JP2812683B2 - 持続性を有するモルヒネ直腸投与製剤 - Google Patents

持続性を有するモルヒネ直腸投与製剤

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JP2812683B2 JP63187455A JP18745588A JP2812683B2 JP 2812683 B2 JP2812683 B2 JP 2812683B2 JP 63187455 A JP63187455 A JP 63187455A JP 18745588 A JP18745588 A JP 18745588A JP 2812683 B2 JP2812683 B2 JP 2812683B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は持続性を有するモルヒネの直腸投与製剤に関
するものである。更に詳しくは、本発明は直腸よりの吸
収性が高く、長時間薬効が持続するモルヒネ含有の坐剤
に関するものであり、経口投与製剤に見られるような嘔
気や嘔吐といった副作用が大幅に軽減され、また注射製
剤に見られる体内からの早い消失が改善された製剤に関
する。
〔従来の技術〕
モルヒネの強い鎮痛作用は癌の強くて頑固な痛みを管
理する上で、特に末期状態では非常に貴重なものであ
る。従って、原因除去不能な進行癌や末期癌患者にモル
ヒネが投与されている。従来、モルヒネは経口剤または
注射剤で使用されてきた。経口的に水溶液として例え
ば、コカインを加えたプロンプトンカクテルが汎用され
ているが嘔気、嘔吐等により患者に容易に受け入れられ
る製剤ではない。最近、徐放錠が開発されているが同様
の副作用が発現している。また、経口的に投与された場
合、肝臓により初回通過効果をうけモルヒネの利用度は
決して高くない。一方、注射剤は速効性が期待できる
が、代謝が早く持続性がないため、常に医師による直接
の投与技術を必要とし、汎用性に欠けるものである。
このような剤型に対し、坐剤等の直腸投与製剤は近年
急速に発展し、その投与経路の違いから、経口剤に比べ
胃腸障害が少なく、直腸吸収後、全身循環するため、肝
臓においての代謝がされにくく体内利用度が高い特徴を
もっていることは周知の事実である。したがって、特に
子供や経口投与が不可能な重症患者の臨床上の利用度は
大きい。
〔発明が解決しようとする課題〕
モルヒネの坐剤はこれまでに種々研究されている。し
かしながら、その吸収および代謝が早く、注射剤、経口
剤と変わらない頻回投与が必要となり、患者および医療
従事者の負担は軽減されていない。即ち、これまでのモ
ルヒネ製剤の作用時間は約1〜4時間で、モルヒネ治療
の欠陥の一つは頻回投与とされていた。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者は、斯かる実情に鑑み鋭意研究を行った結
果、酸性多糖類存在下に直腸モルヒネ坐剤を投与する
と、従来よりも持続性があり、しかも利用度が高いこと
を見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、油脂性基剤中に少なくとも一種類
の酸性多糖類を含有するモルヒネの直腸投与製剤を提供
するものである。
本発明に使用する酸性多糖類としては、アルギン酸ナ
トリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウムペクチン酸ナ
トリウムが挙げられる。これらの酸性多糖類の中で、特
にアルギン酸ナトリウムが好ましい。製剤中の酸性多糖
類の含有量は、モルヒネの重量に対し、1〜40重量%、
特に5〜30重量%が望ましい。これらの含有量におい
て、特にアルギン酸ナトリウムは効果的である。
モルヒネまたは医薬上許容しうる塩としては、塩酸モ
ルヒネおよび硫酸モルヒネが挙げられる。そのいずれで
あっても好ましい。直腸投与製剤中の含有量は臨床上一
般に用いられる量からモルヒネとして一丸中10から30mg
が好適である。
油脂性基剤としては、C12〜C18の高級脂肪酸グリセリ
ンエステル類、例えば:ウイテプゾール(Dynamic Nobe
l社、西独)、サポサイアー(Gattefosse sfpf仏)、ノ
バタ(Henkel社)等の半合成油脂性基剤またはカカオ
脂、ラウリン脂等の天然油脂性基剤が挙げられるが、就
中特にウイテプゾールが好ましい。また、ウイテプゾー
ル中タイプH-15が特に優れている。油脂性基剤の使用量
は含有するモルヒネに対し10〜300重量倍の通常坐剤に
使用される範囲が適切であるが特に限定されるものでな
い。
本発明の直腸投与製剤は、上記した各成分の他に必要
に応じて安定化剤を含有させることができる。これらの
安定化剤としては、通常の坐剤に配合される添加剤、例
えば、界面活性剤、防腐剤、抗酸化剤等が挙げられる。
本発明の酸性多糖類を添加することにより、モルヒネ
の体内における持続化と利用度が高まった作用機序は明
らかではないが、両成分が直腸分泌液に溶解した時点
で、モルヒネ分子は酸性多糖類分子とイオン結合し、こ
の高分子電解質化合物からのモルヒネの解離平衡が生
じ、直腸吸収部位のモルヒネ濃度が長時間にわたり一定
濃度に維持され、持続吸収が得られるものと考えられ
る。また、バイオアバイラビリティーの上昇には適度の
粘性溶液が得られることが関係し、吸収粘膜面への親和
性が高くなったためと考えられる。
〔実施例〕
次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、
本発明はこれによって限定されるものではない。
実施例1 ウイテプゾールH-15、77.8gを45〜50℃で溶解する。
これに塩酸モルヒネ0.8gとアルギン酸ナトリウム0.2gを
加え、均等に分散させる。これを坐剤型(プラスチック
コンテナ)に注入し、一個約1.4gの坐剤とし、室温で固
化した後、更に冷蔵庫内で十分に固化させる。得られた
坐剤は使用までそのまま保存した。本剤の安定性につい
ては温度40℃、湿度75%RHで1ヵ月保存した場合のモル
ヒネの含有量を測定した結果、第1表に示す通り全く異
常は認められなかった。同じく温度4℃で3ヵ月保存し
た場合第2表に示す通り異常は認められなかった。
実施例2、3、4、5 実施例1の方法で塩酸モルヒネ3.2gを用いウイテプゾ
ールH-15、アルギン酸ナトリウムの量を第3表に示す通
りに変えてそれぞれ実施した。尚、比較例1にはアルギ
ン酸ナトリウムを添加しなかった。
なお、第3表中、%は塩酸モルヒネに対するアルギン
酸ナトリウムの含有%を示す。
実施例6、7、8、9 実施例1の方法で塩酸モルヒネ6.4gを用い、ウイテプ
ゾールH-15、アルギン酸ナトリウムの量を第4表に示す
通りに変えて、それぞれ実施した。尚、比較例2にはア
ルギン酸ナトリウムを添加しなかった。
実施例10,11 実施例1の方法でアルギン酸ナトリウムをコンドロイ
チン硫酸ナトリウム又はペクチン酸ナトリウムに替え、
塩酸モルヒネ3.2g、ウイテプゾールH-15を用いて第5表
に示す通りそれぞれ実施した。
第5表において、コロドロイチン硫酸ナトリウムおよ
びペクチン酸ナトリウムの塩酸モルヒネに対する含有重
量%は、いずれも25%である。
実験例1(モルヒネの直腸投与の静注および経口投与と
の比較) 体重、約2.5kgの雄性家兎を用い、モルヒネを静注、
経口および直腸投与した時のプラズマ(血漿)中のモル
ヒネ量を測定した。比較例1を用いた直腸投与は、48時
間絶食させた後モルヒネとして10mg/kgを直腸に投与
し、クリップを用いて坐剤成分の漏出を防止した。静注
は塩酸モルヒネ10mg/ml水溶液を用い、モルヒネとして5
mg/kgを耳静脈から静脈内に投与した。経口投与は、塩
酸モルヒネ50mg/ml水溶液を用い、モルヒネとして50mg/
kgを投与した。各製剤投与後5時間迄のプラズマ中のモ
ルヒネ濃度を測定し、その生物学的利用率の各パラメー
ターを求め、第1図および第6表に示した。
実験例2 48時間絶食させた体重約2.5kgの雄性家兎を用い、実
施例2〜5および比較例1の坐剤をそれぞれモルヒネと
して10mg/kgを投与したときのプラズマ中のモルヒネ量
を測定した。坐剤投与は直腸投与後、クリップを用いて
坐剤成分の漏出を防止した。各製剤の投与後、5時間迄
のプラズマ中のモルヒネ濃度を測定し、その生物学的利
用率の各パラメーターを求め、第2図および第7表に示
した。
第2図および第7表から明らかな通り、本発明の坐剤
はモルヒネの生物学的利用率が経口投与に比べて非常に
高く、かつアルギン酸ナトリウムの無添加の坐剤投与に
比べプラズマ中のモルヒネ濃度が持続しており、十分に
優れている。更に、アルギン酸ナトリウムの添加量は約
25%(対モルヒネ含量)に最大維持効果があることが示
されている。
実験例3 実施例6〜9および比較例2についても実験例2と同
様の実験を行った。その結果、実験例2と同様にアルギ
ン酸ナトリウム添加による優れた持続性効果が示され
た。その生物学的利用率の各パラメーターは第7表に示
した。
実験例4 実施例10,11(第5表)についても実験例2と同様の
実験を行った。コンドロイチン硫酸ナトリウム、ペクチ
ン酸ナトリウムそれぞれの添加に持続性効果が示され
た。坐剤投与後、5時間迄のプラズマ中のモルヒネ濃度
を第3図に示し、その生物学的利用率の各パラメータは
第8図に示した。
〔発明の効果〕 以上のように本発明によれば、モルヒネの持続性が向
上し、その利用率が高くなり、従来の頻回投与の欠陥を
解消できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は実験例1の坐剤投与、経口投与および静脈内投
与によるそれぞれのプラズマ中のモルヒネ濃度を示すグ
ラフ、第2図は実施例4の坐剤投与によるプラズマ中の
モルヒネ濃度を示すグラフ、第3図は実施例10および実
施例11の坐剤投与によるプラズマ内のモルヒネ濃度を示
すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A61K 31/485 A61K 9/02 A61K 47/36 CA(STN)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】油脂性基剤に少なくとも一種類の酸性多糖
    類とモルヒネの医薬上許容し得る塩とを含有してなるこ
    とを特徴とする持続性を有するモルヒネ直腸投与製剤。
  2. 【請求項2】前記酸性多糖類が、アルギン酸ナトリウ
    ム、コンドロイチン硫酸ナトリウム又はペクチン酸ナト
    リウムの1種以上であることを特徴とする請求項(1)
    記載の持続性を有するモルヒネ直腸投与製剤。
  3. 【請求項3】前記モルヒネが、塩酸モルヒネ又は硫酸モ
    ルヒネであることを特徴とする請求項(1)記載の持続
    性を有するモルヒネ直腸投与製剤。
  4. 【請求項4】前記油脂性基剤が、坐剤基剤であることを
    特徴とする請求項(1)記載の持続性を有するモルヒネ
    直腸投与製剤。
  5. 【請求項5】前記酸性多糖類が、モルヒネに対し1〜40
    重量%含有されていることを特徴とする請求項(1)記
    載の持続性を有するモルヒネ直腸投与製剤。
  6. 【請求項6】油脂性基剤と、少なくとも一種類の酸性多
    糖類と、モルヒネの医薬上許容し得る塩とからなること
    を特徴とする請求項(1)記載の持続性を有するモルヒ
    ネ直腸投与製剤。
  7. 【請求項7】油脂性基剤と、少なくとも一種類の酸性多
    糖類と、モルヒネの医薬上許容し得る塩と、安定化剤と
    からなることを特徴とする請求項(1)記載の持続性を
    有するモルヒネ直腸投与製剤。
  8. 【請求項8】前記安定化剤が、防腐剤および/又は抗酸
    化剤であることを特徴とする請求項(1)記載の持続性
    を有するモルヒネ直腸投与製剤。
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