JP2804479B2 - 回転電機の集電装置 - Google Patents

回転電機の集電装置

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JP2804479B2 JP63129353A JP12935388A JP2804479B2 JP 2804479 B2 JP2804479 B2 JP 2804479B2 JP 63129353 A JP63129353 A JP 63129353A JP 12935388 A JP12935388 A JP 12935388A JP 2804479 B2 JP2804479 B2 JP 2804479B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は回転電機の集電装置に係わり、更に詳細に
は、フラシと摺動接触して電流の授受を行なう集電環
(スリツプリングあるいは整流子)に関する。
〔従来の技術〕
回転電機の集電装置は、回転界磁型交流発電機の界磁
電流の供給、回転電機子型直流電動機における電機子電
流の供給、電車における駆動電力の供給など、静止体か
ら回転あるいは直線運動体内部に電流や電力を供給する
ことは周知の通りである。この種の集電装置は、静止体
のブラシと回転体の集電環(スリツプリングあるいは整
流子)とが機械的に接触して、電流の授受を行うもの
で、その構造そのものは簡易である。
ところで、近年においては、回転電機の単機容量の増
大,高周速回転あるいは小型軽量化などが進み、ブラシ
装荷の高密度化およびブラシ電流密度が大きくなる傾向
にある。このため、ブラシ摩耗の増大,集電環の荒損な
ど回転電機の運転上の障害も増え、その保守,点検が繁
雑化している。この対策として最近、特開昭61-4178号
公報等に開示されるように導電性セラミツクスを用いた
集電環、およびブラシが注目されている。導電性セラミ
ツクスを用いた従来例について第6図〜第9図より説明
する。
第6図は、回転電機の集電装置の従来例を示す概要
図、第7図は第6図のA−A′方向からみた断面を示
す。これらの図に示すように、回転電機の回転子軸1に
絶縁物2を介して配されたスリツプリング3があり、ス
リツプリング3の外周にブラシ4が摺動可能に接触して
いる。
スリツプリング3は、回転軸1の軸中心側に固定配置
される銅,鋼,鉄などの環状金属基材3bと、金属基材3b
の外周に嵌合固着した導電性セラミツクス製の円筒体3a
とで構成され、セラミツクス円筒体3aの表面がブラシ4
と摺動する。電気的には、ブラシ4が円筒体3aの表面上
を摺動接触して、リード線6を介して図示しない回転電
機の巻線などに電流を授受する。リード線6は、スリツ
プリング3の側面を押圧するリング5で圧接される。円
筒体3aを構成する導電性セラミツクスとして代表的なも
のは、例えばSiC(シリコンカーバイト),Si3N4(窒化
けい素)のセラミツクス基板に、ZrB2(ジリコニウムボ
ライド)などの導電性添加物を配合し、その配合割合を
変えて高温焼結する。SiCやSi3N4は細かい粒子の多結晶
体として高温焼結され、硬い1つの物体となる。この場
合のセラミツクスの粒形は、必ずしも球形ではなく尖鋭
状のものもある。
このようにブラシと摺動接触する集電環外周面のセラ
ミツクス化は、腐食性ガス,油,ダストあるいは極性湿
度,高湿度の雰囲気など多岐にわたる集電環荒損の発生
要因に対して、その影響をほとんど受けなくなる。特に
セラミツクスの焼結温度が鉄,銅系金属より融点が高い
ので、ブラシ火花などによる耐荒損性は極めてすぐれて
いる。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、その反面、次に挙げる種々の改善すべき点が
あつた。セラミツクスのような脆性材料は、金属材料に
比較して破壊靱性が著しく低く、例えばタービン発電機
のスリツプリングのように周速が70〜80m/sに及ぶ高速
回転体への適用は、スリツプリングの破壊,飛散の危険
性がある。また、従来の如くセラミツクス円筒体3aを金
属基材に嵌合する構造では、セラミツクスと金属材料と
の接着性(ぬれ)が悪く、そのため、第6図に示したよ
うに、リード線6の接続はリング5で圧接する構造とし
たり、あるいは金属材の溶着照射面を介して接続するな
ど、部品工数が増え、作業上の手間を要した。
また、従来のセラミツクス型集電装置の電気的特性を
みると、既述したように金属基材と円筒セラミツクスと
の接着性(ぬれ)が悪いので、その接触境界部分の接触
抵抗が大きくなる傾向があつた。このような接触抵抗の
増大は、比較的小容量の回転電機でブラシ取付け個数が
少ない場合にはそれほど問題にならないが、これが大容
量の回転電機、例えば600MW級タービン発電機では次の
ような問題が生じる。すなわち、大容量の回転電機は、
正,負極の1極のスリツプリングに取付けられるブラシ
個数が60〜80個と多数個となる。このため、スリツプリ
ングの軸方向のブラシが8〜10列にもなり、軸長も極め
て長い構造となる。したがつて、円筒体3aと金属基材3b
との嵌合い装着による密着性が十分でないと、大電流通
電時に接触境界部分の接触抵抗による温度上昇が高くな
るという現象が生じる。特にセラミツクスの場合、導電
性といえども、汎用の鋼材よりも熱伝導性は悪く、回転
軸の軸中心側への熱移動が乏しいので、ブラシとの摩擦
損,電気損による発熱も相乗して、スリツプリング円筒
体単品の温度上昇も著しい。その結果、ブラシの乾摩擦
接触によるブラシ摩耗過大,チヤタリング等の新らたな
問題が発生している。
更に導電性セラミツクスの円筒体3aとブラシ4の摺動
状況をみると、第8図に示す如く、運転時間Tの経過に
対して、ブラシと円筒体摺動面間との接触電圧降下Vaに
大きな変動が現われることがある。これは第6図で説明
したブラシ4とスリツプリング3の円筒体3aとの接触境
界部分を微視的にみてみると、(1)第9図のように円
筒体3aの個々のセラミツクスの粒子形状が不規則に結合
し、その外周面に微少な凹凸面を形成していること、
(2)そして、セラミツクス円筒体3aの基材であるSiC
やSi3N4は非常に硬質で潤滑性に乏しい材質であり、一
方、ブラシ4の表面には、黒鉛4a中に含まれる僅かな堅
硬物質4bが露出し、これらの硬質物同士が突起物の様に
接触するので、(1),(2)に起因してスリツプリン
グとブラシの摩擦変動が大きく、不安定接触となるため
である。
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、その
目的とするところは、集電装置の耐摩耗性,耐荒損性の
向上化を図ると共に、放熱特性,電気特性及び機械強度
を向上させて、高速運転及び大容量の回転電機にも充分
に対応でき、且つコスト的にも有利な回転電機の集電装
置を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、基本的には、回転電機のブラシと摺動接触
して電流の授受を行うスリップリング或いは整流子から
なる集電環を有する集電装置において、 前記集電環の本体となる環状の金属基材の外周表面
に、耐摩耗性,耐電弧性を有する導電性の窒化物,炭化
物,硼化物のいずれか1つ或いは複合材の被膜を拡散を
伴った原子的結合により形成してなることを特徴とす
る。
なお、上記被膜は、異なった材質の被膜を少なくとも
2層以上積層してもよい。
〔作用〕
集電環の外周表面に形成される被膜を、耐摩耗性,耐
電弧性,導電性を有する窒化物,炭化物,硼化物のいず
れか1つ或いは複合材で構成することで(窒化物,炭化
物,硼化物の具体例については実施例の項で述べる)、
被膜の硬さは、約Hv1500からHv4000程度とすることが可
能になり、集電環の基材(銅,鋼,鉄などの金属材料)
に比較して高い値にある。
このため金属材料のみを用いた際に比較して耐摩耗性
の向上を図れる。また、窒化物,炭化物,硼化物の比抵
抗は、約6μΩ・cmから800μΩ・cmの範囲内の値を示
すことが可能であり、基材の材質と同等あるいはわずか
に高い値を示しいるが、良導体である。したがって、
銅,鋼,鉄などの基材材質の表面に前述の窒化物,炭化
物,硼化物の被膜を形成しても、電力の供給に影響を及
ぼさず、スリップリングとしての特性を確保できる。
また、前述の窒化物,炭化物,硼化物の少なくとも一
つの被膜は、拡散を伴った原始的結合により集電環本体
(金属基材)の外周表面に形成されるので、集電環本体
との結合(密着性)が極めて良好となる。具体的には、
集電環本体と被膜との境界が拡散による濃度勾配によっ
て明確に区別し難い程に結合されて、極めて密着性に優
れた表面層が形成される。
また、集電環の表面に形成される被膜は、薄膜で、集
電環のほとんどが金属基材で占められ、この金属基材が
靱性のある銅,鋼,鉄等で構成されるために、集電環の
破壊靱性も被膜の存在によつて大きく損われず、且つ被
膜自身も金属基材に高密着結合するので、高周速の回転
体機種への適用にも充分耐えられる構造となる。
更に、集電環は、ほとんどが金属基材であるので、回
転電機巻線の電流リード線と摺電環との接続は、金属基
材の側面に直接接続することが可能となり、部品工数の
低減,作業性の向上を図り得る。
更に摺電環本体の外周表面に形成される被膜は、ブラ
シと摺動するため、耐摩耗性を有し且つブラシ火花等に
耐える耐電弧性の窒化物,炭化物,硼化物の一つ又は複
合材で形成されるが、その被膜形成は、例えば物理気相
蒸気法,化学気相蒸気法等の表面処理技術を用いて、非
常に緻密な結晶構造の被膜とすることができるので、従
来のセラミツクス円筒体のように不規則な粒形状の突起
物が介在せず、被覆表面が滑らかとなつて、その表面の
摩擦係数を低くできる。その結果、ブラシとの摺動接触
に際して摩擦変動が小さく安定した動特性が得られ、こ
の集電環被膜がブラシの摺動を阻害することはないの
で、集電環とブラシとの接触電圧降下を抑制できる。
また、本発明によれば、前述した如く集電環本体たる
金属基材に被膜が拡散を伴つて高密着結合するので、金
属基材と被膜との境界が区別し難い程の結合状態とな
り、その結果、金属基材と被膜間の接触抵抗を小さくし
て電気伝導性を高めると共に、大電流通電時に接触境界
部分の接触抵抗による温度上昇も抑制することができ
る。また、集電環とブラシとの摺動接触によつて発生す
る摩擦熱及び電気損によつて発生する熱は速やかに金属
基材から回転子軸側に伝達され、熱拡散によりブラシ及
びスリツプリングの温度上昇を低くすることができる。
従つて、集電環及びブラシの電気特性を向上させること
ができる。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例を第1図ないし第5図に基づき
説明する。
第1図は本実施例の集電装置の片側極だけを表わした
部分断面図で、その機能については従来と同様で、既述
した第6図の従来例と同一符号は同一または共通する要
素を示す。スリツプリング3は、その本体3′を銅,
鋼,鉄等で形成し、その外観形状は変わらないが、ブラ
シ4と摺動接触する同スリツプリングの外表面に本発明
の要旨となる窒化物,炭化物,硼化物のいずれかより成
る被膜3cが拡散を伴つた原子的結合により形成される。
被膜3cは、ブラシとの摺動に対して耐摩耗性,耐電弧
性を有し、且つ油,ダクト,腐食性ガス,湿度に耐えら
れる耐荒損性を有し、また、電気的に良導体であること
が必要である。
このような要求に応えるため、被膜3cとして高硬度の
金属間化合物が用いられ、金属間化合物としては、例え
ば各種窒化物,炭化物,硼化物が好ましい。
窒化物としては、窒化チタン(TiN),窒化ジルコニ
ウム(ZrN),窒化ハフニウム(HfN),窒化バナジウム
(VN),窒化タンタル(TaN),窒化ニオブニウム(Nb
N),窒化クロムニウム(CrN,Cr2N)などがある。炭化
物としては炭化チタン(TiC),炭化ジルコニウム(Zr
C),炭化ハフニウム(HfC),炭化バナジウム(VC),
炭化タンタル(TaC),炭化ニオブニウム(NbC),炭化
タングステン(WC),炭化硼素(B4C),炭化クロムニ
ウム(Cr3C2,Cr7C3,Cr23C6)などがある。また硼化物と
しては、硼化チタン(TiB2),硼化ジルコニウム(Zr
B2),硼化ハフニウム(HfB2),硼化バナジウム(V
B2),硼化タンタル(TaB2),硼化ニオブニウム(Nb
B2),硼化タングステン(W2B5),硼化クロムニウム
(CrB2),硼化鉄(FeB,Fe2B)などがある。これらの窒
化物,炭化物及び硼化物の硬さは、約Hv1500からHv4000
程度の範囲内の値を示し、基材材質の銅,鋼,鉄などの
金属材料に比較して高い値にある。このため、金属材料
のみを用いた際に比較して耐摩耗性の向上を図れ、且つ
窒化物,炭化物,硼化物の比抵抗は、約6μΩ・cmから
800μΩ・cmの範囲内の値を示し、基材3′の材質の
銅,鋼,鉄などの金属材料と同等あるいはわずかに高い
値を示しているが、良導体である。したがつて、銅,
鋼,鉄などの基材材質の表面に前述の各種の低い比抵抗
を示す窒化物,炭化物,硼化物の被膜を形成しても、電
力の供給に影響を及ぼさず、スリツプリングとしての特
性を確保できる。
しかして、被膜3cは、特にスリツプリング表面に拡散
を伴う原子的結合により形成することが重要である。
被膜形成の表面処理法としては種々の方法があるが、
本実施例では、形成する被膜の材質が金属間化合物の窒
化物,炭化物,硼化物等であることから、化学気相蒸着
法(Chemical Vapor Deposition、以下CVD法と称す
る)、物理気相蒸着法(Physical Vapor Deposition、
以下PVD法と称する)、溶射法などを用いて行われる。
CVD法では、金属間化合物となる原料をガス状で供給
し、加熱された基材表面で化学反応により金属間化合物
の被膜が形成される。例えば、窒化チタン被膜の形成で
は、原料ガスとしてチタン源に金属ハロゲン化物のTiCl
4を水素ガスのキヤリガスで飽和させて供給し、窒素源
としてアンモニアガス(NH3)あるいは窒素(N2)等を
用いることにより、 TiCl4+1/2N2+2H2→TiN+4HCl ……(1) 或いは、 TiCl4+NH3+1/2H2→TiN+4HCl ……(2) 等の反応式によつてTiN被膜が形成される。この際の
反応温度は、窒化物の生成自由エネルギー(ΔG)によ
つて決まる。窒化チタンの場合、(1)式の反応では、
通常620℃以上の反応温度を要するが、近年開発された
直流グロー放電あるいは13.56MHzの高周波放電を用いた
プラズマCVD法によれば、500℃程度の低い温度において
も窒化チタン被膜を形成できる。同様に、CVD法におい
て他の窒化物,炭化物,硼化物についても基材表面に被
膜を形成することができる。
PVD法では、銅,鋼,鉄等の金属基材との被膜の密着
性の観点から、イオンミキシング法,イオンプレーテイ
ング法,スパツタリング法,イオン注入法等で行われ
る。例えば、イオンミキシング法では、金属基材(摺電
環本体)の表面に第4a,第5a及び第6a族のいずれかの金
属を蒸着あるいはスパツタリング等で被膜を形成しなが
ら、例えば窒化物を形成する場合には窒素イオン、炭化
物を形成する場合には炭素イオンを注入することにより
形成できる。窒素イオンを注入する場合には、窒素ガス
やアンモニアガス等窒素を含有するガスを用い、炭素イ
オンを注入する場合には、アセチレン(C2H2),メタン
(CH4)ガス等を用いればよい。
本発明はこれらのガスに限るものではなく、要は窒化
物,炭化物を形成できるガスであればよい。
例えばスリツプリング金属基材の表面層にTiN(窒化
チタン)を形成する場合、表面層に窒素イオンを加速注
入すると同時に、基材表面にTi蒸着膜の生成を行ない、
基材構成原子に打ち込まれた窒素イオンとTi原子の混合
物層が形成される。この混合物層は金属基材との層間に
境界がないので、極めて密着性がすぐれた表面層が形成
される。
また、イオンプレーテイング法では、減圧下でチタン
源たる金属チタンを電子ビームを照射して高温に加熱し
蒸発させるとともに、窒素源としてアンモニアガスある
いは窒素ガスを導入し、蒸発源と基材間でプラズマを発
生させて、チタン及び窒素源を活性状態にして反応させ
る。このようにして、窒化チタンを形成し、この窒化チ
タンをバイアス電位によつて基材に加速させて、コーテ
イングを行うものである。他の窒化物も同様に金属源を
蒸発させ、窒素源ガスを添加することで形成できる。炭
化物の場合は、炭素源として例えば炭化水素系ガス,CH
4等を用いればよい。硼化物の場合には、金属源及び硼
素源を同時に蒸発させ、プラズマにより活性化すること
により形成できる。また、スパツタリング法では、窒化
物,炭化物,硼化物のターゲツトを用いて、スパツタリ
ング作用により基材に被膜を形成できる。また、窒化物
の場合は、反応性スパツタリング、すなわち、金属源を
窒素源ガスでスパツタリングすることにより、金属間化
合物とすることができる。また、イオン注入法の如く、
金属基材の表面に窒素イオン,炭素イオン等を打込んで
金属基材自身の表面にこの基材をベースとした窒化物,
炭化物等の被膜を形成してもよい。
溶射法は、被膜となる原料を高温,高速状態にして基
材表面に吹付けることでコーテイングされる。例えばプ
ラズマ溶射法は、Ar,N2,He等のベースガスを多量に流し
ながら、陽極と陰極間に熱プラズマを発生させて高温,
高速のプラズマ炎を生成し、このプラズマ炎の内部に原
料の窒化物,炭化物,硼化物等の原料粉末を供給するこ
とにより、これらの粉末は高温に加熱されるとともに高
速に加速されて、基材表面に到達し、被膜が形成され
る。プラズマ溶射の場合、ガス組成を制御することによ
つて目的の被膜を、CVD及びPVD法に比較して高速に形成
できる。しかし、形成された被膜の表面の粗さはCVD法
及びPVD法に比較して粗いため、目的によつては表面の
仕上げ加工を行うことが、摩擦特性上好ましい。
以上のような方法により形成する窒化物或いは炭化物
或いは硼化物の被膜の厚さは、剥離しない厚さであれ
ば、厚い方が摩耗を考慮すると好ましい。一般的にCVD
法及びPVD法で形成される膜厚は100μm程度以下であ
る。一方、溶射法では1mm程度以下である。なお、被膜
を厚くするために窒化物層,炭化物層,硼化物層を任意
に複数組み合わせてもよい。
ここで、被膜3cの具体的な形成例を、下述の実施例I,
IIにより説明する。
(実施例1) 本実施例では、被膜3cは、窒化チタン(TiN)とし、
スリツプリング基材といて鉄,鋼系材を用い、この基材
表面にイオンミキシング法によりTiN被膜を形成する。
具体的には、真空容器内で10-4〜-6Torr以下で、Tiを基
材表面に蒸着しながら窒素イオンを注入し、窒化化合物
(TiN)を形成する。イオン注入条件は、Ti蒸着速度:3
Å/sec、加速電圧:20KVで窒素イオン注入量は2×1018
個イオン/cm2である。通常、この集電装置の集電,摺
動材として耐摩耗,低摩擦係数の窒化物層3cを形成する
ためには窒素イオン注入量は1×1018個イオン/cm2
上が望ましく、これ以下の量では蒸着金属の残留が多
く、所要の特性が得られない。
この窒化物層3cの厚さは数μm程度であり、スリツプ
リングはほとんどが金属基材であるので、回転電機内の
巻線への電流授受を行なうリード線6の接続は、第1図
に示す如くスリツプリング3の基材3′に通常行なわれ
るボルト8による取付け、あるいは半田付けなどの加工
が可能であり、この部分の作業性が改善される。
第2図〜第4図に本実施例と従来の集電装置を用い比
較した実験結果の一例を示す。
第2図は本実施例のスリツプリングを用いたブラシと
の接触電圧降下Vbの時間変化を示す。前述した第8図の
結果と比較して摩擦変動が低く、ブラシ摺動特性は非常
に安定していることがわかる。これはスリツプリング表
面の窒化物層が鏡面様に緻密に形成されると共に、その
硬さがHv2500程度と硬質で摩擦係数も低いことから、ブ
ラシ黒鉛の不均一な付着や、黒鉛に混在する堅硬質物粒
子が露出しても窒化物層との硬質物同志の摺動であり低
摩擦係数となるので、ブラシ摺動を阻害する要因が解消
されるからである。
前述のようにブラシの摩擦変動が低いと、ブラシ集電
に伴うその他の諸特性も著しく改善され、その余効果は
大きい。
例えばブラシ摩耗量をみると、第3図はブラシ電流密
度δと1000時間あたりのブラシ摩耗量Wにおけるブラシ
摩耗曲線で、従来技術のL曲線に対し、本実施例はN曲
線で表わされるように約50%に半減している。
また、各ブラシ電流密度の試験において、運転前後の
スリツプリング表面の“荒れ”の変化もほとんど認めら
れなかつた。
さらにまた同様にブラシ温度Tは、第4図に示すよう
に従来技術ではブラシ温度曲線はPであり、本発明によ
れば温度曲線Qとなり20〜30%の温度低下を図ることが
できる。
これはブラシ摩擦変動が低減されたことよりも、スリ
ツプリングを構成する窒化物層とリング基材との境界が
拡散を伴う原子的結合により不明瞭となるので、熱及び
電気伝導性が良好となり、ブラシ摺動接触による摩擦
損,電気損によつて発生する熱がスリツプリング基材か
ら回転子軸側に速やかに移動するので、熱放散効果が大
きいためである。従つて、ブラシ及びスリツプリング双
方の温度上昇を抑制して、集電装置全体の電気特性を大
幅に向上させることができる。
更に本実施例は、ブラシ火花,荒損等に対する耐力も
表面被膜そのものがセラミツクス層であり、その機能は
従来のセラミツクス円筒タイプのものと同等の効果を奏
する。従つて、ブラシ火花の大きい難整流機種の場合、
表面層形成膜の厚さを制御することで耐荒損性を高める
ことができる。
これは、腐食性ガスが介在する雰囲気における機種に
ついても同様の対処で回避が可能である。更に、被膜の
金属基材(スリツプリング本体)に対する密着性が高
く、しかもスリツプリングの破壊靱性も基材並みであ
り、高周速回転体機種への適用にも充分に耐えられる。
(実施例II) 本実施例では、CVD法による被膜3cの形成について説
明する。
本実施例でも、金属間化合物(被膜)3cは窒化チタン
(TiN)とし、スリツプリング基材として鉄材を用いた
例について述べる。CVD処理は、減圧容器の反応炉内に
被処理材のスリツプリングを配設し、反応炉内を10-2To
rr以下に減圧した後、水素ガスを導入して80Torrに保持
しながら、反応炉を外側の抵抗加熱方式の電気炉によつ
て1020℃に加熱する。この状態で、チタン源たる金属ハ
ロゲン化物の四塩化チタン(TiCl4)及び窒素源たる窒
素ガスを供給し、8時間の処理を行つた。この処理によ
つてTiN被膜が10μm形成された。
前述の如く金属基材が鉄の場合には、減圧CVD法によ
る被膜処理が可能であるが、金属基材の中には、減圧CV
D法で処理温度が高いものもある。この場合には、直流
グロー放電で被処理品を陰極に接続して、前述同様のCV
D処理を行うことで、600℃、3時間で10μmのTiN被膜
を形成することができる。
しかして、本実施例も、実施例Iと同様の効果を奏し
得る。
なお、上記各実施例では、スリツプリングに被膜3cと
して窒化物のTiNをPVD法,CVD法により形成した例を説明
したが、TiN以外の被膜材質(例えば実施例の冒頭に列
挙した各種の窒化物,炭化物,硼化物)についても同様
の効果が得られる。
また、基材表面に形成する窒化物,炭化物,硼化物の
被膜を複合化することも可能である。特に溶射法におい
ては、被膜原料となる窒化物,炭化物,硼化物粉末と、
ブラシとの摺動に際して摩擦特性を改善できる、いわゆ
る固体潤滑特性のある物質(例えばMoS2,MnS2,h-BN,黒
鉛等)とを混合させることで、被膜中にこれらの固体潤
滑要素を分散した組織構造を得ることができる。
また、溶射被膜のみにおいても、例えば第5図に示す
ようにコーテイング条件を制御することで、目的とする
溶射粒子30間の気孔31を分散させ、この気孔31に固体潤
滑要素(鉛等)を含浸させることによつても、複合状態
の組織を形成できる。
以上のような複合組織によつて、電気特性を良好に保
持した状態で、摺動特性を向上させることができる。
〔発明の効果〕
以上のように本発明によれば、集電環,ブラシの耐摩
耗性,耐荒損性の向上化を図ると共に、放熱特性,電気
特性及び機械強度を向上させて、高速回転及び大容量の
回転電機にも充分に対応できる集電装置を提供すること
ができ、しかも、被膜形成も容易に行い得ると共に、リ
ード線と摺電環との電気的接続作用も簡単に行い得、作
業コストの低減化を図り得る。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例を示す集電装置の部分縦断面
図、第2図は上記実施例のブラシ接触電圧降下の特性
図、第3図は上記実施例と従来の集電装置のブラシ摩耗
状態を比較して表わす説明図、第4図は上記実施例と従
来の集電装置のブラシ温度状態を比較して表わす説明
図、第5図は本発明の他の実施例を示す部分拡大断面
図、第6図はセラミツクス型集電装置の従来例を示す部
分断面図、第7図は第6図のA−A′断面図、第8図は
上記従来例のブラシ接触電圧降下の特性図、第9図は上
記従来例のブラシと集電環表面との接触状態を表わす説
明図である。 1……回転子軸、2……絶縁物、3……集電環、3′…
…集電環本体(金属基材)、3c……被膜、4……ブラ
シ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 福島 正武 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社 日立製作所日立研究所内 (72)発明者 山口 静 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社 日立製作所日立研究所内 (56)参考文献 特開 昭61−101986(JP,A) 特開 昭63−111147(JP,A) 特開 昭63−111146(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01R 39/00 - 39/64 H02K 13/00 - 13/14

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】回転電機のブラシと摺動接触して電流の授
    受を行うスリップリング或いは整流子からなる集電環を
    有する集電装置において、 前記集電環の本体となる環状の金属基材の外周表面に、
    耐摩耗性,耐電弧性を有する導電性の窒化物,炭化物,
    硼化物のいずれか1つ或いは複合材の被膜を拡散を伴っ
    た原子的結合により形成してなることを特徴とする回転
    電機の集電装置。
  2. 【請求項2】前記被膜は、異なった材質の被膜を少なく
    とも2層以上積層してなる請求項1記載の回転電機の集
    電装置。
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