JP2851748B2 - 電気機器のスロット絶縁構造 - Google Patents

電気機器のスロット絶縁構造

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種回転電気機器の鉄
心溝(スロット)に巻線を収納する際に行なわれる電気
機器のスロット絶縁構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】回転電気機器の巻線は、絶縁電線又は絶
縁の施された導体を用いて巻線体を構成し、この巻線体
を、多層の場合には層間絶縁を施しつつ、鉄心に設けら
れているスロットに順次挿入し、巻線構造を形成する。
電気絶縁は、各部にいかに高度な絶縁が施されていたと
しても、全体の絶縁特性は最弱点部の絶縁耐力によって
決定されてしまうことは周知である。そのため、総合絶
縁特性を改善するには、このような弱点を解消する他は
ない。
【0003】この巻線構造の鉄心は、通常は機器の鉄台
や外箱を介して接地状態で使用される。したがって、巻
線と鉄心との間には、いわゆる対地電位が印加されるこ
とになる。そのため、巻線体にはスロット絶縁を施しつ
つスロットへの挿入を行なう必要がある。この場合のス
ロット絶縁は、従来、図4に示したように、数枚の絶縁
シート2、2…を、鉄心10に設けられたスロット1の
底部及び側壁に接触するようにほぼU字状に折り曲げて
配置しておき、この絶縁シートの内部に(二層の場合
は)二層の巻線体4、5を、順次、その間に層間絶縁8
を施しつつ、挿入し、その後に上記絶縁シート2、2…
の両上方端部3、6を重ね合わせて、スロット絶縁を構
成している。なお絶縁シート2、2…としては、絶縁紙
やフレキシブルマイカ、ガラステープ、ポリエステルフ
ィルムなどが用いられている。
【0004】このような巻線構造にあっては、絶縁材自
体については、材質、寸法、形状、加えて、欠陥の排除
等により、所望特性を得ることができる。しかし、スロ
ット絶縁の漏れ絶縁距離は、図5に破線で示したよう
に、a−b間であり、絶縁シート2、2…の両端部3、
6の合わせ部分のみとなりさほど長くはない。したがっ
て、絶縁材を処理した絶縁ワニスの経年劣化や電気機器
の長期間休止による絶縁シートの吸湿などにより、巻線
体4、5と鉄心10との間での漏れ電流が生ずるように
なり故障の原因となる。殊に電気機器の使用電圧が高い
場合には、大きな事故を誘発する原因となることがあり
望ましくない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上の従来
技術の欠点を解消すると共に、電気機器の漏れ絶縁距離
をできるだけ延長し、吸湿等の不利な条件下において
も、電気的安全性を保持しつつ長寿命化を図るために有
効な電気機器類のスロット絶縁構造を提供することを課
題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするとこ
ろは、電気機器のスロット11の底部から両側壁にかけ
てほぼU字状に配設され、巻線体14の底部及び巻線体
14、15の両側部に接し、その両端部が前記巻線体1
5の上方で重ね合わされる一枚以上の第一の絶縁シート
12、12…と、上記第一の絶縁シート12と巻線体1
4、15又は重なり合う他の第一の絶縁シート12との
間に介在させられる両側部及び前記巻線体15の上方に
位置することとなる底部からなるほぼ逆U字状に配され
る第二の絶縁シート16、16…とを有し、これらの第
一の絶縁シート12、12…及び第二の絶縁シート1
6、16…によって前記巻線体15、14の周囲を包囲
する電気機器のスロット絶縁構造に於いて、 ほぼU字状
に配される上記第一の絶縁シートとほぼ逆U字状に配さ
れる上記第二の絶縁シートとを前記スロット中に交互に
配し、かつ上記第一の絶縁シートの両上端を前記巻線体
を包囲するように交互に折り重ね、更に上記第二の絶縁
シートの両側部を、上記第一の絶縁シートの両側部の最
下部まで包囲するように重ね合わせることとした電気機
器のスロット絶縁構である。
【0007】なお前記第一の絶縁シート12、12…及
び前記第二の絶縁シート16、16…のいずれもを複数
枚使用し、既述のように、相互を交互に配することとす
れば、漏れ絶縁距離を更に延長し得、より好ましいスロ
ット絶縁を構成することができる。
【0008】
【作用】本発明では、以上のように、第一及び第二の絶
縁シート12、16を使用し、両者あいまって巻線体1
4、15と鉄心10との間の、いわゆるスロット絶縁を
形成することとしたものである。したがってこの場合の
漏れ絶縁距離は、従来技術のスロット絶縁に比して大幅
に延長される。絶縁シート12、16の枚数を僅かに増
加させることで容易に漏れ絶縁距離を一層大幅に延長す
ることもできる。それ故絶縁シート12、16それ自体
及び/又は絶縁ワニスの経年劣化や吸湿に対しても、耐
漏洩電流特性が大幅に向上することとなる。
【0009】また、本発明に於いては、第一の絶縁シー
ト12及び第二の絶縁シート16の枚数及び折り込み順
序を変化せしめることができるが、このような構成によ
れば、より確実なスロット絶縁が達成される。
【0010】そのため、スロット絶縁の寿命、したがっ
て機器本体の寿命を延長することができ、完全な絶縁破
壊に至る前の電気機器類の不調や、絶縁破壊に伴う被害
を大幅に減少させることができる。
【0011】
【実施例】以下、図面に示す実施例を説明しつつ本発明
の詳細を開示する。図1は、本発明の電気機器のスロッ
ト絶縁の構成例を示す第一の実施例の縦断面図である。
同図に於いて、鉄心10には、スロット11、11…が
形成されている。各スロット11には、第一の絶縁シー
ト12、12がほぼU字形の状態で配設され、その内部
には、ここでは二層の巻線体14、15が挿入される。
下方の巻線体14を挿入した後、その上に層間絶縁18
を配し、その後、巻線体15を挿入する。上記巻線体1
4、15の上方では、内側の絶縁シート12の両上端を
相互に重ね合わせる。その上方からは、第二の絶縁シー
ト16をほぼ逆U字形の状態で被せる。更に、この第二
の絶縁シート16の外方には第一の絶縁シート12を配
設し、その両上方端部を、巻線体15の上方、即ち、第
二の絶縁シート16のほぼ逆U字形の底部の上側で重ね
合わせる。
【0012】このように形成された巻線体14、15及
びこれらを合わせて包囲する第一の絶縁シート12、1
2及び第二の絶縁シート16等の材質や厚さ及び絶縁階
級等は、電気機器の定格や巻線体14、15への印加電
圧等を勘案して決定する。なお第二の絶縁シート16
は、最下端まで延びているものとする。下部で巻線体1
4の下に折り込むことができれば一層都合が良いが、作
業上、これは困難であろう。従って上記第二の絶縁シー
ト16は、その挿入作業上の都合及び絶縁効果等を考慮
して最下端まで延長しているものとする。
【0013】この第一の実施例では、更に、プレスボー
ドや合成樹脂積層板等の楔(ウエッジ)17を用いて、
この例では二層巻線として形成した巻線体14、15を
スロット11の開口部付近との係合により物理的に固定
する。このようなスロット11や楔17の構造、材質、
寸法等は、一般のそれと同様な配慮により決定されるべ
きである。なお、巻線体14、15が二層に形成されて
いるので、前記のように、層間絶縁18が介在させられ
ている。巻線体が単層巻の場合はより簡潔な構成とな
る。
【0014】図2は、図1に示した第一の実施例に於け
る主要部を取り出して、絶縁シート12、12、16の
関連が理解できるように示したもので、第一の絶縁シー
ト12、12と第二の絶縁シート16とによって形成さ
れる漏れ絶縁距離は、A−B間を結ぶ破線のように、前
記従来例と比較して大幅に延長されることが理解でき
る。
【0015】図3は、三枚の第一の絶縁シート22、2
2、22と、二枚の第二の絶縁シート23、23とを使
用して、漏れ絶縁距離を、更に延長した構成を示すもの
である。この第二の実施例では、三枚の第一の絶縁シー
ト22、22、22を重ね合わせ、ほぼU字形の状態
で、スロット内に挿入し、上記第一の絶縁シート22、
22、22内に、順次、巻線体14、層間絶縁18、巻
線体15を挿入する。その後、先ず最初に最内側の第一
の絶縁シート22の両端部26、26を巻線体15の上
部で重ね合わせる。次いで、その外側にほぼ逆U字形の
状態に折曲して下方の第二の絶縁シート23を被せ、上
記第二の絶縁シート23の底部上に中間の第一の絶縁シ
ート22の両端部26、26を同様に折り込み重ね合わ
せる。そうした上で、更に、その上に上方の第二の絶縁
シート23をほぼ逆U字形に折曲した状態で被せ、最後
に、その上に、最外部の第一の絶縁シート22の両端部
26、26を相互に折り込んで重ね合わせるものであ
る。
【0016】図3に示した上記第二の実施例に於いて
は、図2のA−B間と同様に、両絶縁シート22、2
2、22、23、23の間をたどれば明らかなように、
漏れ絶縁距離は大幅に延長されていることが容易に理解
できる。
【0017】
【発明の効果】本発明の電気機器のスロット絶縁構造に
よれば、従来から広く用いられているスロット上方で両
端を折り重ねる第一の絶縁シートに加えて、それらの間
にほぼ逆U字形に挿入する第二の絶縁シートを介在させ
ることにより、漏れ絶縁距離を大幅に延長することがで
きたものである。その結果、巻線構造体に於ける最弱点
であったスロット絶縁が強化され、絶縁ワニスや絶縁材
の経年劣化又は吸湿等に基づく漏れ電流の発生を最小限
に止め、絶縁破壊による故障発生を低減し、機器寿命を
大幅に延長することができることとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一の実施例の電気機器のスロット絶縁構造の
構成を示す縦断面図。
【図2】第一の実施例の電気機器のスロット絶縁構造の
効果を示す説明図。
【図3】第二の実施例の電気機器のスロット絶縁構造の
説明図。
【図4】従来技術の電気機器のスロット絶縁構造の構成
を示す縦断面図。
【図5】従来技術の電気機器のスロット絶縁構造の効果
を示す説明図。
【符号の説明】
10 鉄心 11 スロット 12 第一の絶縁シート 14 巻線体 15 巻線体 16 第二の絶縁シート 17 楔 18 層間絶縁 22 第一の絶縁シート 23 第二の絶縁シート 26 端部

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電気機器のスロットの底部から両側壁に
    かけてほぼU字状に配設され、巻線体の底部及び両側部
    に接し、その両端部が前記巻線体の上方で重ね合わされ
    る一枚以上の第一の絶縁シートと、上記第一の絶縁シー
    トと巻線体又は重なり合う他の第一の絶縁シートとの間
    に介在させられる両側部及び前記巻線体の上方に位置す
    ることとなる底部からなるほぼ逆U字状に配される第二
    の絶縁シートとを有し、これらの第一の絶縁シート及び
    第二の絶縁シートによって前記巻線体の周囲を包囲する
    電気機器のスロット絶縁構造に於いて、 ほぼU字状に配される上記第一の絶縁シートとほぼ逆U
    字状に配される上記第二の絶縁シートとを前記スロット
    中に交互に配し、かつ上記第一の絶縁シートの両上端を
    前記巻線体を包囲するように交互に折り重ね、更に上記
    第二の絶縁シートの両側部を、上記第一の絶縁シートの
    両側部の最下部まで包囲するように重ね合わせることと
    した電気機器のスロット絶縁構造。
  2. 【請求項2】 ほぼU字状に配設される前記第一の絶縁
    シート及びほぼ逆U字状に配設される前記第二の絶縁シ
    ートのいずれもが複数枚である請求項1の電気機器のス
    ロット絶縁構造。
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