JPH09234816A - 透明導電性積層体 - Google Patents

透明導電性積層体

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JPH09234816A
JPH09234816A JP8042670A JP4267096A JPH09234816A JP H09234816 A JPH09234816 A JP H09234816A JP 8042670 A JP8042670 A JP 8042670A JP 4267096 A JP4267096 A JP 4267096A JP H09234816 A JPH09234816 A JP H09234816A
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JP
Japan
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transparent conductive
film
resistance
conductive layer
ito film
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JP8042670A
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English (en)
Inventor
Tomoyuki Okamura
友之 岡村
Fumiharu Yamazaki
文晴 山▲崎▼
Shin Fukuda
福田  伸
Nobuhiro Fukuda
信弘 福田
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Mitsui Toatsu Chemicals Inc
Original Assignee
Mitsui Toatsu Chemicals Inc
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 ポリアリレート成形物上に、主としてイ
ンジウムとスズからなる酸化物で構成される比抵抗1×
10-2Ω・cm以上かつ非晶質の透明導電層を、高酸素濃
度雰囲気下でスパッタリング法により形成し、処理によ
り該層を比抵抗1×10-2Ω・cm未満かつ非晶質の透明
導電層とすることを特徴とする透明導電性積層体。 【効果】 透明導電性積層体を形成したときに熱処理、
湿熱処理によりその電気抵抗値が変化してしまうポリア
リレートを基体として用いても、耐熱性、耐湿熱性に優
れる透明導電性積層体が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、透明導電性積層体
に関し、さらに詳しくはポリアリレート成形物の少なく
とも片面に、高バリアー性を有する主としてインジウム
とスズからなる酸化物で構成される透明導電層が形成さ
れてなる、耐熱性、耐湿熱性に優れる透明導電性積層体
に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、社会が高度に情報化されてくるに
したがって、光エレクトロニクス関連部品、機器は著し
く進歩、普及している。そのなかで透明導電性積層体
は、透明タッチパネル等の入力装置の電極として、また
液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプ
レイ、エレクトロクロミックディスプレイ等の表示素子
の電極として、更には太陽電池などの光電変換素子の窓
電極、電磁波シールドの電磁遮蔽膜など幅広く利用され
ている。
【0003】透明導電性積層体は、通常、透明な基体の
面上に透明導電層を形成して構成される。透明導電層と
しては、金、銀、白金、パラジウムなどの金属薄膜、酸
化インジウム、酸化 第2スズ、酸化亜鉛等の酸化物半
導体薄膜、金属酸化物と金属の積層による多層薄膜等が
ある。金属薄膜は、導電性は優れているが透明性に劣
る。それに対し酸化物半導体薄膜は導電性は若干劣る
が、透明性に優れている。その中でもITO(Indium T
in Oxide)膜は、導電性、透明性が特に優れ、更に電極
のパターンをエッチングにより形成することが容易であ
る等の特長を持つため、広く利用されている。ITO膜
の比抵抗は、通常、5×10-5〜1×10-3Ω・cm程
度、透過率は一般に80〜90%である。
【0004】透明導電性積層体の性能評価には、比抵抗
や透過率のほかに、耐熱性、耐湿熱性といった透明導電
層の安定性がある。特に低温で製膜したITO膜は通常
不安定であり、また基材によっては、基材−ITO膜間
の拡散等の物質移動がおこることによる膜質の変化が生
じると推定しているが、製膜後の加熱等の後処理により
電気抵抗の変化してしまうことを見いだした。特に基材
としてポリアリレートフィルムを用いた場合は、基材に
ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた場合に比
べ、熱処理、湿熱処理後の電気抵抗値の上昇が著しい。
ポリアリレートフィルムはガラスと異なり割れない、軽
い、且つ複屈折率が小さく光学的に等方的である等の理
由から、軽量化が望まれている液晶ディスプレイ等の電
極基板に用いるのに好適である。しかしながら透明導電
性積層体が、液晶ディスプレイや透明タッチパネルとい
った製品の透明電極として用いられる場合、製品にする
までの工程に熱処理や湿熱処理が含まれるため、その際
に透明導電性積層体の性能が変化すると製品に不具合が
生じることがあることを見いだした。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】通常ITO膜は、反応
性スパッタリング法でアルゴン・酸素分圧比をITO膜
の比抵抗が極小値となるように制御して製膜するが、1
80℃以下、特に室温で成膜し、後処理を施さない場合
ITO膜は、非晶質であり、環境に対して不安定な構造
的な欠陥の多い膜であることを見いだした。我々は、構
造欠陥が多く存在することにより、膜中の物質移動が熱
によって加速されやすく、熱処理や湿熱処理による基材
−ITO間の拡散等の物質移動がおこることによって、
膜質が変化し、大きく電気抵抗が変化してしまうと推定
している。また同じく基材によっては、おそらくは製膜
時の基材からの脱ガスによる製膜雰囲気のコンタミネー
ションにより、構造欠陥が多く、熱処理や湿熱処理によ
って大気中ガスの膜への侵入、膜中及び基材−ITO膜
間の物質移動の起こり易い、質の悪いITO膜となって
しまうと本発明者らは推定している。基材にポリアリレ
ートフィルムを用いた場合は、特にこれらの傾向が著し
く、ポリエチレンテレフタレートフィルムに比べ後処理
による電気抵抗の変化が大きい。
【0006】実用的には、透明導電性積層体は、透明導
電面の初期シート抵抗がR0(Ω/□)のとき、耐熱性
は、大気中150℃の条件下で2時間放置した後のシー
ト抵抗R1(Ω/□)との比、R1 /R0 が1.2以下で
あることが望ましい。また、耐湿熱性は、40℃、湿度
90%の条件下で100時間放置した後のシート抵抗R
2 (Ω/□)との比、R2 /R0 が1.3以下であるこ
とが望ましい。
【0007】本発明は上記事情に鑑みなされたものであ
って、耐熱性、耐湿熱性に優れる透明導電性積層体及び
その製造方法に関するものである。ポリアリレート成形
物を基材として用いてITO膜を形成し透明導電性積層
体とすると、熱処理、湿熱処理によって電気抵抗値が変
化してしまう場合があるが、本発明によれば、ポリアリ
レート成形物のような、熱処理、湿熱処理によって形成
した透明導電層の電気抵抗値が変化してしまうような基
材を用いた場合でも、耐熱性、耐湿熱性に優れた透明導
電性積層体を提供できる。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の問
題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリアリレ
ート成形物上に、主としてインジウムとスズからなる酸
化物で構成される比抵抗1×10-2Ω・cm以上かつ非晶
質の透明導電層を高酸素濃度雰囲気下でスパッタリング
法により形成し、熱処理により該層を比抵抗1×10-2
Ω・cm未満かつ非晶質の透明導電層とすることにより、
ポリアリレート成形物を基体とした用いても耐熱性、耐
湿熱性に優れる透明導電性積層体を得られることを見い
だし、本発明を完成するに到った。
【0009】前述したように、通常ITO膜は、反応性
スパッタリング法でアルゴン・酸素分圧比をITO膜の
比抵抗が極小値となるように制御して製膜するが、18
0℃以下、特に室温で成膜し、後処理を施さない場合I
TO膜は、非晶質であり、酸素欠陥等の構造欠陥を多く
含む構造的な欠陥の多い、環境に対して不安定な膜であ
る。構造欠陥が多く存在することにより、膜中の物質移
動が熱によって加速されやすく、ポリアリレート成形物
のような基材によっては、製膜後に熱処理を行うと、お
そらくは基材−ITO間の拡散等の物質移動がおこるこ
とによって、膜質が変化し大きく電気抵抗が変化してし
まうと推定している。また同じく基材によっては、製膜
時の基材からの脱ガスによる製膜雰囲気のコンタミネー
ションにより、構造欠陥が多く、熱処理や湿熱処理によ
って大気中ガスの膜への侵入、膜中及び基材−ITO膜
間の物質移動の起こり易い、質の悪いITO膜となって
しまうと推定している。また不安定なITO膜は、処理
によって結晶化し、結晶粒界等の構造欠陥を生じてしま
うため、上記で推定したような現象が起こりやすくな
る。
【0010】従って、耐熱性、耐湿熱性に優れた透明導
電性積層体を得るには、ITO膜が構造欠陥の少ない、
稠密で安定な非晶質であること、すなわち、ITO膜が
高バリアー性を有することが好ましい。本発明で言うと
ころのバリアー性とは、上記で推定した基材−ITO膜
間の物質移動を防ぐ、拡散障壁となりうる能力を意味す
る。このようなITO膜を得るには、スパッタリング法
においてスパッタガスであるアルゴン・酸素の分圧比
を、比抵抗が最小となるアルゴン・酸素分圧比よりも酸
素を多くし、比抵抗1×10-2Ω・cm以上のITO膜を
形成すれば良い。酸素分圧を比抵抗を最小とする値より
も多くすることによって酸素欠陥等の構造欠陥の少ない
安定な非晶質構造のITO膜が得られるのである。
【0011】ITO膜の電気伝導を担うキャリア電子
は、酸素欠陥により生成されるものとスズにより生成さ
れるものとがあるが、酸素分圧の高い条件で形成した酸
素欠陥の少ないITO膜は、電子密度は低く、そのため
ITO膜の比抵抗は1×10-2Ω・cm以上と、大きくな
ってしまう。透明電極には電気抵抗の低いものが要求さ
れるため、電子密度の低いITO膜を基体の主面に形成
した透明導電性積層体はこのままでは使用できない。そ
こで、電子密度の低いITO膜に処理を施すと、該IT
O膜の電子密度は増加し、比抵抗を1×10-2Ω・cm未
満にすることができるのである。
【0012】すなわち、本発明は、<1> ポリアリレ
ート成形物上に、少なくとも主としてインジウムとスズ
からなる酸化物で構成される比抵抗1×10-2Ω・cm以
上かつ非晶質の透明導電層を設けた透明導電性積層体で
あって、該透明導電層は、処理により該層を比抵抗1×
10-2Ω・cm未満かつ非晶質となる透明導電層であるこ
とを特徴とする透明導電性積層体、<2> 該透明導電
層におけるスズ酸化物の含有量が、10〜70重量%で
あることを特徴とする<1>の透明導電性積層体、<3
> 該透明導電層におけるスズ酸化物の含有量が、10
〜50重量%であることを特徴とする<1>又は<2>
の透明導電性積層体、<4> 該透明導電層におけるス
ズ酸化物の含有量が、15〜35重量%であることを特
徴とする<1>〜<3>のいずれかの透明導電性積層
体、<5> 該透明導電層が高酸素濃度雰囲気下でスパ
ッタリング法により形成したものである<1>〜<4>
のいずれかの透明導電性積層体、<6> <1>〜<5
>のいずれかの透明導電性積層体を処理し、該透明導電
層を比抵抗1×10-2Ω・cm未満かつ非晶質とした透明
導電性積層体、<7> 処理が、大気、窒素雰囲気下、
又は真空中における処理温度80℃以上180℃以下の
熱処理であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれ
かの透明導電性積層体に関するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明は、ポリアリレート成形物
のように、熱処理、湿熱処理によって形成した透明導電
層の電気抵抗値が変化してしまう高分子成形物を基体と
して用いた場合に特に効果がある。高分子成型物は軽く
割れにくいため、透明導電性積層体の透明基体として好
適に使用できる。透明な高分子成形物は、可視光におい
て透明であれば使用できる。透明な高分子成形物の種類
を具体的にいえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ
エーテルサルフォン、ポリスチレン、ポリエチレン−
2、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリ
エーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリプロ
ピレン、ポリイミド、トリアセチルセルロース、ポリメ
チル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これら透
明な高分子成形物は透明導電層を形成する主面が平滑で
あれば板状であってもフィルム状であってもよい。板状
の高分子成形物を基体として用いた場合には、基体が寸
法安定性と機械的強度に優れているため、寸法安定性と
機械的強度に優れた透明導電性積層体が得られ、特にそ
れが要求される場合には好適に使用できる。また透明な
高分子フィルムは可撓性を有しており透明導電層をロー
ルツーロール法で連続的に形成することができるため、
これを使用した場合には効率よく透明導電性積層体を生
産できる故にこれもまた好適に使用できる。この場合フ
ィルムの厚さは通常10〜250μmのものが用いられ
る。フィルムの厚さが10μmよりあまり薄いと、基材
としての機械的強度に不足し、250μmよりあまり厚
いと可撓性が不足するためフィルムをロールで巻きとっ
て利用するのに適さない。本発明は前述したようにポリ
アリレート成形物を基体として用いた場合に特にその効
果を発揮する。
【0014】これらの基体はその表面に予めスパッタリ
ング処理、コロナ処理、火炎処理、紫外線照射、電子線
照射などのエッチング処理や、下塗り処理を施してこの
上に形成される主としてインジウムとスズからなる酸化
物で構成される非晶質の透明導電層の上記基体に対する
密着性を向上させる処理を施してもよい。また、主とし
てインジウムとスズからなる酸化物で構成される非晶質
の透明導電膜を成膜する前に、必要に応じて溶剤洗浄や
超音波洗浄などの防塵処理を施してもよい。
【0015】本発明においては、すでに述べたように、
基体上に形成した主としてインジウムとスズからなる酸
化物で構成される透明導電膜が、非晶質かつ成膜時に比
抵抗1×10-2Ω・cm以上であり、熱処理後に透明電極
として使用できるように比抵抗1×10-2Ω・cm未満に
なることが好ましい。そのためには、スパッタリング法
において高酸素濃度雰囲気下でITO膜を成膜すること
が好ましい。本発明で言うところの高酸素濃度雰囲気と
は、スパッタガスであるアルゴン・酸素の分圧比を、比
抵抗が最小となるアルゴン・酸素分圧比よりも酸素の分
圧比が多い雰囲気であり、このときの酸素分圧は全圧力
に対して、ターゲットの密度やインジウム酸化物とスズ
酸化物の組成比、成膜速度等によって異なり、比抵抗が
1×10 -2Ω・cm以上となるように実験的に求められる
が、ターゲットにインジウム・スズ酸化物を使用した場
合3〜40%程度、ターゲットにインジウム・スズ合金
を使用した場合には、40〜80%程度である。高酸素
濃度雰囲気下でITO膜を成膜することによって、酸素
欠陥等の構造欠陥の少ない安定な非晶質構造のITO膜
が得られるのである。
【0016】しかしながら、液晶ディスプレイ等の透明
電極は低抵抗を要求されるため、比抵抗1×10-2Ω・
cm以上と比抵抗の高いITO膜を基体の一方の主面に形
成した透明導電性積層体では使用できない。そこで低抵
抗の透明導電性積層体を必要とする場合には、電子密度
を増加させ、比抵抗を1×10-2Ω・cm未満とするため
に、処理を施す。その際肝要なのは、処理によって非晶
質構造が保たれないものは、ITO膜の構造が処理によ
って変化してしまうほど不安定で構造欠陥が多いことを
示し、結晶化により結晶粒界等の構造欠陥をさらに増し
てしまうものであるため、このようなITO膜は、バリ
アー性を持たず実用に適さない。しかしながら、比抵抗
が1×10-2Ω・cm以上となるように、スパッタリング
法においてスパッタガスであるアルゴン・酸素の分圧比
を、比抵抗が最小となるアルゴン・酸素分圧比よりも酸
素の多い、高酸素濃度雰囲気下で成膜されたITO膜
は、処理により結晶化しない安定な非晶質である。ここ
で成膜時の酸素濃度が高すぎると、比抵抗が下がる時間
が非常に長くなったり、比抵抗が1×10-2Ω・cm未満
に下がらなくなる為、処理によって比抵抗が十分下がる
ITO膜を製膜するための酸素濃度を実験的に求める必
要がある。処理によって電子密度が増加する理由は定か
ではないが、膜中における酸素原子の位置が変化し酸素
欠陥を生じ、キャリア電子を生成するため、また、スズ
原子が膜中を移動しキャリア電子を効率的に生成する位
置へ移動するためであると思われる。
【0017】さらに我々は、通常用いられるITO膜の
スズ酸化物の含有量は、5〜10重量%であるが、IT
O膜中のスズ含有量が増すと、ITO膜は安定な非晶質
構造を保ち、結晶化しづらくなることを見いだした。ス
ズ酸化物の含有量は、10〜70%が好ましく、さらに
好ましくは、10〜50%であり、より好ましくは、1
5〜35%である。製膜時の酸素濃度およびスズ酸化物
の含有量によりITO膜の電気特性、分光特性は変化す
るため、得ようとする透明導電性を有するように、それ
らを実験的に求め制御することが好ましい。
【0018】処理には、熱処理が挙げられ、その条件と
しては、ITO膜が熱処理後においても非晶質を保つ範
囲であればよく、常温以上に長時間保持することで目的
が達成されるが、好ましい加熱温度は80℃〜180℃
である。加熱温度が80℃より低いと、電子密度を増加
させる効果が小さく、処理時間に数日間といった長時間
を要する。加熱温度が180℃より高いとITO膜が結
晶子の小さい結晶質となり、結晶粒界と言った構造欠陥
の多い、好ましくないITO膜となる。加熱時の環境雰
囲気は、強い酸化雰囲気でなければ良く、大気中、窒素
中の雰囲気下、又は真空中で行えばよい。加熱時間は基
材及びITO膜の比抵抗や厚さ、並びに処理温度等に影
響され、実験的に求められるが、通常10分〜24時間
程度である。電子密度の増加は加熱時間により飽和する
ので、いたずらに長時間熱処理を施す必要はない。
【0019】上記製膜条件の一例を、図1をもって説明
するに、図1は、ポリアリレ−トフィルム(厚さ:75
μm)の一方の主面に、ターゲットに酸化インジウム・
酸化スズ(組成比 In23:SnO2=80:20wt
%)を、スパッタガスにアルゴン・酸素混合ガス(全圧
2mTorr)を用いて、マグネトロンDCスパッタリ
ング法によりある製膜速度でITO膜を形成したときの
酸素分圧と成膜されたITO膜の比抵抗の関係を示した
グラフである。図1から分かるように、酸素分圧0.0
3mTorrにおいて比抵抗が極小となり、この条件が
通常のITO膜製膜条件である。本発明で言うところの
高酸素濃度とは、図1においては、比抵抗が1×10-2
Ω・cmとなる酸素濃度およそ0.075mTorr以上
である。
【0020】また、図2は大気中120℃の条件下で熱
処理したときの比抵抗の変化を示している。比抵抗は熱
処理により下がり、120℃の条件で5時間で比抵抗の
変化はほぼ飽和していて、余り変化しなくなることが分
かる。
【0021】本発明で言うところの非晶質のITO膜と
は、θ−2θ法によるX線回折パターンにおいて、結晶
質であることを示す2θ=30°〜31°のIn2
3(222)ピーク、及び2θ=35°〜36°のIn2
3(400)ピークを示さないものである。非晶質お
よび結晶質のITO膜のX線回折パターンを、添付図面
の図3に示した。
【0022】ポリアリレート成形物を基体として、比抵
抗が最小となるような、または比抵抗1×10-2Ω・cm
未満となるような通常の製膜条件でITO膜を形成した
透明導電性積層体の電気抵抗は、熱処理、湿熱処理を行
うと処理時間に対して単調に上昇し、逐には非常に高抵
抗となってしまうため、実用に適さない。それに対し本
発明の透明導電性積層体は、ITO膜形成時は電気抵抗
は非常に高いが、処理により一旦電気抵抗が下がると、
熱処理を継続しても、また湿熱処理を行っても電気抵抗
はあまり変化せず、実用に適している。該熱処理の温度
が、電気抵抗を下げるための処理温度以上でもポリアリ
レート成形物の耐熱温度以下であれば、抵抗変化は小さ
い。上記抵抗変化の一例を図4に示した。
【0023】主としてインジウムとスズからなる酸化物
で構成される安定な非晶質の透明導電膜(ITO膜)の
成膜方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、イオ
ンプレーティング法といった従来公知の物理的気相成長
法のいずれも採用できる。なかでもスパッタリング法
は、膜中の酸素含有量の制御が容易に行えるため好適に
使用できる。
【0024】スパッタリング法においては、ターゲット
にインジウム・スズ合金、あるいはインジウム・スズ酸
化物を、スパッタガスにアルゴン等の不活性ガスを用
い、反応性ガスに酸素を用い、通常圧力:0.1〜20
mTorr、成膜中の基体温度:20〜150℃の条件
下で、直流(DC)あるいは高周波(RF)マグネトロ
ンスパッタ法が利用できる。
【0025】また、機械的強度を向上させる目的で、基
体のITO膜を形成する面とは反対の面に透明性を有す
るハードコート層を設けたり、電気抵抗、透明性、耐環
境性、透明電極として用いた場合の耐久性を損なわない
程度に、ITO膜上にさらに任意の保護層を設けてもよ
い。また基体とITO膜との密着性の向上、あるいは透
過率の向上、またはさらなる耐熱性向上を目的に、その
性能を損なわない範囲で金属薄膜、無機化合物薄膜、有
機高分子膜等の任意の中間層を1層以上設けてもよい。
【0026】上記の方法により形成した透明導電層の原
子組成は、オージェ電子分光法(AES)、誘導結合プ
ラズマ法(ICP)、ラザフォード後方散乱法(RB
S)等により測定できる。また、これらの膜厚は、オー
ジェ電子分光の深さ方向観察、透過型電子顕微鏡による
断面観察等により測定できる。また、ITO膜の電子移
動度、電子密度、電気抵抗率はホール測定により測定で
きる。また、ITO膜の結晶性はX線回折法(XRD)
や電子線回折法によって判定できる。
【0027】
【実施例】つぎに、本発明を実施例により具体的に説明
する [実施例1]ポリアリレートフィルム(厚さ:75μ
m)の一方の主面に、ターゲットに酸化インジウム・酸
化スズ焼結体(組成比:In23:SnO2=80:2
0wt%)を、スパッタガスにアルゴン・酸素混合ガス
(全圧2mTorr:酸素分圧1.2mTorr、本発
明で言うところの高濃度酸素雰囲気)を用いて、厚さ5
0nmの酸化インジウム膜をマグネトロンDCスパッタ
リング法により形成し、透明導電性積層体を作製し、大
気中で120℃5時間熱処理した。なお、熱処理時間に
対する比抵抗の変化を図2に示した。
【0028】[実施例2]スパッタガスの酸素分圧を本
発明で言うところの高濃度酸素雰囲気である0.2mT
orrとした以外は、実施例1と同様に透明導電性積層
体を作製し熱処理をした。
【0029】[比較例1]スパッタガスの酸素分圧を
0.03mTorrとし、熱処理を施さないこと以外は
実施例1と同様にして透明導電性積層体を作製した。こ
れは比抵抗が最小となるようにする通常条件に相当する
ITO膜の製膜条件である。以上のようにして作製した
実施例1〜2、及び比較例1の透明導電性積層体の耐熱
性、耐湿熱性及びITO膜の熱処理前後の結晶性は以下
の方法で評価した。
【0030】1)耐熱性 四端子法によりシート抵抗:R0(Ω/□)を測定し、
大気中150℃の条件下で2時間放置した後のシート抵
抗:R1(Ω/□)との比、R1/R0で判定した。すな
わちR1/R0が1.0の時に抵抗値の変化しない、耐熱
性に優れた透明導電性積層体といえる。なお、図4に実
施例1と比較例1の透明導電性積層体の熱処理時間に対
する抵抗の変化をグラフに示した。 2)耐湿熱性 四端子法によりシート抵抗:R0(Ω/□)を測定し、
40℃、湿度90%の条件下で100時間放置した後の
シート抵抗:R2(Ω/□)との比、R2/R0で判定し
た。すなわちR2/R0が1.0の時に抵抗値の変化しな
い、耐熱性に優れた透明導電性積層体といえる。 3)熱処理前後の結晶性 θ−2θ法によるX線回折パターンをとり、2θ=30
°〜31°のIn23(222)ピーク、及び2θ=3
5°〜36°のIn23(400)ピークの有無によ
り、大気中150℃2時間の熱処理前後の結晶性を判定
した。以上の結果を[表1]に掲げる。
【0031】
【表1】
【0032】[表1]から明らかなように、ポリアリレ
ートフィルムに1×10-2Ω・cm未満の比抵抗が最小と
なる条件でITO膜を形成し透明導電性積層体とすると
熱処理、湿熱処理後にシート抵抗が2倍以上に上昇する
が、比抵抗1×10-2Ω・cm以上かつ非晶質のITO膜
を高酸素濃度雰囲気下で形成し、熱処理により該膜を比
抵抗1×10-2Ω・cm未満かつ非晶質にした、本発明の
透明導電性積層体は、熱処理、湿熱処理後の抵抗上昇が
小さく、耐熱性、耐湿熱性は著しく改善される。
【0033】
【発明の効果】以上のごとく、本発明においては、ポリ
アリレート成形物の一方の主面に、主としてインジウム
とスズからなる酸化物で構成される比抵抗1×10-2Ω
・cm以上かつ非晶質の透明導電層を高酸素濃度雰囲気下
で形成し、処理により該層を比抵抗1×10-2Ω・cm未
満かつ非晶質の透明導電層とすることにより、透明な基
体としてポリアリレート等を用いても耐熱性、耐湿熱性
に優れる透明導電性積層体を提供することができる。
【0034】本発明の透明導電性積層体は、液晶ディス
プレイ、透明タッチパネル、エレクトロルミネッセンス
面発光体、エレクロトクロミック表示素子等の透明電極
や電磁波シールドに好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】製膜時の酸素分圧(酸素濃度)と製膜されたI
TO膜の比抵抗の関係を示したグラフ
【図2】実施例1の透明導電性積層体の熱処理時間に対
する比抵抗の変化を示すグラフ
【図3】非晶質ITO膜と結晶質ITO膜のθ−2θ法
によるX線回折パターン
【図4】実施例1および比較例1の透明導電性積層体の
熱処理時間に対する抵抗変化を示すグラフ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 福田 信弘 神奈川県横浜市栄区笠間町1190番地 三井 東圧化学株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリアリレート成形物上に、少なくとも
    主としてインジウムとスズからなる酸化物で構成される
    比抵抗1×10-2Ω・cm以上かつ非晶質の透明導電層を
    設けた透明導電性積層体であって、該透明導電層は、処
    理により該層を比抵抗1×10-2Ω・cm未満かつ非晶質
    となる透明導電層であることを特徴とする透明導電性積
    層体。
  2. 【請求項2】 該透明導電層におけるスズ酸化物の含有
    量が、10〜70重量%であることを特徴とする請求項
    1記載の透明導電性積層体。
  3. 【請求項3】 該透明導電層におけるスズ酸化物の含有
    量が、10〜50重量%であることを特徴とする請求項
    1又は2記載の透明導電性積層体。
  4. 【請求項4】 該透明導電層におけるスズ酸化物の含有
    量が、15〜35重量%であることを特徴とする請求項
    1〜3のいずれかに記載の透明導電性積層体。
  5. 【請求項5】 該透明導電層が高酸素濃度雰囲気下でス
    パッタリング法により形成したものである請求項1〜4
    のいずれかに記載の透明導電性積層体。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の透明導
    電性積層体を処理し、該透明導電層を比抵抗1×10-2
    Ω・cm未満かつ非晶質とした透明導電性積層体。
  7. 【請求項7】 処理が、大気、窒素雰囲気下、又は真空
    中における処理温度80℃以上180℃以下の熱処理で
    あることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の
    透明導電性積層体。
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