JP2820719B2 - ケラチン加水分解物の製造方法 - Google Patents
ケラチン加水分解物の製造方法Info
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Description
酵素を用いて行われていた(例えば、特開昭61-69717号
公報)。
として加水分解する場合には、通常のタンパク加水分解
酵素では容易に加水分解することができず、アルカリ加
水分解ではケラチンを構成するアミノ酸のひとつである
シスチンが破壊されて、得られる加水分解物が毛髪化粧
品用配合剤として使用したときなどに有用性を欠くよう
になる。また、酸加水分解ではシスチンの破壊はない
が、容易に加水分解されないために苛酷な条件を採用す
る必要があり、そのため、得られる加水分解物の分子量
のコントロールが困難になるとともに、得られる加水分
解物が着色、着臭を生じることになる。
ミノ酸のうちシスチンが多く、ペプチド構造のほかにシ
スチンによるSS結合でペプチド鎖が強固に繋がれてい
る。そのため、通常の条件下では、化学構造を変化させ
ることなく溶解する手段がない。したがって、緩やかな
加水分解条件しか採用できないタンパク加水分解酵素で
はケラチンを加水分解することができない。また、アル
カリや酸による加水分解では、シスチンの破壊や分子量
のコントロールがむつかしいなどの問題がある。
チンを破壊することなく、得られるケラチン加水分解物
の分子量のコントロールが容易で、かつ高収率で、しか
も着色、着臭の少ないケラチン加水分解物を容易に得る
ことができるケラチン加水分解物の製造方法を提供する
ことを目的とする。
り、ケラチンに対して塩化水素濃度20〜38重量%の塩酸
を50〜300重量%とチオグリコール酸および(または)
システアミンを2〜20重量%用い、10〜50℃でケラチン
を加水分解したのち、反応混合物を中和してpH7〜10に
し、ついでスブチリシンにより、さらにケラチンを加水
分解することによって、上記目的を達成したものであ
る。
水分解されやすいアミノ酸のペプチド結合を10〜50℃と
いう穏やかな条件下で加水分解するので、得られる加水
分解物は分子量がコントロールしやすく、また着色、着
臭が少なくなる。
塩酸による部分的加水分解により、ケラチンは水溶性に
なっているので、スブチリシンによる加水分解が穏やか
な条件下でも充分に進行し、得られるケラチン加水分解
物の分子量コントロールが容易で、かつ高収率で加水分
解することができ、しかも着色、着臭が少なく、かつ経
時的な着色、着臭の増加がない安定性の良好なケラチン
加水分解物が得られるようになる。
分解するが、この塩酸としては、塩化水素濃度が20〜38
%(重量%、以下同様)の塩酸が用いられる。本発明に
おいて、このように濃度の高い塩酸を用いるのは、濃度
の高い塩酸の方が加水分解がスムーズに進行するからで
ある。そして、この塩酸の使用量は加水分解しようとす
るケラチンに対して50〜300%にするが、これは、上記
塩酸の使用量が上記の範囲より少ない場合は、特に反応
初期において反応混合物が不均一であるため加水分解の
コントロールがしにくく、かつ得られる加水分解物の収
率が悪くなり、また、上記塩酸の使用量が上記の範囲よ
り多い場合は、不必要であるばかりでなく、加水分解後
の脱塩や濃縮に多大な労力を要することになって好まし
くないからである。なお、上記塩酸の使用量がケラチン
に対して50〜300%であるということは、ケラチンに対
して上記塩酸を重量比で0.5〜3.0倍使用するという意味
である。
われるが、これは加水分解時の温度が10℃より低いと、
加水分解の進行が遅くなり、また、加水分解時の温度が
50℃より高くなると、加水分解反応が激しくなって、得
られる加水分解物の分子量のコントロールがしにくくな
り、かつ着色、着臭が多くなるからである。
オグリコール酸またはシステアミンを塩酸と併用する
と、チオグリコール酸またはシステアミンがシスチンの
ジスルフィド結合を還元して切断し、シスチン部分が水
溶性になると共に、酸による加水分解では最も加水分解
しにくいシスチン部分が加水分解されやすい状態になる
ので、加水分解が均一に進行するようになり、加水分解
の程度をコントロールすることがしやすくなり、収率も
向上する。ケラチン中に含まれていたシスチンはチオグ
リコール酸またはシステアミンによる還元によりシステ
インになるが、このシステインは加水分解物中に含まれ
ており、空気中の酸素や過酸化水素などの酸化剤による
酸化によってジスルフィド結合を再生してシスチンにな
る。したがって、得られる加水分解物はシスチンの減少
が少なく、毛髪化粧品の原料として有効に利用すること
ができる。しかも、チオグリコール酸またはシステアミ
ンがケラチン中に含まれている糖類、脂肪などの不純物
の酸化や分解を抑制するので、加水分解物の着臭、着色
が少なくなり、また加水分解物の純度も向上する。
使用量は、加水分解しようとするケラチンに対して2〜
20%とするのが適当であり、チオグリコール酸とシステ
アミンは併用してもよく、その時の使用量も両者の合計
量で加水分解しようとするケラチンに対して2〜20%と
するのが適当である。また、システアミンは、使用にあ
たって、塩酸システアミンなどのように塩の状態で使用
してもよい。
あたっては、各種のタンパク加水分解酵素を用い得る
が、本発明においては、塩酸による加水分解時にチオグ
リコール酸またはシステアミンを併用しているので、酵
素による加水分解もチオグリコール酸またはシステアミ
ンが存在する条件下で行うことになる。したがって、使
用するタンパク加水分解酵素は、そのようなチオグリコ
ール酸またはシステアミンが存在する条件下でも活性を
失わないことが必要であり、かつ経済性もあり、また、
至適pH(酵素の活性が最も強いpH)が7〜10、特に8〜
9である酵素が好ましいことから、本発明においては、
タンパク加水分解酵素として特にスブチリシンを使用す
る。
システアミンの存在下でも、活性を失わず、至適pHが8
〜9であって、塩酸によって部分的に加水分解されたケ
ラチン加水分解物を容易に加水分解することができ、分
子量のコントロールが容易で、かつ使用量も少なくて済
み、経済性でも適している。
で3〜48時間の反応時間で行われる。
は、平均分子量300〜3,000のものが望ましい。すなわ
ち、この範囲のものは、毛髪に対する吸着性が良好で、
毛髪化粧品用配合剤として適しており、かつ水に溶けや
すくて取扱いも容易である。
る。
毛を構成するケラチンに対して約150重量%)とチオグ
リコール酸50g(ケラチンに対して約10重量%)を加
え、30℃で72時間攪拌して加水分解したのち、20%水酸
化ナトリウム水溶液を加えて中和してpH8にした。
ンパク加水分解酵素)0.2gを加えて50℃で攪拌しながら
24時間加水分解を行った。加水分解途中、20%水酸化ナ
トリウム水溶液を適宜加えて反応液のpHを8に保った。
このスブチリシンによる加水分解後、反応液を濾過し、
濾液に塩酸を加えてpH2にして50℃に加熱し、攪拌して
スブチリシンを失活させた。反応液をpH6に調整したの
ち、下記の電気透析装置により電気透析を行って脱塩
し、活性炭で脱色した。なお、反応液の脱塩にあたって
使用した電気透析装置は下記の通りである。
品名〕 膜寸法:18cm×12cm 組込膜数:10対 電圧:30V 陽極液:硫酸ナトリウム水溶液(無水硫酸ナトリウムと
して約5%) 陰極液:硫酸ナトリウム水溶液(無水硫酸ナトリウムと
して約5%) つぎに、上記脱色後の反応液に35%過酸化水素水5gを
加えて攪拌し、一晩静置して反応を行った。つぎに陰イ
オン交換樹脂ダイヤイオンWA20〔商品名、三菱化成工業
(株)製〕300mlを充填したカラムに通液して残存する
チオグリコール酸およびジチオグリコール酸を除去し、
ついで濃度調整して、濃度25%のケラチン加水分解物の
水溶液を得た。得られたケラチン加水分解物の色、収
率、平均分子量およびシスチン量の後記の第1表に示
す。
に代えて塩酸システアミン50g(ケラチンに対して約10
重量%)を添加したほかは実施例1と同様に加水分解を
行い、以後実施例1と同様に、活性炭で脱色するまでの
工程を行った。
加えて攪拌し、一晩静置して反応を行った。つぎに陽イ
オン交換樹脂アンバーライトIRC-50〔商品名、オルガノ
(株)製〕300lを充填したカラムに通液して残存する塩
酸システアミンを除去し、ついで濃度調整して、濃度25
%のケラチン加水分解物の水溶液を得た。得られたケラ
チン加水分解物の色、収率、平均分子量およびシスチン
量を後記の第1表に示す。
となく温度70℃、加水分解時間8時間で加水分解を行
い、スブチリシンによる加水分解やそれに伴う失活操作
を行わなかったほかは、実施例1と同様に、活性炭で脱
色するまでの工程を行った後、濃度調整を行い、濃度25
%のケラチン加水分解物を得た。得られたケラチン加水
分解物の色、収率、平均分子量およびシスチン量を後記
の第1表に示す。
となく行ったほかは実施例1と同様に行い、スブチリシ
ンによる加水分解やそれに伴う失活操作などを行わなか
ったほかは、実施例1と同様に、活性炭で脱色するまで
の工程を行った後、濃度調整を行い、濃度25%のケラチ
ン加水分解物を得た。得られたケラチン加水分解物の
色、収率、平均分子量およびシスチン量を後記の第1表
に示す。
80℃で攪拌しながら1時間加水分解を行い、反応液を冷
却し、以後実施例1と同様に、活性炭で脱色するまでの
工程を行った後、濃度調整を行い、濃度25%のケラチン
加水分解物の水溶液を得た。得られたケラチン加水分解
物の色、収率、平均分子量およびシスチン量を後記の第
1表に示す。
ラチンに対して約150重量%)とチオグリコール酸50g
(ケラチンに対して約10重量%)を加え、70℃で8時間
攪拌して加水分解した後、20%水酸化ナトリウム水溶液
を加えて中和してpH8にした。
で攪拌しながら24時間加水分解を行った。加水分解途
中、20%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応液のpHを
8に保った。スブチリシンによる加水分解後、反応液を
濾過し、濾液に塩酸を加えてpH2にして50℃に加熱し、
攪拌してスブチリシンを失活させた。反応液をpH6に調
整した後、電気透析装置で脱塩し、活性炭で脱色した
後、35%過酸化水素水5gを加えて攪拌し、一晩放置して
反応を行った。つぎに、実施例1と同様の陰イオン交換
樹脂300mlを充填したカラムに通液して残存するチオグ
リコール酸およびジチオグリコール酸を除去し、ついで
濃度調整して、濃度25%のケラチン加水分解物の水溶液
を得た。得られたケラチン加水分解物の色、収率、平均
分子量およびシスチン量を次の第1表に示す。
ラチン加水分解物の色、ケラチン加水分解物の収率、平
均分子量およびシスチン量を調べた結果を第1表に示
す。
よるものであり、数値が大きいほど、色が濃いことを示
している。
求めた結果を示している。
量測定のためのゲル濾過の条件は次の通りである。
JLC-300型)によって測定したものである。
解物は、比較例1(従来の酸加水分解法に相当する)の
ケラチン加水分解物に比べて、色が淡く(すなわち、色
の濃さを表す数値が小さく)、また、経時による色の増
加も少なかった。
1のケラチン加水分解物に比べて、高収率で、平均分子
量が高く、実施例1〜2の加水分解が比較例1の加水分
解に比べて、加水分解のコントロールがしやすく、平均
分子量の高い加水分解物が容易に得られることを示して
いた。
も、実施例1〜2のケラチン加水分解物は、比較例1の
ケラチン加水分解物に比べて、シスチン量が多く、ま
た、原料の羊毛中のシスチン量が9.4モル%であること
から加水分解によるシスチン量の低下が少ないことを示
していた。
1のケラチン加水分解物の25%水溶液の臭について調べ
たが、比較例1のケラチン加水分解物は経時的にアミノ
酸臭が強くなかったが、実施例1〜2のケラチン加水分
解物は臭がほとんどなく、また経時的な臭の増加もなか
った。
の加水分解しやすいアミノ酸のみを塩酸により穏やかな
条件下で加水分解しただけのものであるため、収率が著
しく低く、分子量が大きすぎるために安定した状態には
溶解せず、pHの変動や保存によって一部沈殿するという
問題があった。
分解によるものであるため、シスチンが破壊されてシス
チン量が0.4%まで低下し、また、シスチンの破壊によ
って生成する硫化水素臭があった。
同様にチオグリコール酸の存在下で塩酸加水分解をし、
ついでスブチリシンで加水分解しているが、上記塩酸加
水分解を70℃で行っているため、色が非常に濃くなり、
また、平均分子量が330の小さなペプチドにまで分解さ
れ、スブチリシンでの加水分解によっても分子量コント
ロールがほとんどできず、さらにシスチン量も実施例1
〜2に比べて少なくなっていた。
ントロールよく、高収率に加水分解することができる。
また、本発明によれば、ケラチンをシスチン量の大幅な
低下を招くことなく、容易に加水分解することができ、
しかも得られる加水分解物は着色、着臭が少なく、また
経時的な色、臭の増加も少なく、かつシスチン量が多い
ので、化粧品用配合剤、特に毛髪化粧品用配合剤として
非常に有用である。
Claims (1)
- 【請求項1】羊毛由来のケラチンを加水分解するにあた
り、ケラチンに対して塩化水素濃度20〜38重量%の塩酸
を50〜300重量%とチオグリコール酸および(または)
システアミンを2〜20重量%用い、10〜50℃でケラチン
を加水分解したのち、反応混合物を中和してpH7〜10に
し、ついでスブチリシンによりさらにケラチンを加水分
解することを特徴とするケラチン加水分解物の製造方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14332089A JP2820719B2 (ja) | 1989-06-06 | 1989-06-06 | ケラチン加水分解物の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14332089A JP2820719B2 (ja) | 1989-06-06 | 1989-06-06 | ケラチン加水分解物の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH037595A JPH037595A (ja) | 1991-01-14 |
JP2820719B2 true JP2820719B2 (ja) | 1998-11-05 |
Family
ID=15336042
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP14332089A Expired - Lifetime JP2820719B2 (ja) | 1989-06-06 | 1989-06-06 | ケラチン加水分解物の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2820719B2 (ja) |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4931010B2 (ja) * | 2007-04-13 | 2012-05-16 | 東洋羽毛工業株式会社 | 毛髪処理方法 |
JP2017124983A (ja) * | 2016-01-13 | 2017-07-20 | 株式会社 リトル・サイエンティスト | 化粧料 |
JP6976549B2 (ja) * | 2017-04-25 | 2021-12-08 | 株式会社 リトル・サイエンティスト | 繊維処理剤及びその使用方法 |
JPWO2018220739A1 (ja) * | 2017-05-31 | 2020-08-13 | 株式会社 リトル・サイエンティスト | 高収率で得られるケラチン誘導体とその使用方法 |
CN113855588A (zh) * | 2021-11-16 | 2021-12-31 | 上海威之信生物技术有限公司 | 一种羊毛水解制备角蛋白溶液的方法 |
-
1989
- 1989-06-06 JP JP14332089A patent/JP2820719B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH037595A (ja) | 1991-01-14 |
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