しかしながら、上述した製造方法により製造される電気光学装置の場合、プロジェクタのライトバルブ用などに使用しているうちに、額縁領域付近における画像表示領域で額縁領域に沿ってコントラスト異常が経時的に発生するという問題点がある。より具体的には、例えば黒表示の際に額縁に沿って白っぽい領域が発生して、コントラスト異常の不連続面が見えるようになってしまう。特にプロジェクタのライトバルブ用の液晶装置等のように比較的強力な光が透過する装置の場合には、このような経時劣化が顕著であり、更に本願発明の発明者による研究によれば、カラーのプロジェクタのライトバルブ用の液晶装置の場合に、R(赤色)G(緑色)B(青色)用の3個の液晶装置のうちB用の装置においてこのような経時劣化が最も顕著であることが判明している。例えば数百時間程度の使用後にこのようなコントラスト異常が現われたりするため、少なくとも数千時間の寿命が望まれるプロジェクタにおいてはこの問題は実用上極めて深刻である。
本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、素子基板やカバーガラス(或いは対向基板)などの基板に、板状部材等の各種板状部材が接着されてなる電気光学装置の製造方法であって、画像表示領域の額縁領域付近に発生する画質の経時劣化を低減し得る電気光学装置の製造方法及び該製造方法により製造され高品位の画像表示が可能な電気光学装置を提供することを課題とする。
本発明の電気光学装置の製造方法は上記課題を解決するために、一対の基板間に電気光学物質が挟持されてなり、前記一対の基板の一方の基板と、光硬化性接着剤により前記基板に接着されたマイクロレンズアレイ板とを備えた電気光学装置の製造方法であって、
前記マイクロレンズアレイ板を光硬化前の光硬化性接着剤により前記基板に接着する接着工程と、
前記基板及び前記マイクロレンズアレイ板のうち少なくとも一方を介して前記光硬化前の光硬化性接着剤に光照射することにより前記光硬化性接着剤を硬化させる硬化工程と、 前記硬化工程後に、前記一対の基板を貼合せる貼合せ工程と、
前記貼合せ工程後に、該硬化後の光硬化性接着剤に光及び熱のうち少なくとも一方を、前記マイクロレンズアレイ板の側から照射することにより前記硬化後の光硬化性接着剤に対するエージング処理を行うエージング工程と、
を備えたことを特徴とする
また、本発明の電気光学装置の製造方法は上記課題を解決するために、一対の基板間に電気光学物質が挟持されてなり、前記一対の基板の一方の基板と、表示光による画像表示が行われる画像表示領域及び該画像表示領域の縁を規定する額縁領域の両方で光硬化性接着剤により前記基板に接着されたマイクロレンズアレイ板と、前記額縁領域に設けられた遮光手段とを備えた電気光学装置の製造方法であって、
前記マイクロレンズアレイ板を光硬化前の光硬化性接着剤により前記基板に接着する接着工程と、
前記基板及び前記マイクロレンズアレイ板のうち少なくとも一方を介して前記光硬化前の光硬化性接着剤に光照射することにより前記光硬化性接着剤を硬化させる硬化工程と、 前記硬化工程後に、前記一対の基板を貼合せる貼合せ工程と、
前記貼合せ工程後に、該硬化後の光硬化性接着剤に光及び熱のうち少なくとも一方を、前記光硬化性接着剤への入射側において前記遮光手段がない状態で、前記マイクロレンズアレイ板の側から照射することにより前記硬化後の光硬化性接着剤に対するエージング処理を行うエージング工程と、
該エージング工程後に前記遮光手段を設ける工程とを備えたことを特徴とする。
本発明の第1の電気光学装置の製造方法によれば、先ず接着工程により、板状部材が光硬化前の光硬化性接着剤により、例えばカバーガラス、対向基板等の基板に接着される。次に、硬化工程により、光が基板及び板状部材のうち少なくとも一方を介して光硬化前の光硬化性接着剤に照射される。これにより、光硬化性接着剤が硬化する。次に、所定量の光及び熱のうち少なくとも一方が、基板及び板状部材のうち少なくとも一方を介して、硬化後の光硬化性接着剤に照射される。これにより、硬化後の光硬化性接着剤に対するエージング処理が行われる。そして、該エージング工程後に、額縁領域において表示光を遮光する遮光手段が設けられる。
本願発明者の研究によれば、板状部材等の板状部材を光硬化性接着剤で基板(例えば、カバーガラス)に接着すると、特にプロジェクタのライトバルブ用途のように強力な表示光が画像表示領域を透過する場合には、この光硬化性接着剤がヒケ(薄くなる変形)などの経時変形を起こすことが判明している。ここで通常は、遮光手段を設けた完成品の形で、投射光等の表示光が照射されるため、遮光手段により遮光されておらずその分だけ紫外線等を含む光による変形が大きい画像表示領域にある光硬化性接着剤の部分と、遮光手段により遮光されておりその分だけ紫外線等を含む光による変形が小さい額縁領域にある光硬化性接着剤の部分との間で、光硬化性接着剤の変形量に差が生じてしまう。この結果、板状部材が光硬化性接着剤により接着されている基板が、これらの2つの部分の境界付近において構造的な応力集中により径時的に変形して、最終的には、この付近における画質の経時劣化(コントラスト異常の経時的な増加)につながると考察される。
しかるに本発明の第1の電気光学装置の製造方法では上述のように、遮光手段が設けられる以前に、遮光手段により遮光される予定の額縁領域における光硬化性接着剤の部分と遮光手段により遮光されない予定の画像表示領域における光硬化性接着剤の部分とに対して、遮光手段が未だ設けられていない状態で光照射すること或いは熱照射することにより、これら2つの部分に対して実質的に相等しくエージング処理を施すようにしている。このため、エージングの程度の差に基く光硬化性接着剤の変形量の差に起因した、画像表示領域と額縁領域との境界付近における応力集中や基板の変形は、殆ど又は全く起こらないで済む。そして最終的には、エージングの程度の差に起因して画像表示領域と額縁領域との境界付近において局所的に発生する画質の経時劣化を低減し得る。
尚、光に対して変質し難い或いは径時変化し難い光硬化性接着剤を用いれば上記同様の課題を解決可能なようにも考えられるが、板状部材をカバーガラス等の基板に接着するための光硬化性接着剤としては、マイクロレンズ等をレンズとして機能させる観点や装置内部における硬化時のストレスや変形の発生を抑える観点から、低屈折率であり且つ低応力であることが要求されている。このような要求を満たしつつ光照射に対して変形し難い性質を持つ光硬化性接着剤の入手は現状では困難である。従って、本発明は、板状部材の接着に用いる光硬化性接着剤の材質自体は従来通りで良いという実践上の大きな利益を有している。
本発明の第2の電気光学装置の製造方法は上記課題を解決するために、一対の基板間に電気光学物質が挟持されてなり、表示光による画像表示が行われる画像表示領域の周囲で該一対の基板を貼り合わせるシール材と、前記画像表示領域及び前記画像表示領域の縁を規定する額縁領域の両方で光硬化性接着剤により前記一対の基板のうち一方の基板に接着された板状部材と、前記額縁領域において前記表示光を遮光する遮光手段とを備えた電気光学装置の製造方法であって、前記板状部材を光硬化前の光硬化性接着剤により前記一方の基板に接着する接着工程と、前記一方の基板及び前記板状部材のうち少なくとも一方を介して光を前記光硬化前の光硬化性接着剤に照射することにより前記光硬化性接着剤を硬化させる硬化工程と、該硬化後の光硬化性接着剤に所定量の光及び熱のうち少なくとも一方を前記基板及び前記板状部材のうち少なくとも一方を介して照射することにより前記硬化後の光硬化性接着剤に対するエージング処理を行うエージング工程と、前記硬化工程後に前記一対の基板を前記シール材により貼り合わせる貼合せ工程と、前記エージング工程後に前記遮光手段を設ける工程とを備える。
本発明の第2の電気光学装置の製造方法によれば、先ず接着工程により、板状部材が光硬化前の光硬化性接着剤により一方の基板(例えば、カバーガラスや対向基板等)に接着される。次に、硬化工程により、光が基板及び板状部材のうち少なくとも一方を介して光硬化前の光硬化性接着剤に照射される。これにより、光硬化性接着剤が硬化する。次に、所定量の光及び熱のうち少なくとも一方が、基板及び板状部材のうち少なくとも一方を介して、硬化後の光硬化性接着剤に照射される。これにより、硬化後の光硬化性接着剤に対するエージング処理が行われる。このエージング工程の前或いは後に、貼合せ工程により、一対の基板が額縁領域に沿ってシール材により貼り合わせる。更に、エージング工程後に、額縁領域において表示光を遮光する遮光手段が設けられる。
このように第2の電気光学装置の製造方法では、遮光手段が設けられる以前に、遮光手段により遮光される予定の額縁領域における光硬化性接着剤の部分と遮光手段により遮光されない予定の画像表示領域における光硬化性接着剤の部分とに対して、遮光手段が未だ設けられていない状態で光照射すること或いは熱照射することにより、これら2つの部分に対して実質的に相等しくエージング処理を施すようにしている。このため、エージングの程度の差に基く光硬化性接着剤の変形量の差に起因した、画像表示領域と額縁領域との境界付近における応力集中や基板の変形は、殆ど又は全く起こらないで済む。そして最終的には、画像表示領域と額縁領域との境界付近において局所的に発生する画質の経時劣化を低減し得る。
本発明の第2の電気光学装置の製造方法の一態様では、前記エージング工程の後に前記貼合せ工程が行われ、前記貼合せ工程の後に前記遮光手段を設ける工程が行われる。
この態様によれば、一対の基板がシール材により貼り合わされる以前に、遮光手段により遮光される予定の額縁領域における光硬化性接着剤の部分と遮光手段により遮光されない予定の画像表示領域における光硬化性接着剤の部分とに対して等しくエージング処理を施すようにしている。このため、エージング処理の際に、額縁領域においてシール材で自由度を奪われた光硬化性接着剤が変形しようとして発生する応力を抑制することも可能となり、この結果、額縁領域と画像表示領域との境界付近における基板(例えば、カバーガラスや対向基板等)の局所的な変形を更に抑制可能となり、最終的には、画像表示領域と額縁領域との境界付近において局所的に発生する画質の経時劣化を更に低減し得る。
本発明の第1又は第2の電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記遮光手段は、前記基板及び前記板状部材が収容される遮光性のケースからなる。
この態様によれば、基板及び板状部材は、遮光手段の一例としての遮光性のプラスチック等からなるケースに収容される。このようなケースに電気光学装置の本体が収容される以前に、ケースにより遮光される予定の額縁領域における光硬化性接着剤の部分と遮光手段により遮光されない予定の画像表示領域における光硬化性接着剤の部分とに対して、ケースに収容されていない状態で光照射すること或いは熱照射することにより、実質的に相等しくエージング処理を施すようにしている。このため最終的には、画像表示領域と額縁領域との境界付近において局所的に発生する画質の経時劣化を低減し得る。
本発明の第1又は第2の電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記エージング工程の前に前記額縁領域において前記表示光を遮光する遮光膜を前記基板上に形成する工程を更に備えており、前記エージング工程では、前記板状部材の前記遮光膜の形成されていない側から前記所定量の光及び熱のうち少なくとも一方を照射する。
この態様によれば、エージング工程の前に、額縁領域において表示光を遮光する遮光膜を基板上に形成する。従って、例えば一方の基板の表面又は裏面若しくは他方の基板の表面又は裏面などに形成された遮光膜により、額縁を精度良く且つ確実に規定できる。そして、エージング工程では、板状部材の遮光膜の形成されていない側から、所定量の光及び熱のうち少なくとも一方を照射するので、このようにエージング工程前に形成された遮光膜が存在する額縁領域にある光硬化性接着剤の部分と遮光膜が存在しない画像表示領域にある光硬化性接着剤の部分との間で、エージングの程度に差が殆ど又は全く出ないように出来る。
本発明の第3の電気光学装置の製造方法は上記課題を解決するために、基板と、表示光による画像表示が行われる画像表示領域及び該画像表示領域の縁を規定する額縁領域の両方で光硬化性接着剤により前記基板に接着された板状部材と、前記額縁領域において前記表示光を遮光する遮光膜とを備えた電気光学装置の製造方法であって、前記板状部材を光硬化前の光硬化性接着剤により前記基板に接着する接着工程と、前記基板及び前記板状部材のうち少なくとも一方を介して光を前記光硬化前の光硬化性接着剤に照射することにより前記光硬化性接着剤を硬化させる硬化工程と、該硬化後の光硬化性接着剤に所定量の光及び熱のうち少なくとも一方を前記基板及び前記板状部材のうち少なくとも一方を介して照射することにより前記硬化後の光硬化性接着剤に対するエージング処理を行うエージング工程と、該エージング工程の前に前記遮光膜を基板上に設ける工程とを備えており、前記エージング工程では、前記板状部材の前記遮光膜の形成されていない側から前記所定量の光及び熱のうち少なくとも一方を照射する。
本発明の第3の電気光学装置の製造方法によれば、先ず接着工程により、板状部材が光硬化前の光硬化性接着剤により、カバーガラス等の基板に接着される。次に、硬化工程により、光が基板及び板状部材のうち少なくとも一方を介して光硬化前の光硬化性接着剤に照射される。これにより、光硬化性接着剤が硬化する。次に、所定量の光及び熱のうち少なくとも一方が、基板及び板状部材のうち少なくとも一方を介して、硬化後の光硬化性接着剤に照射される。これにより、硬化後の光硬化性接着剤に対するエージング処理が行われる。そして、エージング工程の前に、遮光膜が基板上に設けられる。従って、例えば一方の基板の表面又は裏面若しくは他方の基板の表面又は裏面などに形成された遮光膜により、額縁を精度良く且つ確実に規定できる。そして、エージング工程では、板状部材の遮光膜の形成されていない側から、所定量の光及び熱のうち少なくとも一方を照射するので、このようにエージング工程前に形成された遮光膜が存在する額縁領域にある光硬化性接着剤の部分と遮光膜が存在しない画像表示領域にある光硬化性接着剤の部分との間で、エージングの程度に差が殆ど又は全く出ないように出来る。この結果、最終的に画像表示領域と額縁領域との境界付近において局所的に発生する画質の経時劣化を低減し得る。
本発明の第4の電気光学装置の製造方法は上記課題を解決するために、基板と、表示光による画像表示が行われる画像表示領域及び該画像表示領域の縁を規定する額縁領域の両方で光硬化性接着剤により前記基板に接着された板状部材と、前記額縁領域において前記表示光を遮光する遮光手段とを備えた電気光学装置の製造方法であって、前記板状部材を光硬化前の光硬化性接着剤により前記基板に接着する接着工程と、前記基板及び前記板状部材のうち少なくとも一方を介して光を前記光硬化前の光硬化性接着剤に照射することにより前記光硬化性接着剤を硬化させる硬化工程と、該硬化後に、前記光硬化性接着剤に所定量の光及び熱のうち少なくとも一方を前記基板及び前記板状部材のうち少なくとも一方を介して照射する工程と、該照射する工程の後に前記遮光手段を設ける工程とを備える。
本発明の第4の電気光学装置の製造方法によれば、先ず接着工程により、板状部材が光硬化前の光硬化性接着剤により、カバーガラス等の基板に接着される。次に、硬化工程により、光が基板及び板状部材のうち少なくとも一方を介して光硬化前の光硬化性接着剤に照射される。これにより、光硬化性接着剤が硬化する。次にこの硬化後に、所定量の光及び熱のうち少なくとも一方が、基板及び板状部材のうち少なくとも一方を介して、光硬化性接着剤に照射される。そして、この照射の後に遮光手段が設けられる。従って、硬化後における光や熱の照射により、前述した本発明の第1の電気光学装置の製造方法の場合と同様に、エージング処理が行われるので、後に遮光手段により遮光される光硬化性接着剤の部分と遮光膜が後に遮光手段により遮光されない画像表示領域にある光硬化性接着剤の部分との間で、エージングの程度に差が殆ど又は全く出ないように出来る。
本発明の第1から第4のいずれかの電気光学装置の製造方法の一態様では、前記板状部材は、板状部材を含む。
この態様によれば、板状部材が光硬化性接着剤によりカバーガラス等の基板に接着される。従って、板状部材が有する複数のマイクロレンズによって、一方の基板の側から入射した光は、各画素の開口領域に入るように集光される。この結果、画像表示領域と額縁領域との境界付近における画質の経時劣化を抑制しつつ、画素開口率が同じであっても各開口を通過する光の強度を増加させることにより電気光学装置により表示される画像をより明るく出来る。
本発明の第1から第4のいずれかの電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記板状部材は、防塵ガラス板を含む。
この態様によれば、防塵ガラス板が光硬化性接着剤により基板に接着される。従って画像表示領域と額縁領域との境界付近における画質の経時劣化を抑制しつつ、防塵ガラス板によって傷や埃等による画質劣化の防止を図ることができる。
本発明の第1から第4のいずれかの電気光学装置の製造方法では、前記板状部材は、放熱ガラス板を含む。
この態様によれば、放熱ガラス板が、光硬化性接着剤により基板に接着される。従って画像表示領域と額縁領域との境界付近における画質の経時劣化を抑制しつつ、同時に電気光学装置の温度上昇の防止を図ることができる。特に電気光学装置をプロジェクタにおけるライトバルブとして用いる場合、スクリーン上に拡大投射を行うために、電気光学装置には、例えばメタルハライドランプ等の光源からの強力な光源光が集光された状態で入射するが、当該放熱ガラスにより、温度上昇を効果的に抑制可能である。
本発明の第1から第4のいずれかの電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記板状部材は、デフォーカス用ガラス板を含む。
この態様によれば、デフォーカス用ガラス板が、光硬化性接着剤により基板に接着される。従って画像表示領域と額縁領域との境界付近における画質の経時劣化を抑制しつつ、同時に埃や塵による画像表示をデフォーカスにより目立た無くすることができる。特に、プロジェクタ用途のように小さな埃や塵が拡大投影される場合に、このようにデフォーカス用ガラス板を用いてデフォーカスすることは非常に有効である。
本発明の第1から第4のいずれかの電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記光硬化性接着剤は紫外線硬化樹脂からなり、前記硬化工程及び前記エージング工程では夫々、紫外線を照射する。
この態様によれば、硬化工程により、紫外線が基板及び板状部材のうち少なくとも一方を介して光硬化前の光硬化性接着剤に照射される。これにより、光硬化性接着剤が硬化する。次に、エージング工程により、紫外線が、硬化後の光硬化性接着剤に照射される。これにより、硬化後の光硬化性接着剤に対するエージング処理が行われる。
本発明の第1の電気光学装置は上記課題を解決するために、基板と、表示光による画像表示が行われる画像表示領域及び該画像表示領域の縁を規定する額縁領域の両方で光硬化性接着剤により前記基板に接着された板状部材と、前記額縁領域において前記表示光を遮光する遮光手段とを備えており、前記光硬化性接着剤に対し、その硬化後に所定量の光及び熱のうち少なくとも一方の照射によるエージング処理が前記遮光手段を設ける以前に施されている。
本発明の第1の電気光学装置によれば、板状部材は、板状部材、防塵ガラス板、放熱ガラス板、デフォーカス用ガラス板等の各種機能を有する板状部材であり、画像表示領域及び額縁領域の両方で光硬化性接着剤により基板(例えば、カバーガラス、対向基板、素子基板等)に接着されている。ここで、光硬化性接着剤に対しては、遮光手段を設ける以前にエージング処理が施されているので、遮光手段により遮光された額縁領域における光硬化性接着剤の部分と遮光手段により遮光されない画像表示領域における光硬化性接着剤の部分との間で、エージングの程度の差に基く変形量の差は殆ど又は全く生じておらず、よって画像表示領域と額縁領域との境界付近における応力集中や基板の変形は、殆ど又は全く起生じていない。この結果、板状部材の持つ各種機能に応じて高品位の画像表示を長期に亘り行える。
本発明の第2の電気光学装置は上記課題を解決するために、一対の基板間に電気光学物質が挟持されてなり、表示光による画像表示が行われる画像表示領域の周囲で該一対の基板を貼り合わせるシール材と、前記画像表示領域及び前記画像表示領域の縁を規定する額縁領域の両方で光硬化性接着剤により前記一対の基板のうち一方の基板に接着された板状部材と、前記額縁領域において前記表示光を遮光する遮光手段とを備えており、前記光硬化性接着剤に対し、その硬化後に所定量の光及び熱のうち少なくとも一方の照射によるエージング処理が前記遮光手段を設ける以前に施されている。
本発明の第2の電気光学装置によれば、板状部材は、板状部材、防塵ガラス板、放熱ガラス板、デフォーカス用ガラス板等の各種機能を有する板状部材であり、画像表示領域及び額縁領域の両方で光硬化性接着剤により一方の基板(例えば、カバーガラス、対向基板、素子基板等)に接着されている。ここで、光硬化性接着剤に対しては、遮光手段を設ける以前にエージング処理が施されているので、遮光手段により遮光された額縁領域における光硬化性接着剤の部分と遮光手段により遮光されない画像表示領域における光硬化性接着剤の部分との間で、エージングの程度の差に基く変形量の差は殆ど又は全く生じておらず、よって画像表示領域と額縁領域との境界付近における応力集中や一方の基板の変形は、殆ど又は全く起生じていない。この結果、板状部材の持つ各種機能に応じて高品位の画像表示を長期に亘り行える。
本発明の第3の電気光学装置は上記課題を解決するために、基板と、表示光による画像表示が行われる画像表示領域及び該画像表示領域の縁を規定する額縁領域の両方で光硬化性接着剤により前記基板に接着された板状部材と、前記額縁領域において前記表示光を遮光する遮光膜とを備えており、前記光硬化性接着剤に対し、前記板状部材の前記遮光膜の形成されていない側からの所定量の光及び熱のうち少なくとも一方の照射によるエージング処理が施されている。
本発明の第3の電気光学装置によれば、板状部材は、板状部材、防塵ガラス板、放熱ガラス板、デフォーカス用ガラス板等の各種機能を有する板状部材であり、画像表示領域及び額縁領域の両方で光硬化性接着剤により基板(例えば、カバーガラス、対向基板、素子基板等)に接着されている。ここで、光硬化性接着剤に対しては、板状部材の遮光膜の形成されていない側からの所定量の光及び熱のうち少なくとも一方の照射によるエージング処理が施されている。このため、遮光手段により遮光された額縁領域における光硬化性接着剤の部分と遮光手段により遮光されない画像表示領域における光硬化性接着剤の部分との間で、エージングの程度の差に基く変形量の差は殆ど又は全く生じておらず、よって画像表示領域と額縁領域との境界付近における応力集中や一方の基板の変形は、殆ど又は全く起生じていない。この結果、板状部材の持つ各種機能に応じて高品位の画像表示を長期に亘り行える。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(電気光学装置の全体構成)
先ず、本発明の各実施形態における電気光学装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここでは、駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
図1は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図であり、図2は、図1のH−H´断面図である。
図1及び図2において、液晶装置は、TFTアレイ基板10と対向基板20が対向配置されており、対向基板20の下側の面には、多数のマイクロレンズが形成されており、対向基板20は板状部材として構成されている。
このようにマイクロレンズが形成された対向基板20の下側の面には接着剤210により、一方の基板の一例としてのカバーガラス200が接着されている。そしてTFTアレイ基板10とカバーガラス200との間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10とカバーガラス200とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、後述の製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。また、シール材52中には、当該液晶装置がプロジェクタ用途のように小型で拡大表示を行う液晶装置であれば、両基板間の距離(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材(スペーサ)が散布されてもよい。或いは、当該液晶装置が液晶ディスプレイや液晶テレビのように大型で等倍表示を行う液晶装置であれば、このようなギャップ材は、液晶層50中に含まれてよい。
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aを規定する遮光性の額縁53が対向基板20側に設けられている。
シール材52が配置されたシール領域の外側の周辺領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられており、走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する2辺に沿って設けられている。更にTFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路104間をつなぐための複数の配線105が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも一個所において、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための上下導通材106が設けられている。
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用TFT30や走査線、データ線、容量線等の配線が形成された後の画素電極上に、ポリイミド系材料からなる配向膜が形成されている。他方、カバーガラス200上(図2において下側の面)には、対向電極の他、各画素毎に非開口領域を規定する一般にブラックマスク又はブラックマトリクスと称される遮光膜23、カラーフィルタ等が形成された最上層部分に、ポリイミド系材料からなる配向膜が形成されている。これらの一対の配向膜は夫々、ポリイミド系材料を塗布し、焼成した後、液晶層50中の液晶を所定方向に配向させると共に液晶に所定のプレチルト角を付与するように配向処理が施されている。尚、遮光膜23は、表示画像におけるコントラストの向上、カラーフィルタを形成した場合の色材の混色防止などの機能を有する。このような遮光膜23を対向基板20の側ではなく、TFTアレイ基板10上に形成してもよい。
また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
図2において、破線で示すように、上述の如き構成を持つ液晶装置の本体は、遮光手段の一例としての、プラスチック等からなる遮光性のケース300内に収容される。ケース300の中央には、画像表示領域10aに対応して窓が設けられており、ケース300の窓を規定する縁部分が額縁領域に対応して設けられている。マイクロレンズアレイが形成された対向基板20とカバーガラス200とは、画像表示領域10a及びその周囲に広がる額縁領域の両方の領域において接着剤210で全面的に接着されている。この接着剤210に対しては、後述のように当該液晶装置の製造プロセスにおいてシール材52により貼り合わされる前にエージング処理が施されている。
(第1実施形態)
次に図1に示した如き全体構成を有する液晶装置の製造プロセスの第1実施形態について図3を参照しながら、接着剤210に対するエージング工程を中心に説明する。
先ず図3の工程(1)に示すように、図示しない額縁53、遮光膜23や更に対向電極、配向膜等が形成される前又は後におけるカバーガラス200に対して、マイクロレンズアレイが形成された対向基板20が光硬化前の光硬化性の接着剤210aにより、接着される。続いて、UV(Ultra-Violet:紫外線)光が対向基板20及びカバーガラス200のうち少なくとも一方を介して、光硬化前の光硬化性の接着剤210aに照射され、硬化後の接着剤210となる。
次に図3の工程(2)に示すように、所定量のUV光が、対向基板20及びカバーガラス200のうち少なくとも一方を介して、硬化後の接着剤210に照射される。これにより、硬化後の接着剤210に対するエージング処理が行われる。
次に図3の工程(3)に示すように、カバーガラス200が接着された対向基板20と、各種の素子や配線等が形成されたTFTアレイ基板10とを、シール材52により貼り合せる。尚この例では、TFTアレイ基板10の外側にも、偏光板や位相差板等の光学板10´が取り付けられている。
次に図3の工程(4)に示すように、工程(3)により完成した液晶装置本体を、ケース300内に収容する。
以上のように工程(2)において、ケース300の縁により遮光される予定の額縁領域300aにおける接着剤210の部分とケース300により遮光されない予定の画像表示領域10aにおける接着剤210の部分とに対して、ケース300が未だ設けられていない状態でUV光を照射することにより、これら2つの部分に対して実質的に相等しくエージング処理を施すようにしている。このため、エージング処理により画像表示領域10aと額縁領域との境界に応力集中が起ることはなく、更に使用時に入射される光L(工程(4)参照)による接着剤210の経時変化は画像表示領域10aにおいても非常に小さくて済む。従って、使用時における接着剤210のエージングの程度の差に基く接着剤210の変形量の差に起因した、画像表示領域10aと額縁領域300aとの境界付近における応力集中や基板の変形は、殆ど又は全く起こらないで済む。そして最終的には、従来例の如くエージングの程度の差に起因して画像表示領域10aと額縁領域300aとの境界付近において局所的に発生する画質の経時劣化を、効率的に低減し得る。
尚、工程(2)において、UV光に代えてまたは加えて、接着剤210に対して熱を照射して、接着剤210に対するエージング処理を行ってもよい。更に、工程(3)で、点線の矢印で示すようにシール材52により両基板を貼り合せた後に、UV光や熱を照射して、接着剤210に対するエージング処理を行ってもよい。いずれの場合にも、当該液晶装置の使用時に入射される光Lによるエージングの影響を低減できる。
本実施形態では特に、両基板をシール材52により貼り合わせる前に、エージング処理を施すようにしているので、エージング処理の際に、額縁領域においてシール材52により自由度を奪われた接着剤210が変形しようとして発生する応力を抑制できる。この結果、接着剤210の経時変形に起因する、額縁領域と画像表示領域10aとの境界付近における一方の基板の局所的な変形を、更に抑制可能となる。
(第2実施形態)
次に図1に示した如き全体構成を有する液晶装置の製造プロセスの第2実施形態について図4を参照しながら、接着剤210に対するエージング工程を中心に説明する。
先ず図4の工程(1)に示すように、少なくとも遮光膜からなる額縁53が形成された後におけるカバーガラス200に対して、マイクロレンズアレイが形成された対向基板20が光硬化前の光硬化性の接着剤210aにより、接着される。続いて、UV光が対向基板20を介して、光硬化前の光硬化性の接着剤210aに照射され、硬化後の接着剤210となる。
次に図4の工程(2)に示すように、所定量のUV光が、対向基板20を介して(即ち、図中上から下に向って)、硬化後の接着剤210に照射される。これにより、硬化後の接着剤210に対するエージング処理が行われる。
次に図4の工程(3)に示すように、カバーガラス200が接着された対向基板20と、各種の素子や配線等が形成されたTFTアレイ基板10とを、シール材52により貼り合せる。
次に図4の工程(4)に示すように、工程(3)により完成した液晶装置本体を、ケース300内に収容する。
以上のように工程(2)において、ケース300の縁により遮光される予定の額縁領域300aにおける接着剤210の部分とケース300により遮光されない予定の画像表示領域10aにおける接着剤210の部分とに対して、ケース300が未だ設けられていない状態で且つ遮光膜からなる額縁53の有無による影響を与えないように、対向基板20の側から、UV光照射することにより、これら2つの部分に対して実質的に相等しくエージング処理を施すようにしている。このため、エージング処理により画像表示領域10aと額縁領域との境界に応力集中が起ることはなくなり、更に使用時に入射される光L(工程(4)参照)による接着剤210の経時変形は基本的に非常に小さくて済む。
更に、第2実施形態の製造方法によれば、工程(4´)に示すように、ケース300の額縁で画像表示領域10aを規定するのではなく、幅広の額縁53´をカバーガラス200上に設けるようにしてもよい。このように幅広の額縁53´が工程(2)の段階で設けられていても、対向基板20の側からUV光を照射するので、上述の場合と同様にエージング処理により画像表示領域10aと額縁領域との境界に応力集中が起ることはなく、更に使用時に入射される光L(工程(4)参照)による接着剤210の経時変形は非常に小さくて済む。
尚、第2実施形態でも、工程(2)において、UV光に代えてまたは加えて、接着剤210に対して熱を照射して、接着剤210に対するエージング処理を行ってもよい。更に、工程(3)で、点線の矢印で示すようにシール材52により両基板を貼り合せた後に、UV光や熱を対向基板20を介して照射して、接着剤210に対するエージング処理を行ってもよい。
(第3実施形態)
次に図1に示した如き全体構成を有する液晶装置の製造プロセスの第3実施形態について図5を参照しながら、接着剤210に対するエージング工程を中心に説明する。
先ず図5の工程(1)及び(2)に示すように、図3に示した第1実施形態の場合と同様に、接着剤210による接着工程、硬化工程及びエージング工程が行われる。
次に図5の工程(3)に示すように、カバーガラス200が接着された対向基板20と、遮光膜からなる額縁153が形成されたTFTアレイ基板10とを、シール材52により貼り合せる。
次に図5の工程(4)に示すように、工程(3)により完成した液晶装置本体を、ケース300内に収容する。
以上のように第1実施形態の場合と同様に、工程(2)において、エージング処理により画像表示領域10aと額縁領域との境界に応力集中が起ることはなく、更に使用時に入射される光L(工程(4)参照)による接着剤210の経時変形は非常に小さくて済む。
加えて第3実施形態の製造方法によれば、工程(4´)に示すように、ケース300の額縁で画像表示領域10aを規定するのではなく、幅広の額縁153´をTFTアレイ基板10に設けるようにしてもよい。このように幅広の額縁153´が工程(2)の段階で設けられていても、TFTアレイ基板10を貼り合せる前であるので、何ら問題なくUV光を照射できる。
尚、第3実施形態でも、工程(2)において、UV光に代えてまたは加えて、接着剤210に対して熱を照射して、接着剤210に対するエージング処理を行ってもよい。
特に工程(3)で、点線の矢印で示すようにシール材52により両基板を貼り合せた後に、UV光や熱を対向基板20を介して照射して、接着剤210に対するエージング処理を行ってもよい(即ち、この場合には、硬化工程では両側からUV光を照射し、エージング工程では片側からUV光を照射してもよい)。
(電気光学装置の画素部)
本発明による電気光学装置の画素部について、図6から図8を参照して説明する。図6は、電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。図7は、データ線、走査線、画素電極、遮光膜等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群並びに対向基板に形成された遮光膜及びマイクロレンズの平面図である。図8は、対向基板に形成されたマイクロレンズにより入射光が集光される様子を擬似断面にて示す模式図である。尚、図8においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてあり、更に、集光の様子を理解し易く描くために、マイクロレンズ及びTFTの配置関係を、実際の配置関係とは異ならしめてある。即ち、実際には、図7に示すように、マイクロレンズは、そのレンズ中心が各画素中心に一致するように配置されており、TFTは、遮光領域の交点にほぼ対応するように配置されている。
図6において、本実施の形態による電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素は、画素電極9aを制御するためのTFT30がマトリクス状に複数形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしても良い。また、TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。画素電極9aを介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ノーマリーホワイトモードであれば、印加された電圧に応じて入射光がこの液晶部分を通過不可能とされ、ノーマリーブラックモードであれば、印加された電圧に応じて入射光がこの液晶部分を通過可能とされ、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコントラストを持つ光が出射する。ここで、保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70を付加する。
図7において、電気光学装置のTFTアレイ基板上には、マトリクス状に複数の透明な画素電極9a(点線により輪郭が示されている)が設けられており、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6a、走査線3a及び容量線3bが設けられている。また、これらの配線の各交点にほぼ対応してTFT30が設けられている。図中、1点鎖線で示されており上下方向に伸びる各データ線6aは、コンタクトホール5を介してポリシリコン膜等からなる半導体層1aのうちTFT30のソース領域に電気的接続されている。画素電極9aは、コンタクトホール8を介して半導体層1aのうちTFT30のドレイン領域に電気的接続されている。また、図中左右方向に伸びる各走査線3aは、半導体層1aのうちチャネル領域1a´(図中右下りの斜線の領域)に対向するように配置されており、走査線3aはTFT30のゲート電極として機能する。
容量線3bは、走査線3aに沿ってほぼ直線状に伸びる本線部と、データ線6aと交差する箇所からデータ線6aに沿って図中上向きに突出した突出部とを有する。そして、半導体層1aは、TFT30から容量線3bに沿って蓄積容量電極1fとして延設されており、この蓄積容量電極1fと容量線3bとが誘電体としての絶縁膜(ゲート絶縁膜)を介して対向配置されることにより、蓄積容量が形成されている。
図中、1点鎖線で示されており走査線3a及び容量線3bに沿って左右方向に伸びる領域には、複数の縞状部分からなる第1遮光膜11aが設けられている。これにより、半導体層1aのチャネル領域1a´を含むTFT30をTFTアレイ基板側から夫々覆うように構成されている。このようにTFTの下側にも遮光膜を設ければ、TFTアレイ基板10の側からの裏面反射(戻り光)や複数の液晶装置をプリズム等を介して組み合わせて一つの光学系を構成する場合に、他の液晶装置からプリズム等を突き抜けて来る投射光部分等が当該液晶装置のTFTに入射するのを未然に防ぐことができる。
図7には更に、対向基板に、各画素電極11aに夫々対向して形成される複数のマイクロレンズのマイクロレンズ端500aと、対向基板上において複数のマイクロレンズ端500aに夫々対向配置された網目状の遮光膜23(図中、右上がりの斜線領域)とが示されている。
図8に示すように、TFTアレイ基板10と対向基板20(カバーガラス200)とは対向配置され、両基板間に液晶層50が挟持される。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板からなり、対向基板20は、例えばガラス基板や石英基板からなる。
図8の模式図の上半分の断面図部分に示すように、電気光学装置の対向基板20には、対向基板20の側から入射される入射光を複数の画素電極9aに夫々集光するマトリクス状に配置された複数のマイクロレンズ500と、複数のマイクロレンズ500の相互の境界に夫々対向する位置に形成された第2遮光膜23とを備える。マイクロレンズ500の表面全体には、接着剤210によりカバーガラス200が貼り付けられており、この上に(図中下側に)更に第2遮光膜23及び対向電極21が形成されている。マイクロレンズ500は、後述のように、感光性樹脂からなり、接着剤210は、空気に近い屈折率を有するアクリル系の接着剤からなり、両者間の屈折率の違いにより、マイクロレンズ500は、集光レンズとしての機能を果たす。
図8の模式図の下半分の断面図部分において、TFTアレイ基板10には、画素電極9aが設けられており、その上側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜16が設けられている。画素電極9aは例えば、ITO膜(インジウム・ティン・オキサイド膜)などの透明導電性薄膜からなる。また配向膜16は例えば、ポリイミド薄膜などの有機薄膜からなる。
他方、図8の模式図の上半分の断面図部分に示すように、カバーガラス200上には、その全面に渡って対向電極(共通電極)21が設けられており、その下側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜22が設けられている。対向電極21は例えば、ITO膜などの透明導電性薄膜からなる。また配向膜22は、ポリイミド薄膜などの有機薄膜からなる。
以上のように構成されているため、本実施の形態の電気光学装置によれば、対向基板20とカバーガラス200との間に備えられた複数のマイクロレンズ500により、対向基板20側からの入射光は、複数の画素電極9a上に夫々集光される。従って、マイクロレンズ500が無い場合と比較して、各画素における実効開口率が高められている。
そして、マイクロレンズ500により、対向基板20側からの入射光は画素電極9a上の集光領域500bに夫々集光されるので(図7参照)、入射光の利用効率は高められると同時に、第2遮光膜23の存在により、対向基板20における機械的強度及び熱遮断性能は夫々、第2遮光膜23が無かった場合と比較して顕著に高められる。
(マイクロレンズの製造方法)
次に、本実施の形態に用いられるマイクロレンズ500の製造方法について、図9乃至図11を参照して3つの製造方法について説明する。
先ず最初の製造方法について、図9を用いて説明する。図9(a)に示すように、基板20上に、感光性を有するとともに、熱変形性を有するレジスト層711を形成する。次に、図9(b)に示すように、基板20上のうち、エッチングすべき領域をポジ像として有するマスク層610をレジスト層711に重なるように位置合わせにし、マスク層610を介して紫外線を照射してレジスト層711の露光を行う。次に、図9(c)に示すように、露光後のマスク層610を現像して露光された部分を除去する。その結果、マイクロレンズが形成される部分にレジスト層711が残り、図9(c)に示す状態で、加熱工程を行う。その結果、レジスト層711は軟化し、図9(d)に示すように、レジスト層711の角の部分が丸められる。次に図9(e)に示すように、レジスト層711が凸面としてマトリクス状に配列した面からドライエッチングを行い、基板20の表面にマイクロレンズ500が形成されることになる。次に図9(f)に示すように、マイクロレンズ500の表面に光硬化性の接着剤210を塗布してネオセラム等からなるカバーガラス200を押し付けて接着する。
最後に図9(g)に示すように、第2遮光膜23、対向電極21及び配向膜22をスパッタリング、コーティング等によりこの順に成膜して、図8に示した如きマイクロレンズ500及び第2遮光膜23を備えた対向基板20を完成させる。
次に、別のマイクロレンズの製造方法に関して図10を用いて説明する。
図10(a)に示すように、成形型となるガラス基板1の表面にマスク層611を形成する。次に図10(b)に示すように、マスク層611に所定の平面配列で開口部611aをフォトリソグラフィ法のパターニング処理により形成する。次に図10(c)に示すように、マスク層611で被覆した面をフッ酸系のエッチャントに入れてウェットエッチングを行う。次に図10(d)に示すように、マスク層611を除去し、凹部3が形成された面を再度ウェットエッチングし、次にガラス基板1の表面にフッ酸系またはシリコン系材料からなる離型剤層4を形成する。次に図10(e)に示すように、離型剤層4を形成した表面に光硬化性あるいは熱硬化性の高屈折率樹脂材料5を塗布し、さらに、図11(f)に示すように、基板20を高屈折率樹脂材料5の上から押しつけ、高屈折率樹脂材料5を展開せしめる。高屈折率樹脂材料5の上に基板20を重ねた状態で、紫外線を照射するか加熱することで高屈折率樹脂材料5を硬化せしめ、図10(g)に示すように、基板6と高屈折率樹脂材料5からなる凸状のマイクロレンズ500をガラス基板1から剥離する。次に、図10(h)に示すように、凸状のマイクロレンズ500の上に光硬化性の低屈折率樹脂材料からなる接着剤210を塗布する。次に、カバーガラス200をマイクロレンズ500上の接着剤210上から押し付けて硬化させる。
次にさらに別のマイクロレンズの製造方法について図11を用いて説明する。上述の2つのマイクロレンズの製造方法は、凸型のレンズを形成しているが、図11に示すマイクロレンズは、凹型のレンズの形成方法を示すものである。
先ず図11(a)に示すように、ネオセラム等からなる基板20上に、マスク層612を形成する。次に図11(b)に示すように、マスク層612に所定の平面配列で開口部612aをフォトリソグラフィ法のパターニング処理により形成する。この時、開口部612aの開口径は実際に形成しようとする凹曲面部の径よりも小さいことが望ましい。次に図11(c)に示すように、マスク層612の開口部612aから対向基板20の表面を等方的にエッチング処理し、凹曲面部600を形成する。このエッッチング処理は、フッ酸を主体とするエッチング液を用いた湿式エッチングで行う。次に、図11(d)に示すようにマスク層612をエッチング処理によって除去する。
次に図11(e)に示すように、マイクロレンズ500の表面に熱硬化性の接着剤210を塗布してネオセラム等からなるカバーガラス200gを押し付けて硬化させる。
次に図11(f)に示すように、カバーガラス200gを研磨して、図8に示した如き、所定の厚みを有するカバーガラス200とする。
最後に図11(g)に示すように、第2遮光膜23、対向電極21及び配向膜22をスパッタリング、コーティング等によりこの順に成膜して、図8に示した如きマイクロレンズ500及び第2遮光膜23を備えた対向基板20を完成させる。
上記のマイクロレンズの製造方法で形成されたマイクロレンズの接着剤に対しても上述の実施形態1乃至実施形態3に記載のエージング処理を行えば、接着剤210の経時変形を小さく抑えることができる。
(電気光学装置の変形形態)
次に、上述した電気光学装置の変形形態について図12及び図13を参照して説明する。
第1に、図8に示したマイクロレンズ500については、図12に示すように構成されてもよい。即ち、予め各レンズの凸面が形成された透明板(マイクロレンズアレイ)を対向基板20の表面(図中、上面)に貼り付けてマイクロレンズ500´付きの対向基板20を構成するようにしてもよい。この場合、光硬化性の接着剤210´で、カバーガラス200´でマイクロレンズアレイを覆うようにする。このような構成において、接着剤210´に対して上述の各実施例と同様にエージング処理を施せば、接着剤210´の経時変形が小さくなるため同様の効果が期待できる。更に、対向基板20の液晶層50に対面する側の面上に、このようなマイクロレンズアレイを貼り付けてもよい。
第2に、図8に示したマイクロレンズ500に代えて、板状部材の他の例として図13に示すように防塵ガラス202を光硬化性の接着剤212により対向基板20の表面(図中、上面)に接着してもよい。或いは、放熱ガラス、デフォーカス用ガラス板等を光硬化性の接着剤212により対向基板20の表面に接着してもよい。いずれの構成においても、接着剤212に対して上述の各実施例と同様にエージング処理を施せば、接着剤212の経時変形が小さくなるため同様の効果が期待できる。
ここで図14を参照して、本発明の実施形態に従ってエージング処理を行う場合と、エージング処理を行わない場合とにおける画像表示領域と額縁領域との境界における画像不良の発生についてより具体的に検証を加える。
先ず比較例として、本実施形態のようにエージング処理を施さない場合には、UV光照射による加速試験により、約200時間で視認可能な画像不良(コントラストの不連続)が、画像表示領域と額縁領域との境界に発生する。これは、図14に示すように、遮光性のケース300に覆われた接着剤210の部分では、加速試験における紫外線(実際の使用の際には、例えばメタルハライドランプ等の光源光)による変形が小さいのに対し、ケース300の窓内に位置しており画像表示領域10aにおいて紫外線が入射する接着剤210の部分では、この紫外線による変形が大きいために、これら2つの部分の境界に構造的応力集中が起き、この結果、この境界付近で対向基板或いはカバーガラスの変形が発生するためと考察される。
これに対し本実施形態では、遮光性のケース300に覆われた接着剤210の部分でも、既にUV光照射により飽和状態近くまで変形を終えている。このため、加速試験におけるUV光による変形が殆どなく、ケース300の窓内に位置しており画像表示領域10aにおいて紫外線が入射する接着剤210の部分でもやはり、この紫外線による変形が殆どないために、これら2つの部分の境界に構造的応力集中が殆ど起きない。この結果、この境界付近で、対向基板やカバーガラスの変形の発生による画像不良が発生しないで済む。即ち、長期の使用による経時劣化が殆ど進行しないのである。例えば、エージング工程におけるUV光の照射を2000J(ジュール)のエネルギで行うと、上述の比較例と比較して20倍程度に寿命が延び(即ち、境界におけるコントラスト異常の発生が起らない期間が20倍程度に延び)、200Jのエネルギで行うと、上述の比較例と比較して10倍程度に寿命が延び、100Jのエネルギで行うと、上述の比較例と比較して7倍程度に寿命が延びる。
このように、本実施形態によれば、プロジェクタ用途のライトバルブやそのうち特にB(青色)用のライトバルブのように強力な投射光が透過する電気光学装置の場合に、板状部材等を接着する接着剤が当該投射光により経時劣化して悪影響を及ぼす事態を抑制可能となるので大変有利である。また、接着剤210の層厚は良好な接着が行える限度において薄ければ薄い程、経時変形が小さくて済むので有利である。
尚、本願発明を、TFTアクティブマトリクス駆動方式以外の、TFDアクティブマトリクス方式、パッシブマトリクス駆動方式などいずれの方式の液晶装置に適用しても、上述の実施形態の如くエージング処理を施すことにより、同様の効果を期待できる。
さらに、上述の実施形態では、電気光学装置毎にマイクロレンズ500等を有する基板20と接着剤210を介してカバーガラス200に貼り合わせる構成について説明したが、カバーガラス200が接着された対向基板20を複数個まとめて形成してもよい。即ち、図15に示すように、複数の電気光学装置用のマイクロレンズを有する大型基板(マザー基板)20´と大型カバーガラス200´とを接着剤210aで貼り合わせて押し付ける。次に、UV光が大型基板20´及び大型カバーガラス200´のうち少なくとも一方を介して、光硬化前の光硬化性の接着剤210aに照射され、硬化後の接着剤210となる。次に、所定量のUV光が大型基板20´及び大型カバーガラス200´のうち少なくとも一方を介して、硬化後の接着剤210に照射される。これにより、硬化後の接着剤210に対するエージング処理が行われる。その後、ダイシングライン80に沿ってダイシングすることにより、個々の電気光学装置用にカバーガラス200が接着された対向基板20が得られる。その後、カバーガラス200が接着された対向基板20と各種の素子や配線等が形成されたTFTアレイ基板10とを、シール材52により貼り合わせる。このような製造方法を用いることにより、カバーガラス200が接着された対向基板20を複数個まとめてエージング処理することができるため、工程時間及び工程数を短縮することができる。
以上説明した実施形態における液晶装置では、対向基板20の外面及びTFTアレイ基板10の外面には各々、例えば、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertically Aligned)モード、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード等の動作モードや、ノーマリーホワイトモード/ノーマリーブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板などが所定の方向で配置される。また、対向基板20上に、何層もの屈折率の相違する干渉層を堆積することで、光の干渉を利用して、RGB色を作り出すダイクロイックフィルタを形成してもよい。このダイクロイックフィルタ付き対向基板によれば、より明るいカラー液晶装置が実現できる。
本発明は、上述した各実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴なう液晶装置或いはその製造方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
(発明の効果)
以上詳細に説明したように本発明の電気光学装置の製造方法によれば、カバーガラス、対向基板、素子基板等の基板に、板状部材等の各種板状部材を接着することができ、特に画像表示領域の額縁領域付近に発生する画質の経時劣化を低減し得る。これにより、長期に亘り高品位の画像表示が可能な電気光学装置を実現できる。