JP5339112B2 - アシル化ロタキサンおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、シクロデキストリンのアシル誘導体を輪成分としたアシル化ロタキサンおよびその製造方法に関するものである。
ロタキサンの一種として、シクロデキストリンの開口部に直鎖状分子が貫通し、直鎖状分子の両末端を封鎖したロタキサンが知られている。このロタキサンは、有機溶媒への溶解性が低く、そのために用途が限定されているのが現状である。
特許文献1には、ロタキサンの良溶媒として、塩化リチウム等を含むジメチルアセトアミド等の含窒素有機溶媒、ジアルキルイミダゾリウム等を含むイオン性液体などが挙げられている。特許文献1では、これらの良溶媒を用いてロタキサンを修飾することにより、種々の可溶化ロタキサンを得ている。
特開2007−63517号公報
従来の種々の方法でロタキサンの輪成分であるシクロデキストリンの水酸基を修飾し、可溶化を行おうとしても、ロタキサンの溶解性の低さから反応が進行し難く、その結果、修飾率の低いロタキサンしか得ることができなかった。また、特許文献1に記載の特殊な溶液を用いれば、従来の方法よりは修飾率が向上するが、未だ十分ではない。
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、輪成分であるシクロデキストリンの水酸基が高い修飾率で修飾されたロタキサンおよび当該ロタキサンの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、第1に本発明は、シクロデキストリンのアシル誘導体を輪成分とするアシル化ロタキサンであって、前記シクロデキストリンのアシル誘導体は、シクロデキストリンの水酸基が80%以上の修飾率でアシル化されたものであることを特徴とするアシル化ロタキサンを提供する(請求項1)。
上記発明(請求項1)において、前記シクロデキストリンのアシル誘導体は、シクロデキストリンの水酸基が全てアシル化されたものであってもよい(請求項2)。
上記発明(請求項1)において、前記シクロデキストリンのアシル誘導体は、シクロデキストリンの水酸基が80%以上の修飾率でアセチル化されたものであってもよい(請求項3)。
上記発明(請求項1)において、前記シクロデキストリンのアシル誘導体は、シクロデキストリンの水酸基が全てアセチル化されたものであってもよい(請求項4)。
第2に本発明は、シクロデキストリンの開口部に直鎖状分子が貫通し、前記直鎖状分子の両末端にブロック基を有してなるロタキサンと、溶媒として使用するビニルエステル類とを、酸触媒下で反応させて、前記シクロデキストリンの一部又は全部の水酸基を、前記ビニルエステル類のアシル基でアシル化することを特徴とするアシル化ロタキサンの製造方法を提供する(請求項5)。
上記発明(請求項5)によれば、輪成分であるシクロデキストリンの水酸基が高い修飾率、具体的には80%以上の修飾率でアシル化されたアシル化ロタキサンを製造することができる。
本発明によれば、輪成分であるシクロデキストリンの水酸基が高い修飾率でアシル化されたアシル化ロタキサンが得られる。このアシル化ロタキサンは、有機溶媒に対する溶解性が高く、多様な用途に使用することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態においては、シクロデキストリンの水酸基が80%以上の修飾率でアシル化されたシクロデキストリンアシル誘導体を輪成分とするアシル化ロタキサンを製造する。
本実施形態では、第1段階として、シクロデキストリン分子の開口部に直鎖状分子が貫通し、その直鎖状分子の両末端にブロック基を有してなるロタキサンを製造する。このロタキサンの製造は、常法によって行うことができる。通常は、擬ロタキサンを製造し、次いで、得られた擬ロタキサンからロタキサンを製造する。
本実施形態で製造する擬ロタキサンは、輪成分であるシクロデキストリン分子の開口部に、末端に官能基を有する直鎖状分子(軸分子)が貫通してなるものである。本実施形態では、最初に、末端に官能基を有する直鎖状分子を用意する。
なお、本明細書において、「直鎖状分子」の「直鎖」は、実質的に「直鎖」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子上で環状分子(輪成分)が移動可能であれば、直鎖状分子は分岐鎖を有していてもよい。
直鎖状分子としては、例えば、末端に官能基を有する炭素数8以上の直鎖状のアルカン、例えば、ジアミノオクタン、ジアミノデカン、ジアミノドデカン、ジアミノペンタデカン、ジアミノオクタデカン、ジアミノエイコサン;ポリテトラヒドロフラン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリジメチルシロキサン等が挙げられるが、シクロデキストリンの修飾率を考慮すると、末端に官能基を有する炭素数8〜20、特に炭素数10〜15の直鎖状のアルカンが好ましい。
直鎖状分子の数平均分子量(Mn)は、200〜1,000,000であることが好ましく、特に1,000〜100,000であることが好ましい。数平均分子量が200未満であると、シクロデキストリンを貫通し難く、また、数平均分子量が1,000,000を超えると、シクロデキストリンの修飾率が低下するおそれがある。
上記直鎖状分子の末端官能基としては、後述するブロック基と反応して直鎖状分子の末端を封鎖できるものであれば特に限定されないが、好ましくは、ヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基、ビニル基およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用する。
直鎖状分子が末端に上記官能基を有する場合には、当該官能基を使用すればよいが、直鎖状分子が末端に上記官能基を有しない場合、または有する場合であっても必要に応じて、直鎖状分子の末端に上記官能基を付加する。直鎖状分子の末端に対する上記官能基の付加は、従来公知の方法、例えば、Nature, 356, 325-327 (1992)に記載の方法などによって行うことができる。
上記のように末端に官能基を有する直鎖状分子を用意し、その直鎖状分子をシクロデキストリンで包接し(シクロデキストリンを直鎖状分子で串刺しにし)、擬ロタキサンを得る。
シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンまたはγ−シクロデキストリンのいずれであってもよいが、特にα−シクロデキストリンを使用することが好ましい。α−シクロデキストリンは環が最も小さいため、擬ロタキサンの直鎖状分子末端をブロック基により封鎖することが容易だからである。
擬ロタキサンの製造は、末端に官能基を有する直鎖状分子およびシクロデキストリンを溶媒中、通常は水中に存在させた状態にして(例えば、シクロデキストリンの水溶液に上記直鎖状分子を添加して)、その溶液を撹拌することによって行うことができる。加えて、撹拌後にその溶液を静置することが収率を向上させることができるので好ましい。好ましい静置期間は、1〜7日程度である。
撹拌方法については特に制限はなく、常温または適当に制御された温度で、機械的撹拌処理、超音波処理などの方法で撹拌することができる。特に、超音波処理で撹拌することが貫通数を制御しやすいので好ましい。撹拌時間は、数分〜1時間の条件で行うことが好ましい。超音波の照射条件については特に制限はないが、周波数20〜40kHzで行うことが好ましい。
以上のようにして擬ロタキサンを製造したら、その擬ロタキサンの直鎖状分子の末端官能基と反応し得るブロック基を当該末端官能基と反応させ、直鎖状分子の末端にブロック基を付加することにより、ロタキサンを得る。
ブロック基としては、輪成分であるシクロデキストリンが直鎖状分子により串刺し状になった形態を保持し得る基であれば特に限定されないが、好ましくは、ジアルキルフェニル基類、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、アントラセン類等が適宜選択される。具体的には、ジメチルフェニルイソシアネート、トリチルフェニルイソシアネート等がブロック基用の反応試薬として好適に用いられる。
直鎖状分子に対するブロック基の反応は、従来公知の方法、例えば、Nature, 356, 325-327 (1992)に記載の方法によって行うことができる。
以上のようにしてロタキサンを製造したら、第2段階として、得られたロタキサンと、ビニルエステル類とを、酸触媒下で反応させて、シクロデキストリンの水酸基を、ビニルエステル類のアシル基でアシル化する。このとき、ビニルエステル類は溶媒として使用することが好ましい。具体的には、ビニルエステル類中に、ロタキサンおよび酸触媒を加えて反応させることが好ましい。
本発明において、ビニルエステル類とは、カルボン酸と二重結合を有する化合物とが二重結合を構成する炭素原子を介してエステル結合した構造を有する化合物群をいい、当該二重結合には任意の官能基を有することができる。かかるビニルエステル類としては、例えば、酢酸イソプロペニル、酢酸ビニル、安息香酸イソプロペニル、2−ベンゾキシペンタフルオロプロペン等が挙げられ、中でも、反応性が良好で、得られたアシル化ロタキサンの精製が容易な観点から、酢酸イソプロペニルおよび安息香酸イソプロペニルが好ましい。なお、ビニルエステル類として酢酸エステルを使用した場合、シクロデキストリンの水酸基はアセチル化されることとなる。
ビニルエステル類の使用量は特に限定されず、溶媒として使用できる範囲で適宜選択することができる。
酸触媒としては、水酸基のアシル化で一般的に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム、硫酸、塩酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸等を使用することができる。ただし、固体で取り扱いが容易であり、反応性の高さに比して副反応が少ないことから、p−トルエンスルホン酸がより好ましい。
酸触媒の使用量は、触媒の種類によっても異なるが、一般的には、シクロデキストリン100質量部に対して1〜20質量部であることが好ましく、特に2〜10質量部であることが好ましい。
ロタキサンとビニルエステル類との反応は、加熱下において効率良く進行するため、通常は、ビニルエステル類とロタキサンと酸触媒とを混合した後、加熱する。加熱温度は、40〜150℃であることが好ましく、特に60〜90℃であることが好ましい。
反応時間は、3〜15時間であることが好ましく、特に、シクロデキストリンの水酸基を90%以上アシル化する場合には、5〜12時間であることが好ましく、シクロデキストリンの水酸基を100%アシル化する場合には、7〜12時間であることが好ましい。
また、上記の反応工程を2回以上行うことにより、シクロデキストリンの水酸基を90%以上、場合によっては100%アシル化することができる。例えば、上記の反応工程を2回行う場合には、反応工程一回当たりの反応時間は2〜6時間が好ましく、3〜5時間がさらに好ましい。2回目以降の反応を行う場合、前回の反応で得られたアシル化ロタキサンと、新たに用意したビニルエステル類および酸触媒とを混合して反応させてもよいし、前回の反応で得られたアシル化ロタキサンを、前回の反応で使用したビニルエステル類および酸触媒が残っている反応容器に投入して反応させてもよい。
以上の方法により、シクロデキストリンの水酸基が80%以上、場合によっては100%アシル化されたシクロデキストリンアシル誘導体を輪成分とするアシル化ロタキサンを得ることができる。特に、ビニルエステル類として酢酸エステルを使用した場合には、シクロデキストリンの水酸基が80%以上、場合によっては100%アセチル化されたシクロデキストリンアセチル化誘導体を輪成分とするアセチル化ロタキサンを得ることができる。このようにシクロデキストリンの水酸基の修飾率の高いアシル化ロタキサンは、従来にはない新規なロタキサンである。なお、精製は常法によって行えばよい。
得られたアシル化ロタキサンは、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、ハロゲン化アルキル類等の有機溶媒に対する溶解性が高い。具体的には、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール、エタノール、イソプロパノール、クロロホルム、塩化メチレン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド(DMF)等に高い溶解性を示す。一方、通常のロタキサンは、ジメチルスルホキシド(DMSO)または水酸化ナトリウム溶液にしか溶解しないため、本実施形態で得られるアシル化ロタキサンは、多様な用途に使用することができる。
以上説明したとおり、本実施形態では、第1段階としてロタキサンを製造し、第2段階としてロタキサンのシクロデキストリンの水酸基をアシル化することで、その修飾率の高いロタキサンを得ることができる。
アシル化ロタキサンを得るために、シクロデキストリンの水酸基をあらかじめアシル化し、その後、アシル化シクロデキストリンを直鎖状分子で串刺しにする方法も考えられる。しかし、この方法では、アシル化シクロデキストリンが水に溶解せず、また、アシル基がシクロデキストリンの開口部を塞いでしまうため、アシル化シクロデキストリンを直鎖状分子で串刺しにすることが困難であり、ロタキサンが得られない。
一方、シクロデキストリンはビニルエステル類に溶解するが、ロタキサンはビニルエステル類に溶解せず、また、直鎖状分子を包接した複数のシクロデキストリンは、水素結合により互いに近接しており、シクロデキストリンの水酸基をアシル化することは困難なように思われるため、本実施形態に係る方法は通常は選択されないが、実際に行うと、シクロデキストリンの水酸基が高い修飾率でアシル化された。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
α−シクロデキストリン(ナカライテスク社製)の飽和水溶液5mlに、1,10−ジアミノデカン65mgを加え、超音波処理(周波数:25kHz)を60分間行った後、室温にて1日放置した。その後、氷浴中で攪拌しながら、3,5−ジメチルフェニルイソシアネート(Aldrich社製)550mgを滴下し、そのまま1時間攪拌した。次いで、反応溶液をテトラヒドロフラン中に注ぎ、析出した固体を回収し、水で洗浄した後、乾燥させて白色固体のロタキサン900mgを得た。
得られたロタキサン900mgおよび触媒としてのp−トルエンスルホン酸20mgを、溶媒としての酢酸イソプロペニル10mlに加え、70℃で4時間反応させた。反応溶液を減圧留去し、得られた固体を10質量%炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。次いで、分取ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により分子量3000付近のピークを回収し、白色固体のアセチル化ロタキサン400mgを得た。得られたアセチル化ロタキサンのH−NMR(日本電子社製,核磁気共鳴装置JNM−LA400/WB使用)およびMALDI−TOF 質量分析(SHIMAZU社製,Mass AXIMA−CFR−S使用,測定時マトリックスとして2,5−ジヒドロキン安息香酸を使用)による分析結果をそれぞれ図1および図2に示す。
H−NMR測定の結果、シクロデキストリン由来の3〜6ppmのピークと、ブロック基である3,5−ジメチルフェニル基由来の6.7ppmおよび7.0ppm付近のピークとの積分比より、得られたアシル化ロタキサンはシクロデキストリンが2個入ったものであることが分かった。また、ブロック基である3,5−ジメチルフェニル基の芳香環由来の6.7ppm付近のピークと、アセチル化されたシクロデキストリンのアセチル基由来の2ppm付近の3本のピークの積分比から修飾率は92%であることが分かった。
また、MALDI−TOF 質量分析の結果、輪成分としてシクロデキストリン2分子が含まれ、かつ、その全ての水酸基がアセチル化されたアシル化ロタキサン(以下「[3]ロタキサン」という。)に対応する分子イオンピーク(3947)を確認することができた。
〔実施例2〕
実施例1で得られたアシル化ロタキサンを、実施例1で減圧留去した反応溶液に加え、再度70℃で4時間反応させた。そして、反応溶液を減圧留去し、得られた固体を10質量%炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。次いで、分取ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により分子量3000付近のピークを回収し、白色固体のアセチル化ロタキサン350mgを得た。得られたアセチル化ロタキサンのH−NMR(日本電子社製,核磁気共鳴装置JNM−LA400/WB使用)およびMALDI−TOF 質量分析(SHIMAZU社製,Mass AXIMA−CFR−S使用,測定時マトリックスとして2,5−ジヒドロキン安息香酸を使用)による分析結果をそれぞれ図3および図4に示す。
H−NMR測定の結果、ブロック基である3,5−ジメチルフェニル基の芳香環由来の6.7ppm付近のピークと、アセチル化されたシクロデキストリンのアセチル基由来の2ppm付近の3本のピークとの積分比から、修飾率は100%であることが分かった。
また、MALDI−TOF 質量分析の結果、[3]ロタキサンに対応する分子イオンピーク(3947)の単一のピークを確認することができた。この結果からも、アシル化の修飾率が100%であることが明確となった。
〔比較例1〕
α−シクロデキストリン(ナカライテスク社製)の飽和水溶液5mlに1,10−ジアミノデカン65mgを加え、超音波を60分照射した後、室温にて1日放置した。次いで、氷浴中で撹拌しながら3,5−ジメチルフェニルイソシアナート(Aldrich社製)550mgを滴下し、そのまま1時間撹拌を行った。その後、テトラヒドロフラン中に反応溶液を注ぎ、析出した固体を回収し、水で洗浄した後、乾燥させ、白色固体のロタキサン900mgを得た。
ジメチルアセトアミド40mlに塩化リチウム3.5gを溶解させた溶液に、得られた白色固体900mgを加え、60℃で2時間撹拌した。次いで、溶液を室温まで冷却し、ピリジン2.3g、無水酢酸8.5gおよびジメチルアミノピリジン90mgを加え、室温で24時間撹拌を行った。その後、反応溶液に水およびクロロホルムを加え、分液操作を行い、クロロホルム層を回収した。そして、減圧乾燥した後、ヘキサンで洗浄し、白色固体のアセチル化ロタキサン350mgを得た。得られたアセチル化ロタキサンのH−NMR(日本電子社製,核磁気共鳴装置JNM−LA400/WB使用)およびMALDI−TOF 質量分析(SHIMAZU社製,Mass AXIMA−CFR−S使用,測定時マトリックスとして2,5−ジヒドロキン安息香酸を使用)による分析結果をそれぞれ図5および図6に示す。
H−NMR測定の結果、シクロデキストリン由来の3〜6ppmのピークと、ブロック基である3,5−ジメチルフェニル基由来の6.7ppmおよび7.0ppm付近のピークとの積分比より、得られたアシル化ロタキサンはシクロデキストリンが2個入ったものであることが分かった。また、ブロック基である3,5−ジメチルフェニル基の芳香環由来の6.7ppm付近のピークと、アセチル化されたシクロデキストリンのアセチル基由来の2ppm付近の3本のピークの積分比から修飾率は63%であることが分かった。
また、MALDI−TOF 質量分析の結果、[3]ロタキサンに対応する分子イオンピーク(3947)を確認することはできなかった。
〔試験例〕(溶解性試験)
表1に示す各種溶媒(テトラヒドロフラン(THF),メタノール,エタノール,イソプロパノール,クロロホルム(CHCl),塩化メチレン(CHCl),酢酸エチル,トルエン,ジメチルホルムアミド(DMF))1gに対して、実施例1,2または比較例1で得たアシル化ロタキサン50mgを加え、室温にて5分間マグネチックスターラーにより撹拌し、アシル化ロタキサンの溶解性を評価した。溶解性は目視にて確認を行い、以下の基準で評価を行った。
○:溶解 ×:不溶分が残存
結果を表1に示す。
Figure 0005339112
実施例1および実施例2より、本発明の製造方法によれば、これまで不可能であったシクロデキストリンの全ての水酸基がアシル化されたアシル化ロタキサンを得ることができ、その修飾率についても80%以上、場合によっては100%のアシル化ロタキサンを得ることができることが明確となった。
また、表1より、実施例1および実施例2により得られた修飾率が80%以上のアシル化ロタキサンは、比較例1の従来のアシル化ロタキサンに比べて、各種溶媒への溶解性が優れていることが明確となった。
本発明に係るアシル化ロタキサンは、従来のロタキサンと異なり、有機溶媒に対する溶解性が高いため、多様な用途に使用することができる。例えば、ポリマーマトリックスに対する相溶性が良好であるため、ポリマー組成物の一成分として使用することができる。また、例えば、エレクトロニクス分野におけるスイッチング素子センサーとして利用することもできる。
実施例1で製造したロタキサンのH−NMRチャートである。 実施例1で製造したロタキサンのMALDI−TOF 質量分析チャートである。 実施例2で製造したロタキサンのH−NMRチャートである。 実施例2で製造したロタキサンのMALDI−TOF 質量分析チャートである。 比較例1で製造したロタキサンのH−NMRチャートである。 比較例1で製造したロタキサンのMALDI−TOF 質量分析チャートである。

Claims (5)

  1. シクロデキストリンのアシル誘導体を輪成分とするアシル化ロタキサンであって、
    前記シクロデキストリンのアシル誘導体は、シクロデキストリンの水酸基が80%以上の修飾率でアシル化されたものであることを特徴とするアシル化ロタキサン。
  2. 前記シクロデキストリンのアシル誘導体は、シクロデキストリンの水酸基が全てアシル化されたものであることを特徴とする請求項1に記載のアシル化ロタキサン。
  3. 前記シクロデキストリンのアシル誘導体は、シクロデキストリンの水酸基が80%以上の修飾率でアセチル化されたものであることを特徴とする請求項1に記載のアシル化ロタキサン。
  4. 前記シクロデキストリンのアシル誘導体は、シクロデキストリンの水酸基が全てアセチル化されたものであることを特徴とする請求項1に記載のアシル化ロタキサン。
  5. シクロデキストリンの開口部に直鎖状分子が貫通し、前記直鎖状分子の両末端にブロック基を有してなるロタキサンと、溶媒として使用するビニルエステル類とを、酸触媒下で反応させて、前記シクロデキストリンの一部又は全部の水酸基を、前記ビニルエステル類のアシル基でアシル化することを特徴とするアシル化ロタキサンの製造方法。
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