JP2841748B2 - 筒内噴射式2サイクル内燃機関 - Google Patents

筒内噴射式2サイクル内燃機関

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は筒内噴射式2サイクル内燃機関に関する。
〔従来の技術〕
ピストン頂面上に凹溝を形成し、燃焼室内に燃料噴射
弁を配置して機関高負荷運転時に燃料噴射弁から2回に
分けて燃料を噴射し、排気弁が閉弁した直後に第1回目
の噴射を行い、その後該凹溝に向けて第2回目の噴射を
行って凹溝内に噴射された燃料を点火栓により着火する
ようにした筒内噴射式4ストローク内燃機関が公知であ
る(特開昭62−191622号公報参照)。この内燃機関では
第1回目の噴射により燃焼室内全体に広がる稀薄混合気
を形成し、第2回目の噴射により凹溝内に供給された燃
料を点火栓により着火し、これを着火源として燃焼室内
全体に広がる稀薄混合気を着火せしめるようにしてい
る。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところで混合気を稀薄にすると火炎の伝播速度が遅く
なり、従って混合気を十分に気化させておかないと混合
気全体に火炎が伝播しないために多量の未燃HCが発生す
ることになる。従って上述の内燃機関におけるように点
火栓による着火火炎を着火源として稀薄混合気を着火せ
しめるようにした混合には稀薄混合気を十分に気化させ
る必要がある。
ところが上述の内燃機関では第1回目の噴射と第2回
目の噴射とで例えば燃料噴射弁のニードルのリフト量を
変えることによって噴射燃料の貫徹力を変えており、第
1回目の噴射では噴射燃料がピストン頂面やシリンダボ
ア内壁面に到達しないように、即ち燃料噴射弁の周りに
噴射燃料が集まるように噴射燃料の貫徹力を弱めるよう
にしている。しかしながらこのように燃料噴射弁の周り
に噴射燃料が集まるように噴射燃料の貫徹力を弱めると
噴射燃料が十分に気化せず、斯くして多量の未然HCが発
生するという問題がある。
〔課題を解決するための手段〕
上記問題点を解決するために本発明によれば、燃焼室
内に燃料噴射弁を配置して機関高負荷運転時に燃料噴射
弁から2回に分けて燃料を噴射するようにした筒内噴射
式2サイクル内燃機関において、ピストン頂面上に凹溝
を形成して凹溝内に噴射された燃料を点火栓により着火
するようにし、排気弁が閉弁する前後において第1回目
の噴射を行うと共に噴射された燃料をピストンの頂面に
衝突させ、その後該凹溝に向けて第2回目の噴射を行う
ようにしている。
〔作 用〕
第1回目の噴射時に噴射された燃料はピストンの頂面
に衝突し、このとき燃料はピストンから熱を受け取って
良好に気化する。
〔実施例〕
第1図および第3図を参照すると、1はシリンダブロ
ック、2はシリンダブロック1内で往復動するピスト
ン、3はシリンダブロック1上に固定されたシリンダヘ
ッド、4はシリンダヘッド3の内壁面3aとピストン2の
頂面間に形成された燃焼室を夫々示す。シリンダヘッド
内壁面3a上には凹溝5が形成され、この凹溝5の底壁面
をなすシリンダヘッド内壁面部分3b上に一対の給気弁6
が配置される。一方、凹溝5を除くシリンダヘッド内壁
面部分3cは傾斜したほぼ平坦をなし、このシリンダヘッ
ド内壁面部分3c上に一対の排気弁7が配置される。シリ
ンダヘッド内壁面部分3bとシリンダヘッド内壁面部分3c
は凹溝5の周壁8を介して互いに接続されている。この
凹溝周壁8は給気弁6の周縁部に極めて近接配置されか
つ給気弁6の周縁部に沿って円弧状に延びる一対のマス
ク壁8aと、給気弁6間に位置する新気ガイド壁8bと、シ
リンダヘッド内壁面3aの周壁と給気弁6間に位置する一
対の新気ガイド壁8cとにより構成される。各マスク壁8a
は最大リフト位置にある給気弁6よりも下方まで燃焼室
4に向けて延びており、従って排気弁7側に位置する給
気弁6周縁部と弁座9間の開口は給気弁6の開弁期間全
体に亙ってマスク壁8aにより閉鎖されることになる。ま
た、各新気ガイド壁8b,8cはほぼ同一平面内に位置して
おり、更にこれらの新気ガイドお壁8b,8cは両給気弁6
の中心を結ぶ線に対してほぼ平行に延びている。点火栓
10はシリンダヘッド内壁面3aの中心に位置するようにシ
リンダヘッド内壁面部分3c上に配置されている。一方、
排気弁7に対して排気弁7と弁座11間の開口を覆うマス
ク壁が設けられておらず、従って排気弁7が開弁すると
排気弁7と弁座11間に形成される開口はその全体が燃焼
室4内に開口することになる。
シリンダヘッド3内には給気弁6に対して給気ポート
12が形成され、排気弁7に対して排気ポート13が形成さ
れる。一方、両給気弁6の間のシリンダヘッド内壁面3a
の周縁部には燃料噴射弁14が配置され、この燃料噴射弁
14から燃料が燃焼室4内に向けて噴射される。
第1図および第2図に示されるようにピストン2の頂
面上には点火栓10の下方から燃料噴射弁14の先端部の下
方まで延びる凹溝15が形成される。第1図および第2図
に示される実施例ではこの凹溝15は点火栓10と燃料噴射
弁14とを含む垂直平面K−Kに対して対称なほぼ球面状
をなす。また、ピストン2の頂面の中心部には凹溝15よ
りも曲率の小さな球面状をなす凹所16が形成される。こ
の凹所16も垂直平面K−K上に形成されており、この凹
所16は凹溝15の凹状内壁面の上方部に開口している。第
1図に示すように、ピストン2が上死点に達すると点火
栓10が凹所16内に侵入する。一方、凹所16に関して凹溝
15と反対側のピストン2の頂面部分2aは傾斜したほぼ平
坦面から形成され、第1図に示すようにピストン2が上
死点に達するとシリンダヘッド内壁面部分3cとピストン
頂面部分2a間にはスキッシュエリア17が形成される。
第4図に示されるように第1図から第3図に示す実施
例では排気弁7が給気弁6よりも先に開弁し、排気弁7
が給気弁6よりも先に閉弁する。また、第4図において
Ilは機関低負荷運転時における燃料噴射時期を示してお
り、Ih1およびIh2は機関高負荷運転時における燃料噴射
時期を示している。従って第4図から機関高負荷運転時
には2回に分けて燃料噴射が行われることがわかる。更
に第4図に示されるように機関高負荷運転時における第
1回目の燃料噴射Ih1は排気弁7が閉弁したとき、或い
は排気弁7が閉弁する前後において行われ、第2回目の
燃料噴射Ih2は上死点TDC前50度から80度程度において行
われることがわかる。また、機関低負荷運転時における
燃料噴射時期Ilは機関高負荷運転時における第2回目の
燃料噴射時期Ih2よりも遅いことがわかる。
次に第5図を参照しつつ低負荷運転時および高負荷運
転時における噴射方法について説明する。
第5図(A)に示すように給気弁6および排気弁7が
開弁すると給気弁6を介して燃焼室4内に空気が流入す
る。このとき、排気弁7側の給気弁6の開口はマスク壁
8aによって覆われているので空気はマスク壁8aと反対側
の給気弁6の開口から燃焼室4内に流入する。この空気
は矢印Wで示すように給気弁6下方のシリンダボア内壁
面に沿い下降し、次いでピストン2の頂面に沿い進んで
排気弁7下方のシリンダボア内壁面に沿い上昇し、斯く
し空気は燃焼室4内をループ状に流れることになる。こ
のループ状に流れる空気Wによって燃焼室4内の既燃ガ
スが排気弁7を介して排出され、更にこのループ状に流
れる空気Wによって燃焼室4内には垂直面内で旋回する
旋回流Xが発生せしめられる。次いでピストン2が下死
点BDCを過ぎて上昇を開始し、給気弁6および排気弁7
が閉弁すると燃料噴射弁14からの燃料噴射が行われる。
第5図(B),(C)は機関低負荷運転時を示してお
り、第5図(D),(E),(F)は機関高負荷運転時
を示している。
第5図(B)に示されるように燃料噴射弁14からは凹
溝15の凹状内壁面に向けて燃料が噴射される。第1図か
ら第3図に示す実施例ではこの噴射燃料の噴霧は第5図
(B)に示されるように例えば円錐状をなしており、こ
の噴射燃料の噴射軸線Zは第2図に示す垂直平面K−K
内に位置している。
機関低負荷運転時には第5図(B)に示されるように
噴射軸線Zに沿う噴射燃料が鋭角θをなして斜めに凹溝
15の凹状内壁面状に衝突する。このように噴射燃料が凹
溝15の凹状内壁面上に斜めに衝突すると衝突した燃料は
第5図(C)においてF1で示されるように慣性力によっ
て凹溝15の凹状内壁面に沿い気化しつつ点火栓10の下方
に進み、次いで凹所16内に送り込まれる。機関低負荷運
転時には噴射量が少ないがこのとき大部分の噴射燃料が
点火栓10の下方に運ばれるので点火栓10の周りには着火
可能な混合気が形成されることになる。また、第5図
(A)に示されるように燃焼室4内に発生した旋回流X
はピストン2が上昇するにつれて減衰しつつ旋回半径が
次第に小さくなり、ピストン2が上死点に近づくと第5
図(B)に示されるように凹溝15の凹状内壁面に沿う旋
回流Xとなる。噴射燃料はこの旋回流Xによっても点火
栓10の下方に向かう力が与えられる。また、ピストン2
が更に上死点に近づくと第5図(C)において矢印Sで
示すようにスキッシュエリア17からスキッシュ流が噴出
し、このスキッシュ流Sも凹溝15の凹状内壁面に沿って
進む。従って噴射燃料はこのスキッシュ流Sによっても
点火栓10の下方に向かう力が与えられる。また、凹溝15
の凹状内壁面に沿い点火栓10の下方に向かう燃料は旋回
流Xおよびスキッシュ流Sによって気化せしめられ、斯
くして点火栓10の周りには十分に気化した可燃混合気が
集まることになる。斯くして噴射量が少ない機関低負荷
運転時であっても良好な着火と、それに続く良好な燃焼
が得られることになる。
一方、機関高負荷運転時には前述したように排気弁7
が閉弁する前後において燃料噴射弁14から第1回目の燃
料噴射Ih1が行われる。このように第1回目の燃料噴射I
h1は排気弁7が閉弁する前後において行われるので噴射
燃料が排気弁7を介して排気ポート13内に吹き抜けるこ
とがない。また、第1回目の燃料噴射Ih1が行われると
きには第5図(D)に示されるようにピストン2の位置
が低く、従って噴射燃料はピストン2頂面の広い範囲に
亘って衝突せしめられることになる。このときピストン
2は噴射燃料によって冷却され、噴射燃料はピストン2
から熱を受けるために噴射燃料の気化が促進されること
になる。また、このとき燃焼室4内には第5図(A)に
示すような強力な旋回流Xが発生しているので噴射燃料
と空気とが良好にミキシングされ、また噴射時期が早い
ために噴射燃料に対して燃料が気化するのに十分な時間
が与えられる。従って点火栓10による点火が行なわれる
以前に燃焼室4内に均一の混合気が形成されることにな
る。なお、燃料噴射が2回に分けて行われるので第1回
目の燃料噴射Ih1によって燃焼室4内に形成される混合
気はかなり稀薄な混合気であり、従って燃焼室4内には
かなり稀薄な均一混合気が形成される。この混合気は燃
焼室4内に残留する高温の既燃ガスによって加熱される
が混合気が稀薄であるために燃料密度が小さく、従って
この混合気は自己着火するに至らない。即ち、自己着火
して燃焼騒音が発生することもなく、またノッキングが
発生することもない。
次いで第5図(E)に示されるように機関低負荷運転
時に比べてピストン2が低い位置にあるときに第2回目
の燃料噴射Ih2が開始される。このときには第5図
(E)に示されるように噴射軸線Zに沿う噴射燃料は凹
溝15の凹状内壁面上にほぼ垂直に衝突する。このように
噴射燃料が凹溝15の凹状内壁面上にほぼ垂直に衝突する
と衝突した燃料は第5図(F)においてF2で示されるよ
うに噴射軸線Zに沿う噴射燃料の衝突点を中心として凹
溝15の凹状内壁面上を四方に広がることになる。従って
この場合に衝突した噴射燃料の一部が点火栓10の下方に
進み、次いで凹所16内に送り込まれる。このように噴射
量の多い機関高負荷運転時には噴射燃料の一部が点火栓
10の周りに送り込まれるので点火栓10の周りに形成され
る混合気は過濃とならず、斯くして点火栓10の周りには
良好に着火可能な混合気が形成される。また、機関高負
荷運転時には噴射燃料が高温の凹溝15の凹状内壁面上に
広範囲に分散されるので噴射燃料の気化が促進され、し
かも2回に分けて噴射されているために凹溝15内に噴射
される燃料量が少ないので噴射燃料は十分に気化せしめ
られる。従って凹溝15内に噴射された燃料は十分な空気
の存在下で燃焼せしめられるのでスモークが発生するこ
とがない。また、機関高負荷運転時にも第5図(B)に
示すような旋回流Xおよび第5図(C)に示すようなス
キッシュ流Sが発生し、従ってこれら旋回流Xおよびス
キッシュ流Sによって噴射燃料Ih2と空気とが十分にミ
キシングされるのでスモークが発生することのない良好
な燃料を得ることができる。
〔発明の効果〕 機関高負荷運転時の第1回目の噴射時には噴射燃料が
ピストン頂面に衝突せしめられる。その結果、この噴射
燃料はピストンから熱を受け取って良好に気化せしめら
れ、斯くして燃焼室内には十分に気化した稀薄混合気が
形成される。従って第2回目の噴射燃料が点火栓により
着火され、この着火火炎が着火源となって稀薄混合気が
着火せしめられたときに着火火炎が稀薄混合気全体にす
みやかに伝播し、斯くして未燃HCの発生量の少ない良好
な燃料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】 第1図は2サイクル内燃機関の側面断面図、第2図は第
1図のピストンの平面図、第3図は第1図のシリンダヘ
ッドの底面図、第4図は給排気弁の開弁時期および燃料
噴射時期を示す線図、第5図は機関運転中の燃焼室内の
様子を説明するための図である。 2……ピストン、4……燃焼室、 6……給気弁、7……排気弁、 10……点火栓、14……燃料噴射弁、 15……凹溝、16……凹所。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−125911(JP,A) 特開 平1−203613(JP,A) 特開 昭62−191622(JP,A) 特開 昭62−191623(JP,A) 実開 平1−124042(JP,U) 実開 平1−160172(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) F02B 1/00 - 23/10

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】燃焼室内に燃料噴射弁を配置して機関高負
    荷運転時に燃料噴射弁から2回に分けて燃料を噴射する
    ようにした筒内噴射式2サイクル内燃機関において、ピ
    ストン頂面上に凹溝を形成して凹溝内に噴射された燃料
    を点火栓により着火するようにし、排気弁が閉弁する前
    後において第1回目の噴射を行うと共に噴射された燃料
    をピストンの頂面に衝突させ、その後該凹溝に向けて第
    2回目の噴射を行うようにした筒内噴射式2サイクル内
    燃機関。
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