JP2835041B2 - 耐熱アルミニウム合金導電線の製造方法 - Google Patents
耐熱アルミニウム合金導電線の製造方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、導電性、耐熱性及び機械的強度が優れた耐
熱アルミニウム合金導電線の製造方法に関する。 [従来の技術] 電力需要の増大から、送電容量を高めるべく、電気用
アルミニウム(Al)にジルコニウム(Zr)を微量添加し
た耐熱アルミニウム合金が実用化されている。つまり、
送電容量が増大すると、電線温度が上昇するため、通常
の電気用アルミニウムに替えて、耐熱アルミニウム合金
導電線が使用される。 [発明が解決しようとするも問題点] しかしながら、この耐熱アルミニウム合金は耐熱性を
有するものの、引張強さについては通常の電気用アルミ
ニウム線と同等のレベルであり、山岳地のように高強度
が要求される場合には架線することができない。 本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであっ
て、少なくとも従来の耐熱アルミニウム合金と同程度の
耐熱性及び導電率を有し、強度を高力アルミニウム合金
と同等以上に向上させた高力耐熱アルミニウム合金を提
供することを目的とする。 [問題点を解決するための手段] 本発明に係る耐熱アルミニウム合金導電線の製造方法
は、0.29乃至1.0重量%Zr、0.31乃至1.0重量%のCu、0.
03乃至0.4重量%のSi、0.08乃至0.8重量%のFeを含有
し、重量比Fe/Siが2以上であり、残部Al及び不可避的
不純物からなる合金を溶製した後、ベルトアンドホイー
ル式の連続鋳造機により5℃/秒以上の冷却速度で鋳造
し、450乃至580℃の温度から5℃/秒以上の冷却速度で
冷却しつつ200℃以下の仕上がり温度になるまでに70%
以上の減面率の加工を加え、次いで280乃至480℃で6乃
至250時間処理した後、60%以上の加工率で冷間加工を
施し、この冷間加工後に、200乃至450℃の温度で1乃至
100時間熱処理することを特徴とする。 先ず、各添加成分の添加理由及び組成限定理由につい
て説明する。 Zr ZrはAl合金の耐熱性を向上させる成分であり、Zr含有
量が0.29重量%(以下、単に%で現す)未満では後述す
る熱処理を施しても、十分な強度と耐熱性を確保する析
出物が得られない。つまり、Al−Zr合金におけるZrの固
溶限は0.28%であり、この固溶限を超えるZrを添加して
Zrを強制固溶させ、AlとZrの化合物をAl3Zrの形で微細
析出させることにより耐熱性を高め同時に強度を向上せ
しめる。逆に、Zr含有量が1.0%を超えると、溶湯の温
度が高くなり過ぎて、鋳造が困難になるのに加え、線材
における導電率が低下してしまう。 Cu Cu(銅)はAl合金の強度を向上させるために添加す
る。CuはAl中に固溶した状態で入っているため、高温及
び長時間の熱処理を行なった後も、加工硬化能が低下し
ない。しかし、Cu含有量が0.30%以下では、このような
効果が少なく、所望の強度が得られない一方、1.0%を
超えると、鋳造が困難になると共に、導電率が著しく低
下し、伸線加工の性能、耐食性及び靭性等も低下する。 Si Si(シリコン)はZrの析出の核となって析出を促進さ
せると共に、線材の強度を高める成分である。しかし、
Siの含有量が0.03%未満の場合には、Zrの析出のための
核が不足して析出による効果が得られず、0.4%を超え
ると、鋳造が困難になると共に、脆化が起こって加工困
難となり、導電率も低下する。 Fe 本発明においてはAl合金中にFe(鉄)を0.08乃至0.8
%の含有量で添加する。Feはこのアルミニウム合金導電
線をベルトアンドホイール式の連続鋳造機により製造す
る際に、割れが発生することを抑制する作用を有する。
このFeをSiに対する重量比Fe/Siが2以上となるように
添加すると、鋳造中の割れが防止されて鋳造性が良好に
なる。また、Feは強度及び耐熱性の向上にも寄与する。
但し、Feの含有量が0.08%未満では、所望の強度及び耐
熱性が得られず、0.8%を超えると、逆に耐熱性が低下
してしまうと共に、加熱後にAl合金の脆化が生じると共
に、導電率も低下してしまう。 次に、上述の組成を有するAl合金から導電線を製造す
る条件について説明する。本発明においては、Al合金を
溶製した後、5℃/秒以上の冷却速度で冷却しつつ鋳造
し、その鋳塊を450〜580℃の温度から同様に5℃/秒以
上の冷却速度で冷却しつつ加工を加える。この加工処理
においては、200℃以下の仕上がり温度になるまでに、7
0%以上の減面率で加工する。 先ず、鋳造時の冷却速度を5℃/秒以上としたのは、
固溶限を超えて添加したZrを強制固溶させるためであ
る。冷却速度が5℃/秒未満では固溶限を超える部分の
Zrが鋳造中に析出してしまう。 次に、圧延時においては、5℃/秒以上の冷却速度で
冷却しつつ、450〜580℃の温度から加工を開始し、Al合
金を200℃以下になるまでに70%以上の減面率で加工す
る。この場合に、圧延開始温度が450℃未満の場合には
鋳塊が硬くて加工が困難であり、割れが入ることもあ
る。また、圧延開始温度が580℃を超えると、高温割れ
を起こし易い。 更に、圧延終了温度が200℃を超える場合には、冷却
による効果が弱いため、Zrの強制固溶が充分になされな
い。また、この圧延における減面加工率が70%未満で
は、最終線材とした場合の強度が不足する。 その後、圧延線材を280〜480℃の温度で6〜250時間
熱処理する。この熱処理により、Zrは微細なAl3Zrとし
て分散析出し、Al合金の強度、耐熱性及び導電率を向上
させる。この場合に、熱処理温度を280〜480℃、熱処理
時間を6〜250時間と限定したのは、熱処理温度が280℃
未満であり、熱処理時間が6時間未満の場合には、Zrの
析出が充分でなく、所望の強度、導電率及び耐熱性が得
られない。また、熱処理温度が480℃を超え、更に熱処
理時間が250時間を超えると、析出物が粗大となり、強
度が著しく低下すると共に、高価なZrの浪費となる。 この熱処理の後、60%以上の減面率の冷間加工を加え
る。これは、Al合金の強度を上昇させるためであり、減
面率で60%未満では加工硬化が不足し、充分な強度が得
られない。 この冷間伸線処理により、仕上り線として、所要の性
能を満足する特性が得られる。しかし、冷間伸線後、更
に200〜450℃で1〜100時間の熱処理を線材に加える
と、導電率及び耐熱性が更に一層優れた導電線が得られ
る。この熱処理の場合にも、熱処理温度が200℃以下、
熱処理時間が1時間以下の場合には、Zrが充分に析出せ
ず導電率及び耐熱性は殆ど向上しない。また、熱処理温
度が450℃以上、熱処理時間が100時間以上の場合には、
軟化が著しくなるという不都合がある。 [実施例] 次に、本発明方法により製造したAl合金導電線の実施
例について説明する。下記実験データは、いずれも連続
鋳造圧延法により行なったものである。 各元素(Zr,Cu,Si,Fe)の添加量と特性との関係 下記第1表に示す組成の合金を溶解し、15℃/秒の冷
却速度で鋳造し、鋳塊の温度が520℃となった時から、1
5℃/秒の冷却速度で圧延を開始し、加工度90%、仕上
がり温度170℃の条件で9.5mm径の荒引線を作成した。 この荒引線を360℃、48時間で熱処理した後、連続伸
線機により冷間伸線し、35mm径の線材とした。なお、第
1表中、耐熱性の欄は、線材を230℃に1時間加熱した
後の引張強さを加熱前の引張強さに対する比(残存率)
で表わしたものである。 比較例13は、Cuが不足するために、その他の成分が比
較例13と同等である実施例2、5及び6に比較して引張
強さが23.5kgf/mm2と低く、また比較例14はSi及びFeが
不足するために、その他の成分が比較例14と同等である
実施例2及び12と比較して引張強さが23.9kgf/mm2と低
い。また、比較例15はFeが不足すると共に、重量比Fe/S
iが0.4と低いために、連続鋳造時に割れが発生して鋳造
が困難であった。比較例16及び19はCuが1.0%を超えて
いるので、鋳造が困難であった。比較例17はSiが0.4%
を超えているので、加工が困難であり、鋳造性もやや難
があった。比較例18はFeが0.8%を超えているので、そ
の他の成分の含有量が比較例18と同等である実施例2及
び実施例5に比して耐熱性が劣ると共に、導電率が低
い。比較例20はZrが1.0%を超えているので、鋳造が困
難であった。これに対し、実施例合金は、引張り強さ、
導電率及び耐熱性の全体が優れたものであった。 鋳造及び圧延時の冷却速度と特性との関係 前述の第1表に示したNo.2の合金を、下記第2表に示
す冷却速度により、鋳造及び圧延した。 今回の実験では、いずれの組成系においても鋳造時の
冷却速度と圧延時の冷却速度とを等しくした。但し、圧
延終了温度は、いずれの合金系でも170℃であり、直径
が9.5mmの荒引線を試作した。荒引線に対し360℃で48時
間の熱処理を行なった後、冷間伸線により、直径が3.5m
mの線材とした。第2表の結果からわかるように、鋳造
時及び圧延の冷却速度が5℃/秒以下では強制固溶され
るZrの量が少なく強度及び耐熱性が低い。 圧延終了温度と特性との関係 第1表に示したNo.2の合金を冷却速度15℃/秒で鋳造
及び圧延し、圧延終了温度を下記第3表のように変化さ
せて、直径が9.5mmの荒引線を試作した。 圧延終了温度は冷却液の量で調整した。この荒引線を
360℃に48時間熱処理した後、冷間伸線により、直径が
3.5mmの線材とした。第3表の結果からわかるように、
圧延終了温度が200℃を超えると、強制固溶されるZrの
量が少なく、強度及び耐熱性が低い。 圧延時(荒引線径に至るまで)の減面率と特性との関係 第1表のNo.2の合金を、15℃/秒の冷却速度で鋳造及
び圧延し、圧延終了温度を170℃として、直径が9.5mmの
荒引線を試作した。圧延の減面率を下記第4表に示すよ
うに変更した。 この荒引線を360℃に48時間熱処理した後、連続伸線
機により冷間伸線し、直径が3.5mmの線材とした。その
特性調査結果を第4表に示したが、圧延時の減面率が70
%未満では強度及び耐熱性が低いことがわかる。この理
由は、Al3Zrを微細分散析出させるためには、多数の転
位を導入しておくことが有効であるが、減面率が高いほ
ど、転位が多くなるためである。 荒引線の熱処理温度及び時間と特性との関係 第1表のNo.2の組成の合金を、15℃/秒の冷却速度で
鋳造及び圧延し、圧延終了温度を170℃として直径が9.5
mmの荒引線を試作した。この荒引線を第5表に示す各条
件で熱処理し、その後連続伸線機により冷間伸線して直
径が3.5mmの線材とした。 第5表に示したように、熱処理温度が280℃未満又は
熱処理時間が6時間未満では、Zrの析出が不十分であ
り、引張強さ、導電率及び耐熱性が低い。一方、熱処理
温度が480℃より高い場合及び熱処理時間が250時間より
長い場合は、再結晶が開始してしまい、引張強さの低下
が見られる。また、特に温度が高い場合は、粗大な析出
物が多く見られ、軟化が著しい。 素線段階での熱処理温度及び時間と特性との関係 第5表で直径が9.5mmの荒引線段階において360℃に12
時間熱処理を施したものに対し、直径が3.5mmにおいて
第6表に示すように熱処理を行なった。下記第6表に見
られるように、熱処理の温度が200℃未満、時間が1時
間未満では熱処理の効果が見られず、また450℃を超
え、100時間を超える場合には再結晶による軟化が起こ
り、引張強さが低下してしまう。[発明の効果] 以上詳細に説明したように、本発明によれば、高強度
且つ高導電率であり、耐熱性が優れた高力耐熱アルミニ
ウム合金導電線を得ることができ、これにより、送電容
量を高めることが可能であり、本発明は電力需要の増大
という背景のもとで、極めて実益が高い。
熱アルミニウム合金導電線の製造方法に関する。 [従来の技術] 電力需要の増大から、送電容量を高めるべく、電気用
アルミニウム(Al)にジルコニウム(Zr)を微量添加し
た耐熱アルミニウム合金が実用化されている。つまり、
送電容量が増大すると、電線温度が上昇するため、通常
の電気用アルミニウムに替えて、耐熱アルミニウム合金
導電線が使用される。 [発明が解決しようとするも問題点] しかしながら、この耐熱アルミニウム合金は耐熱性を
有するものの、引張強さについては通常の電気用アルミ
ニウム線と同等のレベルであり、山岳地のように高強度
が要求される場合には架線することができない。 本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであっ
て、少なくとも従来の耐熱アルミニウム合金と同程度の
耐熱性及び導電率を有し、強度を高力アルミニウム合金
と同等以上に向上させた高力耐熱アルミニウム合金を提
供することを目的とする。 [問題点を解決するための手段] 本発明に係る耐熱アルミニウム合金導電線の製造方法
は、0.29乃至1.0重量%Zr、0.31乃至1.0重量%のCu、0.
03乃至0.4重量%のSi、0.08乃至0.8重量%のFeを含有
し、重量比Fe/Siが2以上であり、残部Al及び不可避的
不純物からなる合金を溶製した後、ベルトアンドホイー
ル式の連続鋳造機により5℃/秒以上の冷却速度で鋳造
し、450乃至580℃の温度から5℃/秒以上の冷却速度で
冷却しつつ200℃以下の仕上がり温度になるまでに70%
以上の減面率の加工を加え、次いで280乃至480℃で6乃
至250時間処理した後、60%以上の加工率で冷間加工を
施し、この冷間加工後に、200乃至450℃の温度で1乃至
100時間熱処理することを特徴とする。 先ず、各添加成分の添加理由及び組成限定理由につい
て説明する。 Zr ZrはAl合金の耐熱性を向上させる成分であり、Zr含有
量が0.29重量%(以下、単に%で現す)未満では後述す
る熱処理を施しても、十分な強度と耐熱性を確保する析
出物が得られない。つまり、Al−Zr合金におけるZrの固
溶限は0.28%であり、この固溶限を超えるZrを添加して
Zrを強制固溶させ、AlとZrの化合物をAl3Zrの形で微細
析出させることにより耐熱性を高め同時に強度を向上せ
しめる。逆に、Zr含有量が1.0%を超えると、溶湯の温
度が高くなり過ぎて、鋳造が困難になるのに加え、線材
における導電率が低下してしまう。 Cu Cu(銅)はAl合金の強度を向上させるために添加す
る。CuはAl中に固溶した状態で入っているため、高温及
び長時間の熱処理を行なった後も、加工硬化能が低下し
ない。しかし、Cu含有量が0.30%以下では、このような
効果が少なく、所望の強度が得られない一方、1.0%を
超えると、鋳造が困難になると共に、導電率が著しく低
下し、伸線加工の性能、耐食性及び靭性等も低下する。 Si Si(シリコン)はZrの析出の核となって析出を促進さ
せると共に、線材の強度を高める成分である。しかし、
Siの含有量が0.03%未満の場合には、Zrの析出のための
核が不足して析出による効果が得られず、0.4%を超え
ると、鋳造が困難になると共に、脆化が起こって加工困
難となり、導電率も低下する。 Fe 本発明においてはAl合金中にFe(鉄)を0.08乃至0.8
%の含有量で添加する。Feはこのアルミニウム合金導電
線をベルトアンドホイール式の連続鋳造機により製造す
る際に、割れが発生することを抑制する作用を有する。
このFeをSiに対する重量比Fe/Siが2以上となるように
添加すると、鋳造中の割れが防止されて鋳造性が良好に
なる。また、Feは強度及び耐熱性の向上にも寄与する。
但し、Feの含有量が0.08%未満では、所望の強度及び耐
熱性が得られず、0.8%を超えると、逆に耐熱性が低下
してしまうと共に、加熱後にAl合金の脆化が生じると共
に、導電率も低下してしまう。 次に、上述の組成を有するAl合金から導電線を製造す
る条件について説明する。本発明においては、Al合金を
溶製した後、5℃/秒以上の冷却速度で冷却しつつ鋳造
し、その鋳塊を450〜580℃の温度から同様に5℃/秒以
上の冷却速度で冷却しつつ加工を加える。この加工処理
においては、200℃以下の仕上がり温度になるまでに、7
0%以上の減面率で加工する。 先ず、鋳造時の冷却速度を5℃/秒以上としたのは、
固溶限を超えて添加したZrを強制固溶させるためであ
る。冷却速度が5℃/秒未満では固溶限を超える部分の
Zrが鋳造中に析出してしまう。 次に、圧延時においては、5℃/秒以上の冷却速度で
冷却しつつ、450〜580℃の温度から加工を開始し、Al合
金を200℃以下になるまでに70%以上の減面率で加工す
る。この場合に、圧延開始温度が450℃未満の場合には
鋳塊が硬くて加工が困難であり、割れが入ることもあ
る。また、圧延開始温度が580℃を超えると、高温割れ
を起こし易い。 更に、圧延終了温度が200℃を超える場合には、冷却
による効果が弱いため、Zrの強制固溶が充分になされな
い。また、この圧延における減面加工率が70%未満で
は、最終線材とした場合の強度が不足する。 その後、圧延線材を280〜480℃の温度で6〜250時間
熱処理する。この熱処理により、Zrは微細なAl3Zrとし
て分散析出し、Al合金の強度、耐熱性及び導電率を向上
させる。この場合に、熱処理温度を280〜480℃、熱処理
時間を6〜250時間と限定したのは、熱処理温度が280℃
未満であり、熱処理時間が6時間未満の場合には、Zrの
析出が充分でなく、所望の強度、導電率及び耐熱性が得
られない。また、熱処理温度が480℃を超え、更に熱処
理時間が250時間を超えると、析出物が粗大となり、強
度が著しく低下すると共に、高価なZrの浪費となる。 この熱処理の後、60%以上の減面率の冷間加工を加え
る。これは、Al合金の強度を上昇させるためであり、減
面率で60%未満では加工硬化が不足し、充分な強度が得
られない。 この冷間伸線処理により、仕上り線として、所要の性
能を満足する特性が得られる。しかし、冷間伸線後、更
に200〜450℃で1〜100時間の熱処理を線材に加える
と、導電率及び耐熱性が更に一層優れた導電線が得られ
る。この熱処理の場合にも、熱処理温度が200℃以下、
熱処理時間が1時間以下の場合には、Zrが充分に析出せ
ず導電率及び耐熱性は殆ど向上しない。また、熱処理温
度が450℃以上、熱処理時間が100時間以上の場合には、
軟化が著しくなるという不都合がある。 [実施例] 次に、本発明方法により製造したAl合金導電線の実施
例について説明する。下記実験データは、いずれも連続
鋳造圧延法により行なったものである。 各元素(Zr,Cu,Si,Fe)の添加量と特性との関係 下記第1表に示す組成の合金を溶解し、15℃/秒の冷
却速度で鋳造し、鋳塊の温度が520℃となった時から、1
5℃/秒の冷却速度で圧延を開始し、加工度90%、仕上
がり温度170℃の条件で9.5mm径の荒引線を作成した。 この荒引線を360℃、48時間で熱処理した後、連続伸
線機により冷間伸線し、35mm径の線材とした。なお、第
1表中、耐熱性の欄は、線材を230℃に1時間加熱した
後の引張強さを加熱前の引張強さに対する比(残存率)
で表わしたものである。 比較例13は、Cuが不足するために、その他の成分が比
較例13と同等である実施例2、5及び6に比較して引張
強さが23.5kgf/mm2と低く、また比較例14はSi及びFeが
不足するために、その他の成分が比較例14と同等である
実施例2及び12と比較して引張強さが23.9kgf/mm2と低
い。また、比較例15はFeが不足すると共に、重量比Fe/S
iが0.4と低いために、連続鋳造時に割れが発生して鋳造
が困難であった。比較例16及び19はCuが1.0%を超えて
いるので、鋳造が困難であった。比較例17はSiが0.4%
を超えているので、加工が困難であり、鋳造性もやや難
があった。比較例18はFeが0.8%を超えているので、そ
の他の成分の含有量が比較例18と同等である実施例2及
び実施例5に比して耐熱性が劣ると共に、導電率が低
い。比較例20はZrが1.0%を超えているので、鋳造が困
難であった。これに対し、実施例合金は、引張り強さ、
導電率及び耐熱性の全体が優れたものであった。 鋳造及び圧延時の冷却速度と特性との関係 前述の第1表に示したNo.2の合金を、下記第2表に示
す冷却速度により、鋳造及び圧延した。 今回の実験では、いずれの組成系においても鋳造時の
冷却速度と圧延時の冷却速度とを等しくした。但し、圧
延終了温度は、いずれの合金系でも170℃であり、直径
が9.5mmの荒引線を試作した。荒引線に対し360℃で48時
間の熱処理を行なった後、冷間伸線により、直径が3.5m
mの線材とした。第2表の結果からわかるように、鋳造
時及び圧延の冷却速度が5℃/秒以下では強制固溶され
るZrの量が少なく強度及び耐熱性が低い。 圧延終了温度と特性との関係 第1表に示したNo.2の合金を冷却速度15℃/秒で鋳造
及び圧延し、圧延終了温度を下記第3表のように変化さ
せて、直径が9.5mmの荒引線を試作した。 圧延終了温度は冷却液の量で調整した。この荒引線を
360℃に48時間熱処理した後、冷間伸線により、直径が
3.5mmの線材とした。第3表の結果からわかるように、
圧延終了温度が200℃を超えると、強制固溶されるZrの
量が少なく、強度及び耐熱性が低い。 圧延時(荒引線径に至るまで)の減面率と特性との関係 第1表のNo.2の合金を、15℃/秒の冷却速度で鋳造及
び圧延し、圧延終了温度を170℃として、直径が9.5mmの
荒引線を試作した。圧延の減面率を下記第4表に示すよ
うに変更した。 この荒引線を360℃に48時間熱処理した後、連続伸線
機により冷間伸線し、直径が3.5mmの線材とした。その
特性調査結果を第4表に示したが、圧延時の減面率が70
%未満では強度及び耐熱性が低いことがわかる。この理
由は、Al3Zrを微細分散析出させるためには、多数の転
位を導入しておくことが有効であるが、減面率が高いほ
ど、転位が多くなるためである。 荒引線の熱処理温度及び時間と特性との関係 第1表のNo.2の組成の合金を、15℃/秒の冷却速度で
鋳造及び圧延し、圧延終了温度を170℃として直径が9.5
mmの荒引線を試作した。この荒引線を第5表に示す各条
件で熱処理し、その後連続伸線機により冷間伸線して直
径が3.5mmの線材とした。 第5表に示したように、熱処理温度が280℃未満又は
熱処理時間が6時間未満では、Zrの析出が不十分であ
り、引張強さ、導電率及び耐熱性が低い。一方、熱処理
温度が480℃より高い場合及び熱処理時間が250時間より
長い場合は、再結晶が開始してしまい、引張強さの低下
が見られる。また、特に温度が高い場合は、粗大な析出
物が多く見られ、軟化が著しい。 素線段階での熱処理温度及び時間と特性との関係 第5表で直径が9.5mmの荒引線段階において360℃に12
時間熱処理を施したものに対し、直径が3.5mmにおいて
第6表に示すように熱処理を行なった。下記第6表に見
られるように、熱処理の温度が200℃未満、時間が1時
間未満では熱処理の効果が見られず、また450℃を超
え、100時間を超える場合には再結晶による軟化が起こ
り、引張強さが低下してしまう。[発明の効果] 以上詳細に説明したように、本発明によれば、高強度
且つ高導電率であり、耐熱性が優れた高力耐熱アルミニ
ウム合金導電線を得ることができ、これにより、送電容
量を高めることが可能であり、本発明は電力需要の増大
という背景のもとで、極めて実益が高い。
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フロントページの続き
(72)発明者 斉藤 健
静岡県沼津市双葉町9番1号 藤倉電線
株式会社沼津工場内
(72)発明者 伊藤 一好
静岡県沼津市双葉町9番1号 藤倉電線
株式会社沼津工場内
(72)発明者 大出 寛
静岡県沼津市双葉町9番1号 藤倉電線
株式会社沼津工場内
(56)参考文献 特開 昭60−5863(JP,A)
特開 昭61−106753(JP,A)
特開 昭63−293146(JP,A)
特開 昭63−186858(JP,A)
特公 昭61−28025(JP,B2)
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.0.29乃至1.0重量%のZr、0.31乃至1.0重量%のCu、
0.03乃至0.4重量%のSi、0.08乃至0.8重量%のFeを含有
し、重量比Fe/Siが2以上であり、残部Al及び不可避的
不純物からなる合金を溶製した後、ベルトアンドホイー
ル式の連続鋳造機により5℃/秒以上の冷却速度で鋳造
し、450乃至580℃の温度から5℃/秒以上の冷却速度で
冷却しつつ200℃以下の仕上がり温度になるまでに70%
以上の減面率の加工を加え、次いで、280乃至480℃で6
乃至250時間熱処理した後、60%以上の加工率で冷間加
工を施し、この冷間加工後に、200乃至450℃の温度で1
乃至100時間熱処理することを特徴とする耐熱アルミニ
ウム合金導電線の製造方法。
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JP62192096A JP2835041B2 (ja) | 1987-07-31 | 1987-07-31 | 耐熱アルミニウム合金導電線の製造方法 |
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JP62192096A JP2835041B2 (ja) | 1987-07-31 | 1987-07-31 | 耐熱アルミニウム合金導電線の製造方法 |
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JPS6128025A (ja) * | 1984-07-13 | 1986-02-07 | Toyoda Autom Loom Works Ltd | 二重撚糸機構を備えた繊維機械におけるパツケ−ジ駆動装置 |
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-
1987
- 1987-07-31 JP JP62192096A patent/JP2835041B2/ja not_active Expired - Fee Related
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