JP2860001B2 - 単板式液晶プロジェクション用液晶表示素子 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、レンズ面にカラーフィ
ルターが形成されたマイクロレンズアレイと液晶パネル
とが貼り合わせられた単板式液晶プロジェクション用液
晶表示素子に関する。

【０００２】

【従来の技術】液晶表示素子は直視型だけでなく、プロ
ジェクションテレビ等の投影型表示素子としても需要が
高まってきている。その投影型に液晶表示素子を使用す
る場合、従来の絵素数で投影の拡大率を高めると、画面
の粗さが目立ってくる。そこで、高い拡大率でも精細な
画像を得ようとすると、絵素数を増やすことが必要とな
ってくる。

【０００３】ところが、液晶パネルの絵素数を増すと、
特にアクティブマトリクス型の液晶パネルでは、絵素以
外の部分が占める面積が相対的に大きくなり、これらの
部分を覆うブラックマスクの面積が増大する。ブラック
マスクの面積が増大すると、表示に寄与する絵素の面積
が減少し、表示素子の開口率が低下してしまう。開口率
の低下が生じると、画面が暗くなり、画像品位を低下さ
せることになる。

【０００４】そこで、このような絵素数の増大による開
口率の低下を防止するために、マイクロレンズアレイを
一方の面に形成した液晶パネルが提案されている（特開
昭６０−１６５６２１〜１６５６２４号）。提案された
液晶パネルは、マイクロレンズアレイが各絵素に対応し
たマイクロレンズを有しており、従来ではブラックマス
クによって遮光されていた光をマイクロレンズにより絵
素内に集光させることを可能とするものである。このよ
うな構成の液晶パネルは、マイクロレンズアレイを一枚
のガラスの片面に形成し、これを液晶パネルに貼り合わ
せても作製することができる。

【０００５】その貼り合わせ方法としては、本願発明者
らは、ガラスと屈折率がほぼ等しい樹脂または液体を使
用してマイクロレンズと液晶パネルとを貼り合わせる方
法を提案している（特願平１−１８７７１５号、特願平
２−１２１７９４号）。この方法により作製された液晶
表示素子は、絵素数の増大による開口率の低下を防止す
ることができる。このため、従来の３板式液晶プロジェ
クションに代えて、単板式液晶プロジェクションに用い
得る液晶表示素子を、高開口率かつ高信頼性で作製でき
る可能性がでてきた。単板式液晶プロジェクションに
は、従来の３板式液晶プロジェクションのようにＲ
（赤）、Ｇ（緑）、Ｂ（青）の各色に対応する３枚の液
晶パネルを使用するのではなく、カラーフィルターを付
けた液晶パネル一枚を用いる。このため、小型軽量化と
コストダウンとが図れる。

【０００６】ところで、マイクロレンズアレイを使用し
ない液晶表示素子で単板式液晶プロジェクションを製作
する場合は、カラーフィルターは必然的に液晶パネルの
内側に形成される。そのカラーフィルターには、染料も
しくは顔料を使用したものが現在実用化されている。し
かし、このようなカラーフィルターを備えた液晶表示素
子においては、液晶プロジェクション用の強い光に長時
間晒された場合、染料からなるカラーフィルターは色が
あせることになり、かつ液晶の信頼性に悪影響が及ぶ。
一方、顔料からなるカラーフィルターでは、液晶プロジ
ェクション用の強い光に長時間晒された場合は、色があ
せることは起こりにくいが、液晶の信頼性に悪影響が及
ぶという問題がある。

【０００７】これに対し、図４に示すように、液晶パネ
ル１３の外側にマイクロレンズアレイ１１を紫外線接着
剤層１４にて貼り合わせるとすれば、マイクロレンズア
レイ１１の上にカラーフィルター１２を形成することが
できる。この構成の場合は、マイクロレンズアレイ１１
の存在により、カラーフィルター１２を通った光が集光
されて液晶パネル１３の絵素内を通過する。このため、
通常の液晶パネルの外側にカラーフィルターを付けた場
合は、カラーフィルター面と絵素面が液晶パネル基板の
厚みの分だけ隔てられ、これにより液晶パネルに平行光
を入射させないかぎり色ずれが生じるのに対し、図４の
ように構成した場合は、上述したようにカラーフィルタ
ー１２を通った光が集光されて液晶パネル１３の絵素内
を通過するため、色ずれが起こり難くなる。更に、この
構成において、マイクロレンズ上に耐光性の高い顔料か
らなるカラーフィルターを形成すれば、液晶の信頼性に
全く影響することなく、マイクロレンズの集光効果によ
る高開口率の単板式プロジェクション用の液晶表示素子
を得ることができる。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の単板
式プロジェクション用液晶表示素子は、カラーフィルタ
ー付きマイクロレンズアレイを液晶パネルに貼り合わせ
ることにより作製することができ、そのカラーフィルタ
ー付きマイクロレンズアレイは、図４に示すように大判
の基板１１ａの上に複数のマイクロレンズアレイ用のレ
ンズ部分１１ｂを形成し、そのレンズ部分１１ｂが形成
された基板１１ａを分断し、その分断された基板１１ａ
のレンズ部分１１ｂの上にカラーフィルター１２を形成
することにより作製されている。このとき、基板１１ａ
を分断する箇所にイオン注入によりマイクロレンズであ
るレンズ部分１１ｂが形成されていると、その分断を容
易に行うことができないため、分断箇所にはレンズ部分
１１ｂが形成されておらず、よってカラーフィルター１
２も基板１１ａより小面積で形成されている。このた
め、分断ラインの周囲に数ｍｍにわたって基板１１ａ上
にカラーフィルター１２が無い領域が存在する。

【０００９】したがって、このようなカラーフィルター
付きマイクロレンズアレイと液晶パネルとを貼り合わせ
る場合、次のような問題が生じる。このカラーフィルタ
ー付きマイクロレンズアレイは、図５に示すようにマイ
クロレンズアレイ１１のレンズ面にカラーフィルター１
２が形成されており、マイクロレンズアレイ１１の周辺
部にはカラーフィルター１２の無い領域がある。マイク
ロレンズアレイ１１と液晶パネル１３とは、例えば紫外
線接着剤層１４を介して重ね合わされる。紫外線接着剤
層１４には、例えばプラスティックからなる厚み調整用
の真球型スペーサーが混入されている。

【００１０】液晶パネル１３の各絵素とマイクロレンズ
アレイの各レンズとの位置合わせを行い、異物検査を行
った後、マイクロレンズ側から紫外線を照射して硬化す
る。カラーフィルター１２がある程度の紫外線をカット
するので、カラーフィルター１２のある部分の接着剤に
当たる紫外線は弱くなっている。つまり、紫外線で硬化
する面に紫外線強度の分布がある。よって、硬化はまず
カラーフィルター１２のない部分で急速に進み、さらに
紫外線を当てるに従ってカラーフィルターの部分も硬化
し始めるが、そのとき先に硬化した部分が、図６に示す
ように柱１２ａになって後から硬化する部分の硬化収縮
を阻害するため、液晶パネル１３の貼り合わせ面との界
面に応力が生じる。

【００１１】このとき、上記液晶パネル１３は、レンズ
の焦点距離をできるだけ短くするために、貼り合わせ側
の基板を薄くしている。このため、前記応力はガラスに
ストレスを与え、液晶パネル１３の貼り合わせ面側のガ
ラスを変形させるので、図６に示すようにパネルギャッ
プが局所的に変化したパネルギャップ不良となる。ま
た、これにより接着剤とガラスとに相当ストレスが溜
り、はがれ等が生じやすく、信頼性も劣ったものになる
という問題点があった。

【００１２】なお、これを回避すべく液晶パネル１３の
側から紫外線を照射することが考えられるが、紫外線が
トランジスタ、配向膜及び液晶の特性に悪影響を及ぼす
ため、液晶パネル１３の側から紫外線を照射することは
好ましくない。

【００１３】本発明は、このような従来技術の課題を解
決すべくなされたものであり、パネルギャップ不良の発
生を抑制でき、また、はがれ等が生じ難く、しかも実効
開口率が高く、高精細、高品質、かつ高信頼性の単板式
液晶プロジェクション用液晶表示素子を提供することを
目的とする。

【００１４】

【課題を解決するための手段】本発明の単板式液晶プロ
ジェクション用液晶表示素子は、複数の絵素を有する液
晶パネルの上方に、該複数の絵素のそれぞれに光を集光
させる複数のマイクロレンズを有するマイクロレンズア
レイが形成された単板式液晶プロジェクション用液晶表
示素子であって、該マイクロレンズアレイが、その周縁
部にマイクロレンズの形成されていない部分を有する構
造となっており、該マイクロレンズアレイの液晶パネル
側に、該マイクロレンズアレイの全面を覆ってカラーフ
ィルターが該マイクロレンズアレイと同一の大きさで形
成され、該カラーフィルター付きマイクロレンズアレイ
の液晶パネル側に、該カラーフィルター付きマイクロレ
ンズアレイの全面を覆って紫外線硬化型接着剤層が形成
されてなり、該液晶パネル上に、該紫外線硬化型接着剤
層とカラーフィルターとマイクロレンズアレイとが、該
液晶パネル側からこの順に配置されていることを特徴と
しており、そのことにより上記目的が達成される。

【００１５】

【作用】本発明にあっては、液晶パネルに紫外線硬化型
接着剤で固定されたカラーフィルターが、マイクロレン
ズアレイの液晶パネル側の全面を覆って形成されてい
る。このため、カラーフィルターと液晶パネルとの間に
設けた紫外線硬化型接着剤にほぼ均一に光が照射される
ため、紫外線硬化型接着剤が液晶パネルに対して均一に
硬化していく。

【００１６】

【実施例】以下に本発明の実施例について説明する。

【００１７】図１は本実施例の単板式液晶プロジェクシ
ョン用液晶表示素子を示す正面図である。この液晶表示
素子は、複数の絵素を有する液晶パネル３の上に、紫外
線硬化型接着剤層４と、カラーフィルター２と、液晶パ
ネル３の複数の絵素のそれぞれに光を集光させる複数の
マイクロレンズを有するマイクロレンズアレイ１とを備
えている。

【００１８】液晶パネル３は、一対のガラス基板の間に
表示媒体としての液晶を封入した構成され、一対のガラ
ス基板の一方の液晶側にブラックマスクが形成されてい
る。更に、一枚のガラス基板上に、図示していないが、
絵素電極、スイッチング素子、バス配線等が形成されて
いる。

【００１９】カラーフィルター２には、液晶パネル３の
複数の絵素に対応したＲ（赤）、Ｇ（緑）及びＢ（青）
の三原色のカラーフィルターが形成されている。カラー
フィルター２の材料としては耐光性の高い顔料が用いら
れる。

【００２０】紫外線硬化型接着剤層４の材料としては、
本実施例では日本ロックタイト社製＃３６３を使用し
た。この他に、ＮＯＲＬＡＮＤ社製のＮＯＡ−６１、Ｔ
ＨＲＥＥ ＢＯＮＤ社製のＡＶＲ−１００等を使用でき
る。また、紫外線硬化型接着剤層４には、厚み調整用の
スペーサー、例えば真球型プラスティックスペーサーが
予め混入されている。マイクロレンズアレイ１と液晶パ
ネル３との間に熱膨張率差が生じ、得られる液晶表示素
子の温度に対する信頼性が劣る可能性がある。このよう
な信頼性の低下を防止するため、本実施例では伸縮性の
高い真球型プラスティックスペーサーを用いた。

【００２１】マイクロレンズアレイ１は基板部分と複数
のレンズ部分とを有し、複数のレンズ部分が複数のマイ
クロレンズを構成する。複数のレンズ部分は凸レンズ効
果を有し、複数のレンズ部分のピッチは液晶パネル３の
複数の絵素のピッチに対応している。

【００２２】複数のレンズ部分を形成する方法として、
プラスチックまたはガラスを機械加工または金型によ
って成形する方法、感光性樹脂をパターン状に露光す
ることによって露光部分が盛り上がった凸レンズを形成
する方法、レンズの平面形状にパターン化された熱可
塑性樹脂をフォトグラフィー技術等により軟化点以上の
温度に加熱し、凸レンズを形成する方法、感光性樹脂
にプロキシミティ露光を行うことによって凸レンズを形
成する方法、感光性樹脂に強度分布を持った光を照射
することによって光の強度に応じた屈折率分布のパター
ンを形成する方法、選択的イオン注入によって屈折率
分布型レンズを得る方法、及び感光性ガラスに光照射
し、感光性ガラスを結晶化することによって凸レンズを
形成する方法があるが、本実施例ではイオン注入による
の方法を採用してレンズ部分を形成した。

【００２３】分断された基板の上には、前述した分断の
しやすさの理由から、レンズが形成されていない部分が
あるが、基板の全面にわたってＲ（赤）、Ｇ（緑）及び
Ｂ（青）の三原色のカラーフィルター２を形成する。

【００２４】したがって、本実施例にあっては、基板の
全面がカラーフィルター２で覆われているので、このカ
ラーフィルター付きマイクロレンズアレイと液晶パネル
とを貼り合わせるべく紫外線接着剤層４に紫外線を照射
しても、紫外線が紫外線接着剤層４に均一に通ることと
なり、液晶パネル３の貼り合わせ面との界面に応力が生
じにくい。なお、紫外線の照射は、トランジスタ、配向
膜及び液晶に悪影響が及ばないようにカラーフィルター
付きマイクロレンズアレイ側から行う。

【００２５】よって、上述したように応力が生じにくい
ので、マイクロレンズアレイ１と液晶パネル３との間の
パネルギャップ不良及びマイクロレンズアレイ１と液晶
パネル３との間に剥がれが生ずることがない。これによ
り、実効開口率が高く、高精細、高品質、かつ高信頼性
の単板式液晶プロジェクション用液晶表示素子を提供す
ることが可能となる。

【００２６】なお、紫外線硬化型接着剤層４を使用した
のは以下の理由による。紫外線硬化型接着剤の他に、可
視光硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、常温硬化型接着剤
などの接着剤を使用することができるが、マイクロレン
ズと液晶パネルとを重ね合わせた後、マイクロレンズと
絵素との位置合わせを行い、ごみなどの異物が貼り合わ
せ面に混入していないかどうか検査し、その状態ででき
るだけ速く固定するためには、紫外線硬化型接着剤が最
も適しているからである。

【００２７】上記実施例ではＲ（赤）、Ｇ（緑）及びＢ
（青）の三原色でパターン化したカラーフィルター２を
マイクロレンズアレイ１の基板上の全面にわたり形成し
ているが、本発明はこれに限らず、図３に示すように、
マイクロレンズアレイ１の基板上の縁を除く部分に、Ｒ
（赤）、Ｇ（緑）及びＢ（青）の三原色でパターン化し
た部分２ａを形成し、縁の部分に三原色の一色を塗布等
した部分２ｂを形成した構成としてもよい。この構成と
して場合においても、紫外線は均一に紫外線硬化型接着
剤層４を通ることとなり、前同様の効果が得られる。ま
た、この構成を採用する場合は、従来と同じようにイオ
ン注入により基板上にマイクロレンズを形成した後で、
基板の縁に三原色の一色を塗布等により形成すればよ
い。

【００２８】

【発明の効果】以上のように本発明によれば、液晶パネ
ルに紫外線硬化型接着剤で固定されたカラーフィルター
が、マイクロレンズアレイの液晶パネル側の全面を覆っ
て形成されているため、カラーフィルターと液晶パネル
との間に設けた紫外線硬化型接着剤にほぼ均一に光が照
射されるため、紫外線硬化型接着剤が均一に硬化してい
く。よって、応力によるパネルギャップ不良、剥がれ等
を生じることのない、高開口率、高信頼性の単板式液晶
プロジェクション用液晶表示素子を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本実施例の単板式液晶プロジェクション用液晶
表示素子を示す正面図。

【図２】そのカラーフィルター２部分を示す平面図。

【図３】本発明に適用可能な他のカラーフィルター例を
示す平面図。

【図４】従来の単板式液晶プロジェクション用液晶表示
素子を示す正面図。

【図５】そのカラーフィルター１２部分を示す平面図。

【図６】従来の単板式液晶プロジェクション用液晶表示
素子における問題点を説明するための正面図。

【符号の説明】

１ マイクロレンズアレイ ２ カラーフィルター ２ａ 三原色でパターン化した部分 ２ｂ 三原色の一色を塗布等した部分 ３ 液晶パネル ４ 紫外線接着剤層

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−241024（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−257823（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−253819（ＪＰ，Ａ) 特開 昭60−249121（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−111802（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−220902（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) G02F 1/1335

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数の絵素を有する液晶パネルの上方
   に、該複数の絵素のそれぞれに光を集光させる複数のマ
   イクロレンズを有するマイクロレンズアレイが形成され
   た単板式液晶プロジェクション用液晶表示素子であっ
   て、該マイクロレンズアレイが、その周縁部にマイクロレン
   ズの形成されていない部分を有する構造となっており、 該マイクロレンズアレイの液晶パネル側に、該マイクロ
   レンズアレイの全面を覆ってカラーフィルターが該マイ
   クロレンズアレイと同一の大きさで形成され、 該カラーフィルター付きマイクロレンズアレイの液晶パ
   ネル側に、該カラーフィルター付きマイクロレンズアレ
   イの全面を覆って紫外線硬化型接着剤層が形成されてな
   り、 該液晶パネル上に、該紫外線硬化型接着剤層とカラーフ
   ィルターとマイクロレンズアレイとが、該液晶パネル側
   からこの順に配置されていることを特徴とする 単板式液
   晶プロジェクション用液晶表示素子。