JP2840997B2 - 光磁気ディスク媒体の全面イレーズ装置および方法 - Google Patents

光磁気ディスク媒体の全面イレーズ装置および方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光磁気ディスク媒体や
垂直磁気記録型の磁気記録媒体を製造する際に使用され
る全面イレーズ装置および全面イレーズ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
〔光磁気ディスク装置の概要〕図5は光磁気ディスク装
置の基本構成を示す斜視図である。半導体レーザLDから
出射したレーザ光は、コリメータレンズ1で平行ビーム
となってビームスプリッタ2に導かれ、対物レンズ3で
絞られて、磁性記録膜4に照射され、レーザ光が照射さ
れた領域5のみ、局所的に温度が上昇する。
【0003】磁性記録膜4のキューリー温度付近まで昇
温すると、その保磁力が減少し、その部分の磁化が、数
百Oe程度の外部磁界6によって反転する。これによって
1μm程度の記録ピット5が形成される。
【0004】再生する場合は、図6に示すように、記録
時よりもパワーの小さいレーザ光7を磁性記録膜4に照
射する。この場合のレーザ光7は直線偏光なため、その
反射光7aの偏光面は、カー効果により、磁性記録膜4の
磁化の向きが上か下かに応じて、左回りまたは右回りに
回転する。この偏光面の回転の差を、検光子8で光の強
弱に変換し、フォトディテクター9で検出して、再生信
号とする。
【0005】〔光磁気ディスク媒体の磁化状態〕光磁気
ディスク媒体は、図7に示すように、ポリカーボネート
などの基板10上にSiNxなどで保護膜11を形成し、そ
の上にTbFeCoなどで磁性記録膜4をスパッタ成膜し、上
面をSiNxなどの保護膜12で覆った構成になっている。
磁性記録膜4は、スパッタ成膜した状態では、(a)図
のように、磁化の向きが一定方向に揃っておらず、ラン
ダムな向きになっている。
【0006】そこで、(b)図のように、予め垂直磁化
の向きを一定の方向に揃えておき、媒体ノイズを低減す
る必要がある。このように、垂直磁化の向きを消去方向
に揃える処理を、全面イレーズ(バルクイレーズ)と呼
んでいる。
【0007】〔全面イレーズ方法の種類〕10〜20KOeと
いった大きな保磁力(Hc)を持つ光磁気ディスク媒体を全
面イレーズする方法は、3種類に分けられる。
【0008】永久磁石によって発生した磁界の中に、
光磁気ディスク媒体を通過させることで、全面イレーズ
する方法であり、装置が単純で、メンテナンスは動作系
のみで足りる。しかしながら、磁界が最大14KOe程度し
か得られないため、保磁力の小さな媒体にしか適用でき
ない。
【0009】電磁石によって発生した磁界の中に、光
磁気ディスク媒体を通過させる方法であり、25KOe程度
の大きな磁界が得られる。しかしながら、25KOe程度の
大きな磁界を発生させるには、重量が1トン以上もする
大型の電磁石が必要であり、また電磁石の水冷機構も必
要になる。
【0010】光磁気ディスク媒体を高温にして、保磁
力を下げた状態で、磁石で全面イレーズする。この方法
は、光磁気ディスク媒体の保磁力には制限が無いが、媒
体を加熱するため、樹脂基板に悪影響を与える恐れがあ
り、樹脂基板を用いた光磁気ディスク媒体には適しな
い。
【0011】〔従来の永久磁石式の全面イレーズ装置〕
図8は従来の永久磁石を用いた全面イレーズ装置を示す
側面図とb−b断面図である。2個の永久磁石13、1
4を対向させ、他端同士を磁性体のヨーク15で接続し
た構造になっており、両永久磁石13、14間のギャッ
プ16中に光磁気ディスク媒体17を挿入することで、
全面イレーズする。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】ところが、このような
構造の全面イレーズ装置では、両永久磁石13、14間
に発生する磁界は14KOe程度が限度であり、その結果、
全面イレーズ後の光磁気ディスク媒体17の保磁力は10
KOe程度と小さい。光学ヘッドの特性のばらつきなどを
考慮すると、光磁気ディスク媒体の保磁力としては、10
〜20KOe程度のものが望まれている。この程度の保磁力
を実現するには、全面イレーズ装置としては、25KOe程
度以上の磁界を発生可能とすることが必要である。
【0013】本発明の技術的課題は、このような問題に
着目し、永久磁石を用いた全面イレーズ装置において、
25KOe程度以上の大きな磁界を発生可能とすることにあ
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】図1は本発明による全面
イレーズ装置の基本構成を説明する平面図と側面図であ
る。請求項1の発明は、磁性体からなる一対のヨーク1
8、19を対向させて、両ヨーク18、19間を光磁気
ディスク媒体17が通過可能となっている。そして、片
方のヨーク18は、同極(例えばN極)同士が対向した
一対の永久磁石20、21で挟まれている。
【0015】他方のヨーク19は、前記永久磁石20、
21のヨーク18側の極性(例えばN極)とは異なる同
極(例えばS極)同士が対向している一対の永久磁石2
2、23で挟まれている。
【0016】請求項2は、前記のヨーク18、19と平
行に、かつ少なくとも片側に、前記のヨーク18、19
間の磁界と同じ向きの補助磁界F8を発生させる補助の
磁気回路を設けてなる全面イレーズ装置である。
【0017】請求項3は、前記の一対のヨーク18、1
9が、全面イレーズされる光磁気ディスク媒体17の通
過方向Xに対し直交する方向(Y方向)に細長い形状を
している全面イレーズ装置である。
【0018】請求項4は、請求項2の装置で光磁気ディ
スク媒体の全面イレーズを行なう際に、光磁気ディスク
媒体をヨーク18、19間に挿入した後、補助磁界中を通過
させて取り出す方法である。
【0019】
【作用】請求項1の構成によれば、図1の上下のヨーク
18と19間には、右上の永久磁石21のN極と右下の
永久磁石23のS極との間で引き合う磁束F1が発生す
る。しかも、左上の永久磁石20のN極と左下の永久磁
石22のS極との間でも、引き合う磁束F2が発生す
る。
【0020】また、上側の一対の永久磁石20、21間
では、N極同士で反発する磁束F3が発生するが、この
反発磁束F3は結局は、ヨーク18によって下側のヨー
ク19に導かれる磁束F4となる。下側の一対の永久磁
石22、23間でも、S極同士で反発する磁束F5が発
生するが、この反発磁束F5も結局は、ヨーク19によ
って上側のヨーク18中の反発磁束F3を引き込むよう
に作用する。
【0021】したがって、ヨーク18、19間には、永
久磁石2対分の磁束が集中することになり、図8の場合
と同程度の磁力を有する永久磁石で構成した場合は、2
倍近い磁界を得ることができる。そして、この磁界中に
光磁気ディスク媒体17を挿入して全面イレーズする
と、光磁気ディスク媒体17の保磁力を格段に向上でき
る。なお、F6、F7は、上下の永久磁石間のヨーク1
8、19を通らない、逆向きの磁束である。
【0022】ヨーク18、19間の磁界で一方向に全面
イレーズされても、保磁力の小さな光磁気ディスク媒体
の場合は、光磁気ディスク媒体を取り出すために、ヨー
ク18、19を通らない逆向きの磁界F6またはF7を
通過する際に、逆方向に全面イレーズされてしまう。
【0023】ところが、請求項2のように、磁石24、
25等による補助の磁界を配設して、前記のヨーク1
8、19間の磁束F1、F2、F4と同じ方向の補助磁界F8を
発生させると、逆向きの磁界F6、F7によって逆方向
に全面イレーズされても、補助の磁界F8によって、再
び正規の磁化方向に全面イレーズされる。したがって、
製造ばらつきなどで保磁力の小さな光磁気ディスク媒体
でも、確実に全面イレーズできる。
【0024】請求項3のように、前記の一対のヨーク1
8、19を、全面イレーズされる光磁気ディスク媒体1
7の通過方向Xに対し直交する方向(Y方向)に細長い
形状にすると、光磁気ディスク媒体17をヨーク18、
19間に挿入して通過させるだけで、光磁気ディスク媒
体17の全面を一斉に全面イレーズできる。
【0025】請求項4のように、請求項2の装置におい
て、光磁気ディスク媒体がヨーク18、19間に挿入された
後、補助磁界中を通過する際に、光磁気ディスク媒体は
再び正規の方向に全面イレーズされるので、ヨーク1
8、19による逆方向磁界の影響が解消される。
【0026】
【実施例】次に本発明による光磁気ディスク媒体の全面
イレーズ装置が実際上どのように具体化されるかを実施
例で説明する。図2は請求項1の発明の実施例を示す平
面図と側面図である。ヨーク18、19の幅Wを6mm、
ヨーク18、19および各永久磁石20〜23の長さL
を170mm とすることで、直径が130mm または86mmの光磁
気ディスク媒体を全面イレーズできるようにした。
【0027】このように、一対のヨーク18、19の長
さを、全面イレーズされる光磁気ディスク媒体17の通
過方向Xに対し直交するY方向に細長い形状とし、かつ
該光磁気ディスク媒体17の直径より長くすることによ
り、全面を確実に全面イレーズできる。
【0028】ヨーク18、19の先端は、永久磁石20
〜23より突出しており、かつ磁束が集中するようにテ
ーパ状に形成されている。また、ヨーク18、19の間
隔は、4mmとした。この構成により、両ヨーク18、1
9間において、24KOeの磁界を得ることができた。
【0029】図3は請求項2の発明の実施例を示す平面
図と側面図である。この実施例では、ヨーク18、19
間に、図の左側から光磁気ディスク媒体17を挿入し、
右側から取り出すものとすると、取り出し側に、前記の
ヨーク18、19間の磁界と同じ方向の磁界を発生させ
る補助の磁気回路を設けてある。
【0030】この実施例では、補助の磁気回路は、ヨー
ク18、19と平行に補助のヨーク26、27を対向配
置し、両補助ヨーク26、27間に、ヨーク18、19
間の磁界と同じ向きの磁界F8を発生させるための永久
磁石28、29が隣接配置されている。
【0031】図3における数値は、ヨーク18、19の
中心位置から各部までの実寸(単位:mm)を記入したも
のであり、これら各位置における磁界を実測すると、図
4のようになる。図4において、横軸はヨーク18、1
9の中心からの位置、縦軸は磁界の方向と大きさであ
り、正方向が全面イレーズ方向の磁界、負方向が全面イ
レーズと逆方向の磁界である。
【0032】磁界の値を示す曲線のピークP1は、ヨー
ク18、19間に発生する全面イレーズ方向の磁界の
値、ピークP2は図1における逆方向の磁界F7の値、
ピークP3は図1における逆方向の磁界F6の値、ピー
クP4は補助の磁気回路から発生する逆方向磁界F9の
値、ピークP5は補助の磁気回路から発生する全面イレ
ーズ方向の磁界F8の値である。
【0033】この図からも明らかなように、ヨーク1
8、19間で最大24KOeの大きな磁界が発生するので、
10〜20KOe程度といった大きな保磁力を持つ光磁気ディ
スク媒体の全面イレーズが可能となる。しかしながら、
ヨーク18、19間に対し前後において、ピークP2、
P3のように、7〜8KOe程度の逆方向の磁界F7、F
6が発生する。
【0034】10〜20KOe程度の大きな保磁力をもつ光磁
気ディスク媒体の場合は、ヨーク18、19間で全面イ
レーズされた後に、逆方向の磁界F7またはF6を通過する
際に、7〜8KOe程度の逆方向の磁界が印加されても、
磁性記録膜の磁界は反転しない。
【0035】しかしながら、製造ばらつき等によって6
〜10KOe程度といった小さな保磁力をもつ光磁気ディス
ク媒体の場合は、逆方向の磁界F7またはF6を通過する際
に、7〜8KOe程度の逆方向の磁界によって逆方向に全
面イレーズされてしまう恐れがある。ところが、補助磁
界によって10KOe以上の正方向の磁界が発生しているの
で、逆方向の磁界F7やF6、F9によって逆方向に磁化され
ても、最後に正方向の磁界F8によって再び正規の方向に
全面イレーズされることになる。
【0036】なお、この実施例の装置では、全面イレー
ズされる光磁気ディスク媒体17は、図の左側から右側
に移動して、ヨーク18、19間、ヨーク26、27間
を通過することになる。あるいは、矢印a1のように右か
ら左に通過させた後、矢印a2のように左から右に逆戻り
させて取り出してもよい。
【0037】以上、光磁気ディスク媒体の全面イレーズ
について説明したが、本発明は、垂直磁気記録型の磁気
記録媒体における全面イレーズにも適用できる。
【0038】
【発明の効果】以上のように、請求項1によれば、上側
の永久磁石20、21と下側の永久磁石22、23との
間で引き合う磁界に加えて、上側の永久磁石20、21
間の反発磁界F3および下側の永久磁石22、23間の
反発磁界F5が、ヨーク18、19間に有効に導かれる
ため、永久磁石4個分の磁界をヨーク18、19間に集
中させることが可能となり、極めて大きな磁界を得るこ
とができる。また、永久磁石とヨークのみで構成できる
ので、装置が簡単で、メンテナンスも容易である。
【0039】請求項2のように、ヨーク18、19間の
磁界と同じ方向の補助の磁界F8を発生させる構成では、
保磁力が小さいために、逆向きの磁界F6、F7によっ
て逆方向に全面イレーズされても、補助の磁界F8によ
って、再び正規の磁化方向に全面イレーズされるため、
保磁力の小さな光磁気ディスク媒体であっても、最終的
には正規の方向に全面イレーズされる。
【0040】したがって、保磁力の小さな媒体から大き
な媒体まで適用でき、各光磁気ディスク媒体間に保磁力
のばらつきがあったりしても問題はなく、また対象媒体
が制限されることもない。
【0041】請求項3のように、前記の一対のヨーク1
8、19を、全面イレーズされる光磁気ディスク媒体1
7の通過方向に対し直交する方向に細長い形状にするこ
とで、光磁気ディスク媒体17の全面を一斉にかつ確実
に全面イレーズできる。
【0042】請求項4のように、請求項2の装置におい
て、光磁気ディスク媒体をヨーク18、19間に挿入した
後、補助磁界側から取り出すことにより、ヨーク18、
19による逆方向の磁界で逆方向に全面イレーズされた
光磁気ディスク媒体が、補助磁界によって再び正規の方
向に全面イレーズされるので、保磁力の小さな光磁気デ
ィスク媒体であっても、確実に正規の方向に全面イレー
ズできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による光磁気ディスク媒体の全面イレー
ズ装置の基本構成を示す平面図と側面図である。
【図2】請求項1の発明の実施例を示す平面図と側面図
である。
【図3】請求項2の発明の実施例を示す平面図と側面図
である。
【図4】図3の実施例装置の各部における磁界の実測値
を示す図である。
【図5】光磁気ディスク装置の基本構成を示す斜視図で
ある。
【図6】光磁気ディスク媒体の再生原理を示す断面図で
ある。
【図7】光磁気ディスク媒体の断面図である。
【図8】従来の永久磁石を用いた全面イレーズ装置の側
面図とb−b断面図である。
【符号の説明】
LD 半導体レーザ 1 コリメータレンズ 2 ビームスプリッタ 3 対物レンズ 4 磁性記録膜 5 記録ピット 6 外部磁界 7 レーザ光( 再生用 ) 7a 反射光 8 検光子 9 フォトディテクター 10 基板 11,12 保護膜 13,14 永久磁石 15 ヨーク 16 ギャップ 17 光磁気ディスク媒体 18,19 ヨーク 20〜23 永久磁石 F1〜F9 磁束( 磁界 ) 24,25 補助の磁石 26,27 補助のヨーク 28,29 永久磁石

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁性体からなる一対のヨーク(18)、(19)
    を対向させて、両ヨーク(18)、(19)間を光磁気ディスク
    媒体が通過可能とし、 片方のヨーク(18)は、同極同士が対向する一対の永久磁
    石(20)、(21)で挟まれ、 他方のヨーク(19)は、前記永久磁石(20)、(21)のヨーク
    (18)側の極性とは異なる同極同士が対向する一対の永久
    磁石(22)、(23)で挟まれてなることを特徴とする光磁気
    ディスク媒体の全面イレーズ装置。
  2. 【請求項2】 前記のヨーク(18)、(19)と平行に、かつ
    少なくとも片側に、前記のヨーク(18)、(19)間の磁界と
    同じ方向の補助磁界を発生させる磁気回路を設けてなる
    ことを特徴とする請求項1記載の光磁気ディスク媒体の
    全面イレーズ装置。
  3. 【請求項3】 前記の一対のヨーク(18)、(19)は、全面
    イレーズされる光磁気ディスク媒体の通過方向に対し直
    交する方向に細長い形状をしていることを特徴とする請
    求項1または請求項2記載の光磁気ディスク媒体の全面
    イレーズ装置。
  4. 【請求項4】 請求項2の装置において、光磁気ディス
    ク媒体をヨーク(18)、(19)間に挿入した後、補助磁界中
    を通過させて取り出すことを特徴とする光磁気ディスク
    媒体の全面イレーズ方法。
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