JP2850352B2 - 窒化ホウ素膜の形成方法 - Google Patents
窒化ホウ素膜の形成方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、たとえば切削工具および研磨工具などの
被覆膜ならびにヒートシンクの材料などとして好適に用
いられる窒化ホウ素膜の形成方法に関するものである。
被覆膜ならびにヒートシンクの材料などとして好適に用
いられる窒化ホウ素膜の形成方法に関するものである。
窒化ホウ素は、結晶構造によって主に3種類に分けら
れる。それらは、六方晶窒化ホウ素(以下「h−BN」と
いう。),六方最密充填窒化ホウ素,および立方晶窒化
ホウ素(以下「c−BN」という。)である。このなか
で、c−BNは、熱伝導率,硬度,耐熱性,耐摩耗性,お
よび絶縁性に優れており、たとえば切削工具および研磨
工具などの被覆膜ならびにヒートシンクの材料などとし
て注目されている。これまで、c−BNは高温・高圧下で
合成されてきたが、その用途を拡大するために、最近で
は基体上に薄膜化して形成する研究が行われるようにな
ってきている。
れる。それらは、六方晶窒化ホウ素(以下「h−BN」と
いう。),六方最密充填窒化ホウ素,および立方晶窒化
ホウ素(以下「c−BN」という。)である。このなか
で、c−BNは、熱伝導率,硬度,耐熱性,耐摩耗性,お
よび絶縁性に優れており、たとえば切削工具および研磨
工具などの被覆膜ならびにヒートシンクの材料などとし
て注目されている。これまで、c−BNは高温・高圧下で
合成されてきたが、その用途を拡大するために、最近で
は基体上に薄膜化して形成する研究が行われるようにな
ってきている。
基体表面に窒化ホウ素膜を形成する方法としては、化
学蒸着(CVD)法および物理蒸着(PVD)法がよく知られ
ている。しかしながら、CVD法では、作製した膜はh−B
Nが主体となり、c−BN主体の膜を形成するのが困難で
あるとともに、膜と基体との間の密着性が悪いという問
題がある。
学蒸着(CVD)法および物理蒸着(PVD)法がよく知られ
ている。しかしながら、CVD法では、作製した膜はh−B
Nが主体となり、c−BN主体の膜を形成するのが困難で
あるとともに、膜と基体との間の密着性が悪いという問
題がある。
PVD法には、たとえばイオン化された原子を加速,減
速して基体表面に堆積させるイオンビーム・デポジショ
ン法、クラスターイオンを加速して基体上に堆積させる
クラスターイオンプレーティング法、その他イオンビー
ムスパッタリング法などがあるが、これらの方法によっ
てもやはりc−BN主体の膜を形成するのは困難である。
しかも、これらのPVD法では、基体に照射されるイオン
の運動エネルギーが数eV−数百eVの比較的低い範囲にあ
り、このためイオン種の基体内部への注入は期待し得
ず、したがって膜と基体との密着性が悪いという問題が
ある。
速して基体表面に堆積させるイオンビーム・デポジショ
ン法、クラスターイオンを加速して基体上に堆積させる
クラスターイオンプレーティング法、その他イオンビー
ムスパッタリング法などがあるが、これらの方法によっ
てもやはりc−BN主体の膜を形成するのは困難である。
しかも、これらのPVD法では、基体に照射されるイオン
の運動エネルギーが数eV−数百eVの比較的低い範囲にあ
り、このためイオン種の基体内部への注入は期待し得
ず、したがって膜と基体との密着性が悪いという問題が
ある。
そこで、近年ではエネルギーを数十〜数百keVとした
イオン種を用いて成膜を行うイオン注入法やイオンミキ
シング法が注目されている。とくに、ホウ素系の物質の
蒸着と同時または交互に数十〜数百keVに加速したイオ
ン種を基体に照射するようにして、基体表面に基体の材
料とホウ素とイオンとの混合層を形成するようにしたイ
オンミキシング法では、c−BNを多く含む膜を基体に対
して強固に密着させて形成できるという報告がなされて
いる。
イオン種を用いて成膜を行うイオン注入法やイオンミキ
シング法が注目されている。とくに、ホウ素系の物質の
蒸着と同時または交互に数十〜数百keVに加速したイオ
ン種を基体に照射するようにして、基体表面に基体の材
料とホウ素とイオンとの混合層を形成するようにしたイ
オンミキシング法では、c−BNを多く含む膜を基体に対
して強固に密着させて形成できるという報告がなされて
いる。
しかしながら、上記イオンミキシング法によって形成
される窒化ホウ素膜には、c−BNとともにh−BNもまた
含まれており、したがっていわばc−BNとh−BNとの混
在膜が得られるに過ぎない。h−BNは高湿潤性および低
硬度などのc−BNとは相反する性質をいくつか有してお
り、このため上記イオンミキシング法によって形成した
窒化ホウ素膜ではc−BNの特徴を充分に発揮させること
ができず、結果として良好な膜質を有することができな
かった。
される窒化ホウ素膜には、c−BNとともにh−BNもまた
含まれており、したがっていわばc−BNとh−BNとの混
在膜が得られるに過ぎない。h−BNは高湿潤性および低
硬度などのc−BNとは相反する性質をいくつか有してお
り、このため上記イオンミキシング法によって形成した
窒化ホウ素膜ではc−BNの特徴を充分に発揮させること
ができず、結果として良好な膜質を有することができな
かった。
この発明の目的は、上述の技術的課題を解決し、膜質
を格段に向上することができる窒化ホウ素膜の形成方法
を提供することである。
を格段に向上することができる窒化ホウ素膜の形成方法
を提供することである。
この発明の窒化ホウ素膜の形成方法は、ホウ素を含む
物質の蒸着と、窒素イオン,窒素化合物イオン,および
不活性ガスイオンのなかの少なくとも1種のイオンの照
射と、水素イオンの照射とを併用して、基体表面にc−
BNを含む窒化ホウ素膜を形成する窒化ホウ素膜の形成方
法であって、前記窒素イオン,前記窒素化合物イオン,
および前記不活性ガスイオンの照射量(X)に対する前
記水素イオンの照射量(Y)の比(X/Y)を0.1〜100と
し、且つ、前記窒素イオン,前記窒素化合物イオン,前
記不活性ガス及び前記水素イオンの照射加速エネルギー
を0.1〜20KeVとすることを特徴とすることを特徴とす
る。
物質の蒸着と、窒素イオン,窒素化合物イオン,および
不活性ガスイオンのなかの少なくとも1種のイオンの照
射と、水素イオンの照射とを併用して、基体表面にc−
BNを含む窒化ホウ素膜を形成する窒化ホウ素膜の形成方
法であって、前記窒素イオン,前記窒素化合物イオン,
および前記不活性ガスイオンの照射量(X)に対する前
記水素イオンの照射量(Y)の比(X/Y)を0.1〜100と
し、且つ、前記窒素イオン,前記窒素化合物イオン,前
記不活性ガス及び前記水素イオンの照射加速エネルギー
を0.1〜20KeVとすることを特徴とすることを特徴とす
る。
第1図はこの発明の実施のために用いられる薄膜形成
装置の構成例を示す概念図である。窒化ホウ素膜を形成
すべき基体1はホルダ2表面に固定して配置され、この
基体1に対向して蒸発源3およびイオン源4,5が配置さ
れる。ホルダ2,蒸発源3,およびイオン源4,5などは図示
しない真空槽内に収められており、この真空槽内は成膜
に適した圧力に保たれる。
装置の構成例を示す概念図である。窒化ホウ素膜を形成
すべき基体1はホルダ2表面に固定して配置され、この
基体1に対向して蒸発源3およびイオン源4,5が配置さ
れる。ホルダ2,蒸発源3,およびイオン源4,5などは図示
しない真空槽内に収められており、この真空槽内は成膜
に適した圧力に保たれる。
このような薄膜形成装置によって、蒸発源3からは、
ホウ素や窒化ホウ素などのホウ素を含む物質が蒸発させ
られる。このようにして、ホウ素を含む物質の蒸着が行
われるのと同時または交互に、イオン源4からは、窒素
イオン,窒素化合物イオン,および不活性ガスイオンの
なかの少なくとも1種のイオンが基体1に向けて照射さ
れる。前記窒素化合物とは、たとえばアンモニアなどで
ある。
ホウ素や窒化ホウ素などのホウ素を含む物質が蒸発させ
られる。このようにして、ホウ素を含む物質の蒸着が行
われるのと同時または交互に、イオン源4からは、窒素
イオン,窒素化合物イオン,および不活性ガスイオンの
なかの少なくとも1種のイオンが基体1に向けて照射さ
れる。前記窒素化合物とは、たとえばアンモニアなどで
ある。
このようにして、基体1の表面に窒化ホウ素膜が堆積
される。ただし、イオン源4からのイオンが不活性ガス
イオンのみであるときには、蒸発源3からは窒化ホウ素
などの窒素とホウ素とを含む物質が蒸発させられる。
される。ただし、イオン源4からのイオンが不活性ガス
イオンのみであるときには、蒸発源3からは窒化ホウ素
などの窒素とホウ素とを含む物質が蒸発させられる。
上述のような窒化ホウ素膜の堆積と、同時または交互
に、イオン源5からは水素イオンが照射される。このよ
うにして、蒸発源3から蒸発させられる物質の蒸着と、
イオン源4,5からのイオンの照射とを併用することによ
って基体1上に窒化ホウ素膜が形成される。
に、イオン源5からは水素イオンが照射される。このよ
うにして、蒸発源3から蒸発させられる物質の蒸着と、
イオン源4,5からのイオンの照射とを併用することによ
って基体1上に窒化ホウ素膜が形成される。
このような窒化ホウ素膜の形成は、以下に例示するよ
うな種々の形態で行うことができる。
うな種々の形態で行うことができる。
金属ホウ素の蒸着の後に窒素イオンの照射を行い、
この後にさらに水素イオンの照射を行うという一連の操
作を反復して行う。
この後にさらに水素イオンの照射を行うという一連の操
作を反復して行う。
窒化ホウ素の蒸着の後に不活性ガスイオンの照射を
行い、この後にさらに水素イオンの照射を行うという一
連の操作を反復して行う。
行い、この後にさらに水素イオンの照射を行うという一
連の操作を反復して行う。
金属ホウ素の蒸着と同時に窒素イオンの照射を行っ
て窒化ホウ素膜を堆積させ、この窒化ホウ素膜の堆積後
に水素イオンの照射を行うという一連の操作を反復して
行う。
て窒化ホウ素膜を堆積させ、この窒化ホウ素膜の堆積後
に水素イオンの照射を行うという一連の操作を反復して
行う。
窒化ホウ素の蒸着と同時に不活性ガスイオンの照射
を行って窒化ホウ素膜を堆積させ、この窒化ホウ素膜の
堆積後に水素イオンの照射を行うという一連の操作を反
復して行う。
を行って窒化ホウ素膜を堆積させ、この窒化ホウ素膜の
堆積後に水素イオンの照射を行うという一連の操作を反
復して行う。
窒化ホウ素の蒸着と同時に不活性ガスイオンの照射
を行って窒化ホウ素膜を堆積させ、この窒化ホウ素膜の
堆積と同時に水素イオンの照射を行う。
を行って窒化ホウ素膜を堆積させ、この窒化ホウ素膜の
堆積と同時に水素イオンの照射を行う。
なお、第1図に示された構成では、イオン源が2個設
けられているが、イオン源は1個でもよく、たとえば共
通のイオン源から窒素ガスイオンなどと水素イオンとの
照射を交互に行わせるようにすれば、上記〜などの
形態で窒化ホウ素膜を基体表面に形成することができ
る。
けられているが、イオン源は1個でもよく、たとえば共
通のイオン源から窒素ガスイオンなどと水素イオンとの
照射を交互に行わせるようにすれば、上記〜などの
形態で窒化ホウ素膜を基体表面に形成することができ
る。
上述のような窒化ホウ素膜の形成方法によれば、基体
1の表面では、蒸発源3からの蒸発物がイオン源4,5か
らのイオンにより基体1の内部に押し込まれ、またイオ
ン源4,5からのイオンが基体1の内部に侵入することに
より、基体1の材料と蒸発源3から蒸発される物質と前
記照射されるイオンとが混合した混合層が形成され、こ
れによって窒化ホウ素膜は基体1の表面に強固に密着し
て形成されることになる。
1の表面では、蒸発源3からの蒸発物がイオン源4,5か
らのイオンにより基体1の内部に押し込まれ、またイオ
ン源4,5からのイオンが基体1の内部に侵入することに
より、基体1の材料と蒸発源3から蒸発される物質と前
記照射されるイオンとが混合した混合層が形成され、こ
れによって窒化ホウ素膜は基体1の表面に強固に密着し
て形成されることになる。
また、イオン源5から照射される水素イオンは、前記
窒化ホウ素膜中に存在するSPまたはSP2混成軌道を持っ
た核(これらは、非立方晶窒化ホウ素を成長させる。)
と反応して、これらをSP3結合の核に変換して、c−BN
の生成を促進する。さらに、前記水素イオンは、水素−
ホウ素化合物や水素−窒化ホウ素を生成することによ
り、膜中のh−BNを選択的に除去する働きをも有してい
る。さらにまた、膜中の未反応ホウ素や窒素原子を除去
して膜を清浄化する役割も果たし、ホウ素と窒素とが結
合する際にSP3結合を生じるに充分な励起状態となるエ
ネルギーを与える。また水素イオンによって、膜中のc
−BN以外の窒素−ホウ素構造物や単体原子,単体金属が
除去され、これによって膜中におけるc−BNの割合が大
きくなり、膜の特性がc−BNにより支配されるようにな
る。
窒化ホウ素膜中に存在するSPまたはSP2混成軌道を持っ
た核(これらは、非立方晶窒化ホウ素を成長させる。)
と反応して、これらをSP3結合の核に変換して、c−BN
の生成を促進する。さらに、前記水素イオンは、水素−
ホウ素化合物や水素−窒化ホウ素を生成することによ
り、膜中のh−BNを選択的に除去する働きをも有してい
る。さらにまた、膜中の未反応ホウ素や窒素原子を除去
して膜を清浄化する役割も果たし、ホウ素と窒素とが結
合する際にSP3結合を生じるに充分な励起状態となるエ
ネルギーを与える。また水素イオンによって、膜中のc
−BN以外の窒素−ホウ素構造物や単体原子,単体金属が
除去され、これによって膜中におけるc−BNの割合が大
きくなり、膜の特性がc−BNにより支配されるようにな
る。
このようにして、熱伝導率,硬度,耐熱性,耐摩耗
性,および絶縁性に優れた窒化ホウ素膜が基体1上に形
成されることになる。
性,および絶縁性に優れた窒化ホウ素膜が基体1上に形
成されることになる。
なお、窒化ホウ素膜の形成時において、窒素イオン,
窒素化合物イオン,不活性ガスイオン,および水素イオ
ンの加速エネルギーは、0.1〜50keVとされるのが好まし
く、より好ましくは0.2〜20keVとされるのがよい。加速
エネルギーが0.1keV未満であるときには、窒化ホウ素膜
を基体1に対して充分強固に密着させることができず、
また20keV以上の加速エネルギーを有するイオンを照射
すると、窒化ホウ素膜中にc−BNが形成されにくくな
る。
窒素化合物イオン,不活性ガスイオン,および水素イオ
ンの加速エネルギーは、0.1〜50keVとされるのが好まし
く、より好ましくは0.2〜20keVとされるのがよい。加速
エネルギーが0.1keV未満であるときには、窒化ホウ素膜
を基体1に対して充分強固に密着させることができず、
また20keV以上の加速エネルギーを有するイオンを照射
すると、窒化ホウ素膜中にc−BNが形成されにくくな
る。
さらに、窒素イオン,窒素化合物イオン,または不活
性ガスイオンの照射量Xに対する水素イオンの照射量Y
の比(X/Y)は、0.1〜100に選ばれるのがよく、より好
ましくは0.5〜10の範囲に選ばれるのがよい。この比(X
/Y)が、0.1〜100の範囲から逸脱すると、c−BNが形成
されにくくなる。
性ガスイオンの照射量Xに対する水素イオンの照射量Y
の比(X/Y)は、0.1〜100に選ばれるのがよく、より好
ましくは0.5〜10の範囲に選ばれるのがよい。この比(X
/Y)が、0.1〜100の範囲から逸脱すると、c−BNが形成
されにくくなる。
また、蒸発源3からホウ素を含む物質を蒸発させ、イ
オン源4から窒素イオンを含むイオンを照射する場合
に、基体1の表面におけるホウ素原子と窒素原子との比
(B/N)は0.1〜60の範囲に選ばれるのが好ましく、より
好ましくは0.5〜40に選ばれるのがよい。この比(B/N)
が、0.1〜60の範囲から逸脱すると、c−BNが形成され
にくくなる。
オン源4から窒素イオンを含むイオンを照射する場合
に、基体1の表面におけるホウ素原子と窒素原子との比
(B/N)は0.1〜60の範囲に選ばれるのが好ましく、より
好ましくは0.5〜40に選ばれるのがよい。この比(B/N)
が、0.1〜60の範囲から逸脱すると、c−BNが形成され
にくくなる。
〔実施例1〕 第1図に示された構成において、基体1としてシリコ
ン基板を用い、このシリコン基板表面に対して蒸発源3
からの金属ホウ素の蒸着と同時にイオン源4から窒素イ
オンの照射を行って窒化ホウ素膜を堆積させ、この窒化
ホウ素膜の堆積と同時にイオン源5から水素イオンを照
射して、前記シリコン基板表面に膜厚3000Åの窒化ホウ
素膜を形成した試料を作製した。このとき窒素イオンお
よび水素イオンの各加速エネルギーは0.2keVとし、また
基板表面でのホウ素原子と窒素原子との比(B/N)を1
とし、水素イオンと窒素イオンとの照射量の比(水素イ
オン/窒素イオン)を0.5とした。また比較のために、
水素イオンの照射を行わず、他は前述と同様な条件で比
較用試料を作製した。
ン基板を用い、このシリコン基板表面に対して蒸発源3
からの金属ホウ素の蒸着と同時にイオン源4から窒素イ
オンの照射を行って窒化ホウ素膜を堆積させ、この窒化
ホウ素膜の堆積と同時にイオン源5から水素イオンを照
射して、前記シリコン基板表面に膜厚3000Åの窒化ホウ
素膜を形成した試料を作製した。このとき窒素イオンお
よび水素イオンの各加速エネルギーは0.2keVとし、また
基板表面でのホウ素原子と窒素原子との比(B/N)を1
とし、水素イオンと窒素イオンとの照射量の比(水素イ
オン/窒素イオン)を0.5とした。また比較のために、
水素イオンの照射を行わず、他は前述と同様な条件で比
較用試料を作製した。
上記2つの試料に関して、X線回折による分析を行っ
たところ、上記比較用試料では回折角2θ=43.9゜,43.
3゜の2点でX線回折強度のピークが検出された。回折
角2θ=43.9゜での回折ピークはh−BNの存在を表し、
回折角2θ=43.3゜での回折ピークはc−BNの存在を表
している。したがって上記比較用試料ではc−BNとh−
BNとが混在した混在膜がシリコン基板表面に形成されて
いることが判る。これに対して、この実施例に従って作
製した試料では、回折角2θ=43.3゜でのみX線回折強
度のピークが検出されており、したがってこの実施例に
従って作製した試料では、シリコン基板表面にc−BNの
みを含む窒化ホウ素膜が形成されていることが判る。
たところ、上記比較用試料では回折角2θ=43.9゜,43.
3゜の2点でX線回折強度のピークが検出された。回折
角2θ=43.9゜での回折ピークはh−BNの存在を表し、
回折角2θ=43.3゜での回折ピークはc−BNの存在を表
している。したがって上記比較用試料ではc−BNとh−
BNとが混在した混在膜がシリコン基板表面に形成されて
いることが判る。これに対して、この実施例に従って作
製した試料では、回折角2θ=43.3゜でのみX線回折強
度のピークが検出されており、したがってこの実施例に
従って作製した試料では、シリコン基板表面にc−BNの
みを含む窒化ホウ素膜が形成されていることが判る。
また、10g荷重ビッカース硬度は、前記比較用試料で
は4000Hvであったのに対し、この実施例に従って作製し
た試料では5500Hvであった。したがって、この実施例に
よれば硬度が極めて高い窒化ホウ素膜を形成することが
できることが理解される。
は4000Hvであったのに対し、この実施例に従って作製し
た試料では5500Hvであった。したがって、この実施例に
よれば硬度が極めて高い窒化ホウ素膜を形成することが
できることが理解される。
〔実施例2〕 上記実施例1において、窒素イオンの照射エネルギー
を5keVとし、他は同様の条件でシリコン基板表面に窒化
ホウ素膜を形成した試料を作製した。また、同様な条件
で水素イオンの照射を行わずにシリコン基板表面に窒化
ホウ素膜を形成した比較用試料を作製した。
を5keVとし、他は同様の条件でシリコン基板表面に窒化
ホウ素膜を形成した試料を作製した。また、同様な条件
で水素イオンの照射を行わずにシリコン基板表面に窒化
ホウ素膜を形成した比較用試料を作製した。
この2つの試料に関してX線回折による分析を行った
ところ、上記比較用試料では回折角2θ=43.9゜〜43.3
゜の2点でX線回折強度のピークが検出されたのに対
し、この実施例に従って作製した試料では、回折角2θ
=43.3゜でのみそのピークが検出された。また、10g荷
重ビッカース硬度を測定したところ、上記比較用試料で
は3950Hvであったのに対し、この実施例に従って作製し
た試料では5800Hvであった。
ところ、上記比較用試料では回折角2θ=43.9゜〜43.3
゜の2点でX線回折強度のピークが検出されたのに対
し、この実施例に従って作製した試料では、回折角2θ
=43.3゜でのみそのピークが検出された。また、10g荷
重ビッカース硬度を測定したところ、上記比較用試料で
は3950Hvであったのに対し、この実施例に従って作製し
た試料では5800Hvであった。
以上のようにこの発明の窒化ホウ素膜の形成方法によ
れば、基体と窒化ホウ素膜との界面では、基体に蒸着さ
れるホウ素を含む物質が基体表面に向けて照射されるイ
オンによって基体の内部に押し込まれ、また前記照射さ
れるイオンが基体内に侵入することにより、基体の材料
と前記ホウ素を含む物質と前記照射されるイオンとが混
合した混合層が形成される。この混合層の働きによっ
て、窒化ホウ素膜は基体に対して強固に密着して形成さ
れることになる。
れば、基体と窒化ホウ素膜との界面では、基体に蒸着さ
れるホウ素を含む物質が基体表面に向けて照射されるイ
オンによって基体の内部に押し込まれ、また前記照射さ
れるイオンが基体内に侵入することにより、基体の材料
と前記ホウ素を含む物質と前記照射されるイオンとが混
合した混合層が形成される。この混合層の働きによっ
て、窒化ホウ素膜は基体に対して強固に密着して形成さ
れることになる。
基体表面に堆積された窒化ホウ素膜には、水素イオン
が照射されるが、この水素イオンは、前記窒化ホウ素膜
中でのc−BNの生成を促進し、さらに窒化ホウ素膜中に
存在するc−BN以外のものを除去する働きを有し、これ
によって、基体表面にはc−BNの割合が極めて大きい窒
化ホウ素膜が形成されることになる。したがって、膜の
特性がc−BNにより支配されるようになり、熱伝導率,
硬度,耐熱性,耐摩耗性,および絶縁性に優れた窒化ホ
ウ素膜を基体表面に形成することができるようになる。
が照射されるが、この水素イオンは、前記窒化ホウ素膜
中でのc−BNの生成を促進し、さらに窒化ホウ素膜中に
存在するc−BN以外のものを除去する働きを有し、これ
によって、基体表面にはc−BNの割合が極めて大きい窒
化ホウ素膜が形成されることになる。したがって、膜の
特性がc−BNにより支配されるようになり、熱伝導率,
硬度,耐熱性,耐摩耗性,および絶縁性に優れた窒化ホ
ウ素膜を基体表面に形成することができるようになる。
第1図はこの発明の実施のために用いられる薄膜形成装
置の構成例を示す概念図である。 1……基体、3……蒸発源、4,5……イオン源
置の構成例を示す概念図である。 1……基体、3……蒸発源、4,5……イオン源
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 村松 智 京都府京都市右京区梅津高畝町47番地 日新電機株式会社内 (56)参考文献 特開 昭60−169559(JP,A) 特開 昭58−2022(JP,A) 特開 昭61−275197(JP,A) 特開 昭61−275198(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 14/00 - 14/58
Claims (1)
- 【請求項1】ホウ素を含む物質の蒸着と、窒素イオン,
窒素化合物イオン,および不活性ガスイオンのなかの少
なくとも1種のイオンの照射と、水素イオンの照射とを
併用して、基体表面にc−BNを含む窒化ホウ素膜を形成
する窒化ホウ素膜の形成方法であって、前記窒素イオ
ン,前記窒素化合物イオン,および前記不活性ガスイオ
ンの照射量(X)に対する前記水素イオンの照射量
(Y)の比(X/Y)を0.1〜100とし、且つ、前記窒素イ
オン,前記窒素化合物イオン,前記不活性ガス及び前記
水素イオンの照射加速エネルギーを0.1〜20KeVとするこ
とを特徴とする窒化ホウ素膜の形成方法。
Priority Applications (1)
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JP1056676A JP2850352B2 (ja) | 1989-03-07 | 1989-03-07 | 窒化ホウ素膜の形成方法 |
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JP1056676A JP2850352B2 (ja) | 1989-03-07 | 1989-03-07 | 窒化ホウ素膜の形成方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH02236269A JPH02236269A (ja) | 1990-09-19 |
JP2850352B2 true JP2850352B2 (ja) | 1999-01-27 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPS582022A (ja) * | 1981-06-27 | 1983-01-07 | Agency Of Ind Science & Technol | 薄膜形成方法 |
JPS60169559A (ja) * | 1984-02-13 | 1985-09-03 | Agency Of Ind Science & Technol | 高硬度窒化ホウ素膜の製法 |
-
1989
- 1989-03-07 JP JP1056676A patent/JP2850352B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
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JPH02236269A (ja) | 1990-09-19 |
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