JP2826241B2 - マルチ移植機の施肥装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、マルチ移植機の施肥装
置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】稲作の分野においては、苗株だけを田面
上に出して田面をビニールフィルム等のシート部材で被
覆することにより、雑草が生えるのを防止して除草剤に
よる環境汚染の問題を解決し、かつ、植付後における栽
培管理の簡略化と省力化が達成できるため、最近とみに
マルチ水稲栽培法が注目されつつある。

【０００３】また、畑作の分野でも、特に、レタス、白
菜、キャベツ等の生鮮野菜の栽培において、圃場の保温
性を高めて種子の発芽や活着を良好にすると共に降雨時
の土の跳上がりや雑草の発生を防止するため、土壌表面
をシート部材で被覆するマルチ栽培が普及している。

【０００４】そして、上記のようなマルチ栽培用の移植
機（マルチ移植機）は、一般に、走行機体の後方に植付
部を昇降自在に連結し、前方のロール支持部に横架され
たロール状シート部材を順次後方に繰出して圃場面へ被
覆し、被覆されたシート部材の上から植付杆により苗を
植付けるようにしている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところで、シートによ
る被覆、苗の植付並びに施肥を一工程で終了すべく上記
のようなマルチ移植機に施肥装置を装備することも提案
されているが、構造的に施肥ノズル等の管体からなる土
中施肥部が苗植付部の下方に突出する関係上、土中施肥
部が圃場上に折角被覆したシートを破ってしまう不都合
があり、また、これを避けるため、土中施肥部を単にマ
ルチ供給部より前方に取付けただけでは作業機部分全体
が前後に長くなって作業性が悪くなるとの欠点があっ
た。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明に係るマルチ移植
機の施肥装置は、上記のような実状に基づき創案された
ものであって、走行機体の後方に植付部を昇降自在に連
結し、該植付部前方下部に横架したロール支持部よりロ
ール状シート部材を順次後方に繰出してローラフロート
により圃場面へ押圧して被覆したシート部材の上から植
付杆により苗を植付けるようにしたマルチ移植機におい
て、上記マルチ移植機に施肥装置を装備するに当たり、
該施肥装置の土中への施肥を行う土中施肥部を、上記ロ
ール支持部下部で且つ側面視で上記ロール支持部からロ
ーラフロートに至るシート部材で形成される三角状空間
に、ブラケットを介して取付けたことを要旨とする。

【０００７】

【作用】移植作業を開始すると、ロール支持部に装填さ
れたロール状のシート部材からこれが順次後方へ繰出さ
れ、後方下部のローラフロートにより圃場面に押圧密着
させられる。そして後続の植付杆により圃場面に被覆さ
れたシート部材を突き破って苗が一株ずつ連続的に植付
けられ、このシート部材の圃場面への被覆と苗の植付に
並行して、上記ロール支持部下部の側面視三角状空間に
コンパクトに取付けられた土中施肥部（施肥ノズル）に
より土中への施肥を行うものである。

【０００８】

【実施例】本発明の構成を図面に示された一実施例につ
いて説明すれば、図面にはマルチ移植機としてマルチ装
置を備えた田植機（マルチ田植機）Ａが例示されてい
る。１は前輪２及び後輪３を有し前部にエンジン４を、
後部寄りに運転席Ｓを搭載した走行機体（乗用田植機の
本機）で、その後方にはアッパリンク５及びロワリンク
６からなるヒッチＨ付き昇降リンク７と延長フレーム８
を介して植付部Ｐが昇降自在かつ着脱自在に連結されて
いる。上記延長フレーム８は植付部Ｐと一体に連結され
ており、この延長フレーム８を介在させたことにより、
その分、植付部Ｐが通常の乗用田植機よりも後方へ移動
し、また、昇降リンク７の後端下方部分に空間部ａが形
成されるようになっていて、この空間部ａに後述のロー
ル支持部３０を配設するようにしてある。なお、植付部
Ｐは本機１の傾きに関係なく圃場面（田面）に追随して
走行すべく延長フレーム８に対し支点軸９を介しローリ
ング自在に連結されている。１０は本機１側のＰＴＯ軸
と植付部Ｐ側のドライブケース１１の入力軸とを連結す
る自在継手軸で、この自在継手軸１０は中途部の高さを
かせぐべく直棒状のものではなく中途部で分割された屈
曲軸が採用され、前後の軸１０ａ，１０ｂは上記空間部
ａの上部側に位置して延長フレーム８に固定のホルダ１
０′に回転自在に支持された中間軸１０ｃを介して連結
されており、自在継手軸１０により後述のロール支持部
３０の配置スペースが減殺されないよう配慮している。

【０００９】ところで、上記田植機Ａには浅層用と深層
用の流動状肥料を別々に収容した肥料タンク１２，１
３、施肥ポンプ１４，１５、吸引ホース１６、吐出ホー
ス１７及び上下２段の土中施肥部（施肥ノズル）１８，
１９等からなる施肥装置Ｂが装備されており、苗の植付
と同時に側条施肥されるようになっている。上記施肥ノ
ズル１８，１９のうち、１８は浅層施肥ノズル、１９は
深層施肥ノズルで、これらの施肥ノズル１８，１９は後
述のロール支持部３０に夫々ブラケット１８ａ，１９ａ
を介して取付けられている。これにより、施肥ノズル１
８，１９の取付構造を簡略化できると共に、重量物であ
るロール状のシート部材ｂを支持するため比較的高い剛
性を有しているロール支持部３０に施肥ノズル１８，１
９を取付けているので、施肥ノズル１８，１９の取付強
度を高めることができる。なお、施肥ノズル１８，１９
は上下方向に回動調整固定自在に構成することもでき
る。

【００１０】植付部Ｐは前記ドライブケース１１の他に
前高後低状の苗載台２０、ロータリ式の植付杆２１及び
前後に夫々回動自在に横架した複数本のローラフロート
２２（実施例では植付幅全幅にわたる長尺ローラを前後
に２本配置しているが、ローラフロート２２は左右に分
割したものでもよく、また前後に３本以上配置してもよ
い）等からなり、この植付部Ｐにマルチ装置が一体的に
組込まれた構造となっている。前記ローラフロート２２
はドライブケース１１の下面に固定のブラケット２３に
ピン軸２４を介し所定範囲上下回動自在に枢結されたフ
レーム２５の先端に支軸２６により上下揺動自在に連結
された三角形状の軸受２７にシャフト２２ａを介し回転
自在に支持されている。そして、上記フレーム２５の前
部側は図示外の弾機付き屈伸機構を介して植付部Ｐの固
定側に連結されており、したがって、フレーム２５はロ
ーラフロート２２が受ける接地圧の変化に対応して公知
慣用のソリ状フロートと同様の動きをし、支軸２６は前
後のローラフロート２２のイコライザ支点及び植付部昇
降自動制御機構（公知のため説明省略）の油圧感知用支
軸となっている。また、ローラフロート２２は後述する
シートの圃場面に対する押圧ローラを兼ねるようになっ
ている。前記施肥装置Ｂの土中施肥部（施肥ノズル）１
８，１９は、ローラフロート２２よりも前方で、且つ側
面視で後述のロール支持部３０から後方下部のローラフ
ロート２２に至るシート部材ｂで形成される三角状空間
に配置されており、シート部材ｂによる田面被覆に先行
して土中に施肥されるようになっている。なお、油圧感
知は図示しなかったがソリ状の専用部材で行うようにし
てもよい。

【００１１】３０はロール状に巻込んだシート部材（以
下単にロールともいう）ｂを収納支持するロール支持部
で、前記空間部ａを利用し植付部Ｐの前側下部に位置さ
せて植付部Ｐに装着されている。すなわち植付部Ｐに横
架されているパイプフレーム３１に固定された左右のロ
ールホルダ３２が後輪３の近傍まで延出され、その延出
端側には後面側にシート繰出口３３を有し、かつ左右両
端を開放したダクト状のロール収納用ケース３４が固定
され、ケース３４の左右開放部は後部側を支点３５とす
る開閉式のロール収納口蓋３６で覆われていて、ケース
３４内へのシート部材ｂの装填（植付作業開始時及び作
業中の補給）は機体１の左右いずれの側方からでも行え
るようになっている。そして、ロール収納口蓋３６には
外方に手動によるシート繰出し用撮み３７ａを有するロ
ール支持軸３７が回動自在に支持され、ロールｂは芯軸
ｂ′（図７）を介し左右のロール支持軸３７間に弾発的
に挟持されるようになっている。

【００１２】上記ロールｂは、実施例では一工程での植
付幅全幅を同時に被覆すべく広幅の１本状のものが使用
され、ロールｂを収納支持するケース３４も略機幅に相
当する幅広に形成されているが、ロールｂ及びケース３
４は夫々複数本に分割した構成にしてもよい。分割式の
場合は、ロール収納用ケース３４は段違い状又は前後に
ずらして配置する。なお、シート部材ｂはマルチ栽培に
使用されている通常の樹脂系フィルムでもよいが、実施
例では、シート部材ｂとして再生紙（例えば、段ボール
等を水に溶かして澱粉糊を加えたもので４０〜５０日経
過すると田面中の泥水に溶解する）を使用している。

【００１３】一方、ケース３４の下部にはロールｂの収
納作業を容易にするため、ガイドローラ４０がケース３
４内に突出した作用位置と下方に退避した非作用位置と
に切換自在に設けられており、その切換操作はレバー４
１でカム４２を回動させて行うようになっている。

【００１４】４３は植付部Ｐが上昇した状態（機体回行
時等）にあるとき、シート部材ｂを下方から受止め支持
するシート受体で、ローラフロート２２の前方から（実
施例ではロール支持部３０の下部側から）植付部Ｐの下
方を迂回させて後方へ延設されている。このシート受体
４３は側面視で倒へ字形状を呈する棒状体又は板状体か
らなり植付幅方向に適間隔を存して複数本配設されてお
り、各受体４３は前記レバー４１の操作で前部側を支点
として略水平姿勢を保持する作用姿勢と下向きに傾斜す
る傾斜姿勢とに切換自在に構成されている。なお、シー
ト受体４３の切換操作レバーを別途に設けてもよい。

【００１５】５０は植付部Ｐに対し支軸５１を中心に上
下動自在に装着されたシート切断用のカッタで、このカ
ッタ５０は基端操作部５２ａを運転席Ｓの近傍に臨ませ
た側面視倒へ字形状のアーム５２の後端に取付ボルト５
０ａを介し、新しいカッタと交換可能となるように固定
されていて、田面に被覆されたシート部材ｂを植付部Ｐ
の後方位置で切断するようになっている。

【００１６】ところで、走行機体１の左右両側方にはシ
ート部材ｂの予備ロール６０を支持する予備ロール支持
部６１が走行機体に沿わせて前後方向に配置されてお
り、左右の予備ロール支持部６１は夫々外側方へ向け回
動可能に構成されている。すなわち、運転席Ｓの後方両
側には支えフレーム６２が先端側を機体の側方に若干張
出した状態で平面視ハ字形状に固定されており、その張
出端側には、予備ロール６０を前後左右から受止め支持
すると共に予備ロール６０出入れ時のガイド作用を果た
させるべく４個のガイドローラ６３・・を回転自在に軸
支した予備ロール支持部６１が支軸６４を介して外側方
に回動可能に連結されており、植付部Ｐを上昇させた状
態で予備ロール支持部６１を外側方へ略９０度回動させ
たとき、予備ロール支持部６１に支持されている予備ロ
ール６０が植付部Ｐ側に横架されたロール支持部３０の
ロール収納用ケース３４の収納口に合致し、ロール支持
部３０への予備ロール６０の装填作業（補給作業）を機
体の片側から容易に行えるようになっている。なお、予
備ロール支持部６１は図示しなかったが適宜ストッパ機
構により機体に沿うセット位置又は外側方に回動したロ
ール補給位置に夫々位置決めされるようになっている。

【００１７】さて、予備ロール６０は、図８に示す如
く、走行機体１前部にあるバンパー６５の前面側にも１
本支持し得るようになっている。すなわち、バンパー６
５にもブラケット６６を介して予備ロール支持部６７が
設けられ、この支持部６７に予備ロール６０がバンド６
８で横向きに保持されており、この前部側の予備ロール
６０が機体のバランスウエイトを兼ねるようになってい
る。

【００１８】上記実施例では、マルチ田植機Ａを例にし
て説明したが、本発明は、畑作作物の苗を圃場に移植す
る畑のマルチにも利用できる。したがって、本発明はマ
ルチ田植機に限らず、畑作用のものを含めてマルチ移植
機一般に採用し得る。

【００１９】上記の構成において、植付作業を開始する
に際しては、先ず、植付部Ｐをリフトアップした状態に
してロール支持部３０及び予備ロール支持部６１，６７
にロール状に巻込んだシート部材（ロール）ｂと予備ロ
ール６０を夫々装填する。そして、シート繰出し用撮み
３７ａを回動操作してロール支持部３０に装填したロー
ルｂの繰出端部側をシート繰出口３３からローラフロー
ト２２の後方位置まで引出す。この際シート受体４３を
レバー４１操作により下方に回動させておくことにより
シート部材ｂの引出し作用を容易に行える。

【００２０】ついで、レバー４１操作によりシート受体
４３を上方に回動復帰させ、植付部Ｐを下降接地させる
と、シート受体４３は泥中に没入すると共に、上記引出
されたシート部材ｂはローラフロート２２により田面に
押圧される。

【００２１】この状態で植付部Ｐ及び施肥装置Ｂを始動
させて作業を開始すると、機体１の前進に伴ってシート
部材ｂが順次繰出されて田面に被覆（全面マルチ）さ
れ、被覆されたシート部材ｂの上から植付杆２１で苗が
植付けられると共に、浅層施肥ノズル１８と深層施肥ノ
ズル１９により土中の浅層と深層の上下２段に側条施肥
される。

【００２２】ところで、施肥装置Ｂの土中施肥部（施肥
ノズル）１８，１９は、側面視で前記繰出されたシート
部材ｂが上記ローラフロート２２の押圧によって圃場面
に最初に接触し始める被覆始端位置よりも前方に配置さ
れているので、施肥ノズル１８，１９がシート部材ｂの
繰出作用に干渉したり、或はシート部材ｂを破ったり乱
したりするようなことがないのは勿論のこと、ローラフ
ロート２２の前にある三角状空間を有効利用して作業機
全体が前後に長くなるのを防止して作業機部分をコンパ
クトにすると共に、機体全体の前後バランスを良くして
作業性を良くするものである。しかも、全面がマルチさ
れるので雑草発生阻止等のマルチ効果は一層高められ
る。また、機体の前進に伴って圃場面に形成された施肥
ノズル１８，１９の通過跡は後続のローラフロート２
２，２２によりシート部材ｂの上から押圧されて崩壊さ
せられるため土中に施肥された後の肥料は浅層、深層と
も夫々所定深さに確実に埋没せしめられる。

【００２３】上記植付作業中、機体を回行させる場合
は、運転席Ｓ位置から後ろに手を伸ばしてアーム５２を
持って上方に押上げれば、アーム５２は支軸５１を中心
にして後部側が下方に回動するため田面に敷設されたシ
ート部材ｂは植付部Ｐの後方位置でカッタ５０により切
断される。切断後植付部Ｐを上昇させると、シート受体
４３も一体的に上昇するためシート部材ｂの遊端側はシ
ート受体４３に受止められる。そのため、シート部材ｂ
を植付部Ｐの後方で切断するものでありながら、機体回
行時にシート部材ｂの遊端側が垂れ下がって泥中を引き
摺るようなことはないので、次工程の植付作業に支障を
きたすことはない。

【００２４】ところで、本発明では、シート部材ｂとし
て再生紙を利用したので、移植後４０〜５０日で再生紙
が泥中で溶解解消するため、慣行栽培技術の利用が可能
となるばかりでなく、シート部材回収の面倒な作業が不
要となり、マルチ栽培の省力化と天然資源の再利用化が
達成される。

【００２５】

【発明の効果】本発明は上述のように構成したので、マ
ルチ移植機に施肥装置を装着したものでありながら、従
来装置の如くシート部材ｂを破ることがなくなり、圃場
全面がマルチされるので、マルチの効果を一層高めるこ
とができるのは勿論のこと、ロール支持部３０の下部で
ローラフロート２２の前に出来る三角状空間を有効利用
して施肥ノズル１８，１９をローラ支持部３０の下部
に、簡易な構成で取付ける 事が出来、作業機全体が前後
に長くなるのを防止して機体１をコンパクトに構成する
と共に、機体１の前後バランスを改善して作業性を良く
するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を装備したマルチ田植機の作業状態を示
す側面図である。

【図２】マルチ田植機の植付部をリフトアップさせた状
態を示す側面図である。

【図３】マルチ田植機の平面図である。

【図４】作業状態におけるマルチ装置の拡大側面図であ
る。

【図５】植付部上昇時におけるマルチ装置の拡大側面図
である。

【図６】予備ロール支持部の拡大平面図である。

【図７】植付部の平面図である。

【図８】予備ロール支持部の拡大側面図である。

【符号の説明】

１ 走行機体（本機） １８ 土中施肥部（浅層施肥ノズル） １９ 土中施肥部（深層施肥ノズル） ２１ 植付杆 ２２ ローラフロート ３０ ロール支持部 ４３ シート受体 ５０ カッタ ６０ 予備ロール ６１ 予備ロール支持部 Ａ マルチ田植機 Ｂ 施肥装置 Ｐ 植付部ａ 空間部 ｂ シート部材（ロール）

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−151828（ＪＰ，Ａ) 実開 平３−18707（ＪＰ，Ｕ) 実公 平４−701（ＪＰ，Ｙ２) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) A01C 11/00 302 A01C 15/00 - 23/04 A01G 13/00 303

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 走行機体１の後方に植付部Ｐを昇降自在
   に連結し、該植付部Ｐ前方下部に横架したロール支持部
   ３０よりロール状シート部材ｂを順次後方に繰出してロ
   ーラフロート２２により圃場面へ押圧して被覆したシー
   ト部材ｂの上から植付杆２１により苗を植付けるように
   したマルチ移植機において、上記マルチ移植機に施肥装
   置Ｂを装備するに当たり、該施肥装置Ｂの土中への施肥
   を行う土中施肥部１８，１９を、上記ロール支持部３０
   下部で且つ側面視で上記ロール支持部３０からローラフ
   ロート２２に至るシート部材ｂで形成される三角状空間
   に、ブラケット１８ａ，１９ａを介して取付けたことを
   特徴とするマルチ移植機の施肥装置。