JP2844858B2 - 電磁波遮蔽体 - Google Patents

電磁波遮蔽体

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Description

【発明の詳細な説明】 [従来の技術] 近代的ビルの代表として、インテリジェントビルが挙
げられる。インテリジェットビルの需要の増加ととも
に、電波を外に出さず、かつ外からの電波をしゃへいす
る必要が生じる。電磁波しゃへい部材を使用して開口部
を構成し、ビル全体を電磁波しゃへい構造にすることに
よって、電磁波によるビル内の通信を可能にしたインテ
リジェットビルは既に提案されている。このインテリジ
ェットビルでは、ビルの開口となる窓や、出入口につい
て、メッシュ入りのガラスや導電性フィルムを張り付け
たガラスを使うことによってビル全体の電磁波しゃへい
を行うようにしている。またITO(錫をドープした酸化
インジウム)膜と金属膜の組み合わせによるシールド膜
を構成し窓ガラスに使うことも提案されている。また、
これらのものを利用して電子機器の誤動作防止等にも用
いられている。
[発明の解決しようとする課題] メッシュ入りのガラスでは、開口部を構成する際に視
界を悪くし、たいへん目障わりなものとなる。
省エネ効果とビルの外観のカラーデザイン効果を兼ね
て、熱線反射ガラスが多く使われるようになってきた
が、メッシュ入りのガラスではこの熱線反射ガラスと組
み合わせることは、熱割れの心配があり難かしい。導電
性フィルムを張り付けたガラスでは、安価であるが、プ
ラスチックフィルムのため、キズがつき易く、また劣化
して透視性が悪くなったりする問題があり、そのため、
長期に亘るしゃへい性能に不安がある。
ITO膜と金属膜との組み合わせではITO膜そのものがた
いへん希少金属であるために高価であり、かつ耐久性が
他の金属膜に比べて弱い。
また、熱線反射ガラスの構成膜として用いられている
TiN膜等にも導電性はあるが、そのまま利用するには抵
抗が高く、たとえばTiNを考えた場合、比抵抗が2×10
-4Ω・cm程度のものであった。この場合、20dBのシール
ド性能を持たせるための表面抵抗を20Ω/□と仮定する
と約1000Å以上の厚膜が必要になり、可視光透過率が0
%に近くなってしまう。
[課題を解決するための手段] 本発明は、前述の問題点を解決すべくなされたもので
あり、透明基体上に、Ti,Zr,Hfのうち1種以上の金属の
窒化物、硼窒化物、炭化物、硼炭化物のいずれかを主成
分とする導電性膜と、誘電体膜と、を有する2層以上か
らなるコーティングが形成されてなる電磁波遮蔽体を提
供するものである。
これは、アーク蒸着法、プラズマエミッションモニタ
ーを用いて行った反応性スパッタ法、アーク放電プラズ
マ流を用いたイオンプレーティング法により最適制御す
ることによって比抵抗が1.5×10-4Ω・cm以下の導電性
膜を形成すれば、誘電体膜との組み合わせにより可視光
透過率が10%以上を確保でき透視性のよい、ガラス側反
射色を種々に調整可能な電磁シールドガラスを作ること
を可能としたものである。
以下本発明の実施例に従って説明する。第1図は本発
明の基本的構成の断面図であり、1は導電性膜を示して
いる。導電性膜1は、比抵抗が1.5×10-4Ω・cm以下で
あることが好ましく、この場合、20Ω/□の表面抵抗で
あれば20dB程度のしゃへい性能があり、膜厚は約750Å
以下でよく、可視光透過率は誘電体膜2、例えばTiO2
により、反射を低減させ10%以上を確保できる。また誘
電体膜2、例えばTiO2膜の膜厚を変えることにより反射
色を変化させることができ、熱線反射ガラス等で要求さ
れる反射色のバリエーションが可能となり商品価値とし
て非常に大きなメリットとなる。
第2図は3層構成にしたものを示している。透過率を
向上させることと、導電性膜4や誘電体膜3,5の膜厚を
変化させることにより、反射色をさらに変えることがで
きる。又、第3図のように多層の組み合わせにして所望
の光学性能を持たせることもできる。
導電性膜1,4としてはTi,Zr,Hfのうち1種以上の金属
の窒化物,硼窒化物,炭化物,硼炭化物のいずれかを主
成分とする膜が、耐久性,コスト等の点で用いられる。
これらの材料はそれぞれ色調が異なるので、さらに反射
色に変化をつけることができる。これらの材料の中でも
特にTiN,ZrN,HfNは熱線反射性能がよく、熱線反射ガラ
スとしての機能も兼ね備えている。
誘電体膜2,3,5としては、例えばTiO2,SnO2,ZnO,ZnS,S
iO2,Ta2O5,ZrO2,酸化クロム,酸化ハフニウム等の高耐
久性を有する金属酸化物等を用いることができる。
誘電体膜を第1図,2図に挙げた例のように導電性膜に
含まれる金属の酸化物とすれば、出発原料として共に同
一金属材料から成膜可能となり、反応性スパッタ,反応
性イオンプレーティング等の手法により安価に作製でき
る。
導電性膜1,4の膜厚としては電磁波遮蔽体に使用する
場合は20Ω/□程度以下のシート抵抗及び所望の可視光
透過率が得られるように、適宜設計すればよい。誘電体
膜2,3,5の膜厚については、導電性膜との干渉を利用し
て所望の透過率,反射率,色調等が得られるように決定
すれば良い。
導電性膜の製造方法としては、Ti,Zr,Hf等の金属又
は金属硼化物を電極とし、N2,CH4等の雰囲気中でアーク
放電を起こさせてアーク蒸着を行う方法、Ti,Zr,Hf等
の金属又は金属硼化物をターゲットとし、N2,CH4等の反
応ガスとAr等の不活性ガスの混合雰囲気中で発光スペク
トルの強度ピークをプラズマエミッションモニター等で
検出し、それに応じて導入ガス量を制御してターゲット
近傍の放電のプラズマを遷移状態に保ちつつ反応性スパ
ッタリングを行う方法、Ti,Zr,Hfのうち少なくとも1
種の金属、又は、かかる金属の窒化物,硼窒化物,炭化
物,硼炭化物のいずれかからなる蒸発材料上にアーク放
電プラズマ流を導いて蒸発材料を蒸発させてN2,CH4等の
雰囲気中でイオンプレーティングを行う方法、等が挙げ
られる。
これらの方法においてはエネルギーの高いイオン状態
を経て導電性膜形成材料をが基体上に付着するので、大
面積にわたり低比抵抗の導電性膜を形成することができ
る。特にのアーク放電プラズマ流を用いたイオンプレ
ーティング法においてはアーク放電プラズマ流を磁界に
よってシート状に変形して大面積のシートプラズマを形
成することによって大面積にわたり高速で低比抵抗の膜
を形成できる。第4図にそのような装置の例を示す。
第4図にはアーク放電プラズマ発生源41として、複合
陰極21と、環状永久磁石を含む第1中間電極22、空芯コ
イルを含む第2中間電極を有する第2中間電極23を有す
るものを用いた場合を示した。
第4図の装置においては、アノード(ハース)42をプ
ラズマ発生源41の下方に位置するように配置し、空芯コ
イル46によってプラズマ発生源41から発生したアーク放
電による高密度のプラズマ流を真空室43に引き出す。さ
らに、引き出したプラズマをシート状にするために、一
対の永久磁石45をN極面を対向させてプラズマをハース
42と基体47方向から挟み、かつ、永久磁石45のN極面ま
たはS極面を、ハース42面と、または被膜を形成する基
体47面と平行になるように配置し、プラズマをハース4
2、あるいは基体47と平行な方向におしつぶし、シート
プラズマ48を形成する。
第4図において、一対の永久磁石45によってシート状
に変形されたシートプラズマ48は、第4図の上から下方
向の厚さ及び第4図に垂直な方向に幅を有している。
かかるシートプラズマ48はハース42の下に置かれた永
久磁石49のつくる磁場によって約90゜で曲げられ、ハー
ス42に集束し、ハース42内の蒸発原料50を蒸発させ、蒸
発した粒子がハース42の上方に置かれた基体47上に付着
して被膜が形成される。
[作用] かかるイオンプレーティング法においては、使用され
るシートプラズマはアーク放電を利用しているため従来
のイオンプレーティングに利用されているグロー放電型
プラズマに比べて、プラズマの密度が50〜100倍高く、
ガスの電離度は数十%となり、イオン密度、電子密度、
中性活性種密度も非常に高い。このような高密度のプラ
ズマを蒸発原料上に収束させることで、蒸発原料から非
常に多数の粒子を取り出すことが可能となり、従来のイ
オンプレーティング法に比較して3〜10倍の高速成膜を
実現できる。更に、窒素,メタン,アルゴンなどの雰囲
気ガスの多くは、反応性の高いイオンや中性の活性状態
をとり、加えて蒸発した粒子も基板に到達する前に、高
密度のシートプラズマの中を通り、反応性の高い中性の
活性種となる。その結果、基板上での反応性が高まり、
基板加熱がなくとも、比抵抗の低い導電性膜が従来より
も高速の成膜速度で実現できる。
[実施例] 基体47として、ガラス板を用い、以下の方法で蒸着し
た。先ず真空室43の真空度を2×10-5Torrまで引き、そ
の後N2ガスを導入して4.0×10-4Torrにし、第4図のよ
うな装置を用いて、直流電源44を250A,70Vに設定しアー
ク放電を行った。蒸着材料としてTiを有するハース42と
基体47間の距離を約60cmとし、基板固定で行った。膜厚
550Å、比抵抗1.1×10-4Ω・cm、可視光透過率12%(基
板ガラス92%)の膜を得た。これは成膜速度2000Å/min
であり、EB(エレクトロンビーム)ガンなどによる方法
に比べて極めて早い。基板無加熱で行った蒸着としては
比抵抗もかなり低いものが得られた。
次に雰囲気ガスをO2に変え、TiN膜上に、TiO2からな
る誘電体膜を300Å形成し、電磁波遮蔽ガラスを形成し
た。シート抵抗は20Ω/□で、100MHz〜1GHzの波長域に
おいて約20dBの遮蔽効果を示した。又、全体の可視光透
過率は20%で、外観はシルバー色であった。
[発明の効果] 従来電磁しゃへいガラスとして用いられてきた金属メ
ッシュを挟みこんだ複層ガラスに対しては、大幅な低価
格とデザイン性の向上が可能であり、またAg,ITOを用い
た系に対しては、低価格、物理的,化学的,耐久性の向
上、デザイン性の付与が期待できる。電磁しゃへいガラ
スとしては、その性能として、20dB,30dB,60dB等各段階
があるが、特に20dB品のように電子機器の誤動作を防ぐ
ことを主なターゲットとした比較的レベルの低いものに
関しては、特にその価格が重要である。金属材料を出発
原料にすることにより大幅な低価格を実現し、耐久性を
向上させることができる。窒化物膜はその成膜条件によ
って電気的特性は大きく変化しそれを最適化すること
で、低抵抗膜が作製できる。TiN,ZrN,HfNは高い熱線反
射性能を持っているため、熱線反射ガラスとしても、大
きな効果を持っている。
また、電磁しゃへい性能に関しては、単に窓ガラスと
して用いられるだけでなく、電子機器の誤動作防止のた
めに直接保護板として使われたり、電子レンジの窓ガラ
スのように健康対策として中から電磁波が出ないように
するために用いられたりする。これらの用途には、耐久
性特に耐擦傷性及び低価格が必要であるが、その要求を
充分満たすことが可能となる。
多層膜にすれば、特殊な光学特性を持ったものも可能
となり、応用範囲は非常に広いものとなる。
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではな
く、種々の変形が可能である。基板としてガラスを用い
たが、樹脂その他の透明体を用いてもよいことは勿論で
ある。また、熱線吸収ガラスを用いてもよい。窓の開口
部としては建築用だけでなく、航空機、自動車等にも用
いることができる。
【図面の簡単な説明】
第1〜3図は、本発明の電磁波遮蔽体の1実施例の断面
図であり、第1図は2層の例で、1が導電性膜、2が誘
電体膜を示している。第2図は3層の例であり、導電性
膜が、誘電体膜で挟まれてサンドイッチ構造になってい
る。第3図は多層膜の例を示している。第4図はアーク
放電プラズマ流を用いたイオンプレーティング法によっ
て本発明の導電性膜を形成するための装置の一例の概略
断面図である。 41……アーク放電プラズマ流発生源 42……ハース(アノード) 43……真空室 44……プラズマ発生用直流電源 45……永久磁石 46……空芯コイル 47……基体 48……シートプラズマ 49……永久磁石 50……蒸発原料 51……放電用ガス導入口 52……反応ガス導入口 21……複合陰極 22……環状永久磁石内蔵第1中間電極 23……空芯コイル内蔵第2中間電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−5308(JP,A) 特開 平2−90101(JP,A) 特開 平1−167915(JP,A) 特開 昭63−255366(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H05K 9/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】透明基体上に、Ti、Zr、Hfのうち1種以上
    の金属の窒化物、硼窒化物、炭化物、硼炭化物のいずれ
    かを主成分とする導電性膜と、誘電体膜と、を有する2
    層以上からなるコーティングが形成されてなる電磁波遮
    蔽体。
  2. 【請求項2】上記導電性膜が、Ti、Zr、Hfのうち1種以
    上の金属の窒化物を主成分とする導電性膜である請求項
    1記載の電磁波遮蔽体。
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