JP2833285B2 - 可変容量ポンプ - Google Patents

可変容量ポンプ

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば内燃機関のオイ
ルポンプに適用できるようなポンプであって、必要に応
じて流体の吐出量を制御できる可変容量ポンプに関す
る。
【0002】
【従来の技術】必要に応じて容量を変化することができ
るポンプとしては、例えば実開昭58−129015号
公報に、1つの主オイルポンプと、電磁クラッチによっ
て制御される複数個の補助オイルポンプとから構成され
る自動車用オイルポンプ装置が開示されており、ここで
は補助オイルポンプは運転条件に応じて電磁クラッチを
作動することにより選択的に駆動制御され、全体として
のポンプの容量が変化するようになっている。
【0003】又、実開昭59−1894号公報では、即
座に容量を変えることはできないが、歯車ポンプにおい
て、駆動軸と従動軸に夫々取り付けられる歯車及びそれ
を取り囲むケーシングの組数を変えられるようにし、必
要に応じてこの組数を増減してポンプの容量を可変とし
た歯車ポンプが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記オ
イルポンプは基本的に複数のポンプを組み合わせたもの
であるために、装置全体としては大型化する傾向にあ
り、スペース上で不利である。又、ポンプの選択的作動
のために設けられる電磁クラッチはポンプ数に比例して
設けなければならず、装置全体としては制御が複雑化し
コスト上問題がある。
【0005】又、上記歯車ポンプは、要求されるポンプ
容量に対応した組数の歯車及びケーシングを用意し、予
めポンプ本体内に組み付けなければならず、一旦組み付
けてしまえば、ポンプ運転中にその容量を変えることは
不可能であり、その意味では可変容量ポンプとは言えな
い。
【0006】本発明は係る問題に鑑みなされるものであ
って、上述したオイルポンプよりもスペース、コスト上
有利で、ポンプ運転中にも容易かつ迅速にその容量を変
えることができる可変容量ポンプを提供することを目的
とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明によれば、1対の互いに平行な駆動軸と従動軸に
夫々固定され、かみ合うことにより互いに反対方向に回
転可能な複数組のギアを、仕切部材を介して駆動軸方向
又は従動軸方向に重ね、これを共通の吸込口と共通の吐
出口を備えた1ハウジング内に回転可能に収納すると共
に、上記仕切部材とハウジングによって画成された流体
吐出空間を上記吸込口と吐出口の双方に連通させ、更に
上記流体吐出空間内に上記軸方向に変位可能で、かつ該
空間を、その軸方向位置に応じて上記吐出口に連通する
吐出口側部分と吸込口に連通する吸込口側部分とに分割
する弁を設けた可変容量ポンプが提供される。
【0008】
【作用】弁の軸方向位置によって流体吐出空間の吐出口
側部分の占める割合を変えることができ、これに応じて
上記吐出側部分に連携するギア組数が変化し、吐出口を
介してハウジング外に吐き出される流体量を変えること
ができる。
【0009】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明
する。図1及び図2は本発明による可変容量型オイルポ
ンプ1の横断面及び縦断面を夫々示している。
【0010】これらの図において、2は図示しない駆動
手段(例えば、エンジンのクランクギア)により駆動さ
れるギア駆動軸、3はこのギア駆動軸2によって駆動さ
れるギア従動軸、4a,5a,6a,7a及び8aはギ
ア駆動軸2に固定され、共に回転する平歯車状の駆動ギ
アである。
【0011】ギア従動軸3には、図2の1従動ギア6b
に代表して示されるように、各駆動ギア4a〜8aの下
方に位置し、各駆動ギアに対応して夫々かみ合う従動ギ
アが固定されており、これら従動ギアはその上方に位置
する駆動ギアと同じ厚さを有し、好ましくは同じ歯数を
有する。
【0012】上述したこれらの要素は総てメインハウジ
ング9、アウタハウジング10及びエンドプレート11
によって組み立てられるハウジング12の空間内に収納
されるが、この際ギア駆動軸2及びギア従動軸3はアウ
タハウジング10に装着されたオイルシール23を介し
てハウジング12に対して回転可能に支持され、ギア駆
動軸2及びギア従動軸3の端部はエンドプレート11に
設けられた軸受部11aに支持される。
【0013】又、本実施例では図1に矢印Aで示すギア
駆動軸方向(或はギア従動軸方向)において隣合うギア
(例えば駆動ギア4aと駆動ギア5a)の間には各駆動
ギア(又は各従動ギア)に対応して夫々独立したオイル
吐出通路を形成する複数の仕切り板13が挟設される。
【0014】ところでメインハウジング9はその内部に
おいて、駆動ギア4a〜8aと従動ギアとのかみ合う部
分の一側方(図で左側)にギア駆動軸方向Aに延びる矩
形断面の細長いオイル吸込空間14を画成しており、更
にアウタハウジング10にはこのオイル吸込空間14に
接続されるオイル吸込口15が設けられる。このオイル
吸込口15は、例えばエンジンのオイルパン24(図
4)から延びるオイル管に接続されることで、オイル吸
込口15を介して上記オイル吸込空間14内にオイルが
供給されるようになっている。
【0015】ハウジング12は更に駆動軸2を中心とし
てオイル吸込空間14の反対側に、同様にギア駆動軸方
向Aに延びる円形断面の細長いオイル吐出空間16を有
しており、その一端にはオイル吐出口17が形成され、
例えばエンジンのオイルフィルタ25(図4)やオイル
ギャラリへと続くオイル通路に接続される。又、アウタ
ハウジング10には、上述したオイル吐出空間16の他
端とオイル吸込口15とを接続するリターン通路18が
形成される。
【0016】ところで、メインハウジング9の内壁部分
9a、及び仕切り板13の端壁13aによって画成され
る略円柱形のオイル吐出空間16には、この空間内をギ
ア駆動軸2に対して実質上平行に変位可能な円筒状弁体
19aを備えたスプール弁19が設けられる。
【0017】このスプール弁19は、上記円筒状弁体1
9aの他、この弁体19aに固定され他端にはエンドプ
レート11より外部に突き出すスクリュロッド20と、
オイルポンプ1外に設けられスクリュロッド20を介し
て弁体19aを軸方向Aに移動するステップモータ21
とによって構成されており、ステップモータ21はエン
ジン運転条件(例えば、エンジン回転数Ne ) を入力す
る制御回路(ECU)22からの駆動信号に基づいて駆
動制御されるようになっている。尚、図1において23
はこのスクリュロッド20を支持するオイルシールであ
る。
【0018】以上のように構成された本実施例における
オイルポンプ1の作動を説明する。例えば、エンジンの
オイルパン24とオイル吸込口15との接続によってオ
イル吸込空間14内にオイルが充満される条件下で、ギ
ア駆動軸2は図示しない例えばクランクギア等によって
図2の矢印B方向に回転され、又、ギア従動軸3は、例
えば駆動ギア6aと従動ギア6bとのかみ合いによって
B方向とは逆の矢印C方向に回転される。
【0019】この結果、駆動ギア4a〜8a及び従動ギ
アの2歯間の各谷部に充填されたオイルは、駆動ギア4
a〜8a及びこれに対応する従動ギアの回転に伴いメイ
ンハウジング内周壁9bに沿って移動し、オイルポンプ
1の吐出側において、隣合う仕切り板13(端部におい
ては、エンドプレート端面11aと仕切り板13、及び
アウタハウジング端面10aと仕切り板13)によって
挟まれる補助空間16′に吐き出されることになる。
【0020】そして、以上のようにして吐き出されたオ
イルは、次いでオイル吐出空間16内に流入することに
なるが、前述したようにオイル吐出空間16内には制御
回路22によって作動されるスプール弁19が設けられ
ているため、その時の弁体19aの軸方向位置により、
弁体19aよりオイル吐出口17側の空間部分に吐き出
されたオイルはそのままオイル吐出口17を介してオイ
ルポンプ1外部に排出され、他方弁体19aよりリター
ン通路18側の空間部分に吐き出されたオイルはリター
ン通路18を通ってオイルポンプ1のオイル吸込側へと
戻されることになる。尚、このオイル戻りに関して、リ
ターン通路18の通路断面積はオイル吐出空間16の通
路断面積(スプール弁の軸線に垂直な断面)より小さく
ならないようにし、この部分が絞りにならないようにし
てポンプの駆動損失をできるだけ小さくすることが好ま
しい。
【0021】このように本実施例によれば、スプール弁
19の作動、具体的には弁体19aのオイル吐出空間1
6内の軸方向位置によって、オイル吐出口17に連通す
るオイル吐出空間部分の容積が決まり、これに対応して
ポンプより吐出オイルを運搬する駆動ギア及び従動ギア
の組数が決まり(本実施例の場合、1〜5組)、吐出オ
イル量及びその油圧を変えることができる。
【0022】尚、このオイル量及び油圧制御に関連し
て、上述したスプール弁19の弁体19aの軸方向長さ
は、各仕切り板13の軸方向間隔(換言すれば、各ギア
の軸方向厚さ)よりも若干大きく、かつ1枚の駆動ギア
とそれを挟む2枚の仕切り板13を合わせた厚さよりも
若干小さめに設定されることが好ましい。
【0023】この設定理由としては、スプール弁19の
各位置関係を拡大した図3の(A)に示すように、例え
ばエンジンの過渡時において、2枚の仕切り板13によ
って画成された補助空間16′を弁体19aが完全に閉
じ、空間16′を介するオイル吐出側(加圧側)とリタ
ーン側の連通を防止する状態; 及び同図(B)に示すよ
うに仕切り板13の軸方向端面と弁体端面を一致させる
ことで、補助空間16′を若干開放した状態; 及び同図
(C)に示すように弁体19aのほぼ中央が1仕切り板
13に接するようにして上の補助空間16′を閉じた時
と下の補助空間16′を閉じた時との中間のオイル量を
達成する状態; を可能にし、これによってオイルポンプ
としての加圧圧力を最適に制御するためである。
【0024】即ちスプール弁19の弁体19aの形状設
定によって、ギア組数に対応した数の段階(本実施例の
場合、5段階)に亙ってポンプ容量を変化できるだけで
なく、上述した弁位置によってその中間の容量制御も可
能となり、所謂リニアにポンプ容量を変化できるオイル
ポンプを提供することができる。
【0025】図4は以上説明したオイルポンプをエンジ
ンのオイル供給手段として用いたオイル潤滑系の概略的
構成を示しており、図中24はオイルパン、25はオイ
ルフィルタ、26はリリーフ弁、27はカム潤滑系、2
8はメインジャーナルである。
【0026】又、図5は一般的なエンジンのオイル潤滑
系において、エンジン回転数Ne と油圧Pとの関係を示
した図であって、変化するエンジン回転数Ne に対して
要求される理想的油圧ラインを1点鎖線、またエンジン
のクランクギア等によって駆動される従来の定容量型オ
イルポンプにおける油圧変化を点線、更に通常、この従
来オイルポンプに並設されるリリーフ弁を作動させた時
のリリーフ後の油圧変化を実線で示している。又、点線
と実線とで囲まれた領域はリリーフしない場合の過剰仕
事に相当し、実線と1点鎖線で囲まれた領域は現実のオ
イルポンプにおける過剰油圧に相当している。
【0027】これに対し図6は、上述した本実施例によ
るオイルポンプを使用することによって達成し得るエン
ジン回転数Ne に対する発生油圧ラインを示したもので
あって、図中、点線aは、図1において弁体19aのオ
イル吐出口側端面の位置を線aに合わせたままエンジン
回転数Ne を上昇させた時の油圧変化状態(5組のギア
をオイル吐出用として使用した場合)を示し、点線bは
同様に図1の線bに対応し(4組のギア: 吐出側;1組
のギア: リリーフ側)、以下順にオイル吐き出し用とし
て作用するギア組数を減じていった油圧変化を示してい
る。
【0028】ここで本オイルポンプ1の油圧ラインを理
想とする油圧ラインに出来るだけ近づけるためには、図
6の鋸歯状の実線に示したように、エンジン回転数Ne
の上昇に伴ってスプール弁19を作動させ、オイル吐き
出し用として協働する駆動ギア、従動ギアの組数を減少
させれば良く、更に図3で説明したような中間制御を実
行すれば図中、2点鎖線に示すように、一層理想とする
油圧ラインに近似することができ、過剰油圧を更に低下
することが可能となる。
【0029】尚、図示した本オイルポンプの油圧ライン
を更に理想油圧ラインに近似するためには、上述した中
間制御の精度を高めたり、或いはギアの厚さを薄くして
1つのオイルポンプを構成するギア組数を増加すればよ
い。又、エンジン回転数Neの上昇に伴って最終的にオ
イル吐き出し用として作用するギアが1組に変えられた
後は、図6実線eに示すようにその後のエンジン回転数
Neの上昇に伴って直線的に油圧が上昇し、理想ライン
から徐々に離れていくことになるが、この対策としては
通常のリリーフ弁を設けても良いし、又図1の駆動ギア
4a及びこれにかみ合う従動ギアの厚さを他のギア組の
厚さよりも小さく設定し、最高回転数Ne max時の圧
力に適合することにより上記リリーフ弁を廃するように
しても良い。
【0030】ところで、上述した実施例は、オイルポン
プ1を構成する各駆動ギア4a〜8a間の位相差に関し
ては言及していないが、当然ながら各ギア間に位相差を
有するようにしても良い。図7の(A)に示す実施例
は、図1における駆動ギア6a,7a,8a及びこれに
かみ合う従動ギアの各位相を1ピッチの3分の1ずつず
らして配置したかみ合い部分を示す図である。
【0031】しかしてその作用は、同図(B)に示すよ
うに、上記駆動ギア6a,7a,8aがオイル吐き出し
用として作用するエンジン低回転時においては、上記位
相差によりオイルの吐き出し回数を増やして、潤滑系に
供給されるオイルの脈動を低減するものである。尚、こ
の脈動の大きさに関し、エンジン高回転時では元来小さ
くなるために、この時作用する駆動ギア4a,5a,6
aの位相は同一で良い。
【0032】図8に上述したスプール弁に関連する別実
施例を示す。本実施例によれば、図示するようにスプー
ル弁19の弁体19a周囲には、エンジン温度を感知し
て作動するバイメタル29によって回転される円筒状の
スリット弁30が設けられ、エンジン低温時は(A)に
示すようにポンプ吐出通路を絞り込み、エンジン高温時
においては(B)の状態となるように作動制御される。
この結果、エンジン低温において供給されるオイル量を
減少することができ、油温の上昇を早めることが可能と
なる。
【0033】以上、本発明による可変容量ポンプの実施
例を、オイルポンプに例をとり説明したが、本発明の適
用範囲はオイルポンプに限定されるものではなく、流体
を圧送するいかなるタイプのポンプでも適用可能であ
る。又、スプール弁を駆動する手段としても、上述した
ステップモータ以外に、適用され得るオイル潤滑系の油
圧を利用し、制御回路によって駆動されるオイル切り換
え弁(オイルスイッチングバルブ)によって油圧駆動す
るようにしても良い。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば弁
の軸方向位置によって流体吐出空間の吐出口側部分の占
める割合をリニアに変えることができ、これにより滑ら
かな流体吐出圧特性を持つ可変容量ポンプが提供され
る。又、この可変容量ポンプ自体は複数組のギアを組み
込んだ1つのハウジングと1個の弁で構成されるため、
従来のポンプに比べ、スペースやコスト上有利であり、
容量可変制御も複数のクラッチを持つポンプに比べシン
プルであり、メンテナスが容易である。
【0035】更に総ての駆動ギア及び従動ギアが1駆動
軸によって駆動されているために、総てのギア組を以て
流体を吐き出す状態では、複数の補助ポンプを別体に設
ける従来ポンプに比べてポンプの駆動損失が小さく、効
率の良いポンプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による一実施例としての可変容量オイル
ポンプハウジングの横断面とその中に収納される駆動ギ
ア外観を示した図である。
【図2】図1の線II−IIに沿うオイルポンプ縦断面図で
ある。
【図3】本実施例のオイルポンプを構成するスプール弁
の弁体と仕切り板の各位置関係を示した図である。
【図4】本実施例によるオイルポンプをエンジン潤滑系
に適用した概略構成図である。
【図5】一般的なオイルポンプによる油圧特性を含むエ
ンジン回転数と油圧との関係を示す図である。
【図6】図5に類似し、本実施例によるオイルポンプの
油圧特性を示した図である。
【図7】本実施例のオイルポンプに関し、そのギア位相
を変えたギアの位置関係を(A)に、またその作用を
(B)に示した図である。
【図8】本実施例のオイルポンプに関し、スプール弁の
変形例であって、エンジン低温時の弁状態を(A)に、
エンジン高温時の弁状態を(B)に示した図である。
【符号の説明】
1…可変容量オイルポンプ 2…ギア駆動軸 3…ギア従動軸 4a,5a,6a,7a,8a…駆動ギア 6b…従動ギア 12…ハウジング 13…仕切り板 15…オイル吸込口 16…オイル吐出空間 17…オイル吐出口 18…リターン通路 19…スプール弁

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1対の互いに平行な駆動軸と従動軸に夫
    々固定され、かみ合うことにより互いに反対方向に回転
    可能な複数組のギアを、仕切部材を介して駆動軸方向又
    は従動軸方向に重ね、これを共通の吸込口と共通の吐出
    口を備えた1ハウジング内に回転可能に収納すると共
    に、上記仕切部材とハウジングによって画成された流体
    吐出空間を上記吸込口と吐出口の双方に連通させ、更に
    上記流体吐出空間内に上記軸方向に変位可能で、かつ該
    空間を、その軸方向位置に応じて上記吐出口に連通する
    吐出口側部分と吸込口に連通する吸込口側部分とに分割
    する弁を設けた可変容量ポンプ。
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