JP2812996B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［発明の目的］ （産業上の利用分野） 本発明はトレッドパターンを備えた空気入りタイヤの
改良に関し、さらに詳しくはパターンノイズの発生を抑
制した空気入りタイヤに関するものである。

（従来の技術） 高速走行に供される空気入りタイヤに要求される性能
の一つである排水性については、周方向にエンドレスで
延びる複数本の比較的広幅の周方向溝と、周方向に一定
の間隔を以て配列した多数の横方向溝とによって、タイ
ヤのトレッドに特有のブロックパターンを形成すること
により改善が図られてきた。

同時に、このようなブロックパターンを有するタイヤ
は、一般にパターンがら発生するノイズを低減する目的
で、例えば長さの異なる複数のブロックを周上に一定の
規則性を持たせ又ランダムに配列させることにより、走
行時に接地面内で発生する音の周波数を広い帯域に分散
させる手法、すなわち、ピッチバリエイションの手法が
適用されている。

この場合、第１図はこの種の空気入りタイヤのトレッ
ドの展開図を示し、トレッド踏面部Ｔは周方向中心線Ｏ
の両側に、複数の周方向溝１−１、１−２、１−３及び
１−４が相互に平行に設けられ、これらの周方向溝と交
わる向きに周方向に対して傾斜し、所定間隔を以て配置
した複数の横方向溝２によって、多数のブロック列３−
1,3−2,3−3,3−４及び３−５が形成されている。

そして、横方向溝２は、タイヤの負荷転動時にタイヤ
の中心区域からトレッド端に向かって漸次踏面と接触す
るように、タイヤの中心線に向かって傾斜しており、こ
れにより回転方向が矢印方向に指定されていた。

また、角周方向溝は、第４図（ａ）及び（ｂ）に示し
たように、その側壁の傾斜角度が左右対称となってい
る。

（発明が解決しようとする課題） しかるに、タイヤのパターンノイズは1KHz附近にピー
クを持つ周方向溝内の気柱共鳴と呼ばれる現象による影
響が大きく、これはタイヤの周方向溝の形状と接地長と
の関係に大きく影響すると考えられる。

従来の空気入りタイヤにおいては、タイヤの負荷転動
時に接地面下での周方向溝の周方向への伸び及び溝断面
形状が一定であるために、一定周波数のパターンノイズ
を発生しやすい傾向にあり、騒音性に劣るという問題を
含んでいた。

そこで、本発明の課題は、上述した従来の空気入りタ
イヤが有する問題点を解決することにある。

したがって本発明の目的は、パターンノイズを減少せ
しめ、騒音性を改良した空気入りタイヤを提供すること
にある。

［発明の構成］ （課題を解決するための手段） すなわち、本発明の空気入りタイヤは、一対のサイド
ウォールとトレッドがトロイド状に連なり、上記トレッ
ドが軸方向に所定間隔を置き周方向にエンドレスで延び
る複数の周方向溝と、該周方向溝と交差して延び周方向
に一定間隔を以て配置した横方向溝と、これらの溝群に
よって区分された複数のブロックを含むタイヤにおい
て、上記周方向溝につきこれを構成するブロック側壁の
トレッド表面を立てた法線とのなす角度が、上記周方向
溝の中心に関し左右非対称のＡ断面と、上記ブロック側
壁の角度とは逆の関数をもって左右非対称のＢ断面を有
する少なくとも２種類の断面形状の溝要素を、横方向溝
を節目に一定の間隔をもって周方向に組み合わせてなる
ことを特徴とするものである。

（作用） 本発明の空気入りタイヤは、周方向溝の溝ボリュウム
を実質上同一としたまま、溝断面形状を周方向に変化せ
しめることができる。

これにより本発明は、周方向溝における気柱共鳴を低
減でき、パターンノイズを効果的に減少することができ
る。

しかも、上述した気柱共鳴に起因するパターンノイズ
以外の、走行時に発生する騒音をも減少することができ
る したがって、本発明によれば、パターンノイズ及び走
行時における騒音の両者を効果的に減少することがで
き、優れた走行フィーリングを得ることができる。

（実施例） 以下、図面にしたがって本発明の空気入りタイヤの実
施例について、詳細に説明する。

第１図は本発明の空気入りタイヤのトレッド部展開
図、第２図（ａ）及び（ｂ）は夫々第１図における周方
向溝のA₀−A₀及びA₁−A₁線断面説明図、第３図（ａ）及
び（ｂ）は第１図における周方向溝B₀−B₀及びB₁−B₁線
断面説明図である。

なお、第１図においてはトレッド部以外の部分の図示
は省略しているが、ラジアルカーカス、ベルト層及びサ
イドウォールなどの図示以外の部分は周知の構造であ
る。

すなわち、第１図に示した本発明の空気入りタイヤの
トレッド部Ｔには、軸方向に所定間隔を置き周方向にエ
ンドレスで延びる４本の周方向溝１−１、１−２、１−
３及び１−４が設けられている。

また、一方のトレッド端ｅから他方のトレッド端ｅ′
へかけて、各上記周方向溝と交差して延びる位置に、多
数の横方向溝２が矢筈状に傾斜して、一所定間隔に設け
られている。

そして、前記各周方向溝１−１〜１−４、横方向溝２
及びトレッド端ｅ、ｅ′によって多数のブロック列３−
１、３−２、３−３、３−４及び３−５が区分されてお
り、各周方向溝１−１〜１−４に対する横方向溝２が鋭
角を成す方向から接地するようタイヤの回転方向が矢印
方向に指定されている。

なお、この実施例において周方向溝１−１、１−２、
１−３及び１−４の溝幅および深さは溝群の中で最も広
くかつ深く形成されている。

また、横方向溝２は、トレッドの中央部からトレッド
端ｅ、ｅ′まで適度の角度、通常は50〜70度の角度で傾
斜し、これらの溝幅および深さは周方向溝と同等または
それ以下である。

ここで、本発明の空気入りタイヤにおいては、周方向
に隣り合う周方向溝の溝断面形状を、夫々左右非対称と
なし、かつ少なくとも２種類の左右非対称断面形状を有
する周方向溝が、横方向溝を節目に一定の関係をもっ
て、周方向に組み合わされていることが重要である。

例えば、周方向溝１−２及び１−３は、それらにより
挟まれたブロック列３−３において、さらに横方向溝２
によって区分されたブロックb₀に位置する部分のA₀−A₀
及びA₁−A₁線断面図を第２図（ａ）及び（ｂ）にそれぞ
れ示したように、溝断面形状が左右非対称に形成されて
いる。

すなわち、ブロックb₀における周方向溝１−２の断面
形状は、第２図（ａ）に示したように、軸方向外側の側
壁S₀と内側の側壁S₁の、夫々トレッド表面に立てた法線
Ｏに対する傾斜角度α_０及びα_１がα_０＜α_１の関係に
ある。

一方、ブロックb₀における周方向溝１−３の断面形状
は、第２図（ｂ）に示したように、軸方向外側の側壁S₂
と内側の側壁S₃の、夫々トレッド表面に立てた法線Ｏに
対する傾斜角度α_２及びα_３がα_２＜α_３の関係にあ
り、前記周方向溝１−２とは左右非対称のＡ断面となっ
ている。

そして、前記ブロックb₀と横方向溝２を節目として隣
接するブロックb₁においては、対向する周方向溝１−２
及び１−３の断面形状が、夫々のB₀−B₀及びB₁−B₁線を
第３図（ａ）及び（ｂ）に示したように、前記Ａ断面と
は配置を逆転した左右非対称になるように形成されてい
る。

すなわち、ブロックb₁における周方向溝１−２の断面
形状は、第３図（ａ）に示したように、軸方向外側の側
壁S₀と内側の側壁S₁の、夫々トレッド表面に立てた法線
Ｏに対する傾斜角度β_１及びβ_２がβ_０＞β_１の関係に
ある。

一方、ブロックb₁における周方向溝１−３の断面形状
は、第３図（ｂ）に示したように、軸方向外側の側壁S₂
と内側の側壁S₃の、夫々トレッド表面に立てた法線Ｏに
対する傾斜角度β_２及びβ_３がβ_２＜β_３の関係にあ
り、前記周方向溝１−２とは左右非対称のＢ断面となっ
ているのである。

上記Ａ断面及びＢ断面における側壁の傾斜角度及び傾
斜角度差は、前述したような左右非対称を構成するかぎ
りは、相互に同一であっても、また異なっていてもよ
い。

そして、上述したＡ断面及びＢ断面からなる少なくと
も２種類の溝要素の周方向に対する配置は、図示したよ
うに横方向溝２を節目にした交互配置以外に、一つある
いは二つ置きに一定の関係を持たせた組み合わせとする
こともできる。

さらに、上記Ａ断面とＢ断面との組み合わせの一部
に、左右対称の溝断面形状を組み入れた配置とすること
もできる。

また、上記溝断面構造は、周方向溝１−２及び１−３
についてのみ述べたが、他の周方向溝１−１及び１−４
についても、夫々周方向溝１−２及び１−３に対して非
対称の関係をもった断面形状を形成することができ、こ
れによってパターンノイズの一層の低減を図ることがで
きる。

次に、試験例により本発明の空気入りタイヤの構成お
よび効果についてさらに詳細に説明する。

（試験例） タイヤサイズ:255/50ZR16、ラジアルタイヤのトレッ
ド部に対し、上述の第１図、第２図（ａ）（ｂ）及び第
３図（ａ）（ｂ）に示したブロックパターンを形成し、
このタイヤについての評価を行なった。

なお、タイヤのラジアルカーカスおよびベルト層など
の他の構造および製造条件は従来タイヤに準じたため、
詳細は省略する。

すなわち、第１図においてトレッドの幅:196mm、周方
向溝１−１、１−２、１−３及び１−４の溝幅:10.0m
m、深さ:8.0mm、横方向溝２の溝幅:6.0mm、深さ:8.0mm
としてブロックパターンを形成した。

そして、ブロックb₀部分の周方向溝１−２における側
壁傾斜角度α_０を20度、α_１を50度とし、さらに周方向
溝１−３における側壁傾斜角度α_２を50度、α_３を20度
として、左右非対称のＡ断面を形成した。

また、ブロックb₁部分の周方向溝１−２における側壁
傾斜角度β_０を20度、β_１を５度とし、さらに周方向溝
１−３における側壁傾斜角度β_２を５度、β_３を20度と
して、左右非対称のＢ断面を形成した。

なお、ブロックb₀と軸方向に平行な他のブロックにお
ける周方向溝１−１及び１−４にも、上記と同様のＡ断
面を夫々周方向溝１−２及び１−３と左右非対称となる
ように設け、ブロックb₁と軸方向に平行な他のブロック
における周方向溝１−１及び１−４にも、上記と同様の
Ｂ断面を夫々周方向溝１−２及び１−３と左右非対称と
なるように設けた。

そして、上記Ａ断面とＢ断面を、横方向溝２を節目と
して周方向に交互に配置することにより、本発明タイヤ
を得た。

一方比較のために、第１図と同様なブロックパターン
において、全ての周方向溝１−1,1−2,1−３及び１−４
の側壁傾斜角度を全て10度と一定とし、左右対称とする
ことにより、従来タイヤを得た。

これら２種のタイヤについて、下記２条件で騒音発生
状況を評価した結果を次表に示す。使用リム8Jである。

（評価方法） No.1……内圧2.3kg/cm²、荷重400kg、毎分106回転する
直径300cmのドラム上にタイヤを接触させて軸支し、タ
イヤから1m離れた個所に設置したマイクにより、1KHz付
近のノイズを測定して、従来タイヤを100とした指数評
価をおこなった（指数小ほど騒音少ない）。

No.2……荷重:1400kg、内圧:2.3kg/cm²の条件で、乾燥
道路を35km/hで走行する車輌について、走行路より7m離
れた個所に設置したマイクにより、1KHz付近のノイズを
測定して、従来タイヤを100とした指数評価をおこなっ
た（指数小ほど騒音少ない）。

以上の結果から、本発明の空気入りタイヤは、騒音性
がきわめて改善されていることが明らかである。

［発明の効果］ 本発明は上述したように構成したから、周方向溝の溝
ボリュウムを実質上同一としたまま、溝断面形状を周方
向に変化せしめることができる。

これにより本発明は、周方向溝における気柱共鳴に起
因するパターンノイズを効果的に減少することができ
る。

なお、本発明は前述した公知のピッチバリエイション
の手法と併用しても有利に目的を達成できるのは勿論で
ある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の空気入りタイヤのトレッド部展開図、
第２図（ａ）及び（ｂ）は夫々第１図における周方向溝
のA₀−A₀及びA₁−A₁線断面説明図、第３図（ａ）及び
（ｂ）は第１図における周方向溝のB₀−B₀及びB₁−B₁線
断面説明図、第４図（ａ）及び（ｂ）は夫々従来タイヤ
における断面説明図である。 Ｔ……トレッド部 １−１……周方向溝 １−２……周方向溝 １−３……周方向溝 １−４……周方向溝 ２……横方向溝 ３−１……ブロック列 ３−２……ブロック列 ３−３……ブロック列 ３−４……ブロック列 ３−５……ブロック列 S₀……側壁 S₁……側壁 S₂……側壁 S₃……側壁 α……側壁傾斜角度 β……側壁傾斜角度

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】一対のサイドウォールとトレッドがトロイ
   ド状に連なり、上記トレッドが軸方向に所定間隔を置き
   周方向にエンドレスで延びる複数の周方向溝と、該周方
   向溝と交差して延び周方向に一定間隔を以て配置した横
   方向溝と、これらの溝群によって区分された複数のブロ
   ックを含むタイヤにおいて、上記周方向溝につきこれを
   構成するブロック側壁のトレッド表面を立てた法線との
   なす角度が、上記周方向溝の中心に関し左右非対称のＡ
   断面と、上記ブロック側壁の角度とは逆の関数をもって
   左右非対称のＢ断面を有する少なくとも２種類の断面形
   状の溝要素を、横方向溝を節目に一定の間隔をもって周
   方向に組み合わせてなることを特徴とする空気入りタイ
   ヤ。