JP2835042B2 - 耐熱アルミニウム合金導電線の製造方法 - Google Patents
耐熱アルミニウム合金導電線の製造方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、導電性、耐熱性及び機械的強度が優れた耐
熱アルミニウム合金導電線の製造方法に関する。 [従来の技術] 電力需要の増大から、送電容量を高めるべく、電気用
アルミニウム(Al)にジルコニウム(Zr)を微量添加し
た耐熱アルミニウム合金が実用化されている。つまり、
送電容量が増大すると、電線温度が上昇するため、通常
の電気用アルミニウムに替えて、耐熱アルミニウム合金
導電線が使用される。 [発明が解決しようとする問題点] しかしながら、この耐熱アルミニウム合金は耐熱性を
有するものの、引張強さについては通常の電気用アルミ
ニウム線と同等のレベルであり、山岳地のように高強度
が要求される場合には架線することができない。 本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであっ
て、少なくとも従来の耐熱アルミニウム合金と同程度の
耐熱性及び導電率を有し、強度を高力アルミニウム合金
と同等以上に向上させた高力耐熱アルミニウム合金を提
供することを目的とする。 [問題点を解決するための手段] 本発明に係る耐熱アルミニウム合金導電線の製造方法
は、0.29乃至1.0重量%のZr、0.01乃至1.0重量%のCu、
0.03乃至0.4重量%のSi、0.08乃至0.8重量%のFe及び0.
05乃至0.5重量%のBeを含有し、残部Al及び不可避的不
純物からなる合金を溶製した後、ベルトアンドホイール
式の連続鋳造機により5℃/秒以上の冷却速度で鋳造
し、450乃至580℃の温度から5℃/秒以上の冷却速度で
冷却しつつ200℃以下の仕上がり温度になるまでに70%
以上の減面率の加工を加え、次いで、280乃至480℃で6
乃至250時間熱処理した後、60%以上の加工率で冷間加
工を施し、この冷間加工後に、200乃至450℃の温度で1
乃至100時間熱処理することを特徴とする。 先ず、各添加成分の添加理由及び組成限定理由につい
て説明する。 Zr ZrはAl合金の強度及び耐熱性を向上させる成分であ
り、Zr含有量が0.29重量%(以下、単に%で現す)未満
では後述する熱処理を施しても、十分な強度と耐熱性を
確保する析出物が得られない。つまり、Al−Zr合金にお
けるZrの固溶限は0.28%であり、この固溶限を超えるZr
を添加してZrを強制固溶させ、AlとZrの化合物をAl3Zr
の形で微細析出させることにより耐熱性を高め、同時に
強度を向上させる。逆に、Zr含有量が1.0%を超える
と、溶湯の温度が高くなり過ぎて、鋳造が困難になるの
に加え、線材における導電率が低下してしまう。 Cu Cu(銅)はAl合金の強度を向上させるために添加す
る。CuはAl中に固溶した状態で入っているため、高温及
び長時間の熱処理を行なった後も、加工硬化能が低下し
ない。しかし、Cu含有量が0.01%以下では、このような
効果が少なく、所望の強度が得られない一方、1.0%を
超えると、鋳造が困難になると共に、導電率が著しく低
下し、伸線加工の性能、耐食性及び靭性等も低下する。 Si Si(シリコン)はZrの析出の核となって析出を促進さ
せると共に、線材の強度を高める成分である。しかし、
Siの含有量が0.03%未満の場合には、Zrの析出のための
核が不足して析出による効果が得られず、0.4%を超え
ると鋳造が困難になると共に、脆化が起こって加工困難
となり、導電率も低下する。 Fe Fe(鉄)はAl合金中に0.08乃至0.8%の含有量で添加
する。Feはこのアルミニウム合金導電線をベルトアンド
ホイール式の連続鋳造機により製造する際に、割れが発
生することを抑制する作用を有する。また、Feは強度及
び耐熱性の向上にも寄与する。但し、Feの含有量が0.08
%未満では、所望の強度及び耐熱性が得られず、0.8%
を超えると、加熱後にAl合金の脆化が生じると共に、導
電率も低下してしまう。 Be 本発明においては、Al合金中にベリリウム(Be)を0.
005乃至0.5%含有させる。Beはマトリックスのチタン
(Ti)等の種々の不可避的不純物と化合して析出し、マ
トリックス内を清浄にすることにより導電率を高める。
しかし、Beの含有量が0.005%未満の場合は、導電率上
昇効果が得られず、また、0.5%を超えてBeを添加して
も、その添加効果は飽和し無駄である。また、Beを過剰
に添加すると、Beがマトリックス中に固溶してしまうた
め、却って導電率が低下する。このような理由でBe含有
量を0.005乃至0.5%に設定する。 次に、上述の組成を有するAl合金から導電線を製造す
る条件について説明する。本発明においては、Al合金を
溶製した後、5℃/秒以上の冷却速度で冷却しつつ鋳造
し、その鋳塊を450〜580℃の温度から同様に5℃/秒以
上の冷却速度で冷却しつつ加工を加える。この加工処理
においては、200℃以下の仕上がり温度になるまでに、7
0%以上の減面率で加工する。 先ず、鋳造時の冷却速度を5℃/秒以上としたのは、
固溶限を超えて添加したZrを強制固溶させるためであ
る。冷却速度が5℃/秒未満では固溶限を超える部分の
Zrが鋳造中に析出してしまう。 次に、圧延時においては、5℃/秒以上の冷却速度で
冷却しつつ、450〜580℃の温度から加工を開始し、Al合
金を200℃以下になるまでに70%以上の減面率で加工す
る。この場合に、圧延開始温度が450℃未満の場合には
鋳塊が硬くて加工が困難であり、割れが入ることもあ
る。また、圧延開始温度が580℃を超えると、高温割れ
を起こし易い。 更に、圧延終了温度が200℃を超える場合には、冷却
による効果が弱いため、Zrの強制固溶が充分になされな
い。また、この圧延における減面加工率が70%未満で
は、最終線材とした場合の強度が不足する。 その後、圧延線材を280〜480℃の温度で6〜250時間
熱処理する。この熱処理により、Zrは微細なAl3Zrとし
て分散析出し、Al合金の強度、耐熱性及び導電率を向上
させる。この場合に、熱処理温度を280〜480℃、熱処理
時間を6〜250時間と限定したのは、熱処理温度が280℃
未満であり、熱処理時間が6時間未満の場合には、Zrの
析出が充分でなく、所望の強度、導電率及び耐熱性が得
られない。また、熱処理温度が480℃を超え、更に熱処
理時間が250時間を超えると、析出物が粗大となり、強
度が著しく低下すると共に、高価なZrの浪費となる。 この熱処理の後、60%以上の減面率の冷間加工を加え
る。これは、Al合金の強度を上昇させるためであり、減
面率が60%未満では加工硬化が不足し、充分な強度が得
られない。 この冷間伸線処理により、仕上り線として、所要の性
能を満足する特性が得られる。しかし、冷間伸線後、更
に200〜450℃で1〜100時間の熱処理を線状に加える
と、導電率及び耐熱性が更に一層優れた導電線が得られ
る。この熱処理の場合にも、熱処理温度が200℃以下、
熱処理時間が1時間以下の場合には、Zrが充分に析出せ
ず導電率及び耐熱性は殆ど向上しない。また、熱処理温
度が450℃以上、熱処理時間が100時間以上の場合には、
軟化が著しくなるという不都合がある。 [実施例] 次に、本発明方法により製造したAl合金導電線につい
て、その特性を試験した結果を、比較例についての試験
結果と共に説明する。下記実験データは、いずれも連続
鋳造圧延法により行なったものである。 各元素(Zr,Cu,Si,Fe,Be)の添加量と特性との関係 下記第1表に示す組成の合金を溶解し、15℃/秒の冷
却速度で鋳造し、鋳塊の温度が520℃となった時から、1
5℃/秒の冷却速度で圧延を開始し、加工度90%、仕上
がり温度170℃の条件で9.5mm径の荒引線を作成した。 この荒引線を360℃に、48時間過熱して熱処理した
後、連続伸線機により冷間伸線し、3.5mm径の線材とし
た。なお、第1表中、耐熱性の欄は、線材を230℃に1
時間加熱した後の引張強さを加熱前の引張強さに対する
比(残存率)で表わしたものである。 比較例18はZrが不足するためにその他の成分の含有量
がほぼ同等である実施例2に比較して引張強さが低く、
比較例19はCuが不足するためにその他の成分の含有量が
ほぼ同等である実施例2に比較して引張強さが低く、比
較例20はSiが不足するためにその他の成分の含有がほぼ
同等である実施例16に比較して引張強さが低く、比較例
21はFeが不足するためにその他の成分の含有量がほぼ同
等である実施例2に比較して引張強さ及び耐熱性が低
い。また、比較例22はBeが不足するために、その他の成
分の含有量がほぼ同等である実施例2、実施例12及び実
施例15等に比較して導電率が低い。更に、比較例22,24
及び25は夫々Zr、Cu及びSiが過剰であるために、鋳造が
困難であった。比較例26はFeが過剰であるために、その
他の成分の含有量がほぼ同等である実施例5に比較して
導電率が低く、また、比較例27はBeが過剰であるため
に、その他の成分の含有量がほぼ同等である実施例12と
比較して導電率が低下した。なお、比較例26は鋳造が若
干困難であった。これに対し、実施例合金は比較例合金
に比していずれも引張強さ、導電率及び耐熱性が全体的
に優れていた。鋳造及び圧延時の冷却速度と特性との関係 前述の第1表に示したNo.2の合金を、下記第2表に示
す冷却速度により、鋳造及び圧延した。 この鋳造圧延試験では、No.2の合金系を使用し、鋳造
時の冷却速度と圧延時の冷却速度とを等しくした。但
し、圧延終了温度は、170℃であり、直径が9.5mmの荒引
線を試作した。この荒引線に対し360℃で48時間の熱処
理を行なった後、冷間伸線により、直径が3.5mmの線材
とした。第2表の結果からわかるように、鋳造時及び圧
延時の冷却速度が5℃/秒以下では強制固溶されるZrの
量が少なく強度及び耐熱性が低い。 圧延終了温度と特性との関係 第1表に示したNo.2の合金を冷却速度15℃/秒で鋳造
及び圧延し、圧延終了温度を下記第3表のように変化さ
せて、直径が9.5mmの荒引線を製作した。 圧延終了温度は冷却液の量で調整した。この荒引線を
360℃に48時間熱処理した後、冷間伸線により、直径が
3.5mmの線材とした。第3表の結果からわかるように、
圧延終了温度が200℃を超えると、強制固溶されるZrの
量が少なく、強度及び耐熱性が低い。 圧延時(荒引線に至るまで)の減面率と特性との関係 第1表のNo.2の合金を、15℃/秒の冷却速度で鋳造及
び圧延し、圧延終了温度を170℃として、直径が9.5mmの
荒引線を試作した。圧延の減面率を下記第4表に示すよ
うに変更した。 この荒引線を360℃に48時間熱処理した後、連続伸線
機により冷間伸線し、直径が3.5mmの線材とした。その
特性調査結果を前述の第4表に示したが、圧延時の減面
率が70%未満では強度及び耐熱性が低いことがわかる。
この理由は、Al3Zrを微細分散析出させるためには、多
数の転位を導入しておくことが有効であるが、減面率が
高いほど、転位が多くなるためである。 荒引線の熱処理温度及び時間と特性との関係 第1表のNo.2の組成の合金を、15℃/秒の冷却速度で
鋳造及び圧延し、圧延終了温度を170℃として直径が9.5
mmの荒引線を製作した。この荒引線を下記第5表に示す
各条件で熱処理し、その後連続伸線機により冷間伸線し
て直径が3.5mmの線材とした。 第5表に示したように、熱処理温度が280℃未満(240
℃)又は熱処理時間が6時間未満(3時間)では、Zrの
析出が不十分であり、引張強さ、導電率及び耐熱性が低
い。一方、熱処理温度が480℃より高い場合(510℃)及
び熱処理時間が250時間より長い場合(270時間、300時
間)は、再結晶が開始してしまい、引張強さの低下が見
られる。また、特に温度が高い場合は、粗大な析出物が
多く見られ、軟化が著しい。 素線段階での熱処理温度及び時間と特性との関係 第5表で直径が9.5mmの荒引線段階において360℃に12
時間熱処理を施したものに対し、直径が3.5mmにおいて
下記第6表に示すような熱処理を行なった。この第6表
に示すように、熱処理の温度が200℃未満(180℃)、時
間が1時間未満(0.5時間)では熱処理の効果が見られ
ず、また450℃を超え(480℃)、100時間を超える(120
時間)場合には再結晶による軟化が起こり、引張強さが
低下してしまう。[発明の効果] 以上詳細に説明したように、本発明によれば、高強度
且つ高導電率であり、耐熱性が優れた高力耐熱アルミニ
ウム合金導電線を得ることができ、これにより、送電容
量を高めることが可能であり、本発明は電力需要の増大
という背景のもとで、極めて実益が高い。
熱アルミニウム合金導電線の製造方法に関する。 [従来の技術] 電力需要の増大から、送電容量を高めるべく、電気用
アルミニウム(Al)にジルコニウム(Zr)を微量添加し
た耐熱アルミニウム合金が実用化されている。つまり、
送電容量が増大すると、電線温度が上昇するため、通常
の電気用アルミニウムに替えて、耐熱アルミニウム合金
導電線が使用される。 [発明が解決しようとする問題点] しかしながら、この耐熱アルミニウム合金は耐熱性を
有するものの、引張強さについては通常の電気用アルミ
ニウム線と同等のレベルであり、山岳地のように高強度
が要求される場合には架線することができない。 本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであっ
て、少なくとも従来の耐熱アルミニウム合金と同程度の
耐熱性及び導電率を有し、強度を高力アルミニウム合金
と同等以上に向上させた高力耐熱アルミニウム合金を提
供することを目的とする。 [問題点を解決するための手段] 本発明に係る耐熱アルミニウム合金導電線の製造方法
は、0.29乃至1.0重量%のZr、0.01乃至1.0重量%のCu、
0.03乃至0.4重量%のSi、0.08乃至0.8重量%のFe及び0.
05乃至0.5重量%のBeを含有し、残部Al及び不可避的不
純物からなる合金を溶製した後、ベルトアンドホイール
式の連続鋳造機により5℃/秒以上の冷却速度で鋳造
し、450乃至580℃の温度から5℃/秒以上の冷却速度で
冷却しつつ200℃以下の仕上がり温度になるまでに70%
以上の減面率の加工を加え、次いで、280乃至480℃で6
乃至250時間熱処理した後、60%以上の加工率で冷間加
工を施し、この冷間加工後に、200乃至450℃の温度で1
乃至100時間熱処理することを特徴とする。 先ず、各添加成分の添加理由及び組成限定理由につい
て説明する。 Zr ZrはAl合金の強度及び耐熱性を向上させる成分であ
り、Zr含有量が0.29重量%(以下、単に%で現す)未満
では後述する熱処理を施しても、十分な強度と耐熱性を
確保する析出物が得られない。つまり、Al−Zr合金にお
けるZrの固溶限は0.28%であり、この固溶限を超えるZr
を添加してZrを強制固溶させ、AlとZrの化合物をAl3Zr
の形で微細析出させることにより耐熱性を高め、同時に
強度を向上させる。逆に、Zr含有量が1.0%を超える
と、溶湯の温度が高くなり過ぎて、鋳造が困難になるの
に加え、線材における導電率が低下してしまう。 Cu Cu(銅)はAl合金の強度を向上させるために添加す
る。CuはAl中に固溶した状態で入っているため、高温及
び長時間の熱処理を行なった後も、加工硬化能が低下し
ない。しかし、Cu含有量が0.01%以下では、このような
効果が少なく、所望の強度が得られない一方、1.0%を
超えると、鋳造が困難になると共に、導電率が著しく低
下し、伸線加工の性能、耐食性及び靭性等も低下する。 Si Si(シリコン)はZrの析出の核となって析出を促進さ
せると共に、線材の強度を高める成分である。しかし、
Siの含有量が0.03%未満の場合には、Zrの析出のための
核が不足して析出による効果が得られず、0.4%を超え
ると鋳造が困難になると共に、脆化が起こって加工困難
となり、導電率も低下する。 Fe Fe(鉄)はAl合金中に0.08乃至0.8%の含有量で添加
する。Feはこのアルミニウム合金導電線をベルトアンド
ホイール式の連続鋳造機により製造する際に、割れが発
生することを抑制する作用を有する。また、Feは強度及
び耐熱性の向上にも寄与する。但し、Feの含有量が0.08
%未満では、所望の強度及び耐熱性が得られず、0.8%
を超えると、加熱後にAl合金の脆化が生じると共に、導
電率も低下してしまう。 Be 本発明においては、Al合金中にベリリウム(Be)を0.
005乃至0.5%含有させる。Beはマトリックスのチタン
(Ti)等の種々の不可避的不純物と化合して析出し、マ
トリックス内を清浄にすることにより導電率を高める。
しかし、Beの含有量が0.005%未満の場合は、導電率上
昇効果が得られず、また、0.5%を超えてBeを添加して
も、その添加効果は飽和し無駄である。また、Beを過剰
に添加すると、Beがマトリックス中に固溶してしまうた
め、却って導電率が低下する。このような理由でBe含有
量を0.005乃至0.5%に設定する。 次に、上述の組成を有するAl合金から導電線を製造す
る条件について説明する。本発明においては、Al合金を
溶製した後、5℃/秒以上の冷却速度で冷却しつつ鋳造
し、その鋳塊を450〜580℃の温度から同様に5℃/秒以
上の冷却速度で冷却しつつ加工を加える。この加工処理
においては、200℃以下の仕上がり温度になるまでに、7
0%以上の減面率で加工する。 先ず、鋳造時の冷却速度を5℃/秒以上としたのは、
固溶限を超えて添加したZrを強制固溶させるためであ
る。冷却速度が5℃/秒未満では固溶限を超える部分の
Zrが鋳造中に析出してしまう。 次に、圧延時においては、5℃/秒以上の冷却速度で
冷却しつつ、450〜580℃の温度から加工を開始し、Al合
金を200℃以下になるまでに70%以上の減面率で加工す
る。この場合に、圧延開始温度が450℃未満の場合には
鋳塊が硬くて加工が困難であり、割れが入ることもあ
る。また、圧延開始温度が580℃を超えると、高温割れ
を起こし易い。 更に、圧延終了温度が200℃を超える場合には、冷却
による効果が弱いため、Zrの強制固溶が充分になされな
い。また、この圧延における減面加工率が70%未満で
は、最終線材とした場合の強度が不足する。 その後、圧延線材を280〜480℃の温度で6〜250時間
熱処理する。この熱処理により、Zrは微細なAl3Zrとし
て分散析出し、Al合金の強度、耐熱性及び導電率を向上
させる。この場合に、熱処理温度を280〜480℃、熱処理
時間を6〜250時間と限定したのは、熱処理温度が280℃
未満であり、熱処理時間が6時間未満の場合には、Zrの
析出が充分でなく、所望の強度、導電率及び耐熱性が得
られない。また、熱処理温度が480℃を超え、更に熱処
理時間が250時間を超えると、析出物が粗大となり、強
度が著しく低下すると共に、高価なZrの浪費となる。 この熱処理の後、60%以上の減面率の冷間加工を加え
る。これは、Al合金の強度を上昇させるためであり、減
面率が60%未満では加工硬化が不足し、充分な強度が得
られない。 この冷間伸線処理により、仕上り線として、所要の性
能を満足する特性が得られる。しかし、冷間伸線後、更
に200〜450℃で1〜100時間の熱処理を線状に加える
と、導電率及び耐熱性が更に一層優れた導電線が得られ
る。この熱処理の場合にも、熱処理温度が200℃以下、
熱処理時間が1時間以下の場合には、Zrが充分に析出せ
ず導電率及び耐熱性は殆ど向上しない。また、熱処理温
度が450℃以上、熱処理時間が100時間以上の場合には、
軟化が著しくなるという不都合がある。 [実施例] 次に、本発明方法により製造したAl合金導電線につい
て、その特性を試験した結果を、比較例についての試験
結果と共に説明する。下記実験データは、いずれも連続
鋳造圧延法により行なったものである。 各元素(Zr,Cu,Si,Fe,Be)の添加量と特性との関係 下記第1表に示す組成の合金を溶解し、15℃/秒の冷
却速度で鋳造し、鋳塊の温度が520℃となった時から、1
5℃/秒の冷却速度で圧延を開始し、加工度90%、仕上
がり温度170℃の条件で9.5mm径の荒引線を作成した。 この荒引線を360℃に、48時間過熱して熱処理した
後、連続伸線機により冷間伸線し、3.5mm径の線材とし
た。なお、第1表中、耐熱性の欄は、線材を230℃に1
時間加熱した後の引張強さを加熱前の引張強さに対する
比(残存率)で表わしたものである。 比較例18はZrが不足するためにその他の成分の含有量
がほぼ同等である実施例2に比較して引張強さが低く、
比較例19はCuが不足するためにその他の成分の含有量が
ほぼ同等である実施例2に比較して引張強さが低く、比
較例20はSiが不足するためにその他の成分の含有がほぼ
同等である実施例16に比較して引張強さが低く、比較例
21はFeが不足するためにその他の成分の含有量がほぼ同
等である実施例2に比較して引張強さ及び耐熱性が低
い。また、比較例22はBeが不足するために、その他の成
分の含有量がほぼ同等である実施例2、実施例12及び実
施例15等に比較して導電率が低い。更に、比較例22,24
及び25は夫々Zr、Cu及びSiが過剰であるために、鋳造が
困難であった。比較例26はFeが過剰であるために、その
他の成分の含有量がほぼ同等である実施例5に比較して
導電率が低く、また、比較例27はBeが過剰であるため
に、その他の成分の含有量がほぼ同等である実施例12と
比較して導電率が低下した。なお、比較例26は鋳造が若
干困難であった。これに対し、実施例合金は比較例合金
に比していずれも引張強さ、導電率及び耐熱性が全体的
に優れていた。鋳造及び圧延時の冷却速度と特性との関係 前述の第1表に示したNo.2の合金を、下記第2表に示
す冷却速度により、鋳造及び圧延した。 この鋳造圧延試験では、No.2の合金系を使用し、鋳造
時の冷却速度と圧延時の冷却速度とを等しくした。但
し、圧延終了温度は、170℃であり、直径が9.5mmの荒引
線を試作した。この荒引線に対し360℃で48時間の熱処
理を行なった後、冷間伸線により、直径が3.5mmの線材
とした。第2表の結果からわかるように、鋳造時及び圧
延時の冷却速度が5℃/秒以下では強制固溶されるZrの
量が少なく強度及び耐熱性が低い。 圧延終了温度と特性との関係 第1表に示したNo.2の合金を冷却速度15℃/秒で鋳造
及び圧延し、圧延終了温度を下記第3表のように変化さ
せて、直径が9.5mmの荒引線を製作した。 圧延終了温度は冷却液の量で調整した。この荒引線を
360℃に48時間熱処理した後、冷間伸線により、直径が
3.5mmの線材とした。第3表の結果からわかるように、
圧延終了温度が200℃を超えると、強制固溶されるZrの
量が少なく、強度及び耐熱性が低い。 圧延時(荒引線に至るまで)の減面率と特性との関係 第1表のNo.2の合金を、15℃/秒の冷却速度で鋳造及
び圧延し、圧延終了温度を170℃として、直径が9.5mmの
荒引線を試作した。圧延の減面率を下記第4表に示すよ
うに変更した。 この荒引線を360℃に48時間熱処理した後、連続伸線
機により冷間伸線し、直径が3.5mmの線材とした。その
特性調査結果を前述の第4表に示したが、圧延時の減面
率が70%未満では強度及び耐熱性が低いことがわかる。
この理由は、Al3Zrを微細分散析出させるためには、多
数の転位を導入しておくことが有効であるが、減面率が
高いほど、転位が多くなるためである。 荒引線の熱処理温度及び時間と特性との関係 第1表のNo.2の組成の合金を、15℃/秒の冷却速度で
鋳造及び圧延し、圧延終了温度を170℃として直径が9.5
mmの荒引線を製作した。この荒引線を下記第5表に示す
各条件で熱処理し、その後連続伸線機により冷間伸線し
て直径が3.5mmの線材とした。 第5表に示したように、熱処理温度が280℃未満(240
℃)又は熱処理時間が6時間未満(3時間)では、Zrの
析出が不十分であり、引張強さ、導電率及び耐熱性が低
い。一方、熱処理温度が480℃より高い場合(510℃)及
び熱処理時間が250時間より長い場合(270時間、300時
間)は、再結晶が開始してしまい、引張強さの低下が見
られる。また、特に温度が高い場合は、粗大な析出物が
多く見られ、軟化が著しい。 素線段階での熱処理温度及び時間と特性との関係 第5表で直径が9.5mmの荒引線段階において360℃に12
時間熱処理を施したものに対し、直径が3.5mmにおいて
下記第6表に示すような熱処理を行なった。この第6表
に示すように、熱処理の温度が200℃未満(180℃)、時
間が1時間未満(0.5時間)では熱処理の効果が見られ
ず、また450℃を超え(480℃)、100時間を超える(120
時間)場合には再結晶による軟化が起こり、引張強さが
低下してしまう。[発明の効果] 以上詳細に説明したように、本発明によれば、高強度
且つ高導電率であり、耐熱性が優れた高力耐熱アルミニ
ウム合金導電線を得ることができ、これにより、送電容
量を高めることが可能であり、本発明は電力需要の増大
という背景のもとで、極めて実益が高い。
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(72)発明者 斉藤 健
静岡県沼津市双葉町9番1号 藤倉電線
株式会社沼津工場内
(72)発明者 伊藤 一好
静岡県沼津市双葉町9番1号 藤倉電線
株式会社沼津工場内
(72)発明者 大出 寛
静岡県沼津市双葉町9番1号 藤倉電線
株式会社沼津工場内
(56)参考文献 特開 昭60−5863(JP,A)
特開 昭61−106753(JP,A)
特開 昭63−293146(JP,A)
特開 昭63−186858(JP,A)
特公 昭61−28025(JP,B2)
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.0.29乃至1.0重量%のZr、0.01乃至1.0重量%のCu、
0.03乃至0.4重量%のSi、0.08乃至0.8重量%のFe及び0.
05乃至0.5重量%のBeを含有し、残部Al及び不可避的不
純物からなる合金を溶製した後、ベルトアンドホイール
式の連続鋳造機により5℃/秒以上の冷却速度で鋳造
し、450乃至580℃の温度から5℃/秒以上の冷却速度で
冷却しつつ200℃以下の仕上がり温度になるまでに70%
以上の減面率の加工を加え、次いで、280乃至480℃で6
乃至250時間熱処理した後、60%以上の加工率で冷間加
工を施し、この冷間加工後に、200乃至450℃の温度で1
乃至100時間熱処理することを特徴とする耐熱アルミニ
ウム合金導電線の製造方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP62222733A JP2835042B2 (ja) | 1987-09-04 | 1987-09-04 | 耐熱アルミニウム合金導電線の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62222733A JP2835042B2 (ja) | 1987-09-04 | 1987-09-04 | 耐熱アルミニウム合金導電線の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS6465246A JPS6465246A (en) | 1989-03-10 |
JP2835042B2 true JP2835042B2 (ja) | 1998-12-14 |
Family
ID=16787046
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP62222733A Expired - Fee Related JP2835042B2 (ja) | 1987-09-04 | 1987-09-04 | 耐熱アルミニウム合金導電線の製造方法 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2835042B2 (ja) |
Family Cites Families (5)
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---|---|---|---|---|
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JPS6128025A (ja) * | 1984-07-13 | 1986-02-07 | Toyoda Autom Loom Works Ltd | 二重撚糸機構を備えた繊維機械におけるパツケ−ジ駆動装置 |
JPH0762221B2 (ja) * | 1984-10-31 | 1995-07-05 | 古河電気工業株式会社 | 高力耐熱アルミニウム合金導体の製造法 |
JPS63186858A (ja) * | 1987-01-27 | 1988-08-02 | Furukawa Electric Co Ltd:The | 導電用高力耐熱アルミニウム合金導体の製造方法 |
JP2582073B2 (ja) * | 1987-05-26 | 1997-02-19 | 住友電気工業株式会社 | 導電用高力耐熱アルミニウム合金の製造方法 |
-
1987
- 1987-09-04 JP JP62222733A patent/JP2835042B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
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