JP2831916B2 - 四輪駆動型水田作業車 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、乗用型田植機や乗用型
直播機等の四輪駆動型水田作業車における走行系の構造
に関する。

【０００２】

【従来の技術】四輪駆動型水田作業車の一例である乗用
型田植機においては、例えば特開昭６３−２３０００９
号公報に開示されているように、走行用の前輪と後輪と
が略等しい速度で駆動される標準状態と、後輪が前輪よ
りも低速で駆動される後輪減速状態とに切換操作自在な
後輪変速装置（前記公報の第１図中の１１）を備えてい
るものがある。

【０００３】これにより、一回の植付行程が終了して機
体が畦際に達した場合、前輪の操向操作を開始し、一方
のサイドブレーキペダルを踏み操作して旋回中心側の後
輪に制動を掛けて畦際での旋回を開始すると、このサイ
ドブレーキペダルの踏み操作に連動して、後輪変速装置
を標準状態から後輪減速状態に切換操作するように構成
している。このように畦際での旋回時に後輪を前輪より
も減速駆動し前輪及び後輪に速度差を与えることによ
り、機体が田面を荒らすことなく滑らかに小回り旋回す
るのである。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】前述のような乗用型田
植機において畦際で旋回する場合、前輪を右又は左の一
方に大きく操向操作して機体が旋回し始めた後に、旋回
中心側のサイドブレーキペダルを踏み操作するような状
態となっている。

【０００５】従って、一方のサイドブレーキペダルの踏
み操作に連動して後輪変速装置を後輪減速状態に切換操
作しても少し遅く、旋回開始直後ではまだ前輪と後輪が
同じ速度で駆動される状態となって、この旋回開始直後
付近において前輪及び後輪で田面を荒らしてしまう場合
がある。本発明は後輪減速装置を装備した四輪駆動型水
田作業車において、畦際での旋回時に田面を荒らしてし
まう状態をさらに少なくすることを目的としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明の特徴は以上のよ
うな四輪駆動型水田作業車において、次のように構成す
ることにある。つまり、走行用の前輪と後輪とが略等し
い速度で駆動される標準状態と、後輪が前輪よりも低速
で駆動される後輪減速状態とに切換操作自在な後輪変速
装置を備えると共に、機体に支持された対地作業装置へ
伝動及び伝動遮断操作を行う作業クラッチを備えて、こ
の作業クラッチの伝動遮断操作に連動して、後輪変速装
置を標準状態から後輪減速状態に切換操作する切換手段
を備えてある。

【０００７】

【作用】前述のような四輪駆動型水田作業車において
は、一回の作業行程（植付行程等）が終了して機体が畦
際に達すると先ず、作業クラッチを伝動遮断操作して対
地作業装置を停止させてから、前輪の操向操作を行い始
めて畦際での旋回を開始する。従って、本発明のように
作業クラッチの伝動遮断操作に連動して、後輪変速装置
を標準状態から後輪減速状態に切換操作するように構成
すると、畦際での旋回開始の少し前から後輪が前輪より
も低速で駆動される状態となっているので、畦際で旋回
する場合、旋回の最初から後輪が前輪よりも低速で駆動
された状態で、畦際での旋回が行われるのである。

【０００８】畦際において前輪の操向操作だけで、一方
のサイドブレーキペダルを踏み操作しないで旋回する場
合もある。これにより、従来の構造のように一方のサイ
ドブレーキペダルの踏み操作に連動して後輪変速装置を
後輪減速状態に切換操作するように構成した場合、畦際
において後輪変速装置を後輪減速状態に切換操作せずに
旋回を行ってしまう場合がある。これに対して本発明の
ような作業クラッチの伝動遮断操作は、機体が畦際に達
した際に必ず最初に行う操作なので、本発明のように作
業クラッチの伝動遮断操作に連動して後輪変速装置を後
輪減速状態に切換操作するように構成すれば、畦際にお
いて後輪変速装置を後輪減速状態に切換操作せずに旋回
を行ってしまうような事態は生じない。

【０００９】

【発明の効果】以上のように、作業クラッチの伝動遮断
操作に連動して後輪変速装置を後輪減速状態に切換操作
するように構成することによって、最初から後輪が前輪
よりも低速で駆動された状態で畦際での旋回が行えるよ
うになり、前輪と後輪が同じ速度で駆動された状態で旋
回することによる田面の荒れをさらに少なくすることが
できるようになった。このように、畦際での田面の荒れ
を少なくすることができれば、この後に行う畦際付近の
田植作業が楽に行えるようになる。

【００１０】又、作業クラッチの伝動遮断操作に連動し
て後輪変速装置を後輪減速状態に切換操作するように構
成すれば、後輪変速装置の後輪減速状態への切換操作が
行われずに畦際での旋回を行ってしまうような事態もな
いので、畦際での田面の荒れをさらに少なくすることが
できる。

【００１１】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。図１及び図２に示すように、左右一対の走行用の
前輪１及び左右一対の走行用の後輪２で支持された機体
の前部にエンジン３を備え、機体の後部にリンク機構４
及び油圧シリンダ６を介して、苗植付装置５（対地作業
装置に相当）を昇降操作自在に連結して、四輪駆動型水
田作業車の一例である乗用型田植機を構成している。

【００１２】図２に示すように、エンジン３からの動力
は割プーリー型式の無段変速装置７を介して、前進２段
後進１段のギヤ変速装置８に伝達されている。そして、
ギヤ変速装置８からの動力が、前輪デフ装置９を介して
左右の前輪１に伝達される伝動系、後輪変速装置１０及
び後輪デフ機構１１を介して左右の後輪２に伝達される
伝動系、並びに、植付クラッチ１２（作業クラッチに相
当）を介して苗植付装置５に伝達される伝動系の３つの
伝動系に並列的に分岐されている。

【００１３】次に、後輪変速装置１０について説明す
る。図２に示すように、ギヤ変速装置８からの出力軸１
３と後輪デフ機構１１の入力軸１４とが同芯状に配置さ
れており、出力軸１３の端部にシフトギヤ１５がスプラ
イン構造にてスライド操作自在に外嵌されている。シフ
トギヤ１５はバネ１６で入力軸１４の端部との咬合側に
付勢されており、出力軸１３に相対回転自在に外嵌され
た第１伝動ギヤ１７に、シフトギヤ１５をスライド操作
して咬合させる第１電動シリンダ１８（切換手段に相
当）を備えている。

【００１４】以上の構造により、通常の走行状態ではバ
ネ１６の付勢力でシフトギヤ１５が紙面右方にスライド
して入力軸１４に咬合しており、前輪１と後輪２が略同
じ速度で駆動される標準状態で、出力軸１３から入力軸
１４に動力が伝達される。逆に、第１電動シリンダ１８
によりシフトギヤ１５を紙面左方にスライド操作して第
１伝動ギヤ１７に咬合させると、出力軸１３の動力が第
１伝動ギヤ１７、伝動軸１９及び第２伝動ギヤ２０を介
して、前輪１よりも後輪２が低速で駆動される後輪減速
状態で出力軸１３から入力軸１４に動力が伝達される。

【００１５】図２に示すように、制御弁２１からの作動
油の給排操作により油圧シリンダ６が作動して、苗植付
装置５の昇降操作が行われ、苗植付装置５への植付クラ
ッチ１２は第２電動シリンダ２２により、伝動及び伝動
遮断操作される。そして、図２及び図１に示すように前
輪１を操向操作する操縦ハンドル２３の右横に操作レバ
ー２４が配置されており、操作レバー２４の操作位置が
制御装置２５に入力されている。

【００１６】これにより操作レバー２４を植付位置に操
作すると、制御装置２５の操作信号に基づき第２電動シ
リンダ２２により植付クラッチ１２が伝動側に操作さ
れ、図１に示すように苗植付装置５が田面Ｇから設定高
さに支持されるように、制御弁２１及び油圧シリンダ６
によって、苗植付装置５が自動的に昇降操作される。

【００１７】操作レバー２４を上昇位置に操作すると、
制御装置２５の操作信号に基づき第２電動シリンダ２２
により植付クラッチ１２が伝動遮断側に操作され、制御
弁２１及び油圧シリンダ６によって、苗植付装置５が上
昇操作されるのであり、操作レバー２４を下降位置に操
作すると、制御装置２５の操作信号に基づき第２電動シ
リンダ２２により植付クラッチ１２が伝動遮断側に操作
され、制御弁２１及び油圧シリンダ６によって、苗植付
装置５が下降操作される。そして、操作レバー２４を中
立位置に操作すると、制御装置２５の操作信号に基づき
第２電動シリンダ２２により植付クラッチ１２が伝動遮
断側に操作され、制御弁２１及び油圧シリンダ６によっ
て、苗植付装置５がその位置に停止操作されるのであ
る。

【００１８】以上の構造により、一回の植付行程（操作
レバー２４は植付位置で、後輪変速装置１０はシフトギ
ヤ１５が入力軸１４に咬合した標準状態）が終了して機
体が畦際に達すると、作業者が操作レバー２４を上昇位
置に操作して植付クラッチ１２を伝動遮断操作し、苗植
付装置５を停止させて田面Ｇから上昇させる。

【００１９】この操作レバー２４の操作により植付クラ
ッチ１２が伝動遮断操作されると、制御装置２５からの
操作信号により第１電動シリンダ１８が作動し、入力軸
１４に咬合していたシフトギヤ１５が、紙面左方にスラ
イド操作されて第１伝動ギヤ１７に咬合する。これによ
り、後輪２が前輪１よりも低速で駆動される後輪減速状
態となる。このように、後輪２が前輪１よりも低速で駆
動された状態で図１の操縦ハンドル２３により前輪１の
操向操作を行って、畦際での旋回を行う。この場合、こ
れと同時にサイドブレーキ（図示せず）により、旋回中
心側の後輪２に制動を掛けて旋回を行う場合もある。

【００２０】前述のようにして畦際での旋回が終了し機
体が次の植付行程の方向に向くと、操作レバー２４を上
昇位置から下降位置に操作し植付位置に操作して、苗植
付装置５を田面Ｇにまで下降操作する。これにより、第
１電動シリンダ１８により植付クラッチ１２が伝動側に
操作されて苗植付装置５が植付作動を開始し、苗植付装
置５が田面Ｇから設定高さに支持されるように、苗植付
装置５が自動的に昇降操作され始める。これと同時に制
御装置２５からの操作信号により第１電動シリンダ１８
が作動を停止し、第１伝動ギヤ１７に咬合していたシフ
トギヤ１５が、バネ１６の付勢力で紙面右方にスライド
操作されて入力軸１４に咬合する。これにより、前輪１
と後輪２が略同じ速度で駆動される標準状態に戻るので
ある。

【００２１】尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を
便利にする為に符号を記すが、該記入により本発明は添
付図面の構成に限定されるものではない。

【図面の簡単な説明】

【図１】乗用型田植機の全体側面図

【図２】前輪及び後輪への伝動構造、後輪変速装置等を
示す概略平面図

【符号の説明】

１ 前輪 ２ 後輪 ５ 対地作業装置 １０ 後輪変速装置 １２ 作業クラッチ １８ 切換手段

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B60K 17/348

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 走行用の前輪（１）と後輪（２）とが略
   等しい速度で駆動される標準状態と、前記後輪（２）が
   前輪（１）よりも低速で駆動される後輪減速状態とに切
   換操作自在な後輪変速装置（１０）を備えると共に、 機体に支持された対地作業装置（５）へ伝動及び伝動遮
   断操作を行う作業クラッチ（１２）を備えて、この作業
   クラッチ（１２）の伝動遮断操作に連動して、前記後輪
   変速装置（１０）を標準状態から後輪減速状態に切換操
   作する切換手段（１８）を備えてある四輪駆動型水田作
   業車。