JP2827890B2 - 磁気特性の優れた電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気特性の優れた電磁鋼板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は磁気特性の優れた無方向
性電磁鋼板の製造方法に関する。より詳しくは、かかる
電磁鋼板を安価かつ安定して製造することのできる方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】鉄損が低く、磁気特性に優れた無方向性
電磁鋼板は、これまで、例えば特開昭59−74258 号公報
に示される如く、SiまたはSiおよびAlを含有し、かつ
N、O、S等の不純物元素の含有量を低減させた冷間圧
延珪素鋼板が主流であった。SiやAlの添加は、鋼板の電
気抵抗を高め、渦電流損を低減させるため、全鉄損を低
下させる作用がある。従って、珪素鋼板は、一般にSiと
Alの含有量が増すほど鉄損が低減し、磁気特性が良好と
なる。例えば、Al含有量が比較的低い場合には、Si含有
量 6.5重量%で磁歪が0となり、最大透磁率もピークと
なる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、重量でSi含有
量が4%またはAl含有量が3%を超えるか、或いはSi+
Alの合計含有量が5.0 %を超えると、鋼板の延性低下が
著しく、破断を起こさずに冷間圧延することが困難とな
るため、冷間圧延鋼板を工業的に製造することができな
くなる。そのため、SiまたはSi+Alの含有量増大による
珪素鋼板の磁気特性の改善には限界があった。
【0004】この問題を解決する手段として、特開昭62
−227079号公報には、SiCl4 ガス雰囲気中での気相化学
蒸着 (CVD) とその後の拡散熱処理により鋼帯を浸珪
処理することにより、連続的に高珪素鋼帯を製造する方
法が記載されている。この方法は工業的に実施可能では
あるが、CVDのための専用設備を必要とし、かつ蒸着
時間が長く、合金化温度が高いために生産性に劣る問題
という問題がある。
【0005】また、特開昭58−45349 号公報に提案され
ているように、Si: 5.0〜8.0 重量%を含有する高珪素
溶鋼を急冷凝固法により薄帯化して、高珪素鋼帯を得る
ことも可能である。しかし、この方法では30μm以下と
いう極く薄い板厚の鋼帯しか製造できず、また板厚精度
も悪かった。
【0006】本発明は、上記の従来技術の問題点を持た
ない、即ち、CVD法や急冷凝固法を利用しないで、上
記の高珪素鋼帯なみの優れた磁気特性を示す電磁鋼板を
比較的安価に安定して製造することができる無方向性
磁鋼板の製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、AlとM
nがいずれもSiと同様に電気抵抗を高める元素である
ことに着目し、従来の冷間加工電磁鋼板にAlまたはA
l−Mn合金めっきを施した後、合金化焼鈍して鋼板内
部にAlまたはAlとMnを拡散させることにより、鉄
損が低減し、磁気特性が改善された無方向性電磁鋼板を
安価に製造できることを究明した。
【0008】ここに、本発明の要旨は、重量で、Si:
4%以下、Al:3%以下で、かつSi+Alの合計量
が5%以下、C:0.01%以下、Mn:0〜1%、残
部Feおよび不可避不純物よりなる冷間圧延鋼板の片面
または両面に、厚み0.1mm以下のAlめっき皮膜、
またはMn含有量50重量%以下、厚み0.1mm以下
のAl−Mn合金めっき皮膜を、溶融めっき法または溶
融塩電解めっき法により形成し、続いて合金化焼鈍する
ことからなる、磁気特性の優れた無方向性電磁鋼板の製
造方法にある。
【0009】以下、本発明の構成を上記のように限定し
た理由について説明する。なお、以下の説明において、
鋼組成とめっき組成に関する%はすべて重量%である。母材鋼板 めっき前の母材鋼板は、従来より無方向性電磁鋼板とし
て使用されてきた、AlとSiを含有する冷間圧延鋼板であ
る。冷間圧延鋼板とすることで、電磁鋼板に要求される
高精度の板厚制御が可能となる。しかし、Siを4%を超
えて含有するか、またはAlを3%を超えて含有するか、
さらにはSi+Alの合計量が5%を超えると、冷間圧延が
困難となるので、Si:4%以下、Al:3%以下、かつSi
+Alの合計量:5%以下とする。好ましくはSi: 2.5〜
4%、Al:0.25〜2%、かつSi+Alの合計量:4.5 %以
下である。
【0010】Cは、磁気時効を引き起こし、磁気特性を
劣化させる作用があるため、この作用が顕著にならない
範囲である0.01%以下とする。好ましくはC:0.005 %
以下である。
【0011】Mnは、前述したように、鋼板の電気抵抗を
高め、磁気特性の向上に寄与するので、必要により添加
することができる。しかし、1%を超えるMnの添加は磁
気特性の改善効果が小さいので、Mn含有量は0〜1%と
する。好ましくは0〜0.5 %である。
【0012】不可避不純物としてはN、O、S、P等の
非金属不純物元素が含まれる。これらは可及的に低減さ
せることが好ましい。特に好ましくは、N<0.005 %、
O<0.005 %、S<0.01%、P<0.1 %である。
【0013】母材の冷間圧延鋼板の製造条件には特に制
限はなく、常法に従って、スラブを熱間圧延および冷間
圧延することにより製造することができる。本発明で
は、この母材鋼板にめっきを施すので、母材の冷間圧延
鋼板の板厚は、製品の所定板厚からめっきにより増大す
る分の板厚を差し引いたものとする。
【0014】めっき皮膜 上記の母材鋼板に、溶融めっき法または溶融塩電解めっ
き法によりAlめっきまたはAl−Mn合金めっきを施す。こ
のめっきは片面に施してもよいが、両面に施す方が、そ
の後の合金化焼鈍において有利であり、好ましい。
【0015】Al−Mn合金めっきの場合、Mn含有量は50%
を超えると、めっき不良となるため、Mn含有量を50%以
下とする。磁気特性の向上効果が大きいことから好まし
いめっき皮膜のMn含有量は15〜30%である。
【0016】めっき皮膜の厚みが0.1 mmを超えると、引
きつづき行う合金化焼鈍における合金化の進行が著しく
遅くなるため、めっき皮膜の厚み0.1 mm以下とする。好
ましくは、めっき皮膜の厚みは0.08 mm 以下である。
【0017】めっき皮膜は、溶融めっき法または溶融塩
電解めっき法により形成する。Alめっきの場合にはこの
どちらの方法も採用できる。Al−Mn合金めっきの場合、
Mn含有量が高くなると、Alに比べてMnの融点が著しく高
いことから、溶融めっき法の適用は困難となり、溶融塩
電解めっき法を採用することになる。
【0018】溶融めっきは、溶融亜鉛めっきに準じた周
知の方法、例えば、ガスクリニーングによる鋼板表面の
清浄化、焼鈍熱処理、溶融めっき浴への浸漬、ガスワイ
ピングによる付着量制御などの工程を経て行うことがで
きる。
【0019】一方、溶融塩電解めっきは、特公昭43−18
245 号、特開昭62−274090号などに記載の公知の塩化物
浴を使用した方法により実施することができる。この塩
化物浴は、AlCl3 と少なくとも1種のアルカリ金属塩化
物 (例、NaCl, KCl 、LiCl)を含有し、必要に応じて、
有機アミン、フッ化物、臭化物、ヨウ化物などを助剤と
して添加してもよい。また、上記のアルカリ金属塩化物
の代わりにエチルメチルイミダゾリウムクロリド (EMI
C) を使用したより低融点の溶融塩浴も使用できる。陽
極は、炭素などの不溶性陽極と可溶性陽極(純Alまたは
Al−Mn合金)のいずれでもよい。可溶性陽極は、電極形
状に成形された一体型の電極であってもよいが、純Alま
たはAl−Mn合金のペレットを不溶性の金属製バスケット
に収容したものを可溶性陽極として用いることもでき
る。
【0020】Al−Mn合金めっきの場合、溶融塩浴にマン
ガン供給源としてMnCl2 などのMn化合物および/または
金属Mnを添加し、Mnイオンを供給することができる。或
いは、可溶性陽極としてAl−Mn合金からなる陽極を使用
することにより、めっき浴中にMnイオンを供給してもよ
い。形成されるAl−Mn合金めっき皮膜中のMn含有量は、
溶融塩浴に添加するマンガン供給源の量、或いは可溶性
陽極として使用するAl−Mn合金材の組成 (Mn含有量) に
よって制御することができる。
【0021】溶融塩電解めっきの前の表面清浄化は常法
(例、脱脂、酸洗) により行えばよい。電解めっきの陽
極は、カーボン、タングステンなどの不溶性陽極と、Al
またはAl−Mn合金などの可溶性陽極のいずれでもよい。
また、良好なめっき皮膜を形成するには、母材の冷間圧
延鋼板と浴中のめっき液とを相対移動させながらめっき
を行うことが好ましい。
【0022】溶融めっき法または溶融塩電解めっき法に
より冷間圧延鋼板の片面または両面にAlまたはAl−Mn合
金めっき皮膜を形成した後、まだ高温にあるめっき鋼板
に対して、続いて合金化焼鈍を行って、めっき皮膜中の
AlまたはAlおよびMnと母材鋼板のFeとの間で合金化反応
(相互拡散) を生じさせる。この合金化焼鈍は、合金化
溶融亜鉛めっき鋼板における合金化焼鈍 (ガルバニール
処理) と同様に実施することができる。但し、Alまたは
Al−Mn合金めっき皮膜は酸化され易いため、熱処理雰囲
気は不活性ガス (例、Arガス) とすることが好まし
い。
【0023】この合金化焼鈍により、少なくともめっき
皮膜全体をFeと合金化させるか、好ましくは鋼板全体に
めっき皮膜中のAlまたはAlとMnを均質に拡散させる。従
って、合金化焼鈍の加熱条件はこれらが達成されるよう
に選べばよく、母材鋼板の板厚、めっき皮膜の厚み、そ
れらの組成によっても異なるが、一般に、温度1000〜12
00℃、好ましくは1050〜1150℃で、20秒〜5分間、好ま
しくは40秒〜3分間の範囲内である。その後の冷却速度
は、好ましくは15〜25℃/secの空冷である。
【0024】こうして本発明の方法により製造された電
磁鋼板は、その後、周知の後処理、例えば、絶縁皮膜の
形成、歪取り焼鈍などを常法に準じて行うことができ
る。
【0025】
【実施例】
(実施例1)Si:3.2 %、Al:0.6 %、C:0.005 %、残
部:Feおよび不可避不純物(N<0.005 %、O<0.005
%、S<0.01%、P<0.1 %)よりなる通常の珪素鋼ス
ラブ (227 mm厚、1000 mm 幅) を通常のプロセスで熱間
圧延、酸洗、熱延板焼鈍、冷間圧延の工程順によって加
工し、0.45 mm 厚×1000 mm 幅の冷間圧延鋼板母材を得
た。
【0026】この母材を、脱脂および酸洗により表面を
清浄化した後、下記条件での連続溶融塩電解めっき法に
より、片面0.03 mm 厚ずつの50%Al−50%Mn合金めっき
皮膜を両面に形成した。 可溶性陽極:Al−Mn合金ペレット (モル比 50/50) 浴組成: AlCl3-NaCl-KCl (モル比 61/26/13) 浴温度: 200 ℃ 電流密度: 50 A/dm2 通板速度: 6 mpm 通電時間: 30 秒。
【0027】溶融塩電解めっき浴から出た鋼板に、引き
続きAr雰囲気の加熱炉を通過させることにより1100℃
×1分間の連続焼鈍を行って、合金化処理した。その
後、20℃/secの空冷により冷却した。合金化焼鈍後の鋼
板の板厚は0.50mmであった。こうして得た電磁鋼板の磁
気特性を、JIS C2550 (1986) に示されたエプスタイン
試験により測定したところ、鉄損W15/50 は2.0 W/kgで
あった。
【0028】(比較例1)実施例1と同じ成分の珪素鋼ス
ラブを実施例1と同様にして0.50 mm 厚に仕上げ、得ら
れた冷間圧延鋼板に対し、引き続き1100℃×1分間の連
続焼鈍を行った。こうして得た電磁鋼板の磁気特性は鉄
損W15/50 で2.8 W/kgであった。
【0029】(実施例2)Si:2.9 %、Al:1.5 %、C:
0.003 %、残部:Feおよび不可避不純物よりなる珪素鋼
スラブ (不純物レベルと寸法は実施例1に同じ) を、実
施例1と同じ方法で0.33 mm 厚の冷間圧延鋼板に仕上げ
た。得られた鋼板を母材とし、表面酸化層除去のための
酸洗とブラシ研削を行った後、その両面に、連続溶融め
っき法により片面0.015 mmずつの厚みのAlめっき皮膜を
形成した。ポット浴組成は純Al、浴温度は700 ℃、通板
速度は20 mpmであった。溶融めっきが終了した鋼板に対
して、引き続き実施例1と同様に合金化焼鈍を施すこと
により、板厚0.35mmの電磁鋼板を得た。この電磁鋼板の
磁気特性は、鉄損W15/50 で1.8 W/kgであった。
【0030】(比較例2)実施例2と同じ成分の珪素鋼ス
ラブを実施例2と同様にして0.35 mm 厚に仕上げ、得ら
れた冷間圧延鋼板に対し、引き続き1100℃×1分間の連
続焼鈍を行った。こうして得た電磁鋼板の磁気特性は鉄
損W15/50 で2.3 W/kgであった。
【0031】(実施例3)Si:2.0 %、Al:0.3 %、Mn:
0.5 %、C:0.007 %、残部:Feおよび不可避不純物か
らなる珪素鋼スラブ (不純物レベルと寸法は実施例1に
同じ) を、実施例1と同じ方法で0.40 mm 厚に仕上げ
た。得られた冷間圧延鋼板を母材とし、その両面に、実
施例1と同様の連続溶融塩電解めっき法により、片面0.
08 mm ずつの厚みの70%Al−30%Mn合金めっき皮膜を形
成した。めっき条件も実施例1とほぼ同様であったが、
可溶性陽極のAl−Mn合金ペレットの組成はAl/Mnモル比
で75/25であり、通電時間は60秒であった。その後、引
き続いて実施例1と同様に合金化焼鈍を行い、板厚0.50
mm の電磁鋼板を得た。この電磁鋼板の磁気特性は、鉄
損W15/50 で2.5 W/kgであった。
【0032】(比較例3)実施例3と同じ成分の珪素鋼ス
ラブを実施例3と同様にして0.50 mm 厚に仕上げ、得ら
れた冷間圧延鋼板に対し、引き続き1100℃×1分間の連
続焼鈍を行った。こうして得た電磁鋼板の磁気特性は鉄
損W15/50 で3.2 W/kgであった。
【0033】(実施例4)実施例3と同一成分のケイ素
鋼スラブを実施例1と同様の方法で、0.40 mm 厚の冷間
圧延鋼板に仕上げた。この鋼板母材の両面に、実施例1
と同様の連続溶融塩電解めっき法により、片面0.08 mm
ずつの厚みの50%Al−50%Mn合金めっき皮膜を形成し
た。使用した可溶性陽極は実施例1と同じ組成のAl−Mn
合金ペレットであり、通電時間は60秒であった。その
後、引き続いて実施例1と同様に合金化焼鈍を行い、板
厚0.50 mm の電磁鋼板を得た。この電磁鋼板の磁気特性
は、鉄損W15/50 で2.4 W/kgであった。
【0034】(実施例5)実施例4を繰り返したが、可
溶性陽極として純アルミニウムペレットを使用し、冷間
圧延鋼板母材の両面に片面0.08 mm ずつの厚みの100 %
Alめっき皮膜を形成した。通電時間は60秒であった。そ
の後、引き続いて実施例1と同様に合金化焼鈍を行い、
板厚0.50 mm の電磁鋼板を得た。この電磁鋼板の磁気特
性は、鉄損W15/50 で2.6 W/kgであった。
【0035】
【発明の効果】上の実施例と対応する比較例との比較か
ら明らかなように、本発明に従って、SiとAlを含有する
冷間圧延鋼板に、溶融めっき法または溶融塩電解めっき
法によりAlまたはAl−Mn合金めっき皮膜を形成した後、
続いて合金化焼鈍を行って、めっき皮膜中のAlまたはAl
とMnを母材鋼板中に拡散させると、このめっき皮膜を形
成しない場合に比べて、W15/50 で 0.5〜0.8 程度と著
しく鉄損が低下し、CVD法や急冷凝固法で得られる高
珪素鋼板なみの優れた磁気特性を示す電磁鋼板を得るこ
とができる。
【0036】本発明の方法は、良加工性の鋼組成から得
た寸法精度のよい冷間圧延電磁鋼板を母材とし、これに
溶融めっきまたは溶融塩電解めっきと合金化焼鈍を行う
ことからなるので、めっき鋼板の製造工場にある既存の
めっき設備および熱処理設備を活用して実施することが
できる。従って、本発明の方法により、磁気特性に優
れ、寸法も厳密に制御された電磁鋼板を比較的安価に安
定して製造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C25D 3/66 C25D 3/66 5/50 5/50 H01F 1/16 H01F 1/16 A (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 22/00 - 22/86 C21D 9/46 501 C23C 2/00 - 2/40 C23C 30/00 C25D 3/00 - 3/66 C25D 5/00 - 5/56 H01F 1/16

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量で、Si:4%以下、Al:3%以
    下で、Si+Alの合計量が5%以下、C:0.01%
    以下、Mn:0〜1%、残部Feおよび不可避不純物よ
    りなる冷間圧延鋼板の片面または両面に、厚み0.1m
    m以下のAlめっき皮膜、またはMn含有量50重量%
    以下、厚み0.1mm以下のAl−Mn合金めっき皮膜
    を、溶融めっき法または溶融塩電解めっき法により形成
    し、続いて合金化焼鈍することからなる、磁気特性の優
    れた無方向性電磁鋼板の製造方法。
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