JP2826773B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、インクジェット記録ヘ
ッドを用いて被記録材に画像を形成するインクジェット
記録装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】コンピューターやワードプロセッサ等と
併用されたり、あるいは単独に使用されるプリンタ、複
写機、ファクシミリ等の記録装置は、用紙や樹脂薄板等
のシート状の被記録材を給紙搬送するとともに、画像情
報に基づいて該被記録材に画像を記録していくように構
成されている。前記記録装置は、記録方式により、イン
クジェット式、ワイヤドット式、サーマル式、レーザー
ビーム式等に分けることができる。

【０００３】そのうち、インクジェット式（インクジェ
ット記録装置）は、記録手段（記録ヘッド）から被記録
材にインクを吐出して記録を行なうものであり、高精細
な画像を高速で記録することができ、普通紙に特別の処
理を必要とせずに記録することができ、ノンインパクト
方式であるため騒音が少なく、しかも、多色のインクを
使用してカラー画像を記録するのが容易であるなどの利
点を有している。中でも、紙幅方向に多数の吐出口を配
列したラインタイプの記録手段を使用するライン型の装
置は、記録の一層の高速化が可能である。特に、熱エネ
ルギーを利用してインクを吐出するインクジェット式の
記録手段（記録ヘッド）は、エッチング、蒸着、スパッ
タリング等の半導体製造プロセスを経て、基板上に製膜
された電気熱変換体、電極、液路壁、天板などを形成す
ることにより、高密度の液路配置（吐出口配置）を有す
るものを容易に製造することができる。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】前記シート状の被記録
材としては、前記用紙や樹脂薄板（例えば、ＯＨＰ）な
どの他、長繊維加工紙（和紙等）が使用される場合があ
る。すなわち、被記録材に対する要求も様々なものがあ
り、通常の被記録材である紙、ＯＨＰに用いられる透明
フイルムなどの他に、近年では被記録材として長繊維加
工紙あるいは織布を使用することが要求されるようにな
ってきた。そこで、インクジェット記録装置で上記のよ
うな長繊維を含む被記録材に記録するような場合には、
記録手段（記録ヘッド）と被記録材との隙間が通常では
０．５〜１．０ミリ程度とわずかであるために、被記録
材の表面に付着したり被記録材の繊維上にある、微細な
ケバ状の繊維（以下ケバと称す）やゴミ、紙粉などのた
め、正常な記録ができない場合があった。すなわち、前
記ケバが記録手段の吐出口付近に付着するために、イン
ク吐出が妨げられ（通常では不吐出と称す）て画像上に
ライン状の欠陥が生じたり、該ケバが記録直後の記録面
を擦って画像が乱れるなど、画像品位が著しく低下する
ことがあった。

【０００５】本発明はこのような解決すべき課題に鑑み
てなされたものであり、本発明の目的は、簡単な構成
で、長時間にわたって被記録材のインクジェット記録ヘ
ッドと対向する領域に該領域を清掃するための液体を供
給することができ、もって、被記録材表面のゴミ、ケバ
等がインクジェット記録ヘッドの吐出口付近に付着して
正常なインク吐出が妨げられるといった事態の発生を長
時間にわたって未然に防止することができるインクジェ
ット記録装置を提供することである。

【０００６】

【課題解決のための手段】本発明は、上記目的を達成す
るため、インクジェット記録ヘッドを用いて被記録材に
画像を形成するインクジェット記録装置において、前記
被記録材を前記インクジェット記録ヘッドと対向する位
置を通過するように搬送する搬送手段と、周面に複数の
開口を配する円筒状中空部材と、該円筒状中空部材の前
記周面の外側に配された多孔質の液体保持部材と、を備
え、前記インクジェット記録ヘッドの被記録材搬送方向
上流側の前記被記録材の前記インクジェット記録ヘッド
と対向する領域に当接するローラー部材と、前記ローラ
ー部材の前記円筒状中空部材の内部から前記開口を介し
て前記液体保持部材へ前記被記録材の前記領域を清掃す
るための液体を供給する供給手段と、を有することを特
徴とする。前記液体としては、染料を含まない無色透明
のクリアインクを使用することが好ましく、また、前記
被記録材としては織布も使用される。

【０００７】

【作用】上記構成を有するインクジェット記録装置によ
れば、長時間にわたって被記録材のインクジェット記録
ヘッドと対向する領域に該領域を清掃するための液体を
供給することができ、従って、被記録材表面のゴミ、ケ
バ等がインクジェット記録ヘッドの吐出口付近に付着し
て正常なインク吐出が妨げられるといった事態の発生を
長時間にわたって未然に防止することができ、画像品位
の低下を防止することができる。

【０００８】

【実施例】図１は本発明を適用するのに好適なインクジ
ェット記録装置の一構成例を示す模式的断面図であり、
同図において、１は記録装置本体、２はロール状に巻回
された被記録材、３は引き出された被記録材２を搬送す
るための一対のローラーから成る従動ローラー、４は被
記録材２を所定長さにカットするためのカッター、５は
被記録材２を搬送するための一対のローラーから成る搬
送ローラー、６は被記録材２を記録手段に対して正確に
位置決めするとともに該被記録材を搬送（紙送り）する
ための一対のローラーから成る副走査ローラーである。
以上の各機構によって、ロール状の被記録材２から供給
される（引き出される）被記録材の搬送経路が構成され
ている。

【０００９】図１において、７は所定寸法に裁断された
被記録材（カットシート）８を積載（ストック）してい
るカセット、９はカセット７から一枚づつ送り出される
被記録材８をガイド搬送するための搬送ガイド部であ
り、カセット７から搬送された被記録材８の搬送経路は
前記搬送ローラー５の直前で前記ロールからの被記録材
２の搬送経路に合流する。

【００１０】図１において、記録手段（記録ヘッド）１
０はキャリッジ１１に装着されており、該キャリッジ１
１は主走査レール１２、１３に沿って紙面に垂直の方向
（被記録材２、８の幅方向）に移動可能に案内支持され
ている。１４は被記録材２、８を挟んで記録手段１０と
対向して配設されたプラテンである。このプラテン１４
は、記録中の被記録材２または８の浮きを防止すること
により、記録面を平面に保つとともに被記録材２または
８と記録手段１０との接触を防止するためのものであ
り、例えば、エア吸引手段あるいは静電吸着板等の吸引
吸着手段を備えている。なお、以下の説明では、前記被
記録材２および前記被記録材８のいずれか任意の一つま
たは両方を指す場合には、単に被記録材３２で示すこと
にする。

【００１１】図２はインクジェット記録装置における本
発明の関連技術による記録手段およびその近傍の構成の
一例を部分斜視図である。図２において、キャリッジ１
１に装着された記録手段（記録ヘッド）１０は、それぞ
れ異なるインクを使用する４個の記録手段（記録ヘッ
ド）１０Ｃ、１０Ｍ、１０Ｙ、１０Ｂで構成されてい
る。カラー記録の場合、これらの記録手段１０Ｃ、１０
Ｍ、１０Ｙ、１０Ｂのインクの色として、例えば、シア
ン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色が使用され
る。なお、以下の説明では、前記記録手段１０Ｃ、１０
Ｍ、１０Ｙ、１０Ｂのいずれか任意の一つまたは全体を
指す場合には、単に記録手段１０または記録ヘッド１０
で示すことにする。

【００１２】前記記録手段１０は、インクを吐出するた
めに利用される熱エネルギーを発生する電気熱変換体を
備えているものである。また、前記記録手段１０は、前
記電気熱変換体が発生する熱エネルギーによってインク
に生じる膜沸騰による気泡の生成を含むインクの状態変
化に基づいて前記吐出口からインクを吐出するものであ
る。

【００１３】図３は前記記録手段（記録ヘッド）１０の
インク吐出部の構造を模式的に示す部分斜視図である。
図３において、前記被記録材２または８に所定の隙間
（例えば、約０．５〜１．０ミリ程度）をおいて対面す
る吐出口面１５には、所定のピッチで複数の吐出口１６
が形成され、共通液室１７と各吐出口１６とを連通する
各液路１８の壁面に沿ってインク吐出用のエネルギーを
発生するための電気熱変換体（発熱抵抗体など）１９が
配設されている。図１および図２に示すインクジェット
記録装置では、各記録手段（記録ヘッド）１０は、前記
吐出口１６がキャリッジ１１の主走査方向（移動方向）
と交叉する方向に並ぶような位置関係で、該キャリッジ
１１に搭載されている。こうして、画像信号または吐出
信号に基づいて対応する電気熱変換体１９を駆動（通
電）して、液路１８内のインクを膜沸騰させ、その時に
発生する圧力によって吐出口１６からインクを吐出する
記録手段（記録ヘッド）１０が構成されている。

【００１４】図２において、前記記録手段１０にインク
を供給するためのインクタンクまたはインクカートリッ
ジ２０は、前記キャリッジ１１と同期して主走査方向に
移動するキャリッジ２１に搭載されている。このインク
カートリッジ２０は、４個の記録手段１０に対応する４
個のインクカートリッジ２０Ｃ、２０Ｍ、２０Ｙ、２０
Ｂで構成されており、これらのインクカートリッジには
シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色のインク
が収納されている。そして、これらのインクカートリッ
ジ２０Ｃ、２０Ｍ、２０Ｙ、２０Ｂのインクは、不図示
のポンプにより、チューブ２２Ｃ、２２Ｍ、２２Ｙ、２
２Ｂを通して、各記録手段１０Ｃ、１０Ｍ、１０Ｙ、１
０Ｂへ供給される。なお、以下の説明では、前記インク
カートリッジ２０Ｃ、２０Ｍ、２０Ｙ、２０Ｂおよび前
記チューブ２２Ｃ、２２Ｍ、２２Ｙ、２２Ｂのいずれか
任意の一つまたは全体を指す場合にも、単にインクカー
トリッジ（またはインクタンク）２０およびチューブ２
２で示すことにする。

【００１５】図２において、記録手段１０のキャリッジ
１１は、モーター２３により、駆動プーリ２４、従動プ
ーリ２５およびベルト２６を介して往復駆動される。ま
た、インクカートリッジ２０のキャリッジ２１は、モー
ター２７により、記録手段のキャリッジ１１と同期し
て、駆動プーリ２８、従動プーリ２９およびベルト３０
を介して往復駆動される。さらに、搬送ローラー５およ
び副走査ローラー６はモーター３１によって駆動され
る。長繊維加工紙、織布、あるいは用紙や樹脂薄板等の
シート状の被記録材３２は、搬送ローラー５および副走
査ローラー６によって図２中の矢印Ａ方向に搬送され
る。

【００１６】図２において、搬送ローラー５は、被記録
材３２を挟む駆動ローラー３３と清掃ローラー３４で構
成されている。駆動ローラー３３は被記録材３２の裏側
に配設され、清掃ローラー３４は被記録材３２の記録面
側（表側）に配設されている。図４は前記清掃ローラー
３４の構造を示す部分縦断面図であり、同図において、
清掃ローラー３４は芯金３５と公知の粘着性を有するロ
ーラー部３６で形成されている。被記録材３２のケバや
ゴミは、前記ローラー部３６の粘着力によって該ローラ
ー部３６側に粘着し、被記録材３２から清掃される。特
に、被記録材３２が長繊維加工紙あるいは織布である場
合にはケバやゴミが発生しやすいが、前記粘着性のロー
ラー部３６は被記録材３２上の前記ケバやゴミを除去清
掃するのに好適である。

【００１７】次に、図１および図２を参照して、一連の
記録シーケンスを説明する。図１において、ロール状の
被記録材２またはカセット７内の積載シート８から搬送
される被記録材３２は、搬送ローラー５の直前に配置さ
れた被記録材検知センサー（不図示）によってその送給
が検知される。被記録材３２の送給が検知されると、搬
送経路中の各ローラー、搬送ローラー５および副走査ロ
ーラー６はその時点から所定量、すなわち、被記録材３
２の先端が副走査ローラー６に到達するまで駆動され
る。その場合、被記録材３２は、図２に示すような記録
直前の位置で、清掃ローラー３４により、その表面に付
着しているケバやゴミ等を清掃除去される。

【００１８】被記録材３２の先端が副走査ローラー６に
達すると、搬送経路の各ローラーの駆動を一時停止し、
被記録材３２の搬送を停止する。被記録材３２が停止し
ている間に、記録手段１０のキャリッジ１１およびイン
クカートリッジ２０のキャリッジ２１をそれぞれのモー
ター２３および２７によって主走査方向（図２中の矢印
Ｂ方向）に駆動するとともに、記録手段１０を画像信号
に基づいて駆動することにより、図２中にＣで示す幅
（高さ）の１ライン分の記録を行なう。１ライン分の記
録を終了した後、記録手段のキャリッジ１１およびイン
クカートリッジのキャリッジ２１を反対側（図２中の左
側）の所定位置までリターンさせるとともに、被記録材
３２をモーター３１により記録幅Ｃに対応した送り量
（ピッチ）だけ正確に搬送する。以上の記録動作および
搬送動作のシーケンスを、被記録材３２の長さに応じて
所定サイクル繰り返した後、被記録材３２は機外へ排出
される。

【００１９】前記清掃ローラー３４のローラー部３６
（図４）の材質としては、前述のようにケバやゴミを除
去するための粘着性を有するとともに、被記録材３２と
適正な接触面積を確保するための適度の弾性を有するも
のが選定される。以上説明した本発明の関連技術の近傍
の構成によれば、記録手段１０の搬送方向上流側の搬送
ローラー５の一方のローラー３４を粘着性および弾性を
有するもので形成するという簡単な構成で、長繊維加工
紙、織布、用紙、樹脂薄板等のシート状の被記録材３２
の表面を均し清掃することにより、記録部でのケバやゴ
ミの発生を効果的に防止することができ、記録手段にケ
バやゴミ等が付着することに起因する吐出不良や記録画
像の品位低下を防止することが可能となった。

【００２０】図５は本発明を適用したインクジェット記
録装置の一実施例の記録手段およびその近傍の構成を示
す部分斜視図であり、図６は図５中の搬送ローラー対の
清掃ローラーの構造を示す部分縦断面図である。図５中
の搬送ローラー対５の清掃ローラー３４Ａは、図６に示
すように、多数の開口（孔）３７を有する中空状の芯金
３８とその周面に固着された多孔質のローラー部３９と
で構成されている。このローラー部３９は、例えば、ス
ポンジ等から成る多孔質材料で形成されている。図５に
おいて、図６に示すように清掃ローラー３４Ａに対して
は、タンク４０から供給パイプ４１を通してクリアイン
クが供給される。このクリアインクは被記録材３２の表
面を清掃するための液体であり、該クリアインクとして
は、例えば、特性は記録に用いるインクと同様であっ
て、染料等を含まない無色透明の液体が用いられる。

【００２１】前記クリアインクは、前記清掃ローラー３
４Ａの芯金３８内に供給され、さらに、該芯金３８の多
数の開口３７を通して多孔質（スポンジ等）のローラー
部３９内に浸透し、該ローラー部３９を湿潤させる。こ
うして、記録手段１０の手前の位置において、湿潤した
清掃ローラー３４Ａによって、被記録材３２の表面のケ
バやゴミは吸着清掃される。なお、前記清掃ローラー３
４Ａと前記供給パイプ４１との結合部は、公知のオイル
シール等によって封止され、回転部を通してクリアイン
クを漏れ無く供給し得る構造になっている。

【００２２】図５および図６について説明した本発明の
実施例は、以上の点で図２について説明した本発明の関
連技術による構成と異なるが、その他の部分では実質上
同じ構造をしており、それぞれ対応する部分を同一符号
で示し、それらの詳細説明は省略する。また、この本発
明の実施例の一連の記録シーケンスは図１〜図４で前述
した実施例の場合と同様である。したがって、本発明の
実施例によっても、前述の関連技術による構成の場合と
同様、記録手段１０の搬送方向上流側の搬送ローラー５
の一方のローラー３４Ａをクリアインクで湿潤した状態
にするという簡単な構成で、長繊維加工紙、織布、用
紙、樹脂薄板等のシート状の被記録材３２の表面を均し
清掃することにより、記録部でのケバやゴミの発生を効
果的に防止することができ、記録手段にケバやゴミ等が
付着することに起因する吐出不良や記録画像の品位低下
を防止することが可能となる。

【００２３】なお、図５および図６の本発明の実施例
は、特に、被記録材３２として長繊維加工紙、または織
布を使用する場合に顕著な作用効果を発揮するものであ
るが、この長繊維加工紙や織布に止まらず、従来より用
いられている用紙や樹脂薄板（ＯＨＰ等）においても、
表面に発生したケバ、ゴミおよび紙粉等を同様に清掃除
去することができ、同様の効果を達成できるものであ
る。

【００２４】図７は本発明の関連技術による別の構成に
おいて用いられる押圧ローラー４５の構造を示す部分縦
断面図である。本構成例は、図２〜図４の構成例の清掃
ローラー３４の代わりに図７の押圧ローラー４５を用い
るものであり、本構成例のその他の構成は図１〜図４で
前述した構成例の場合と実質上同じである。図７におい
て、押圧ローラー４５は、中空の芯金４２の周面に耐熱
性のゴムローラー４３を固着するとともに、前記芯金４
２の内部（中空部）に発熱体４４を設けて構成されてい
る。前記発熱体４４としては、例えば、ハロゲンヒータ
ー等の電気熱変換体が使用される。図２〜図４の構成例
の清掃ローラー３４の代わりに図７に示す構成の押圧ロ
ーラー４５を用いる本構成例においては、被記録材３２
の表面を加熱押圧することにより、該被記録材の表面の
ケバやゴミなどを除去清掃することができる。

【００２５】図７について説明した関連技術の構成例
は、以上の点で図２〜図４の構成例と相違するが、その
他の部分では実質上同じ構造をしており、それぞれ対応
する部分を同一符号で示し、それらの詳細説明は省略す
る。また、図７の構成例の一連の記録シーケンスも図２
〜図４の構成例の場合と同様である。したがって、本構
成例によれば、記録手段１０の搬送方向上流側の搬送ロ
ーラー対５の被記録材３２の記録面側のローラーを加熱
押圧ローラーで形成するという簡単な構成で、長繊維加
工紙、織布、用紙、樹脂薄板等のシート状の被記録材３
２の表面を均し清掃することにより、記録部でのケバや
ゴミの発生を効果的に防止することができ、記録手段に
ケバやゴミ等が付着することに起因する吐出不良や記録
画像の品位低下を防止することが可能となる。

【００２６】図８はインクジェット記録装置における本
発明の関連技術による記録手段およびその近傍の構成の
他の例を部分斜視図である。本構成例においては、図６
の本発明の実施例で使用される多孔質材料のローラー部
３９を有する清掃ローラー３４Ａと同様の構造の清掃ロ
ーラー４６が、記録手段１０のキャリッジ１１上の垂直
軸を中心に回転自在に装着されている。この清掃ローラ
ー４６は、図示のように、各記録手段１０より主走査方
向（矢印Ｂで示す記録方向）の前側に装着されている。
すなわち、本構成例の清掃ローラー４６はキャリッジ１
１の主走査方向と直交する方向に取り付けられている。
さらに、インクカートリッジ２０のキャリッジ２１上に
は、前記清掃ローラー４６にクリアインクを供給するた
めのインクカートリッジ４７が装着され、供給パイプ４
８を通して該清掃ローラー４６の内部にクリアインクが
供給される。すなわち、図６の清掃ローラー３４Ａの場
合と同様に、クリアインクを芯金内に供給し、該芯金の
多数の開口を通して多孔質（スポンジ状）のローラー部
にクリアインクを浸透させ、該ローラー部を湿潤させる
ように構成されている。

【００２７】また、前記清掃ローラー４６と前記供給パ
イプ４８との結合部は、前述の清掃ローラー３４Ａの場
合と同様、公知のオイルシール等によって封止され、回
転部を通してクリアインクを漏れ無く供給し得る構造に
なっている。なお、上記清掃ローラー４６は、図５の清
掃ローラー３４Ａに代えて装着することもできるが、こ
の清掃ローラー３４Ａとともに装着してもよい。本構成
例は、以上説明した点で図５および図６の実施例の構成
と相違しているが、その他の部分では実質上同じ構成を
有しており、それぞれ対応する部分を同一符号で示し、
それらの詳細説明は省略する。

【００２８】したがって、図８の構成例によれば、図５
および図６の実施例の場合と同様に、記録手段１０の副
走査方向（搬送方向）上流側の位置で、湿潤清掃ローラ
ー３４Ａによって被記録材３２の表面のケバやゴミを清
掃除去するのに加えて、キャリッジ１１において、記録
の極く直前の位置においても、清掃ローラー４６により
被記録材３２のケバやゴミの除去および発生防止を行な
うので、一層確実にケバやゴミの発生を防止することが
可能になった。

【００２９】なお、図８の構成例においては、前記清掃
ローラー４６として、図４に示した粘着性を有する清掃
ローラー３４、あるいは図７に示した発熱体を有する押
圧ローラー４５と同様な構造のローラーを使用してもよ
く、このような構成によっても同様の作用効果を達成す
ることができる。図７の構成例および図８の構成例も、
特に、被記録材３２として長繊維加工紙または織布を使
用する場合に顕著な作用効果を発揮するものであるが、
この長繊維加工紙や織布に止まらず、従来より用いられ
ている用紙や樹脂薄板（ＯＨＰ等）においても、表面に
発生したケバ、ゴミおよび紙粉等を同様に清掃除去する
ことができ、同様の効果を達成できるものである。

【００３０】また、前述実施例および各構成例では、被
記録材３２に沿って移動する２個のキャリッジ１１およ
び２１を使用し、これらのキャリッジに記録手段１１お
よびインクカートリッジ（インクタンク）２０を搭載す
るシリアルタイプの記録装置の場合を例に挙げて説明し
たが、本発明は、１個のキャリッジを使用して該キャリ
ッジに記録手段および／またはインクカートリッジを搭
載するシリアルタイプの記録装置、被記録材の幅方向記
録領域の全体または一部に対応する長さのライン記録手
段を用いるライン型の記録装置など、走査方式の種類に
関係なく、同様に適用することができ、同様の効果を達
成し得るものである。

【００３１】また、前述の実施例および各構成例におけ
る記録手段（記録ヘッド）としては、記録ヘッドとイン
クタンクを一体にした交換可能なカートリッジタイプの
記録手段、あるいは、記録ヘッドとインクタンクを別体
とし、例えば、カプラーおよびチューブを介して結合す
る構造の記録手段など、種々の構造の記録手段を使用す
ることができる。さらに、前述の実施例および各構成例
では、異なる色で記録する複数の記録手段を備えたカラ
ー記録装置の場合を例に挙げて説明したが、本発明は、
１個の記録手段（記録ヘッド）を備えたインクジェット
記録装置、あるいは色彩が同じで濃度が異なる複数の記
録手段を使用する諧調記録用のインクジェット記録装置
など、記録手段の個数に関係無く同様に適用でき、同様
の作用効果を達成し得るものである。

【００３２】なお、本発明は、インクジェット記録装置
であれば、ピエゾ素子等の電気機械変換体等を用いるイ
ンクジェット記録手段（記録ヘッド）を使用するものや
熱エネルギーを利用してインクを吐出するものなど、種
々のの方式のインクジェット記録装置に適用可能であ
り、同様の効果を奏するものである。特に、熱エネルギ
ーを利用してインクを吐出するサーマル方式によれば、
より一層の記録の高密度化、高精細化を達成することが
できる。

【００３３】上記サーマル方式の代表的な構成や原理に
ついては、例えば、米国特許第４７２３１２９号明細
書、同第４７４０７９６号明細書に開示されている基本
的な原理を用いて行なうのが好ましい。この方式は、所
謂オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適
用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液
体（インク）が保持されているシートや液路に対応して
配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応してい
て核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも一
つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に
熱エネルギーを発生せしめ、記録手段（記録ヘッド）の
熱作用面に膜沸騰させて、結果的にこの駆動信号に一対
一対応し液体（インク）内の気泡を形成出来るので有効
である。

【００３４】この気泡の成長、収縮により吐出用開口を
介して液体（インク）を吐出させて、少なくとも一つの
滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即
時適切に気泡の成長収縮が行なわれるので、特に応答性
に優れた液体（インク）の吐出が達成でき、より好まし
い。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第４
４６３３５９号明細書、同第４３４５２６２号明細書に
記載されているようなものが適している。尚、上記熱作
用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第４３１３１
２４号明細書に記載されている条件を採用すると、更に
優れた記録を行なうことができる。

【００３５】記録ヘッドの構成としては、上述の各明細
書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体
の組み合わせ構成（直線状液流路又は直角液流路）の他
に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示
する米国特許第４５５８３３３号明細書、米国特許第４
４５９６００号明細書を用いた構成も本発明に含まれる
ものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共
通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開
示する特開昭５９年第１２３６７０号公報や熱エネルギ
ーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を
開示する特開昭５９年第１３８４６１号公報に基づいた
構成としても本発明は有効である。すなわち、記録ヘッ
ドの形態がどのようなものであっても、本発明によれ
ば、記録を確実に効率よく行なうことができるようにな
るからである。

【００３６】さらに、記録装置が記録できる記録媒体の
最大幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録
ヘッドに対しても、本発明は有効に適用できる。そのよ
うな記録ヘッドとしては、複数記録ヘッドの組み合わせ
によってその長さを満たす構成や、一体的に形成された
１個の記録ヘッドとしての構成のいずれでもよい。加え
て、上例のようなシリアルタイプのものでも、装置本体
に固定された記録ヘッド、あるいは装置本体に装着され
ることで装置本体との電気的な接続や装置本体からのイ
ンクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録
ヘッド、あるいは記録ヘッド自体に一体的にインクタン
クが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用い
た場合にも本発明は有効である。

【００３７】また、本発明に記録装置の構成として設け
られる、記録ヘッドに対しての回復手段、予備的な補助
手段等を付加することは本発明の効果を一層安定できる
ので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、
記録ヘッドに対しての、キャッピング手段、クリーニン
グ手段、加圧或は吸引手段、電気熱変換体或はこれとは
別の加熱素子或はこれらの組み合わせによる予備加熱手
段、記録とは別の吐出を行なう予備吐出モードを行なう
ことも安定した記録を行なうために有効である。

【００３８】また、搭載される記録ヘッドの種類ないし
個数についても、例えば、単色のインクに対応して１個
のみが設けられたものの他、記録色や濃度を異にする複
数のインクに対応して複数個数設けられるものであって
もよい。すなわち、例えば、記録装置の記録モードとし
ては、黒色等の主流色のみの記録モードだけではなく、
記録ヘッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせに
よるか、いずれでもよいが、異なる色の複色カラー又
は、混色によるフルカラーの少なくとも一つを備えた装
置にも本発明は極めて有効である。

【００３９】さらに加えて、以上説明した本発明実施例
においては、インクを液体として説明しているが、室温
やそれ以下で固化するインクであって、室温で軟化もし
くは液化するもの、あるいは、インクジェット方式で
は、インク自体を３０℃以上７０℃以下の範囲内で温度
調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように
温度制御するものが一般的であるから、使用記録信号付
与時にインクが液状をなすものであればよい。加えて、
積極的に熱エネルギーによる昇温をインクの固形状態か
ら液体状態への状態変化のエネルギーとして使用せしめ
ることで防止するか、または、インクの蒸発防止を目的
として放置状態で固化するインクを用いるかして、いず
れにしても、熱エネルギーの記録信号に応じた付与によ
ってインクが液化し、液状インクが吐出されるものや、
記録媒体に到達する時点ではすでに固化し始めるもの等
のような、熱エネルギーによって初めて液化する性質の
インクを使用する場合も本発明は適用可能である。

【００４０】このような場合のインクは、特開昭５４−
５６８４７号公報あるいは特開昭６０−７１２６０号公
報に記載されるような、多孔質シート凹部または貫通孔
に液状または固形物として保持された状態で、電気熱変
換体に対して対向するような形態としてもよい。本発明
においては、上述した各インクに対して最も有効なもの
は、上述した膜沸騰方式を実行するものである。

【００４１】さらに加えて、本発明によるインクジェッ
ト記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理
機器の画像出力端末として用いられるものの他、リーダ
等と組み合わせた複写装置、さらには送受信機能を有す
るファクシミリ装置の形態を採るもの等であってもよ
い。

【００４２】

【発明の効果】以上の説明から明らかなごとく、本発明
（請求項１）によれば、インクジェット記録ヘッドを用
いて被記録材に画像を形成するインクジェット記録装置
において、前記被記録材を前記インクジェット記録ヘッ
ドと対向する位置を通過するように搬送する搬送手段
と、周面に複数の開口を配する円筒状中空部材と、該円
筒状中空部材の前記周面の外側に配された多孔質の液体
保持部材と、を備え、前記インクジェット記録ヘッドの
被記録材搬送方向上流側の前記被記録材の前記インクジ
ェット記録ヘッドと対向する領域に当接するローラー部
材と、前記ローラー部材の前記円筒状中空部材の内部か
ら前記開口を介して前記液体保持部材へ前記被記録材の
前記領域を清掃するための液体を供給する供給手段と、
を有する構成としたので、長時間にわたって被記録材の
インクジェット記録ヘッドと対向する領域に該領域を清
掃するための液体を供給することができ、もって、被記
録材表面のゴミ、ケバ等がインクジェット記録ヘッドの
吐出口付近に付着して正常なインク吐出が妨げられると
いった事態の発生を長時間にわたって未然に防止するこ
とができるインクジェット記録装置が提供される。ま
た、請求項２および３の発明によれば、上記請求項１の
構成に加えて、前記液体は、染料を含まない無色透明の
クリアインクである構成、あるいは、前記被記録材が織
布である構成としたので、一層効率よく上記効果を達成
することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を適用するのに好適なインクジェット記
録装置の一構成例を模式的に示す縦断面図である。

【図２】インクジェット記録装置における本発明の関連
技術による記録手段およびその近傍の構成の一例を示す
部分斜視図である。

【図３】インクジェット記録手段のインク吐出部の構成
を示す模式的部分拡大斜視図である。

【図４】図２中の清掃ローラーの構造を示す部分縦断面
図である。

【図５】本発明を適用したインクジェット記録装置の一
実施例の記録手段およびその近傍の構成を示す部分斜視
図である。

【図６】図５中の清掃ローラーの構造を示す部分縦断面
図である。

【図７】インクジェット記録装置における本発明の関連
技術による被記録材均し用の押圧ローラーの構造を示す
部分縦断面図である。

【図８】インクジェット記録装置における本発明の関連
技術による記録手段およびその近傍の構成の別の例を示
す部分斜視図である。

【符号の説明】

１ 記録装置本体 ２ 被記録材（ロール状） ４ カッター ５ 搬送ローラー ６ 副走査ローラー ８ 被記録材（カットシート） １０ 記録手段（記録ヘッド） １１ キャリッジ １４ プラテン １６ 吐出口（記録手段） １９ 電気熱変換体 ２０ インクカートリッジ（インクタンク） ２１ キャリッジ ２３ キャリッジモーター ２７ キャリッジモーター ３１ 搬送モーター ３２ 被記録材（用紙、樹脂薄板、長繊維加工紙、
織布等） ３３ 駆動ローラー（搬送ローラー） ３４ 清掃ローラー（粘着性） ３４Ａ 清掃ローラー（多孔質） ３７ 開口 ３８ 芯金（円筒状中空部材） ３９ 多孔質のローラー部（液体保持部材） ４０ クリアインクタンク ４４ 発熱体 ４５ 押圧ローラー ４６ 清掃ローラー（縦軸型） ４７ クリアインクカートリッジ

フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−173957（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−227274（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−141075（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−141786（ＪＰ，Ａ) 特開 昭48−50806（ＪＰ，Ａ) 特開 昭56−157470（ＪＰ，Ａ) 特開 昭64−82961（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B41J 29/00 B41J 2/01

Claims (5)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 インクジェット記録ヘッドを用いて被
   記録材に画像を形成するインクジェット記録装置におい
   て、 前記被記録材を前記インクジェット記録ヘッドと対向す
   る位置を通過するように搬送する搬送手段と、 周面に複数の開口を配する円筒状中空部材と、該円筒状
   中空部材の前記周面の外側に配された多孔質の液体保持
   部材と、を備え、前記インクジェット記録ヘッドの被記
   録材搬送方向上流側の前記被記録材の前記インクジェッ
   ト記録ヘッドと対向する領域に当接するローラー部材
   と、 前記ローラー部材の前記円筒状中空部材の内部から前記
   開口を介して前記液体保持部材へ前記被記録材の前記領
   域を清掃するための液体を供給する供給手段と、 を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
2. 【請求項２】前記液体は、染料を含まない無色透明のク
   リアインクであることを特徴とする請求項１に記載のイ
   ンクジェット記録装置。
3. 【請求項３】前記被記録材が織布であることを特徴とす
   る請求項１又は２に記載のインクジェット記録装置。
4. 【請求項４】前記インクジェット記録ヘッドは、インク
   吐出用の熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を
   備えていることを特徴とする請求項１〜３のいずれかに
   記載のインクジェット記録装置。
5. 【請求項５】前記インクジェット記録ヘッドは、前記熱
   エネルギーによりインクに生じる膜沸騰を利用して、イ
   ンク吐出口よりインクを吐出させることを特徴とする請
   求項４に記載のインクジェット記録装置。