JP2820009B2 - 配向性強誘電体薄膜の作製方法 - Google Patents

配向性強誘電体薄膜の作製方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光導波路等の光素子等
に利用可能なエピタキシャルまたは配向性の強誘電体薄
膜の作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】強誘電体は、その強誘電性、圧電性、焦
電性、電気光学効果等の多くの性質により、不揮発性メ
モリーを始めとして、表面弾性波素子、赤外線焦電素
子、音響光学素子、電気光学素子等、多くの薄膜による
応用が期待されている。この中でも、薄膜光導波路構造
を持った第二次高調波素子、光変調素子等の光学素子へ
の応用には、低光損失化と単結晶並の特性を得るために
単結晶薄膜の作製が不可欠である。そのため、BaTi
3 ,PbTiO3 ,Pb1-x Lax (Zr1-y
y )O3 (PLZT)、LiNbO3 、KNbO3
Bi4 Ti3 12等のエピタキシャル強誘電体薄膜が、
Rf−マグネトロン・スパッタリング法、イオン・ビー
ム・スパッタリング法、レーザー・アブレーション法、
MOCVD法等の方法によって、酸化物単結晶基板上に
数多く形成されている。
【0003】酸化物単結晶基板としては、MgO単結晶
基板が価格、熱安定性、結晶構造、屈折率等の理由によ
り特によく用いられており、例えば特公平3−1148
7号公報には、MgO単結晶(100)面上にPbTi
3 薄膜をRf−スパッタリング法により成長させた強
誘電体薄膜素子が示されている。しかし、MgO単結晶
はへき開に続く研磨によるウェハー作製工程によって、
表面に結晶欠陥が生成・残留し、また表面には安定なM
gの水酸化物や炭酸塩が形成されやすい。これらの欠陥
は洗浄によって除去できない。また、T.Awaji
等,Jpn.J.Appl.Phys.,31,642
(1992)に示される1000℃でのアニールや、小
船等,日本セラミック協会学術論文誌,100,106
0(1992)に示される酸でのエッチングによる表面
の改善が、気相エピタキシャル成長の場合には有効であ
ることが最近提案されている。しかし、この気相法によ
るピタキシャル成長は、装置が非常に高価な上、組成制
御の問題や薄膜の表面性の問題を有する。一方、精密な
化学組成制御、プロセスの低温化、大面積化、低設備コ
スト等の面で有利な有機金属化合物を用いて強誘電体薄
膜を得る方法が、特公昭62−27482号公報に示さ
れている。しかし、この方法では、高温での焼成を行っ
ても多結晶で密度の低い薄膜を得ることしかできない。
そのため、強誘電体の物性を十分に活かすことができ
ず、また、例えば光導波路としては、結晶粒界およびピ
ンホールによる光散乱が大きく、使用することはできな
かった。
【0004】本発明者等は、K.Nashimoto
& M.J.Cima,Mater.Lett.,
,(7,8),348(1991)に報告したよう
に、加水分解してない状態の有機金属化合物であるLi
OC2 5 およびNb(OC2 5 5 を用いると、サ
ファイア(Al2 3 )単結晶基板上に単結晶の強誘電
体薄膜LiNbO3 がエピタキシャル成長することを発
見をした。得られる多結晶膜および配向性膜は、特に高
温で焼成した際には、結晶粒成長と細孔径成長とにより
膜は低い密度で低い屈折率を示し、高温結晶粒成長後に
不透明になった。400℃の温度で焼成されたエピタキ
シャル薄膜は、単結晶状で表面が光学的に平滑である
が、TEM(透過型電子顕微鏡)によって薄膜の断面を
観察すると、数nm径の細孔を含むことが分かった。こ
のため、密度が十分に高くはなく屈折率も単結晶並では
なかった。700℃の温度で焼成された強誘電体薄膜
は、単結晶状で多結晶膜や配向性膜と比較して、極めて
大きなサブ・グレイン(結晶粒構造であるが各結晶粒の
方位がほぼまたは完全に揃っている構造)を持ち、高密
度で屈折率も単結晶並であったが、細孔を若干含み、表
面が光学的に平滑ではなく膜の透明性も十分ではなかっ
た。
【0005】そこで、本発明者は、表面が光学的に平滑
で透明な配向性強誘電体薄膜を得るための方法として、
熱処理温度の異なる膜からなる配向性多層強誘電体薄膜
に関する発明を既に特許出願した(特開平5−3429
12号公報)。さらに、有機金属化合物前駆体の有機官
能基の原料となる有機化合物(有機溶剤)の常圧での沸
点温度が、得られる薄膜の平滑化および細孔の抑制に非
常に重要であり、これらの有機化合物または溶剤は常圧
での沸点が少なくとも80℃以上であることが、および
基板上に塗布した膜の高速加熱が、薄膜の平滑化および
細孔の制御に非常に重要であることを見出し、特許出願
した(特開平7−78508号公報)。しかし、気相法
とは全く異なるこれらの方法で、MgOまたはMgAl
2 4単結晶基板上に強誘電体薄膜のエピタキシャル成
長を試みると、再現性が乏しいため、本発明者はこれら
基板の表面処理法を鋭意検討した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上述の問題点
を解消するためになされたものであって、その目的は、
有機金属化合物を用いて、MgOまたはMgAl2 4
単結晶基板上に表面が光学的に平滑かつ透明で、さらに
エピタキシャルまたは高配向性であり、光素子に利用可
能な強誘電体薄膜を作製する方法を提供することにあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、従来から配
向性強誘電体薄膜を有利に作製する方法について研究を
重ねてきたところ、原料として有機金属化合物を用い、
基板を洗浄および酸素雰囲気中でアニールすることによ
り、上記目的が達成されることを見出して、本発明を完
成するに至った。すなわち、本発明の配向性強誘電体薄
膜の作製方法は、洗浄に続いて酸素を含む雰囲気中で7
00〜1600℃の温度範囲においてアニールを行った
MgOまたはMgAl2 4 単結晶基板上に、有機金属
化合物前駆体の溶液を塗布し、更にアニールすることに
より、エピタキシャルまたは高配向である酸化物強誘電
体薄膜を形成することを特徴とする。
【0008】以下、本発明について詳細に説明する。本
発明の配向性強誘電体薄膜の作製方法において、有機金
属化合物は、Li,Na,K,Sr,Ba,La,T
i,Zr,Pb,Nb,Ta,Bi等の金属を含む金属
アルコキシド類または有機酸金属塩類より選ばれる。こ
れらの原料は、アルコール類、ジケトン類、ケト酸類、
アルキルエステル類、オキシ酸類、オキシケトン類およ
び酢酸等の脂肪酸類などより選ばれる溶剤と所定の組成
で反応させた後、あるいは溶剤中に溶解した後、生成す
る前駆体溶液を基板へ塗布する。これらの有機金属化合
物は、加水分解した後に塗布することが可能であるが、
エピタキシャルまたは高配向性の強誘電体薄膜を形成す
るためには、加水分解をしない方が望ましい。この溶液
はMgOまたはMgAl2 4 単結晶基板上に、スピン
コート法、ディッピング法、スプレー法、スクリーン印
刷法、インクジェット法等より選ばれる方法により塗布
される。この際、基板は塗布前に溶剤洗浄または溶剤洗
浄とエッチングとを組合せた洗浄の後、酸素を含む雰囲
気中で700〜1600℃の温度範囲、望ましくは80
0〜1300℃の温度範囲でアニールされる。
【0009】有機金属化合物前駆体溶液の塗布後、加熱
を行うことにより強誘電体薄膜をエピタキシャルまたは
高配向に結晶化させる。この際、望ましくは、前処理と
して酸素を含む雰囲気中で0.1〜500℃/秒の昇温
速度で基板を加熱し、100〜500℃の結晶化の起こ
らない温度範囲で塗布層を熱分解する。更に、酸素を含
む雰囲気中で0.1〜500℃/秒の昇温速度で基板を
加熱し、300〜1200℃の温度範囲で強誘電体薄膜
をエピタキシャルまたは高配向に結晶化させる。これら
の雰囲気としては、乾燥した雰囲気および強制的に加湿
した雰囲気のいずれであってもよい。以上の方法によっ
て、MgOまたはMgAl2 4 単結晶基板上に、エピ
タキシャルまたは高配向であり、密度が高く屈折率も単
結晶並であり、表面が光学的に平滑な酸化物強誘電体薄
膜が再現性よく作製される。強誘電体薄膜を形成する酸
化物としては、例えば、BaTiO3 ,PbTiO3
Pb(Zr1-x Tix)O3 (PZT),Pb1-x La
x (Zr1-y Tiy )O3 (PLZT),Bi4 Ti3
12,LiNbO3 ,LiTaO3 ,KNbO3 ,Pb
(Mg1/3 Nb2/3 )O3 等の複合酸化物が挙げられ
る。
【0010】
【実施例】以下に、実施例によって本発明をより具体的
に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるも
のではない。 実施例1 モル比でPb:Zr:Ti=1.00:0.53:0.
47のPb(CH3 COO)2 、Zr(O -i-C
3 7 4 およびTi(O -i-C3 7 4 をモレキュ
ラー・シーブで脱水した2−メトキシエタノールに溶解
し、6時間蒸留した後、18時間還流し、最終的に、P
b濃度で0.5MのPb(Zr0.53Ti0.47)O3 (P
ZT)の前駆体溶液を得た。この前駆体溶液を0.2μ
mのフィルターに通して、MgO(100)単結晶基板
へ2000rpmでスピンコーティングを行った。以上
の操作はすべて窒素雰囲気中で行った。スピンコーティ
ングの前に、MgO基板は溶剤洗浄した後、窒素気流中
でエタノールのスピンコーティングによって乾燥し、更
に空気中にて1100℃で30分間アニールした。
【0011】基板のアニール後、直ちに窒素雰囲気中に
て室温で前記の前駆体溶液を2000rpmでスピンコ
ーティングンを行った。スピンコーティングされた基板
は10℃/秒で昇温し、加湿した酸素雰囲気中にて35
0℃で熱分解を行った。その後、基板を650℃におい
て加熱することにより薄膜を結晶化させた。得られたP
ZT薄膜は、X線回析パターンには、(001)面によ
る回折ピークのみを示し、ペロブスカイト単一層として
結晶化していた。さらに、X線極点図によって解析を行
うと、MgOとPZTの基板面内での結晶方位は一致し
ており、PZTがエピタキシャルに結晶化していた。こ
のPZT薄膜の(001)面でのX線ロッキング・カー
ブ半値幅は0.82°と良好であった。また、1100
℃で30分間アニールを行ったMgO基板上に形成され
たエピタキシャルPZT薄膜の屈折率は、バルク単結晶
と同様の値を示した。このエピタキシャルPZT薄膜の
表面をSEM(走査型電子顕微鏡)によって観察する
と、薄膜には細孔が全くみられず、また表面が極めて平
滑なために、SEMによって表面の極微細な凹凸を観察
することは困難であった。このように、気相エピタキシ
ャル成長において有効であるとされる基板の高温アニー
ルは、固相エピタキシャル成長でも有効であることが本
発明によって初めて明らかになった。
【0012】実施例2 原料として等モル量のKOC2 5 およびNb(OC2
5 5 を脱水した2−メトキシエタノールに溶解し、
0.6M溶液を得た。この溶液を攪拌しつつ2時間蒸留
し、更に22時間還流してダブル・アルコキシドを得
た。その後、この溶液を0.2μmのフィルターに通し
て、K[Nb(OC2 4 OCH3 6 ]溶液をMgA
2 4 (100)単結晶基板へ2000rpmでスピ
ンコーティングを行った。以上の操作はすべて窒素雰囲
気中で行い、スピンコーティングの前に、MgAl2
4 基板は溶剤洗浄、硝酸によるごく軽いエッチング、そ
して酸素気流中にて1000℃で60分間アニールを行
った。スピンコーティングされた基板は、乾燥した酸素
雰囲気中にて10℃/秒で昇温して300℃に保持した
後、700℃に保持し、最後に電気炉の電源を切り冷却
した。これにより、MgAl2 4 (100)単結晶基
板に形成されたエピタキシャルKNbO3 薄膜は、(1
00)面による回折ピークのみを示し、屈折率はバルク
単結晶と同様な値を示した。さらに、このエピタキシャ
ルKNbO3 薄膜の表面をSEMによって観察すると、
実施例1と同様に、薄膜には細孔がみられず、また表面
が平滑であった。
【0013】比較例 溶剤洗浄のみを行ったMgO(100)単結晶基板およ
び溶剤洗浄と塩酸または硝酸溶液によるエッチングとを
組合せたMgO(100)単結晶基板を用いて、実施例
1と同様の方法により、PZT薄膜を650℃で結晶化
させた。この結果、溶剤洗浄のみを行ったMgO(10
0)単結晶基板上に形成されたPZT薄膜は、ランダム
な多結晶であった。一方、溶剤洗浄と塩酸または硝酸に
よるエッチングとを組合せた場合には、MgO(10
0)単結晶基板表面のミクロ・レベルの粗さが大きくな
り、またMgO(100)単結晶基板上のPZT薄膜
は、(001)の配向性を示したが、(110)面等の
配向も示した。この(001)配向性の再現性は悪く、
さらに最も(001)配向性の強いものでも、(00
1)面でのX線ロッキング・カーブ半値幅は1.48°
であった。このように、基板表面のエッチングは、気相
エピタキシャル成長に有効であるとされているにもかか
わらず、表面性を改善するものの、その効果は十分では
なかった。
【0014】
【発明の効果】本発明によれば、表面が光学的に平滑か
つ透明で、高い屈折率を有し、さらにエピタキシャルま
たは配向性の強誘電体薄膜が作製されるため、得られる
配向性強誘電体薄膜は、光導波路等を用いた光変調素子
に利用可能である。また、本発明は、原料として有機金
属化合物を使用する方法であるため、精密な化学組成制
御、プロセスの低温化、大面積化、低設備コスト等の面
で有利であり、しかも、高品質な配向性強誘電体薄膜を
再現性よく作製することが可能になる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H01L 37/02 H01L 37/02 41/24 41/22 A (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C30B 19/00 - 19/12 C30B 28/00 - 35/00 H01B 3/00 H01L 37/02 H01L 41/24

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 洗浄に続いて酸素を含む雰囲気中で70
    0〜1600℃の温度範囲においてアニールを行ったM
    gOまたはMgAl2 4 単結晶基板上に、有機金属化
    合物前駆体の溶液を塗布し、更にアニールすることによ
    り、エピタキシャルまたは高配向である酸化物強誘電体
    薄膜を形成することを特徴とする配向性強誘電体薄膜の
    作製方法。
  2. 【請求項2】 前記有機金属化合物前駆体が、金属アル
    コキシド類および有機酸金属塩類より選ばれる有機金属
    化合物の混合物またはそれらの反応生成物である請求項
    1記載の配向性強誘電体薄膜の作製方法。
  3. 【請求項3】 前記洗浄が、溶剤洗浄または溶剤洗浄と
    エッチングとの組合せからなる請求項1記載の配向性強
    誘電体薄膜の作製方法。
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