JP2805088B2 - スピーカー用振動板及びその製造方法 - Google Patents

スピーカー用振動板及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はスピーカー用振動板に関し、更に詳しくは音
楽ソースを忠実に再生することのできるスピーカー用振
動板に関するものである。
[従来の技術] 所定の電気エネルギーを音響エネルギーに変換するス
ピーカーは、音楽鑑賞用ばかりでなく、通信放送の分野
でも広く利用されていることは周知であるが、特に音楽
鑑賞用としてソースを忠実に再生することが求められる
ようなスピーカー用の振動板については、所定の物理的
特性が要求されることが分かっている。
即ち、このようなスピーカーのための振動板として
は、軽量で、ヤング率が高く、しかも伝播速度が高いと
いう物理的特性が要求されるのである [発明が解決しようとする問題点] 然しながら、従来より使用されているスピーカー用振
動板には、例えば一般にコーン紙と呼ばれる紙系のもの
は軽量であるがヤング率が高くなく、又、金属系の振動
板はヤング率等は好ましいものの重畳がかさんでしまう
というように、上記物理的特性の面で難点のあるものが
多いのである。
一方、各種の素材を組み合わせることにより、それぞ
れの長所を利用するようにした、所謂複合材料による振
動板も開発されているが、このものには、製造工程が複
雑になったりすることから、コスト上の難点がある。
本発明は、上述した従来技術の難点を解消して、軽量
で、ヤング率が高く、しかも伝播速度の高いスピーカー
用振動板を提供するために案出されたものである。
又、本発明の別の目的は、上記物理的特性を具え、し
かも安価に作成提供することのできるスピーカー用振動
板を提供することにある。
[問題点を解決するための手段] 上記目的を達成するために本発明が採用したスピーカ
ー用振動板の構成は、ポリカルボジイミド樹脂を焼成炭
化して得られる炭素薄板により形成されることを特徴と
するものであり、又、その製造方法は、ポリカルボジイ
ミド樹脂をスピーカー用振動板の形状に成形した後、焼
成炭化することを特徴とするか、或は、ポリカルボジイ
ミド樹脂を焼成炭化した後、スピーカー用振動板の形状
に成形することを特徴とするものである。
上記構成において、炭素薄板としては、ポリカルボジ
イミド樹脂を、例えば真空中又は非酸化性雰囲気下、60
0−3,000℃で焼成炭化して得られるものを使用すること
ができる。
又、上記所望の形状には、通常のコーン型のものばか
りでなく、例えばリボン状のものも含まれる。
以下本発明について更に詳細に説明する。
本発明において使用されるポリカルボジイミド樹脂そ
れ自体は、既知のもの或は既知のものと同様にして製造
することができるものであって[米国特許第2,941,966
号明細書;特公昭47−33297号公報;J.Org.Chem.,28,206
9−2075(1963);Chemical Review,1981,Vol.81,No.4,6
19−621等参照]、例えば、有機ジイソシアネートの脱
二酸化炭素を伴う縮合反応により容易に製造することが
できる。このポリカルボジイミド樹脂の製造に使用され
る有機ジイソシアネートは、脂肪系、脂環式系、芳香族
系、芳香−脂肪族系いずれのタイプのものであってもよ
く、これらは単独で用いても、又、2種以上組合せて用
いて共重合体としてもよい。
而して、本発明の方法において使用されるポリカルボ
ジイミド樹脂には式 −R−N=C=N− (I) (式中、Rは有機ジイソシアネート残基を表わす) で示される少なくとも1種の繰り返し単位からなる単独
共重合体又は共重合体が包含される。
上記式(I)における有機ジイソシアネート残基Rと
しては、数あるものの中でもとりわけ芳香族ジイソシア
ネート残基が好適である[ここで有機ジイソシアネート
残基とは、有機ジイソシアネート分子から2つのイソシ
アネート基(NCO)を除いた残りの部分をいう]。この
ようなポリカルボジイミド樹脂の具体例としては次のも
のを挙げることができる。
上記各式において、重合度nは10−10,000の範囲内、
好ましくは50−5,000の範囲である。
尚、前記ポリカルボジイミド樹脂の端末は、モノイソ
シアネート等を用いて封止されていてもよく、以上説明
したポリカルボジイミド樹脂は、溶液のままの状態で、
或は、溶液から沈殿させた粉末として得ることができ
る。
次に、このようにして得たポリカルボジイミド樹脂を
所望の形状に成形する。成形するには、ポリカルボジイ
ミド樹脂を重合終了後の溶液のまま、或は一旦粉末とし
て得てから、溶媒に溶解した溶液とし、この溶液を、例
えば平滑なガラス板上等にキャストした後、溶媒を除去
する方法等を採ればよい。この溶媒としては、テトラク
ロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラヒドロフラ
ン、ジオキサン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼ
ン、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリド
ン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフオキシド等
を使用することができる。
又、粉末の場合は、圧縮成形、ロール成形、射出成
形、トランスアー成形等によってもよい。これらにより
成形体として厚み0.1mm−3mm程度のものを容易に得るこ
とができる。
そして、この成形体を熱処理して焼成炭化するのであ
るが、焼成は例えば、真空中又は不活性気体の非酸化性
雰囲気下で室温付近−200℃付近から、600−3,000℃、
好ましくは700−2,000℃まで昇温して行なう。昇温は徐
々に行なうことが好ましく、更に好ましくは30℃/分以
下で行なう。
600℃以上で熱処理すれば、ほぼ目的の最終物性のも
のが得られるが、好ましくは700℃−2,000℃において熱
処理することにより、より良好な物性のものが得られる
のである。
又、上記熱処理条件において、成形体は最終温度に達
した時点でほぼ最終物性を得るに至るので、最終温度に
達した後更にその温度で焼成する必要はない。
以下、本発明を実施例により説明する。
[実施例] 実施例1 2,4−トリレンジイソシアネート/2,6−トリレンジイ
ソシアネート(80/20)の混合物(以下、TDIという)54
gを、テトラクロロエチレン500ml中で、カルボジイミド
化触媒(1−フエニル−3−メチルホスフオレンオキサ
イド)0.12gと共に120℃で4時間反応させ、ポリカルボ
ジイミド溶液を得た。この溶液から乾式法にて厚さ150
μmのポリカルボジイミド薄板を作成した。作成した薄
板を不活性気流中、室温から昇温速度10℃/分で1,000
℃まで焼成炭化し、厚さ120μmの炭素薄板を得た。得
られた炭素薄板の物性を以下の表に示す。
実施例2 パラフエニレンジイソシアネート50gを、テトラヒド
ロフラン880mlで、カルボジイミド化触媒(1−フエニ
ル−3−メチルホスフオレンオキサイド)0.13gと共
に、68℃で5時間反応させた。この溶液を室温に冷却す
ることにより、ポリカルボジイミドが沈殿した。この沈
殿物を濾過し、100℃で2時間乾燥し、ポリカルボジイ
ミド粉末を得た。この粉末を、プレス温度180℃、プレ
ス圧80kg/cm2でプレス成形し、厚さ150μmのポリカル
ボジイミド薄板を作成した。作成した薄板を実施例1と
同様の方法で炭化し、120μmの炭素薄板を得た。得ら
れた炭素薄板の物性を以下の表に示す。
実施例3 メチレンジフェニルジイソシアネート(以下、MDIと
いう)50gを、テトラクロロエチレン820ml中で、カルボ
ジイミド化触媒(1−フエニル−3−メチルホスフオレ
ンオキサイド)0.13gと共に、120℃で6時間反応させ、
実施例2と同様な方法で、ポリカルボジイミド粉末を得
た。この粉末から実施例2と同様の方法で120μmの炭
素薄板を得た。得られた炭素薄板の物性を以下の表に示
す。
実施例4 MDI50gを、テトラクロロエチレン820ml中で、カルボ
ジイミド化触媒(1−フエニル−3−メチルホスフオレ
ンオキサイド)0.13gと共に、120℃で6時間反応させ
た。この溶液を室温に冷却することにより、ポリカルボ
ジイミドが沈殿した。この沈殿物を濾過し、100℃で2
時間乾燥し、ポリカルボジイミド粉末を得た。
実施例2と同様の方法で、厚さ120μmの炭素薄板を
得た。得られた炭素薄板の物性を、以下の表に示す。
実施例5 実施例1で作成したポリカルボジイミドの薄板を、不
活性気体(窒素)流中、室温から、昇温速度(H.R)10
℃/分で800℃まで加熱して焼成炭化し、厚さ120μmの
炭素薄板を得た。得られた炭素薄板の物性を、以下の表
に示す。
比較例1 ポリプロピレンフィルム150μmについて測定した物
性を比較例1として、同様に以下の表に示す。
比較例2 実施例1で作成したポリカルボジイミド薄板の物性を
比較例2として、同様に以下の表に示す。
比較例3 実施例1で作成したポリカルボジイミドの薄板を、不
活性気体(窒素)流中、室温から、昇温速度(H.R)10
℃/分で500℃まで加熱して焼成炭化し、厚さ130μmの
炭素薄板を得た。得られた炭素薄板の物性を、比較例3
として、同様に以下の表に示す。
尚、上記以下の表中のヤング率(E)はdyne/cm2を、
又、密度(ρ)はg/cm3をそれぞれ単位としており、ヤ
ング率(E)/密度(ρ)は、伝播速度に比例する係数
を示している。
[本発明の効果] 以上説明したように、本発明によるスピーカー用振動
板は、金属に比較して密度(ρ)が小さく、ヤング率
(E)と密度(ρ)の比E/ρが高いため、高温域まで再
生できる。更に耐熱性が高く、寸法安定性が良好であ
る。
又、以上の理由により、本発明スピーカー用振動板
は、車載用スピーカーや、コンパクトディスクプレーヤ
ー等に使用される高音質スピーカーとしても最適であ
る。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリカルボジイミド樹脂を焼成炭化して得
    られる炭素薄板により形成されることを特徴とするスピ
    ーカー用振動板。
  2. 【請求項2】炭素薄板は、ポリカルボジイミド樹脂を真
    空中又は非酸化性雰囲気下、600−3,000℃で焼成炭化し
    て得られるものである請求項1に記載のスピーカー用振
    動板。
  3. 【請求項3】ポリカルボジイミド樹脂を所望の形状に成
    形した後、焼成炭化することを特徴とするスピーカー用
    振動板の製造方法。
  4. 【請求項4】ポリカルボジイミド樹脂を焼成炭化した
    後、所望の形状に成形することを特徴とするスピーカー
    用振動板の製造方法。
  5. 【請求項5】ポリカルボジイミド樹脂或いはその成形物
    の焼成炭化は、真空中又は非酸化性雰囲気下、600−3,0
    00℃で行なう請求項4に記載のスピーカー用振動板の製
    造方法。
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