JP2810264B2 - ゲスト高分子がエンドキャップされたα−サイクロデキストリンの包接化合物及びゲスト高分子がエンドキャップされたサイクロデキストリンの包接化合物の製造方法 - Google Patents
ゲスト高分子がエンドキャップされたα−サイクロデキストリンの包接化合物及びゲスト高分子がエンドキャップされたサイクロデキストリンの包接化合物の製造方法Info
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ロデキストリンの包接化合物に関し、特に、ゲスト高分
子がエンドキャップされた(end-capped)α−サイクロ
デキストリンの包接化合物に関する。更に、本発明は、
ゲスト高分子がエンドキャップされたサイクロデキスト
リンの包接化合物の製造方法に関する。
合的分子間相互作用の重要性の認識が高まって来るに従
って、非共有結合的集合体(noncovalent assembly)の
化学、即ち、超分子化学(supramolecular chemistry)
への関心が高くなってきた。超分子化学で扱う超分子錯
体とは、二つ以上の分子が非共有結合的に近づき合って
一つの複合体を形成し、それぞれの分子のそれぞれ異な
った機能を組織化し、それぞれ単独の分子では出せなか
った新しい機能の発現もできるような一種の複合分子と
でも言うべきものである。
に非共有結合的に一体化した回転子(rotor )と軸(ax
is)との二種の実在物からなり且つ該回転子が該軸から
脱離できないように該軸がエンドキャップされた構造の
ロタキサン(rotaxane)型錯体が知られている。最近、
メチル化されたβ−サイクロデキストリンを「回転子」
分子とするロタキサンが合成された(「John S. Manka
and David S. Lawrence, J. Am. Chem. Soc., 1990, 11
2, 2440 」及び「Taka Venkata S. Rao and David S. L
awrence, J. Am. Chem. Soc., 1990, 112, 3614 」)。
ての一個又は二個のメチル化β−サイクロデキストリン
分子が一個の「軸」分子を包接するものである。
したような超分子の特異的機能の発現の可能性に鑑み
て、「回転子」分子としての多数のサイクロデキストリ
ン分子が一個の「軸」分子を包接し且つ該「軸」分子の
両末端が封鎖されているようなロタキサンを調製すれ
ば、一個の「軸」分子当り多数の「回転子」分子が存在
し、しかも両種の分子は互いに脱離できない一種の複合
分子を構成しているという特殊性のために、更に新たな
機能の発現や組織化の展望も開けると考え、上記のよう
なロタキサンを提供せんとして、鋭意研究を行った。
イクロデキストリンがポリエチレングリコールと高収率
で結晶性の包接化合物(包接錯体)を生成することを見
出した(特願平2−32542号)。この包接化合物
は、高分子化合物をゲスト分子とする最初のものであ
る。ポリエチレングリコール分子は、ホスト分子として
の多数のα−サイクロデキストリンが形成するトンネル
中に包接されていると考えられる。
チレングリコールとα−サイクロデキストリンとの包接
化合物のゲスト高分子としてのポリエチレングリコール
鎖の両末端を嵩高い封鎖基で化学修飾することを考え、
鋭意検討の結果、本発明を完成するに到った。
るα−サイクロデキストリン分子にポリエチレングリコ
ール分子が串刺し状に包接されており、且つ前記α−サ
イクロデキストリン分子が前記ポリエチレングリコール
分子から脱離できなくするに充分嵩高い封鎖基で前記ポ
リエチレングリコール分子の両末端が化学修飾されてい
ることを特徴とするゲスト高分子がエンドキャップされ
たα−サイクロデキストリンの包接化合物が提供され
る。
れたα−サイクロデキストリンの包接化合物において
は、前記の嵩高い封鎖基が2,4−ジニトロフェニルア
ミノ基であるのが好ましい。
リンとエーテル結合含有高分子化合物とを包接化反応さ
せ、前記エーテル結合含有高分子化合物の両高分子末端
を前記サイクロデキストリンの分子が前記エーテル結合
含有高分子化合物の分子から脱離できなくするに充分嵩
高い封鎖基で化学修飾することを特徴とするゲスト高分
子がエンドキャップされたサイクロデキストリンの包接
化合物の製造方法も提供される。
れたサイクロデキストリンの包接化合物の製造方法の具
体的実施態様においては、前記サイクロデキストリンが
α−サイクロデキストリンであり、前記エーテル結合含
有高分子化合物がポリ(エチレングリコール)ビスアミ
ンであるのが好ましく、この両高分子末端に、例えば、
2,4−ジニトロフェニルフルオライドを反応させるこ
とにより、前記嵩高い封鎖基としての2,4−ジニトロ
フェニルアミノ基で前記化学修飾を行えば、ゲスト高分
子がエンドキャップされたα−サイクロデキストリンの
包接化合物が調製される。
トリン及びγ−サイクロデキストリンが、ポリプロピレ
ングリコールと上記と同様に包接化合物を作ることを見
出した(特願平2−116861号)。これらの包接化
合物も、上記のα−サイクロデキストリンとポリエチレ
ングリコールの包接化合物の場合と同様に、包接化合物
のゲスト分子であるポリプロピレングリコールの両高分
子末端を嵩高い封鎖基で化学修飾することができる。
リコール」、「ポリロピレングリコール」などと言って
も、これらの両分子末端が変成されている場合も含めた
意味である。
ば、上記の「2,4−ジニトロフェニルアミノ基」の
「2,4−ジニトロフェニル基」の代わりに、下記の
「化1」の化学式で表されるトリチル基、下記の「化
2」の化学式で表されるダンシル基(dansyl group)、
2,4,6−トリニトロフェニル基で置き換えた様な嵩
高い基を挙げることができる。
ポリエチレングリコール〔PEG、例えば、両分子末端
を変成したものとしてポリ(エチレングリコール)ビス
アミン(PEG−BA)〕の包接化合物並びにβ又はγ
−サイクロデキストリン(β−又はγ−CD)とポリプ
ロピレングリコール(PPG)の包接化合物の製造方法
を、更に詳しく説明する。
PEGやPPGのアルキレングリコール単位(ユニッ
ト)として2モル以上となるように両者を水性媒体中で
攪拌・混合して、例えば、常温近辺で10秒〜1時間反
応させる。PEGやPPGを必要以上に多量に使用する
ことはコスト的に高くつき好ましく無い。特にPPGを
用いる場合、これが分散状態であることがあるので、超
音波攪拌するのが好ましい。生成した沈澱を反応混合物
から固液分離する。この固液分離の方法としては、濾
過、遠心分離、限外濾過膜等を使用した膜分離などが一
般的である。
両末端の化学修飾方法として、α−CDとPEG−BA
の包接化合物と2,4−ジニトロフェニルフルオライド
〔2,4−ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)〕と
を反応させる場合の一例を説明する。
溶解した上記の包接化合物の溶液にDNFBを加え、例
えば、常温近辺で10時間〜1昼夜攪拌する。反応混合
物を多量のエーテルのような溶剤中に投入し、生成した
沈澱をエーテルやジメチルホルムアミド等の溶剤で洗浄
し、未反応原料や副生物を除去する。更に、洗浄生成物
をジメチルスルホオキサイドに溶解し、水中に投入、水
洗して更に純度を上げてもよい。もっと精製するするた
めには、例えば、カラムクロマトグラフィー等の方法に
従えばよい。
イドの代わりに、例えば、トリチルブロマイド、ダンシ
ルクロライド、2,4,6−トリニトロフェニルフルオ
ライド等を使用することもできる。
コール等の高分子化合物をゲスト分子とし、サイクロデ
キストリン類をホスト分子として串刺し状に包接化した
後、該高分子化合物の両高分子末端を嵩高い封鎖基で化
学修飾して封鎖すると、かかる嵩高い封鎖基がホスト分
子としてのサイクロデキストリン分子の該高分子化合物
の鎖からの脱離を妨げ、加熱や溶剤との接触があっても
包接化合物がホスト分子とゲスト分子に脱離することが
無くなる。
キャップされたサイクロデキストリンの包接化合物は、
一個の「軸」分子に多数の「回転子」分子が封鎖された
形の最初の合成超分子である。その分子構造が算盤に似
ているところから、本発明者等は、これを「分子算盤
(molecular abacus)」と命名した。
がエンドキャップされたα−サイクロデキストリンの包
接化合物の分子構造をモデル的に表した図である。エチ
レングリコール2単位に対しα−サイクロデキストリン
1単位の割合で包接されている様子が分かるであろう。
ポリエチレングリコール鎖が平面ジグザグとすると、エ
チレングリコール2単位の長さが7.0オングストロー
ムであり、α−サイクロデキストリンの空洞の深さが
7.1オングストロームであることと良く一致する。β
−又はγ−CDとPPGとの包接化合物の場合も同様
で、プロピレングリコール2単位に対しβ−又はγ−C
D1単位である。また、α−サイクロデキストリンの並
び方は、ヘッド−ヘッド(head-head )、テール−テー
ル(tail-tail )と想定される。
が、本発明は実施例により限定されるものでは無い。
α−サイクロデキストリンの包接化合物の調製〕ポリ
(エチレングリコール)ビスアミン(平均分子量:34
50)の15重量%水溶液8mlをα−サイクロデキスト
リンの飽和水溶液100mlに加え、室温で30分間攪拌
した。得られた懸濁物を濾過・水洗し、包接化合物沈澱
を分離後、乾燥した。
に投入し、ポリ(エチレングリコール)ビスアミンに対
し100モル倍の量の2,4−ジニトロフルオロベンゼ
ンを加え、室温で一夜攪拌した。得られた反応混合物
を、多量のエーテル中に投入した。
い、未反応の2,4−ジニトロフルオロベンゼンを除
き、次に、ジメチルホルムアミドで洗い、遊離のα−サ
イクロデキストリン、ポリ(エチレングリコール)ビス
アミン及び副生したジニトロフェニル誘導体を除去し
た。
し、水中に投入した。次に、得られた懸濁物を濾過・水
洗し、未反応のα−サイクロデキストリン、ポリ(エチ
レングリコール)ビスアミン及び副生した水溶性ジニト
ロフェニル誘導体を除去した。
その後乾燥した。収率は、60%であった。最後に、溶
剤としてジメチルスルホオキサイドを用い、この生成物
をセファデックスG−50(Sephadex G−50、ファルマ
シア製)を充填材としたカラムクロマトグラフィーに掛
け、精製した。このように精製された生成物は、遊離の
α−サイクロデキストリン、ポリ(エチレングリコー
ル)ビスアミン及びジニトロフェニル誘導体を含まず、
高純度のものであった。
ストリンやポリ(エチレングリコール)ビスアミン、ビ
ス(2,4−ジニトロフェニル)−ポリエチレングリコ
ールのような各成分、更にはα−サイクロデキストリン
とポリ(エチレングリコール)ビスアミンとの包接化合
物が水溶性であるのに対し、本実施例で得られた生成物
は、水にもジメチルホルムアミドにも不溶性であった。
と0.1N苛性ソーダには、溶解性が有った。苛性ソー
ダの場合は、α−サイクロデキストリンの水酸基(pK
a=12)がイオン化し、水性媒体に可溶化されるのか
も知れない。苛性ソーダに溶解した生成物の溶液を0.
1N塩酸で中和すると、直ちに沈澱が生じた。上述の現
象は、可逆的であった。
1H NMRと13C NMRスペクトルは、α−サイクロデ
キストリン〔α−CD〕とポリ(エチレングリコール)
ビスアミン〔PEG−BA〕の両成分を含む混合物の同
様のスペクトルと合致するものであった。但し、生成包
接化合物の場合、ピークの広がりがいくらか見られた。
NMR(DMSO−d6 )(270 MHz): 8.87
(s, 2H, ortho H ofphenyl), 8.30(d, 2H, meta H of p
henyl), 7.26(d, 2H, meta H of phenyl), 5.63(s, 6Hx
20, O(2)H of α-CD), 5.48(s, 6Hx20, O(3)H of α-C
D), 4.80(s,6Hx20, C(1)H of α-CD), 4.40(s, 6Hx20,
O(6)H of α-CD), 3.64-3.74(m, 24Hx20, C(3)H, C(6)
H, and C(5)H of α-CD), 3.51(s, 4x82, CH2 of PEG),
3.24-3.29(m, 12Hx20, C(2)H and C(4)H of α-CD).
MHz): 8.93(s, 2H, ortho H of phenyl), 8.17
(d, 2H, meta H(1) of phenyl), 7.05(d, 2H, meta H
(2) of phenyl), 4.74(d, 6Hx20, C(1)H of α−CD),
3.59-3.75(m, 24Hxn, C(3)H, C(6)H, and C(5)H of α
−CD), 3.50(s, 4Hx82, CH2 of PEG), 3.19-3.32(m, 12
Hx20, C(2)H and C(4)H of α-CD).
C NMR(DMSO−d6 )(125.65 MH
z): 101.93(C(1) of α-CD), 81.69(C(4) of α-C
D), 73.33(C(3) of α-CD), 72.08(C(2) of α-CD),71.
53(C(5) of α-CD), 69.38(PEG), 59.74(C(6) of α-C
D).
C: 43.77(44.51)、 H:6.82(6.73)、 N: 0.38(0.48).
ジメチルスルホオキサイド(DMSO)を用いたセファ
デックスG−50(排除限界分子量:30,000)に
よる生成物のゲルクロマトグラフィー(カラム:1.7
×70cm)の結果、セファデックス充填層の空隙率に
対応する分画番号(fraction number )の近くに単一の
ピークが現れた。これに対して、生成物(3mg)、α−
サイクロデキストリン(30mg)及びビス(2,4−ジ
ニトロフェニルアミノ)−ポリエチレングリコール(2
0mg)の混合物の同様のゲルクロマトグラフィーの結
果、三つのピークが現れた。
線)を示す図である。この図の横軸は分画番号(1分
画:1.5ml)で、縦軸は紫外線吸収測定の吸光度と
旋光性測定の旋光度を表す。この図で、実線の曲線が紫
外線吸収測定(波長:316.5 nm)で検出されたもので、
点線の曲線が旋光性測定で検出されたものである。最初
のピークが生成物である包接化合物のもので、紫外線吸
収及び旋光性測定の両方で検出された。紫外線吸収測定
のみで検出された第二のピークは、ビス(2,4−ジニ
トロフェニルアミノ)−ポリエチレングリコールのもの
である。旋光性測定のみで検出された第三のピークは、
α−サイクロデキストリンのものである。
接化合物の平均分子量は23,200で、この値は一ポ
リマー鎖に捕捉されたα−サイクロデキストリン分子の
数が約20であることを示唆する。一方、紫外線吸収測
定で調べた包接化合物の平均分子量は26,400で、
この値は一分子中に、23個のα−サイクロデキストリ
ン単位が含まれていることを示唆する。
2,4−ジニトロフェニル基等の嵩高い置換基を両分子
末端に有するポリエチレングリコールは、α−サイクロ
デキストリンと包接化合物を造ら無いことを考え合わせ
ると、本実施例の包接化合物の場合、一ポリエチレング
リコール鎖に分子算盤の玉としてのα−サイクロデキス
トリン単位が平均20〜23個捕捉されているという結
論になる。
ーンによると、本包接化合物は結晶性で、吉草酸やオク
タノールとα−サイクロデキストリンとの包接化合物の
粉末X線回折パターンと類似しているが、プロピオン酸
やプロパノールのようなもっと小さな分子とα−サイク
ロデキストリンとの包接化合物の粉末X線回折パターン
とは異なっている。これらの結果は、本実施例の包接化
合物がチャンネル型構造のものと同形であることを示唆
する。
されたサイクロデキストリンの包接化合物は、一個のゲ
スト分子たる「軸」分子に多数のホスト分子たる「回転
子」分子が捕捉され、ゲスト高分子の両末端の嵩高い封
鎖基のためにホスト分子が脱離することが無い。従っ
て、通常の包接化合物が、加熱や溶剤との接触により簡
単にゲスト分子とホスト分子に脱離するのに対し、本発
明の包接化合物は解離を起こさない。
グを通して、ゲスト高分子の熱安定性、配向性、結晶
性、溶解性等の諸性質の改質が可能となる。また、サイ
クロデキストリンの有する水酸基を利用して、包接化合
物の分子内架橋(例えば、隣接するサイクロデキストリ
ン単位間の架橋)や分子間架橋が可能となり、特異な性
質を持たせることができると共に、サイクロデキストリ
ンが配列した新規なポリマーの開発等、様々な発展性が
期待される。
ャップされたα−サイクロデキストリンの包接化合物の
分子構造をモデル的に表した図である。
ン及びビス(2,4−ジニトロフェニルアミノ)−ポリ
エチレングリコールの混合物のゲルクロマトグラフィー
により得られた溶出曲線を表す図である。
Claims (4)
- 【請求項1】 包接格子を構成するα−サイクロデキス
トリン分子にポリエチレングリコール分子が串刺し状に
包接されており、且つ前記α−サイクロデキストリン分
子が前記ポリエチレングリコール分子から脱離できなく
するに充分嵩高い封鎖基で前記ポリエチレングリコール
分子の両末端が化学修飾されていることを特徴とするゲ
スト高分子がエンドキャップされたα−サイクロデキス
トリンの包接化合物。 - 【請求項2】 前記の嵩高い封鎖基が、2,4−ジニト
ロフェニルアミノ基であることを特徴とする請求項1に
記載のゲスト高分子がエンドキャップされたα−サイク
ロデキストリンの包接化合物。 - 【請求項3】 サイクロデキストリンとエーテル結合含
有高分子化合物とを包接化反応させ、前記エーテル結合
含有高分子化合物の両分子末端を前記サイクロデキスト
リンの分子が前記エーテル結合含有高分子化合物の分子
から脱離できなくするに充分嵩高い封鎖基で化学修飾す
ることを特徴とするゲスト高分子がエンドキャップされ
たサイクロデキストリンの包接化合物の製造方法。 - 【請求項4】 前記サイクロデキストリンがα−サイク
ロデキストリンであり、前記エーテル結合含有高分子化
合物がポリ(エチレングリコール)ビスアミンであり、
この両高分子末端に2,4−ジニトロフェニルフルオラ
イドを反応させることにより、前記嵩高い封鎖基として
の2,4−ジニトロフェニルアミノ基で前記化学修飾を
行うことを特徴とする請求項1に記載のゲスト高分子が
エンドキャップされたサイクロデキストリンの包接化合
物の製造方法。
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