JP2827815B2 - ポリエチレン被覆鋼管 - Google Patents

ポリエチレン被覆鋼管

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JP2827815B2 JP5130680A JP13068093A JP2827815B2 JP 2827815 B2 JP2827815 B2 JP 2827815B2 JP 5130680 A JP5130680 A JP 5130680A JP 13068093 A JP13068093 A JP 13068093A JP 2827815 B2 JP2827815 B2 JP 2827815B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐候性および耐ハンド
リング性に優れたポリエチレン被覆鋼管に関する。
【0002】
【従来の技術】石油や天然ガス、水などを輸送するため
のラインパイプ外面は、自然環境の中で、河川水、排
水、雨水、大気、太陽光等に曝され、また土砂、泥等に
直接強く接するので、著しく腐食が起こり易い。このた
め近年、この対策として樹脂を厚膜 (1〜3mm) 被覆す
ることにより優れた防食性を与えた重防食被覆鋼材を使
用されつつある。この被覆樹脂としては、経済性や各種
特性を考慮してポリエチレンが多用されている。ところ
がポリエチレン樹脂は、太陽光に含まれる紫外線の影響
で劣化しやすい。ラインパイプ等の施工時にはヤード等
で3〜5年放置される場合もあるため、被覆層のポリエ
チレンにはカーボンブラックを添加して耐候性を向上さ
せるのが一般的であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、砂漠地
帯のように日中の気温が50℃以上になり、また太陽光強
度が強い場所においては、カーボンブラックを添加した
ポリエチレンは耐候性に優れるものの色調が黒に限定さ
れるため、太陽光によりポリエチレン被覆が80℃以上に
なる場合があり、ポリエチレンが軟化する。軟化したポ
リエチレンはヤード保管時においてパイプ自体の重みで
凹んだり、運搬時、施工時のハンドリングにより表面が
損傷を受けやすくなる。損傷した部分は補修の必要があ
るため、施工時に多大な労力と時間が必要となり、経済
的、時間的に著しく効率が低下する。従って、砂漠地帯
のような高温となる場所においては、耐ハンドリング性
に優れた被覆が望まれていたが、これまでこのような要
求を満足する被覆は全くなかった。本発明の目的は、耐
候性 (3〜5年) および耐ハンドリング性に優れたポリ
エチレン被覆鋼管を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ポリエチ
レン被覆の太陽光による温度上昇、耐候性について検討
した結果、着色顔料含有ポリエチレンの中、白色系のポ
リエチレンが太陽光反射性が優れ、樹脂の温度上昇が小
さく軟化しにくいこと、および顔料の紫外線遮蔽性によ
り砂漠地帯において3〜5年の耐候性を達成することを
見出した。
【0005】ここに本発明は、膜厚0.5mm以上のポ
リエチレン樹脂層が接着剤層を介して鋼管の外面に被覆
されているポリエチレン被覆鋼管において、ポリエチレ
ン樹脂層が、ポリエチレン100重量部に対して白色顔
料が75重量%以上である着色顔料を0.5重量部以上
添加した白色系ポリエチレン組成物からなることを特徴
とする、耐候性および耐ハンドリング性に優れた埋設ラ
インパイプ用ポリエチレン被覆鋼管を要旨とする。
【0006】また、本発明は、膜厚0.5mm以上のポ
リエチレン樹脂層が接着剤層を介して鋼管の外面に被覆
されているポリエチレン被覆鋼管において、ポリエチレ
ン樹脂層が、ポリエチレン100重量部に対して白色顔
料が75重量%以上である着色顔料を0.1重量部〜
0.5重量部および酸化防止剤を0.05重量部以上添
加した白色系ポリエチレン組成物からなることを特徴と
する、耐候性および耐ハンドリング性に優れた埋設ライ
ンパイプ用ポリエチレン被覆鋼管にも関する。
【0007】
【作用】以下、本発明の構成を詳細に説明する。本発明
において被覆の対象となる鋼管は、特に限定されず、炭
素鋼、合金鋼等いずれの材質からなる鋼管でもよいが、
特に、砂漠のような高温の環境下で扱われるラインパイ
プの場合に効果的である。
【0008】被覆される鋼管は、その外表面を予めショ
ットブラストなどの物理的手段や酸洗、アルカリ脱脂な
どの化学的手段を適当に組み合わせて、表面を清浄化し
ておくことが望ましい。
【0009】鋼管には、密着性や防食性を高めるための
下地処理としてメッキや化成処理 (クロメート処理、リ
ン酸亜鉛処理) を施してもよい。また、ポリエチレン樹
脂層の接着性を高めるために、鋼材表面を予め適当なプ
ライマーで処理してもよい。プライマーとしては、例え
ば、エポキシ系プライマーなどが使用できる。プライマ
ーは、これを薄く塗布した後、乾燥するか、紫外線等を
照射して硬化させる。これらの下地処理は、必要に応じ
て従来と同様に行えばよい。
【0010】ポリエチレン樹脂は接着性が比較的低いの
で、鋼材と樹脂層との界面に接着剤層を介在させ、接着
剤を介して樹脂層を鋼材に被覆する。接着剤としては、
ポリエチレン被覆の際に使用される公知の接着剤が使用
できるが、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂が特に
高い接着性を示すので好ましい。その他、エチレン共重
合体 (例、エチレン/酢酸ビニル共重合体) 系の接着剤
やポリエチレン系ホットメルト接着剤なども使用可能で
ある。接着剤層の厚みは特に限定されず、接着剤の種類
によっても異なるが、一般には 0.1〜0.5 mm程度であ
る。
【0011】鋼管を被覆するポリエチレン樹脂層の厚み
は 0.5mm以上である。特に防食性、耐衝撃性、耐候性を
重視するラインパイプのような被覆鋼管の場合、1.5 〜
3mmが好ましい。0.5 mmより薄いポリエチレン被覆の場
合、十分な耐衝撃性が得られない。膜厚の上限は特にな
いが、5mmより厚い場合は使用する樹脂が多量になり経
済的に好ましくない。
【0012】ポリエチレン樹脂層を構成するポリエチレ
ン組成物は、ポリエチレン樹脂に白色顔料を主体とする
着色顔料を添加した白色系ポリエチレン組成物からな
る。ここでいう白色系とは、添加する着色顔料のうち、
白色顔料が75重量%以上であることを意味する。また、
着色顔料とは、白、赤、青など着色を目的とした顔料で
あり、硫酸バリウム、シリカ、マイカ、タルク等の体質
顔料等は含まれない。
【0013】使用するポリエチレン樹脂は、顔料の入っ
ていない状態で、0.93以上の密度であることが好まし
い。0.93より低い密度のポリエチレンは衝撃強度が低い
ため、十分な衝撃強度を得るためには膜厚を厚くしなけ
ればならず、多量の樹脂が必要となる。
【0014】ポリエチレン樹脂に添加する着色顔料の主
成分である白色顔料としては、例えばチタン系白色顔
料、鉛系白色顔料、亜鉛系白色顔料、アンチモン系白色
顔料がある。白色系とするにはこれらの白色顔料のみの
添加でもよいが、白色顔料を主として、白色顔料以外の
公知の着色顔料を全着色顔料の25重量%以下添加するこ
とによって淡色系のポリエチレン被覆としてもよい。こ
れ以上では色調が濃くなり過ぎ、太陽光によってポリエ
チレン樹脂の温度上昇が促進されて軟化し、ハンドリン
グ時のダメージにより傷がつき易くなるので好ましくな
い。
【0015】色調を白色系にするための顔料を、ポリエ
チレン 100重量部に対し 0.5重量部以上添加する場合、
ポリエチレン樹脂の温度上昇の防止効果と、紫外線遮蔽
効果が十分となり、必ずしも酸化防止剤を添加する必要
はない。顔料の添加量の上限は特にないが、顔料の過剰
添加は製品の経済性を低下させるので、顔料添加量は5
重量部以下にするのが好ましい。
【0016】色調を白色系とするための顔料の添加量
が、ポリエチレン 100重量部に対し 0.5重量部以下と少
ない場合は、顔料による紫外線遮蔽性が十分に得られな
いため、酸化防止剤を併用する。砂漠地帯での温度上昇
を防止し、かつ3〜5年の耐候性を保持するためには、
ポリエチレン 100重量部に対し白色顔料が75重量%以上
である顔料を 0.1重量部〜0.5 重量部および酸化防止剤
0.05重量部以上添加する。顔料添加量が 0.1重量部より
少ない場合は、耐候性が著しく低下し好ましくない。
【0017】ポリエチレン樹脂に添加する酸化防止剤と
しては、フェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化
防止剤、りん系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒンダ
ードピペリジン系光安定剤等、従来使用されている酸化
防止剤であればいずれでもよい。これらの酸化防止剤を
一種もしくは二種以上添加しても良いが、多量の添加は
製品の経済性を損なうので好ましくない。酸化防止剤の
添加量の合計は、ポリエチレン 100重量部に対して2重
量部以下とすることが好ましい。
【0018】このほか体質顔料、防錆顔料、分散剤、軟
化剤、難燃剤などの公知の添加剤を一種もしくは二種以
上さらに添加してもよい。またポリエチレン樹脂に紫外
線吸収剤を添加することも可能であるが、顔料を添加し
ており紫外線遮蔽性が高いため、必ずしも添加する必要
はない。
【0019】本発明で用いる顔料を含有する白色系のポ
リエチレン樹脂を製造する際には、ポリエチレン樹脂中
に顔料を3〜50重量%程度配合したマスターバッチを用
意しておき、このマスターバッチと顔料を含有しないポ
リエチレン樹脂を所定の割合で配合して、ポリエチレン
樹脂組成物を調製すれば、均質な組成物を得やすく、ま
た経済的にも有利となる。
【0020】本発明の白色系のポリエチレン被覆鋼管
は、その添加顔料の紫外線遮蔽性により耐候性に優れ、
かつ砂漠地帯の太陽光による温度上昇も防ぐことができ
るため耐ハンドリング性に優れる。
【0021】上記白色系ポリエチレン組成物で鋼管を被
覆するには、従来と同様の被覆方法で行えばよく、特定
の方法に制限されるものではない。例えば、鋼材に粘着
剤または接着剤層を介して、成形機により連続的に押し
出しながら被覆する方法がある。また、静電粉体塗装、
流動浸漬、溶射といった塗装手段を利用してポリエチレ
ンを被覆することも可能である。
【0022】
【実施例】次に、実施例により本発明を詳細に説明す
る。150 ×70×3.2 mmt (SS41)の表面をショットブラス
トにより素地調整 (Sa. 2.5 以上) した後、クロム付着
量が200 mg/m2になるように塗布型クロメート液 (関西
ペイント株式会社製; コスマー100)を使用してクロメー
ト処理を施した。この鋼板にエポキシ系プライマー (日
本ペイント株式会社製; No.66 プライマー)を乾燥膜厚
が30μmになるように塗布し、熱プレスを用いて鋼板を
190℃に昇温させることにより、プライマーの焼付と鋼
板の予熱を行った。
【0023】一方、被覆する防食ポリエチレン層は、中
低圧法ポリエチレン (ショーレックス S4002EX、昭和電
工製、商品名) を用い、各種顔料を表1に示す添加量と
し、ポリエチレン層を得た。前記鋼板とポリエチレン層
と無水マレイン酸変性ポリエチレン (三井石油化学製ア
ドマー) を熱プレスで熱融着することによりポリエチレ
ン被覆鋼板を得た。このポリエチレン被覆の厚みは接着
剤層が 0.3mm、ポリエチレン層の厚みは表1に示す通り
であった。
【0024】このポリエチレン被覆鋼板をサウジアラビ
ア砂漠地帯において曝露して、ポリエチレン被覆の日中
最高温度を測定し、その温度における落重衝撃強度を測
定した。また5年間サウジアラビアの砂漠地帯で曝露試
験を実施した後、日中最高温度における落重衝撃強度を
測定した。その結果を表1に示す。
【0025】サウジアラビア砂漠地帯における日中最高
温度は、白色のものは58℃、カーボンブラックを添加し
たものは82℃であった。落重衝撃強度が1.0 kg・m 未満
のものについては、施工時傷がついたり、ヤード保管時
のパイプ自身の重みで被覆が押しつぶれたりする可能性
があるので、落重衝撃強度としては1.0 kg・m 以上のも
のの評価を○、1.0 kg・m 未満のものを×とした。また
5年曝露後の耐候性についても同様に評価した。
【0026】本発明にかかる実施例1〜14では、曝露後
においても落重衝撃強度は1.0 kg・m 以上であり、耐候
性を保持している。実施例11〜13に示すように顔料添加
濃度が0.5 より少ない場合、酸化防止剤を添加すること
によって、5年の耐候性を保持しており、衝撃強度も1.
0 kg・m 以上を保持している。
【0027】一方、比較例1、2のようにカーボンブラ
ックを添加したポリエチレンは、5年曝露後の物性的変
化はないが、日中最高温度が82℃に達するため、衝撃強
度自体が1.0 kg・m より小さい。
【0028】比較例3に示すように、酸化防止剤添加な
しで顔料添加量が0.5 重量部より少ない場合、曝露5年
後においては、衝撃強度が著しく低下し1.0 kg・m より
低くなった。また、添加顔料が0.5 重量部より少ない場
合でも、比較例4に示すように膜厚を3mmとすれば、曝
露5年後において衝撃強度を1.0 kg・m に保持すること
は可能である。しかし、太陽光による劣化のため衝撃強
度保持率は低く、また膜厚が大きくなるだけ使用樹脂量
が大量となるため、経済性が著しく低下する。
【0029】比較例5〜7に示すように、白色顔料以外
の顔料が全着色顔料添加量の1/4 を超えると、太陽光の
吸収が増大し、樹脂温度が高くなるため衝撃強度が低く
なる。すなわち白色のポリエチレンと同様の衝撃強度を
得るためには白色のポリエチレンより膜厚を大きくする
必要があるので、経済的に不利になる。
【0030】比較例8に示すように、顔料添加量が0.5
重量部以下で、かつ酸化防止剤添加量が0.05重量部以下
である場合、太陽光による劣化のため、曝露5年後の衝
撃強度が著しく低下する。また比較例9に示すように酸
化防止剤0.05重量部以上であっても顔料添加量が0.1 重
量部より低い場合、耐候性が著しく低下する。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の白色系の
ポリエチレン被覆鋼管は、耐ハンドリング性および耐候
性に優れた被覆鋼管である。従来の被覆鋼管では耐候性
の改善のみを目的とし、耐ハンドリング性については全
く考慮されていなかった。本発明により、砂漠地帯にお
いて問題であった、鋼管の保管時、運搬時、施工時のハ
ンドリングによる損傷補修という多大な労力、時間を削
減することができ、実用上有用な発明である。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B32B 15/08 103

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 膜厚0.5mm以上のポリエチレン
    樹脂層が接着剤層を介して鋼管の外面に被覆されている
    ポリエチレン被覆鋼管において、ポリエチレン樹脂層
    が、ポリエチレン100重量部に対して白色顔料が75
    重量%以上である着色顔料を0.5重量部以上添加した
    白色系ポリエチレン組成物からなることを特徴とする、
    耐候性および耐ハンドリング性に優れた埋設ラインパイ
    プ用ポリエチレン被覆鋼管。
  2. 【請求項2】 膜厚0.5mm以上のポリエチレン
    樹脂層が接着剤層を介して鋼管の外面に被覆されている
    ポリエチレン被覆鋼管において、ポリエチレン樹脂層
    が、ポリエチレン100重量部に対して白色顔料が75
    重量%以上である着色顔料を0.1重量部〜0.5重量
    部および酸化防止剤を0.05重量部以上添加した白色
    系ポリエチレン組成物からなることを特徴とする、耐候
    性および耐ハンドリング性に優れた埋設ラインパイプ用
    ポリエチレン被覆鋼管。
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