JP2852677B2 - イネ移植苗の活着及び分けつを促進する方法 - Google Patents

イネ移植苗の活着及び分けつを促進する方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、水稲栽培において、移植苗の活着及び分け
つを促進する方法に関する。
[従来の技術] 稲作の栽培様式は移植法と直播法に分けられるが、近
年の寒冷地における稲作では移植法が主流となってい
る。移植栽培では苗取り又は田植機での移植の際に根部
切断、根毛消失、地上部損傷等により苗の植え傷みを引
き起こし、これに伴い、水稲苗の生理活動が停滞し、イ
ネ成育の一時的な中断が見られる。そして成育の再開
は、新根が発生し、十分な養分吸収を行なえるようにな
った時から始まる。この現象を活着と言うが、特に不良
環境下では活着までの期間はさらに長いものとなる。例
えば、寒冷地では苗移植時の低温が原因となり、新根の
発生、すなわち活着が著しく遅れている。従って、移植
栽培ではこの成育の中断をいかに短くするかが重要な問
題となる。
さらに、移植後の活着を促進することは早期分けつを
促進し、最終的には米の安定多収を導くことになる。近
年は育苗技術の進展により、移植後の活着を促進する方
法がいくつか開発されているが、その程度の差こそあ
れ、成育中断を完全になくするものではない。
[発明が解決しようとする課題] 従って、本発明の目的は、水稲栽培における移植苗の
活着及び分けつを促進してイネの成育の中断時間を短縮
し、ひいてはイネの安定多収を導くことができる方法を
提供することである。
[課題を解決するための手段] このような状況を改善すべく、鋭意検討を重ねた結
果、アミノ酸発酵原料にアミノ酸発酵用菌を作用させて
できたアミノ酸発酵液を育苗中に散布することによっ
て、移植時の活着及び分けつが促進されることを見出
し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は、水稲栽培において、育苗期間中
に苗にグルコース、ビタミン及び酵母エキスを含むアミ
ノ酸発酵原料をアミノ酸発酵させて得られたアミノ酸発
酵液を投与することを特徴とするイネ移植苗の活着及び
分けつを促進する方法を提供する。
[発明の効果] 本発明により、水稲栽培における移植苗の活着及び分
けつを促進してイネの成育の中断時間を短縮することが
できる、新規な方法が提供された。後述の実施例から明
らかなように、本発明の方法によると、移植苗の新根の
本数、長さ共に無処理の場合に比較して増大し、すなわ
ち、移植苗の活着が促進され、さらに、苗の茎数も無処
理の場合に比べて増加し、すなわち、移植苗の分けつが
促進される。従って、本発明は、水稲栽培におけるイネ
の安定多収化に大いに貢献する。
[発明の具体的説明] 本発明はの方法において用いられるアミノ酸発酵液
は、アミノ酸発酵原料にアミノ酸発酵菌を作用させてア
ミノ酸発酵を行なわしめ、通常、除菌又は殺菌処理した
ものである。
アミノ酸発酵原料としては、グルコース、ビタミン及
び酵母エキスを含むものを用いる。グルコースは植物の
熟した果実中に多く存在し、また、葉、茎、根、花等の
全てに存在する等で、極めて植物との親和性が強く、こ
の親和性の強い糖から培養されたアミノ酸発酵液は植物
の成育に強く作用するものである。アミノ酸発酵原料中
のグルコースの濃度は1重量%ないし50重量%が好まし
く、さらに好ましくは5重量%ないし20重量%である。
また、ビタミンはビオチン及び/又はチアミンが好まし
く、植物細胞の要求性の高い有機微量成分として働く。
アミノ酸発酵原料中のビタミンの濃度は0.01ppmないし1
0ppmwが好ましく、さらに好ましくは0.1ppmないし1ppm
である。さらに、酵母エキスは、ビタミン、ヌクレオチ
ドを含み、植物細胞の増殖促進効果が高い。酵母エキス
のアミノ酸発酵原料中の濃度は0.1重量%ないし50重量
%が好ましく、さらに好ましくは0.5重量%ないし10重
量%である。
アミノ酸発酵に用いられる菌は、コリネバクテリウム
属、バチルス属、ブレビバクテリウム属、フラボバクテ
リウム属、ミクロバクテリウム属細菌のようなアミノ酸
発酵菌であり、具体例(種名)としてコリネバクテリウ
ム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、バ
チルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、ブレビバ
クテリウム・フラバム(Brevibacterim flavum)、フラ
ボバクテリウム・リゲンス(Flavobacterium rigens
e)、ミクロバクテリウム・フラバム(Microbacterium
flavum)を挙げることができる。
アミノ酸発酵は、用いられるアミノ酸発酵菌の種類に
応じて、通常の条件により行なうことかできる。
アミノ酸発酵液は、単独のアミノ酸を含むものであっ
てもよいし、複数のアミノ酸を含むものであってもよ
い。
上記した本発明の効果は、アミノ酸の作用はもちろ
ん、発酵液原料の残留物及びアミノ酸発酵菌代謝産物に
よるところが大きい。
アミノ酸発酵液は、苗の地上部に与えても地下部に与
えてもよく、噴霧や潅注処理等により投与することがで
きる。噴霧、潅注処理する場合、アミノ酸の合計濃度が
好ましくは5〜100ppm、さらに好ましくは10〜50ppmに
なるように水で希釈して用いることが望ましい。また、
投与回数が1回又は2回でも効果はあるが、3回以上投
与すると効果がより一層増大されるので特に好ましい。
また、投与時期は特に制限はないが、好ましくは1週間
以上の間隔を置いて投与する方が良い。また、散布量
は、苗の成育段階によって適宜決められるが葉が一様に
濡れる程度の量を散布することが好ましい。また、投与
の時期は、特に限定されず、移植前でも移植後でもその
両方でもよいが1.5葉期から3.5葉期程度の間に投与する
ことが好ましい。
[実施例] 以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明す
る。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではな
い。
実施例1 下記組成を有する滅菌したアミノ酸発酵原料(pH7.
0)10mlにコリネバクテリウム・グルタミカム(ATCC211
57)を接種し、30℃で120時間振盪培養を行なった。次
いで遠心分離を行ない、上清を採取した。成分 濃度(g/l) グルコース 200.0 ビオチン 0.0001 塩酸チアミン 0.0005 酵母エキス 5.0 塩化アンモニウム 50.0 尿素 10.0 リン酸二水素カリウム 1.0 硫酸マグネシウム七水塩 10.0 炭酸カルシウム 50.0 硫酸第一鉄七水塩 0.01 硫酸マグネシウム五水塩 0.01 硫酸亜鉛七水塩 0.01 得られたアミノ酸発酵液中のアミノ酸組成を調べたと
ころ、プロリン20g/l、アラニン10g/l、バリン6g/l、グ
ルタミン酸4g/lであった。
育苗箱(60cm×30cm×3cm)に種籾(品種:キタヒカ
リ)を160ml/箱播種し、36日間育苗した後、特性ポット
に苗を移植し、移植7日目の最大新根長と新根数及び移
植35日目の茎数を調査した。その間、2葉期、2.5葉
期、3葉期に各種アミノ酸の合計濃度が50ppmになるよ
う調整した発酵液を苗全体に噴霧し、その効果を無処理
のものと比較した。結果を表1に示す。
表1より明らかなように、本発明の方法により噴霧処
理した時に、移植後7日目で最大新根長は無処理に対し
て1.5倍長く、新根数は約1.8倍増加しており、すなわ
ち、本発明方法により苗の活着促進が認められた。一
方、移植後35日目の茎数も約1.5倍増加しており、分け
つの促進が認められた。
実施例2 実施例1と同様にしてアミノ酸発酵液のアミノ酸合計
濃度が水稲苗の活着及び分けつにどう影響するかを試験
した。すなわち、2葉期、2.5葉期、3葉期に実施例1
で調製したアミノ酸発酵液を水に希釈して、アミノ酸の
合計濃度を1ppm、5ppm、10ppm、20ppm、50ppm、100pp
m、200ppmとした液を苗全体に噴霧し、その結果を無処
理と比較した。結果を表2に示す。
表2より明らかなように、アミノ酸の合計濃度が5〜
100ppmで苗の活着及び分けつが特に促進されており、10
〜50ppmで効果がさらに顕著であった。
実施例3 実施例1と同様にして、アミノ酸発酵液の散布回数が
水稲苗の活着及び分けつにどう影響するかを試験した。
すなわち、散布時期を1.5葉期、2葉期、2.5葉期、3葉
期、3.5葉期として散布回数は表3に示すとおり各時期
の組み合わせによって設定した。アミノ酸の合計濃度は
50ppmとしてその結果を無処理の場合と比較した。結果
を表3に示す。
表3から明らかなように、アミノ酸発酵液を1回以上
散布すると、水稲苗の活着及び分けつは促進される。し
かし、3回以上散布した時、1回及び2回の場合よりも
さらに効果の高まることがわかった。また、散布の時期
の違いでは特に効果の差は認められなかった。
フロントページの続き (72)発明者 佐藤 一雄 北海道砂川市日の出一条南11丁目2番1 (56)参考文献 特開 昭58−198226(JP,A) 特開 昭62−230707(JP,A) 特開 昭47−38455(JP,A) 特公 昭57−15073(JP,B2) 特公 昭57−47642(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A01G 1/00 - 1/12

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水稲栽培において、育苗期間中に苗に、グ
    ルコース、ビタミン及び酵母エキスを含むアミノ酸発酵
    原料をアミノ酸発酵させて得られたアミノ酸発酵液を投
    与することを特徴とするイネ移植苗の活着及び分けつを
    促進する方法。
  2. 【請求項2】前記アミノ酸発酵液は、アミノ酸の合計濃
    度が5ppmないし100ppmになる量投与される請求項1記載
    の方法。
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