JP2856822B2 - 可変速揚水発電システムの電流制御装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［発明の目的］ （産業上の利用分野） 本発明は周波数変換器で発電電動機の回転子巻線側よ
り励磁し、電力系統と電力の授受を行なう可変速揚水発
電システムの電流制御装置に関する。

（従来の技術） 第４図に可変速揚水発電システムの構成図を示す。第
４図において、発電電動機（以後GMと称す）２は交流電
源１に接続され、その回転子巻線側（以後２次側と称
す）は３相の周波数変換器４に接続されている。一方、
交流電源３は３相の周波数変換器４によってすべりに相
当する周波数の電圧に変換され、その電圧によってGM2
の２次側を励磁する。

GMの２次電流（GMの２次側を流れる電流を意味する）
は、電流検出器５で検出されて３相の電流信号を出力す
る。３相２相座標変換器６はこの３相の電流信号を入力
し、２相の電流信号を出力する。電流基準発生器７は、
これらの基準となる電流基準信号を発生して電流制御器
８に出力する。電流制御器８は３相２相座標変換器６か
らの２相の電流信号と電流基準発生器７からの電流基準
信号を入力し、対応する各々の偏差が零になるような２
相の電圧基準信号を出力する。この２相の電圧基準信号
を２相３相座標変換器９にて３相の電圧基準信号に変換
し、位相制御器10はこの電圧基準信号に応じて各相の周
波数変換器の位相を制御し、GMから交流電源への電力や
GMの回転速度を制御する。

３相２相座標変換器と２相３相座標変換器にて信号の
変換に用いるすべり位相基準信号θは、第１の位相検出
器11で検出された交流電源の位相に対応する第１の位相
基準信号と、第２の位相検出器12で検出されたGMの回転
速度に相当する位相に対応する第２の位相基準信号を、
差分器13で差分したすべりの位相に相当する。

次に、３相２相座標変換器６の変換方法について説明
する。この変換器に入力される３相電流信号をそれぞれ
i_U，i_V，i_Wとし、説明を容易にするために変換を２つの
ステップに分ける。そして、第１のステップ後の２相電
流信号をi_a，i_bとし、第２のステップ後の２相電流信号
をi_d，i_fとする。まず第１のステップでi_Uと同相の成分
の電流i_aと、この電流より90°遅れた成分の電流i_bを
（１）式の座標交換式を用いて求める。

ここでi_a，i_bは定常運転時すべりの周波数で変化する
交流である。次に第２のステップで第１の位相検出器11
で検出された交流電源の位相にすべり位相基準信号θを
用い、位相基準信号θが零の成分の電流i_fと、これより
90°遅れた成分の電流i_dを（２）式を用いて求める。

ここでi_d，i_fは定常運転時直流である。２相３相座標
変換器９は（１），（２）式で用いた変換行列の逆行列
を用いて、２相から３相の電圧基準信号に変換する。

第５図は外部からの３相２相切換信号にて１相の周波
数変換器を停止し、他の２相の周波数変換器で直流励磁
する場合の可変速揚水発電システム図である。これは、
事故や保守点検などで１相の周波数変換器を停止する必
要が生じた場合に、３相２相切換信号を発生し、この信
号により１相の周波数変換器を停止して他の２相の周波
数変換器で直流励磁し、可変速揚水発電システムを停止
せず継続運転する必要があるからである。

第５図において第４図と同一部分については同一符号
を付して説明を省略する。14は３相単相切換器である。
交流電源１に接続されたGM2は交流電源３の周波数を周
波数変換器４ですべりに相当する交流に変換し、GMを交
流励磁する構成である。ここで交流電源３は交流電源１
に置換できる。GMの２次電流は電流検出器５で検出し、
検出された電流信号を用いて第４図と同様の電流制御系
を構成し、位相制御器10は入力された電圧基準信号に応
じて周波数変換器４の位相を制御する。

今、事故や保守点検のために１相の周波数変換器を停
止する場合を考える。

３相単相切換器14で切換信号を発生し、この切換信号
を位相制御器10が受け、１相の周波数変換器例えば41は
点弧を行なうゲート信号をブロックされる。そして、他
の２相の周波数変換器42,43にゲート信号が出力され
る。そして、この２相の周波数変換器でGMを直流励磁す
る。この直流電流によりGMの１次側に電圧を誘起する。
この誘導起電力と系統電圧の位相差（同期機の場合トル
ク角とも呼ばれる）により系統とGM間で電力の授受を行
なう。

（発明が解決しようとする課題） 従来の可変速揚水発電システムは、上記したように１
相の周波数変換器を停止し、残りの２相の周波数変換器
で継続運転する場合、３相２相座標変換器および２相３
相座標変換器ですべりに相当する位相基準信号を用い
て、電流および電圧信号を３相から２相または２相から
３相に変換する。しかし、３相の周波数変換器で運転し
ていた時２相の電流および電圧基準信号は直流である
が、２相の周波数変換器で運転する時はすべりの周波数
を持つ交流となり、３相から２相の周波数変換器で継続
運転する場合、電流制御系では直流制御できないという
問題があった。

本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、３相
の周波数変換器での交流励磁から２相の周波数変換器に
よる直流励磁へ継続運転することの可能な可変速揚水発
電システムの電流制御装置を提供することを目的として
いる。

［発明の構成］ （課題を解決するための手段） 上記目的を達成するため、本発明は電力系統に接続さ
れた発電電動機の回転子巻線を３相の周波数変換器で誘
導機のすべりに相当する交流にて励磁を行ない、任意の
回転速度で運転する可変速揚水発電システムにおいて、
発電電動機の回転子巻線側の電流を検出する電流検出器
と、電力系統の位相と発電電動機の位相とを検出し、そ
の差で与えられるすべりに相当する第１の位相基準信号
を出力する第１の位相基準発生器と、この第１の位相基
準発生器からの第１の位相基準信号に基づき、前記電流
検出器からの電流信号を入力し、３相を２相の電流信号
に変換する３相２相座標変換器と、この３相２相座標変
換器から出力された２相電流および外部から与えられる
電流基準信号を入力し、それらの偏差が零になるような
２相の電圧基準信号を発生する電流制御器と、前記第１
の位相基準発生器からの第１の位相基準信号に基づき、
前記電流制御器から出力された２相の電圧基準信号を３
相の電圧基準信号に変換する２相３相座標変換器と、前
記３相の電圧基準信号に応じて３相の周波数変換器の位
相を制御する位相制御器と、固定した値の第２の位相基
準信号を発生する第２の位相基準発生器と、外部より与
えられる３相単相切換信号により前記第１の位相基準発
生器からの第１の位相基準信号に代えて前記第２の位相
基準発生器からの第２の位相基準信号を前記３相２相座
標変換器および２相３相座標変換器に切換え出力する切
換器とを備えた。

（作用） 電流検出器は、回転子巻線を流れる電流を検出して、
３相の電流信号を出力する。この３相の電流信号を３相
２相座標変換器に入力し、２相の電流信号を出力する。
電流制御器が外部から与えられる電流の基準となる電流
基準信号と３相２相座標変換器からの２相の電流信号を
入力し、その偏差が零になるような２相の電流基準信号
を出力する。２相３相座標変換器は２相の電圧基準信号
を３相の電圧基準信号に変換する。この電圧基準信号に
応じて３相の周波数変換器を制御する。

事故や保守点検等のため１相の周波数変換器を停止
し、他の２相の周波数変換器で直流励磁する場合には、
外部より３相単相切換信号を発生する。そして、この信
号により座標変換器で用いる位相基準信号を切換える。

まず第１の位相基準信号発生器は交流電源の位相と発
電電動機の位相の差のすべりに相当する第１の位相基準
信号を発生する。次に第２の位相基準発生器は固定した
値の第２の位相基準信号を発生する。

そして切換器で、３相の周波数変換器で交流励磁する
場合には第１の位相基準信号に切換え、２相の周波数変
換器で直流励磁する場合には第２の位相基準信号に切換
え、３相２相座標変換器および２相３相座標変換器の信
号の変換による位相基準信号を用いる。交流励磁の場合
すべりの周波数で変化する第１の位相基準信号により座
標変換後の２相の信号は直流の信号となり、直流励磁の
場合は第２の位相基準信号により座標交換後の２相の信
号は同じく直流信号となり、電流制御器の構成を変更す
ることなく、交流励磁から直流励磁の制御ができる。

（実施例） 以下図面を参照して実施例を説明する。

第１図は本発明による可変速揚水発電システムの電流
制御装置を説明するための一実施例の構成図である。

第１図において第４図および第５図と同一部分につい
ては同一符号を付して説明を省略する。15は位相基準発
生器であり、固定した位相基準信号を発生する。以後差
分器13を第１の位相基準発生器,15を第２の位相基準発
生器と称す。16は切換器で３相単相切換器14の切換信号
により位相基準信号を切換えるよう構成されている。そ
の他の構成は第４図と同様である。

そして、電力の制御系全体としては従来と同じであ
る。即ち、可変速揚水発電システムはGM2の２次側より
周波数変換器４にて励磁され、GMの２次電流を検出して
電流制御器８で電流制御するような電流制御系を構成
し、位相制御器10で周波数変換器４の位相を制御し、交
流電源１への電力を制御する。そして、事故や保守点検
等で１相の周波数変換器を停止し、２相の周波数変換器
で直流励磁する場合、３相単相切換器14にて３相単相切
換信号を発生する。この信号を受けた位相制御器10は１
相の周波数変換器のゲートをブロックし、他の２相の周
波数変換器のゲートをデブロックする。その結果、この
２相の周波数変換器で直流励磁運転する。

交流電源１の位相は第１の位相検出器11で検出され、
GMの位相は第２の位相検出器12で検出され、第１および
第２の位相検出信号は差分器で構成される第１の位相基
準発生器13で、それらの差のすべりに相当する第１の位
相基準信号を発生する。第２の位相基準発生器15は固定
した第２の位相基準信号を発生する。切換器16は３相単
相切換器14からの３相単相切換信号により位相基準信号
を切換える。３相の周波数変換器で交流励磁する場合に
は第１の位相基準信号に切換え、２相の周波数交換器で
直流励磁する場合には第２の位相基準信号に切換える。

この切換器から出力された位相基準信号θを用いて、
３相２相座標変換器６および２相３相座標変換器９でそ
れぞれ３相信号から２相信号、および２相から３相信号
に変換することになり、電流制御器８の構成を変更する
ことなく３相の周波数変換器による交流励磁から、２相
の周波数変換器による直流励磁の運転が可能となる。

第２図は本発明の他の実施例である。第２図において
第１図と同一部分については同一符号を付して説明を省
略する。

本実施例では電流制御器は２相の電流信号のうちの一
方の信号の電流制御により直流制御しようとするもので
ある。

即ち、３相２相切換器14′は３相単相切換信号を位相
制御器10および切換器16に出力すると共に、停止する周
波数変換器の相を示す信号を第２の位相基準発生器15に
出力する。これを受けた第２の位相基準発生器15は、停
止する周波数変換器の相により位相基準信号の値を決め
る。このことは、この位相基準信号を用いて３相２相座
標変換器６で変換する２相の電流信号の一方が零になる
ようにする。

第３図は本発明の更に他の実施例である。

第３図において第１図と同一部分については同一符合
を付して説明を省略する。

本実施例では電流基準発生器の出力側に２相２相座標
変換器17を設けたものである。GMの２次電流は電流検出
器５で検出され、３相２相変換器６で（１）式によって
２相の電流信号に変換する。ここではすべりに相当する
位相基準信号は使わない。電流基準信号発生器７で発生
する電流基準信号は、２相２相座標変換器17で（２）式
により変換し、電流制御器８に出力する。電流制御器８
は電流基準信号と電流信号の偏差が零になるような２相
の電圧基準信号を出力する。２相３相座標変換器９は２
相の電圧基準信号を（１），（２）式で用いた行列の逆
行列により３相の電圧基準信号に変換し、位相制御器10
はこの信号に応じて周波数変換器の位相を制御する。

以下に第１図と第３図の実施例の相違点を説明する。

第１図の実施例では３相から２相の周波数変換器でGM
を交流から直流励磁へ変更しても、２相３相座標変換器
９から出力される電流信号は常に直流信号となる。一
方、第３図の実施例では３相から２相の周波数変換器で
GMを交流から直流励磁へ変更しても、２相３相座標変換
器９から出力される電流信号は交流励磁の場合すべりに
相当する周波数の交流となり、直流励磁の場合直流とな
る。また２相２相座標変換器17から出力される電流基準
信号は交流から直流に変わる。第３図の実施例は第１図
の実施例の３相２相座標変換器６を２つに分割し、３相
２相変換器６と２相２相座標変換器17を設けたシステム
と考えられる。

［発明の効果］ 以上説明したように、本発明によれば３相の周波数変
換器の１相を停止して２相の周波数変換器として継続運
転するような場合に、すべりに相当する位相基準信号か
ら固定の位相基準信号に変更するよう構成したので、電
流および電圧信号の座標変換をすることで制御系を変更
せずに直流励磁へ継続運転することが可能となる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明による可変速揚水発電システムの電流制
御装置を説明する一実施例の構成図、第２図は本発明の
他の実施例で２相３相座標変換器の出力の一方が零とな
るような構成図、第３図は本発明の他の実施例で電流基
準信号を位相基準信号で変換するような構成図、第４図
は可変速揚水発電システムの構成図、第５図は外部から
の３相単相切換信号で１相の周波数変換器を停止し、他
の２相の周波数変換器で直流励磁するような可変速揚水
発電システムの構成図である。 1,3…交流電源、２…発電電動機 ４…周波数変換器、５…電流検出器 ６…３相２相座標変換器 ７…電流基準発生器、８…電流制御器 ９…２相３相座標変換器 10…位相制御器、11,12…位相検出器 13…差分器、第１の位相基準発生器 14,14′…３相単相切換器 15…第２の位相基準発生器 16…切換器 17…２相２相座標変換器

フロントページの続き (72)発明者 平野 勝 東京都府中市東芝町１ 株式会社東芝府 中工場内 (56)参考文献 特開 平１−274698（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−23097（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) H02P 9/00 - 9/48

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】電力系統に接続された発電電動機の回転子
   巻線を３相の周波数変換器で誘導機のすべりに相当する
   交流にて励磁を行ない、任意の回転速度で運転する可変
   速揚水発電システムにおいて、発電電動機の回転子巻線
   側の電流を検出する電流検出器と、電力系統の位相と発
   電電動機の位相とを検出し、その差で与えられるすべり
   に相当する第１の位相基準信号を出力する第１の位相基
   準発生器と、この第１の位相基準発生器からの第１の位
   相基準信号に基づき、前記電流検出器からの電流信号を
   入力し、３相を２相の電流信号に変換する３相２相座標
   変換器と、この３相２相座標変換器から出力された２相
   電流および外部から与えられる電流基準信号を入力し、
   それらの偏差が零になるような２相の電圧基準信号を発
   生する電流制御器と、前記第１の位相基準発生器からの
   第１の位相基準信号に基づき、前記電流制御器から出力
   された２相の電圧基準信号を３相の電圧基準信号に変換
   する２相３相座標変換器と、前記３相の電圧基準信号に
   応じて３相の周波数変換器の位相を制御する位相制御器
   と、固定した値の第２の位相基準信号を発生する第２の
   位相基準発生器と、外部より与えられる３相単相切換信
   号により前記第１の位相基準発生器からの第１の位相基
   準信号に代えて前記第２の位相基準発生器からの第２の
   位相基準信号を前記３相２相座標変換器および２相３相
   座標変換器に切換え出力する切換器とを備えたことを特
   徴とする可変速揚水発電システムの電流制御装置。