビンに係合される巻取り用コアおよび引出し
用コアをカセット本体にそれぞれ回転自在に配設し、前
記両コアの外周にインクリボンを巻回してなるインクリ
ボンカセットにおいて、前記巻取り用コアおよび引出し
用コアの形状を同一とし、各コアには中心部に前記リボ
ン巻取りボビンあるいはリボン引出しボビンに係合しう
る係合孔を穿設し、この係合孔内の軸方向の一端からほ
ぼ半分の範囲に前記各ボビンに係合しうる複数の係合突
起を円周方向に間隔を隔てて形成するとともに、前記係
合孔内の軸方向の残りのほぼ半分の範囲に前記各ボビン
の外径よりも内径が大きい円筒形状部を形成することに
より、それぞれその向きにより前記リボン巻取りボビン
およびリボン引出しボビンに選択的に係合する形状に形
成し、普通紙用インクリボンを用いる場合は、前記引出
し用コアを前記リボン引出しボビンに係合する複数の係
合突起が形成された側を前記キャリッジに対向する面側
に位置するように組み込むことにより、前記リボン引出
しボビンの適度の引出し負荷トルクを引出し用コアに付
与し、他方、ＯＨＰ紙用インクリボンを用いる場合は、
前記引出し用コアを前記リボン引出しボビンに係合しな
い方向に位置するように組み込むことにより、前記リボ
ン引出しボビンの引出し負荷トルクを引出し用コアに付
与しないように構成したことを特徴としている。

【００１１】

【００１２】

【作用】本発明によれば、普通紙用インクリボンを用い
るインクリボンカセットにおいては、引出しコアをリボ
ン引出しボビンに係合する複数の係合突起が形成された
側をキャリッジに対向する面側に位置するように組み込
むことにより、リボン引出しボビンの適度の引出し負荷
トルクが引出し用コアに与えられる。一方、ＯＨＰ紙用
インクリボンを用いるインクリボンカセットにおいて
は、引出し用コアをリボン引出しボビンに係合しない方
向に位置するように組み込むことにより、リボン引出し
ボビンの引出し負荷が引出し用コアに付与されることが
なく、常に適正な印字を行うことができる。

【００１３】

【実施例】以下、本発明を図面に示す実施例により説明
する。

【００１４】図１は、本発明のインクリボンカセットの
コアの形状を示す断面図で、図２はインクリボンカセッ
トがキャリッジに搭載された際の、コアとボビンとの係
合状態を示す断面図である。なお、インクリボンカセッ
トのその他の構造は、前述した従来例において説明した
インクリボンカセットの構造と同じであるので、詳細な
説明は省略する。

【００１５】巻取り用コア５および引出し用コア６の形
状は同一であり、これらのコア５，６は、その中心部に
キャリッジ上の巻取ボビン８あるいは引出しボビン９に
係合する係合孔４が穿設されている。そして、本実施例
においては、特に、その係合孔４内の軸方向の一端から
ほぼ半分の範囲に前記各ホビン８，９に係合しうる複数
の係合突起１０，１０…が円周方向に間隔を隔てて形成
されており、前記係合孔４内の軸方向の残りのほぼ半分
の範囲に前記各ボビン８，９の外径よりも内径が大きい
円筒形状部４ａが形成されている。なお、この円筒形状
部４ａには、前記各ホビン８，９に係合する複数の係合
突起１０は形成されていない。したがって図２（ａ），
（ｂ）に示すように、このコア５，６の向き、すなわ
ち、円筒形状部４ａを上側に位置するか下側に位置する
かによって、前記各ボビン８，９と選択的に係合するよ
うに選択することができる。図２（ａ）は、巻取りボビ
ン８あるいは引出しボビン９に各係合突起１０が噛合し
て係合状態にあり、また、図２（ｂ）は、巻取りボビン
８あるいは引出しボビン９に円筒形状部４ａが対向して
非係合状態にある。

【００１６】そして、巻取用コア５あるいは普通紙用イ
ンクリボンカセットの引出し用コア６ａにおいては、係
合突起１０がキャリッジの表面に対向する面側に位置す
るようにインクリボンカセットのカセット本体内にコア
５，６ａを組み込む。すると、図２（ａ）に示すよう
に、インクリボンカセットをキャリッジに搭載したと
き、リボン巻取ホビン８あるいはリボン引出しボビン９
とコア５，６とが係合し、リボン巻取ボビン８の回転が
巻取用コア５に伝達されてインクリボンの巻取がなさ
れ、またリボン引出しボビン９の引出し負荷トルクが引
出し用コア６に加えられるので、所定の引出しトルクに
より適正な印字を行うことができる。

【００１７】また、ＯＨＰ紙用インクリボンカセットの
引出し用コア６ｂにおいては、円筒上部４ａがキャリッ
ジの表面に対向する面側に位置するようにインクリボン
カセットのカセット本体内にコア６ｂを組み込む。する
と、図２（ｂ）に示すように、インクリボンカセットの
引出し用コア６ｂは、インクリボンカセットをキャリッ
ジに搭載したときに、リボン引出しボビン９と係合しな
いので、引出し用コア６ｂは、リボン引出し用ボビン９
の回転にかかわらず自由に回転することができる。する
と、インクリボンに引出し用ボビン９の引出し負荷トル
クが付与されることがないので、印字中にインクリボン
とＯＨＰ紙とがスリップすることがなく、極めて良好な
印字がなされる。

【００１８】なお、このＯＨＰ紙用インクリボンカセッ
トにおいてはカセット本体の表裏を反転して使用する際
にも、同様に、リボン巻取りボビン８のみに係合突起１
０が係合するので、いわゆるマルチタイムリボンとして
複数回使用することができる。

【００１９】このように本実施例によれば、コアの向き
を変えてカセット本体内に組み込むことにより、キャリ
ッジ側のボビンと選択的に係合でき、普通紙用インクリ
ボンおよびＯＨＰ紙用インクリボンのいずれかに適合す
るようにコアを配設することができる。

【００２０】なお、本発明は、前述した実施例に限定さ
れるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能であ
る。

【００２１】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、Ｏ
ＨＰ紙用インクリボンを収納したインクリボンカセット
においては、引出し用コアがキャリッジ側のリボン引出
しボビンに係合しないように引出し用コアをカセット本
体内に組み込むことにより、引出し用コアがリボン引出
しボビンに係合されず、この引出しコアに対して引出し
ボビンの引出し負荷トルクが付与されないので、ＯＨＰ
紙用インクリボンを使用しての印字時におけるスリップ
を防止することができ、適正な印字を行うことができ
る。また、巻取用コアおよび普通紙用インクリボンを収
納したインクリボンカセットの引出し用コアは、これら
のコアが各ボビンに係合するように、係合突起を形成し
た側がキャリッジの表面に対向するようにカセット本体
内に配設することにより、インクリボンカセットをキャ
リッジに搭載したとき、リボン巻取ホビンあるいはリボ
ン引出しボビンとコアとが係合し、巻取りボビンの回転
が巻取り用コアに伝達されてインクリボンの巻取りがな
され、また引出しボビンの引出し負荷トルクが引出し用
コアに加えられるので、所定の引出しトルクにより適正
な印字を行うことができる。このように、同一形状のコ
アを仕様に応じて、方向を変えてカセット本体内に配設
するだけで、適切な負荷を得ることができ、良好な印字
が行えるだけでなく、複数種類のコアを制作する必要が
ないので、コストダウンがはかれるという顕著な効果を
奏することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のインクリボンカセットのコアの実施例
を示す断面図

【図２】図２（ａ）は図１のインクリボンカセットがキ
ャリッジに搭載されたときのコアとホビンとの係合状態
を示す断面図、図２（ｂ）は図１のインクリボンカセッ
トがキャリッジに搭載されたときのコアとホビンとの非
係合状態を示す断面図

【図３】一般的なインクリボンカセットを示す斜視図

【図４】いずれもインクリボンの構成を説明するもの
で、図４（ａ）、図４（ｂ）はそれぞれ普通紙用インク
リボンを示す構成図、図４（ｃ）はＯＨＰ用インクリボ
ンを示す構成図

【図５】いずれもインクリボンの剥離状態を示す説明図
で、図５（ａ）は普通紙用インクリボンを熱時剥離した
状態を示す説明図、図５（ｂ）は普通紙用インクリボン
を冷時剥離した状態を示す説明図、図５（ｃ）はＯＨＰ
用インクリボンを熱時剥離した状態を示す説明図、図５
（ｄ）はＯＨＰ用インクリボンを冷時剥離した状態を示
す説明図

【符号の説明】

１ カセット本体 ４ 係合孔 ４ａ 円筒形状部 ５ 巻取り用コア ６ 引出し用コア ８ 巻取りボビン８ ９ 引出しボビン １０ 係合突起

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 キャリツジに取付けられたリボン巻取り
   ボビンおよびリボン引出しボビンに係合される巻取り用
   コアおよび引出し用コアをカセット本体にそれぞれ回転
   自在に配設し、前記両コアの外周にインクリボンを巻回
   してなるインクリボンカセットにおいて、前記巻取り用
   コアおよび引出し用コアの形状を同一とし、各コアには
   中心部に前記リボン巻取りボビンあるいはリボン引出し
   ボビンに係合しうる係合孔を穿設し、この係合孔内の軸
   方向の一端からほぼ半分の範囲に前記各ボビンに係合し
   うる複数の係合突起を円周方向に間隔を隔てて形成する
   とともに、前記係合孔内の軸方向の残りのほぼ半分の範
   囲に前記各ボビンの外径よりも内径が大きい円筒形状部
   を形成することにより、それぞれその向きにより前記リ
   ボン巻取りボビンおよびリボン引出しボビンに選択的に
   係合する形状に形成し、普通紙用インクリボンを用いる
   場合は、前記引出し用コアを前記リボン引出しボビンに
   係合する複数の係合突起が形成された側を前記キャリッ
   ジに対向する面側に位置するように組み込むことによ
   り、前記リボン引出しボビンの適度の引出し負荷トルク
   を引出し用コアに付与し、他方、ＯＨＰ紙用インクリボ
   ンを用いる場合は、前記引出し用コアを前記リボン引出
   しボビンに係合しない方向に位置するように組み込むこ
   とにより、前記リボン引出しボビンの引出し負荷トルク
   を引出し用コアに付与しないように構成したことを特徴
   とするインクリボンカセット。