JP2800780B2 - ダイオード及びigbtとの並列回路とそのモジュール及びそれを用いた電力変換装置 - Google Patents

ダイオード及びigbtとの並列回路とそのモジュール及びそれを用いた電力変換装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高速スイッチング
素子IGBTに組合わせて用いられるダイオードとその
並列回路及び共通のベース上で逆並列に接続して構成し
たモジュール、及びそれを用いた電力変換装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】電力変換装置の応用範囲の拡大に伴い装
置の高性能,低騒音,小形化がますます重要になってい
る。その制御素子として、パワーMOS−FETの高速
スイッチング特性とバイポーラトランジスタの高電力特
性を兼ね備えたIGBT(Insulated Gate Bipolar Tra
nsistor)が開発され、実用化され始めている。IGB
Tは、ターンオン及びターンオフタイムが0.1〜0.5
μsと速く、高周波で駆動するのに好適な素子である。
そしてこのIGBTは共通のベース上でダイオードと逆
並列に接続して、それを1組〜6組をまとめたモジュー
ルにして、高周波インバータなどに実用化され始めてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、IGBTを用
いてインバータ装置を構成すると、スイッチング時に発
生する電圧振動が大きく、それがノイズとなって制御装
置の誤動作やIGBTの破壊の原因となる問題があるこ
とが分かった。
【0004】図8はIGBTとダイオードを逆並列に接
続したモジュールを用いて、インバータを構成して動作
させた場合の誤動作の事例である。この誤動作の詳細は
後述する。この図ではフリーホイルダイオードがリカバ
リした後、それと並列に接続されたIGBTに振動電圧
が印加されており、それによりIGBTの駆動回路が誤
動作してアーム短絡の大きな電流が流れている。この例
では、アーム短絡が生じると振動電圧がなくなって誤動
作が止まり、IGBTの破壊には至っていないが、これ
は誤動作の限界での現象のためであり、更に大きな振動
電圧が生じると大きなアーム短絡電流が流れて、IGB
Tの破壊にまで至る現象があることが分かった。
【0005】このような誤動作を避ける方法として、例
えばIGBTに加えるゲート信号の立上りをゆるやかに
して、IGBTのターンオン時のdi/dtを遅くする
方法や、インバータの主回路配線のインダクタンスを増
してターンオン時のdi/dtをゆるやかにする方法が
ある。しかし、いずれも回路動作を遅くすることであ
り、IGBTのスイッチング損失を増加したり、回路動
作を高速化できないという問題が生じ、IGBTの高速
スイッチング特性を充分に活かした使い方ができないと
いう欠点がある。
【0006】そこで、本発明の目的は、高速スイッチン
グ特性を充分に活かしたIGBTとダイオードの並列回
路を提供することである。
【0007】また、本発明の他の目的は、電圧振動を抑
制して誤動作のない信頼性の高いインバータを提供する
ことにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、電圧振動の発生要因を調べた結果、モジュールの中
の配線インダクタンスLに蓄積されるエネルギーと、I
GBT及びダイオードの寄生容量Cによる共振であるこ
とが分かった。
【0009】従って、本発明では振動電圧を抑制する第
1の手段としてモジュールの中の配線インダクタンスL
のエネルギーを吸収できるように、IGBTとダイオー
ドの寄生容量Cを大きくするか、それに変わるコンデン
サを接続したものである。
【0010】第2の手段は、リカバリ電流の尖頭値IRP
を低減したダイオードを組合わせることである。我々の
検討結果によれば、ダイオードのリカバリ特性はIGB
Tのターンオン特性と協調をとる必要があり、その協調
条件はIGBTのターンオンのライズタイムによって決
まる最大のdi/dtで、ダイオードを定格電流IF
らリカバリさせた時のリカバリ特性で決定すべきである
ことが分かった。そして、その時のリカバリ電流の尖頭
値IRPが定格電流IF の0.55 以下で、かつリカバリ
電流の尖頭値IRPから1/10の値に減衰するまでのリ
カバリ時間をtrrとすると、trrがπ√LCの1.5 倍
以上のリカバリ特性を有するダイオードを、IGBTと
組合わせてモジュールを構成することである。
【0011】振動電圧の発生要因は、モジュールの中の
配線インダクタンスLと、IGBT及びダイオードの寄
生容量Cによる共振現象であるから、ダイオードのリカ
バリ電流の尖頭値IRPによって蓄積されるエネルギーと
共振の半周期Tの関係は、 (1/2)LIRP 2=(1/2)CV2 …(1) T=π√LC …(2) である。
【0012】従って、IGBTとダイオードの寄生容量
Cを大きくするか、それに変わるコンデンサを接続する
ことにより、(1)式,(2)式から電圧振動の電圧振
動の尖頭値Vが低下し、振動周期Tが長くなることが分
かる。
【0013】また第2の手段のように、ダイオードのリ
カバリ電流の尖頭値IRPを低減すれば、モジュールの中
の配線インダクタンスLに蓄積されるエネルギーの絶対
値が小さくなるので、振動電圧の尖頭値Vが低下するこ
とが分かる。そして、リカバリ電流が尖頭値IRPから1
/10の値に減衰するまでのリカバリ時間trrを、
(2)式のTより大きなダイオードにすることにより、
非共振状態にすることも可能であるし、少なくとも共振
動作を急速に減衰できることが分かる。
【0014】以上のように、本発明はIGBTのターン
オン特性とダイオードリカバリ特性との協調をとること
により、IGBTのスイッチング時の電圧振動を低減し
たモジュールを提供するものである。又、上記モジュー
ルを用いてインバータ装置を構成することにより、IG
BTの高速スイッチング特性を充分に活かし、高性能で
しかも信頼性の高いインバータを実現した。
【0015】
【発明の実施の形態】以下図面を用いて本発明を説明す
る。
【0016】図1は本発明のモジュール構成を示したも
のである。21はベース電極、22は絶縁板、23はコ
レクタ電極板、24はエミッタ電極板、25はゲート電
極板、26はコレクタ端子、27はエミッタ端子、28
はゲート端子である。コレクタ電極板23の上には、I
GBT29とダイオード30が電気特性的に逆並列とな
るように半田などで接着されている。また、IGBT2
9のエミッタはエミッタ電極板24に、ゲートはゲート
電極板25に、ダイオード30のアノードはワイヤによ
ってエミッタ電極板24にそれぞれ接続されている。コ
レクタ電極板23とエミッタ電極板24の間にはコンデ
ンサ31が接続されている。そしてこの図では省略して
あるが、これらは各端子の先端を残してケースで覆われ
る。
【0017】次に、本発明の動作を説明する前に、我々
が検討して明らかになった。激しい振動電圧が発生する
理由をインバータ回路を用いて説明する。
【0018】図5に代表的なインバータ回路を示す。図
において、1は直流電源、2a〜5aはスイッチング素
子のIGBT、6は負荷のモータである。2b〜5bは
フリーホイルダイオードで、IGBT2a〜5aと対に
設けてそれぞれ、あるいは一括してモジュール化したも
のである。2c〜5cはモジュール内の配線のインダク
タンスである。2d〜5dはIGBT2a〜5aの駆動
回路で、インバータ装置の制御装置11とホトカプラ2
e〜5eを介して接続されている。
【0019】そして7は、直流電源とIGBT(2a〜
5a)とを接続する主回路配線のインダクタンスであ
る。また、ダイオード8,コンデンサ9,放電抵抗10
で構成されたクランプ回路は、主回路配線のインダクタ
ンス7のエネルギーにより、IGBT2a〜5aに過電
圧が印加されるのを防止するためのものである。
【0020】さて、このように構成したインバータ装置
の動作において、例えば、IGBTの3aと4aがオン
状態で負荷(M)6に電流を流している状態からIGBT
3aをオフすると、負荷(M)6のエネルギーによりそ
れまで流れていた負荷電流はIGBT4aとフリーホイ
ルダイオード2bを介して流れ続ける。そして、その状
態からIGBT3aを再びオンすると、フリーホイルダ
イオード2bに流れていた負荷電流がIGBT3aに移
る転流動作がある。
【0021】高速のスイッチング素子のIGBTでイン
バータを構成したときの激しい振動電圧は、この転流動
作時のフリーホイルダイオードのリカバリ時に生じるこ
とが分かった。
【0022】この転流動作において、IGBT3aがタ
ーンオンして、負荷電流がフリーホイルダイオード2b
からIGBT3aに転流するまでの期間(正確にはダイ
オードのリカバリ電流が尖頭値に達するまでの期間)
は、フリーホイルダイオード2bの端子間にはダイオー
ドの順方向の電圧降下しか印加されない。従って、直流
電源1は配線インダクタンス7及び2c,3cとIGB
T3aで短絡されることになる。
【0023】図6に、ターンオン特性の異なるスイッチ
ング素子の直流電源電圧Eとターンオンのdi/dtの
関係を示す。直流電源電圧Eに反比例している直線はイ
ンバータ主回路の負荷曲線で、素子特性との交点がその
スイッチング素子を用いた時のターンオンのdi/dt
である。
【0024】従来のバイポーラ素子(600V−100
A級前後)の場合は、ターンオンのライズタイムが0.
5〜3μs と比較的スイッチング速度が遅かったの
で、ターンオンの電流の立上りdi/dtが素子自身で
抑制されていた。しかしIGBTのようにライズタイム
が0.5〜0.1μsと短くなると、di/dtは素子特
性と配線のインダクタンス(例えば図5の2C+3C+
7)の両者で決定されるようになる。そして、更にライ
ズタイムが短くなれば、配線のインダクタンスLと直流
電源電圧Eのみで決定するような大きなdi/dtとな
る。
【0025】そして、IGBTのターンオンのdi/d
tが大きくなることは、前述のインバータのフリーホイ
ルダイオード2bからIGBT3aへの転流動作が高速
で行われることであり、フリーホイルダイオード2bの
リカバリが大きなdi/dtで行われることである。そ
の結果、フリーホイルダイオード2bに印加される電圧
に激しい振動が発生するが、それは次の理由による。
【0026】図7は、ダイオードのオフ時のdi/dt
とリカバリ電流の尖頭値IRP及びIRPから1/10の値
に減衰するまでのリカバリ時間trrとの関係を示したも
のである。ダイオードがリカバリするときのdi/dt
が大きくなると、それにほぼ比例してリカバリ電流の尖
頭値IRPが大きくなり、リカバリ時間trrが短くなる関
係がある。ダイオードがリカバリする時は、蓄積されて
いたキャリアを放出する電流と、接合容量などの寄生容
量を充電する電流が流れるが、di/dtが大きいとキ
ャリアを放出するために大きなリカバリ電流が流れ、そ
の尖頭値IRPで寄生容量を充電するためリカバリ時間t
rrが短くなる。
【0027】インバータ回路でフリーホイルダイオード
のIRPが大きくなることは、配線のインダクタンス(例
えば図5の7及び2c〜5c)に余分に蓄積されるエネ
ルギー{(1/2)LIRP 2}が大きくなることである。す
なわち、ターンオンのdi/dtが大きくなった結果、
従来のバイポーラ素子と同じリカバリ特性のダイオード
を使うならば、配線インダクタンスに蓄積されるエネル
ギーは尖頭値IRPの2乗に比例するので、非常に大きく
なることが分かる。
【0028】主回路の配線インダンタンス7に蓄積され
るエネルギーは、図5の8〜10で構成するようなクラ
ンプ回路で吸収することができる。しかし、モジュール
の中の配線インダクタンス、例えば2cに蓄積されたエ
ネルギーは、IGBT2aとフリーホイルダイオード2
bに過電圧として印加されることになる。
【0029】この時、前述のようにダイオードには寄生
容量があり、IGBTにも寄生容量があるので、モジュ
ールの中の配線インダクタンスに蓄積されたエネルギー
がIGBTとダイオードの寄生容量に移動する。そして
この間の協調がとれていないと、LCの共振現象による
振動電圧が発生することになるが、従来のモジュールは
この点の協調がとれていないため、振動電圧が発生して
いた。そしてこの電圧振動による変位電流が図5の駆動
回路2d〜5dを介して制御装置11に流れて誤動作を
引き起こしていた。
【0030】本発明は、この点に着目したもので、モジ
ュールの中での特性の協調を図ったものである。すなわ
ち、上述したダイオードがリカバリする時のモジュール
は、図2に示すような等価回路で表わすことができる。
図2はダイオードのリカバリ電流が尖頭値IRPに達した
時点からのものである。図において、Lはモジュールの
中の配線のインダクタンス、CはIGBTとダイオード
の合計の寄生容量、Rは残留キャリアの放出を可変抵抗
で表わしたものである。上述したように、ダイオードが
リカバリする時、蓄積されていたキャリアを放出する電
流と接合容量などの寄生容量を充電する電流が流れる
が、キャリアの放出はリカバリ電流が尖頭値IRPに達し
た時も完全には終了しておらず、残留キャリアによる電
流が流れ続ける。そこに流れる電流を可変抵抗Rに置き
換えたものである。
【0031】そして、モジュールの端子間に接続してあ
るコンデンサは、主回路の配線インダンタンス7に蓄積
されるエネルギーを吸収するクランプ回路で、図5のク
ランプ回路のコンデンサ9に相当する。
【0032】このような等価回路において、簡単のため
Rを無視して、モジュールの両端子間に大きなコンデン
サが接続されていると仮定した場合、ダイオードのリカ
バリ電流の尖頭値IRPによって蓄積されるエネルギーと
共振の半周期Tの関係は、上述した(1)式,(2)式
となる。すなわち、重複して表わすと、 (1/2)LIRP 2=(1/2)CV2 …(1) T=π√LC …(2) である。
【0033】従って、IGBTとダイオードの寄生容量
Cを大きくするか、それに変わるコンデンサを接続する
ことにより、電圧振動の尖頭値Vを低下でき、振動周期
Tを長くできることが分かる。
【0034】図1の実施例は、電圧振動の尖頭値Vの低
減をコンデンサで実現したもので、我々の実験結果によ
れば、100AのIGBTとダイオードの合計の寄生容
量はおよそ600pFで、それに1000pFのコンデ
ンサ31を接続すると、大幅に電圧振動の尖頭値Vを低
減できた。なお、コンデンサ31を設けると、スイッチ
ング損失が増えることになるが、コンデンサの容量は今
回の実験結果からIGBTとダイオードの合計の寄生容量の
2倍の値以下の小さい容量でよく、利用上ほとんど問題
にならなかった。
【0035】次に本発明の第2の手段について説明す
る。
【0036】図2の等価回路から明らかなように、モジ
ュール内の配線インダクタンスLに蓄積されたエネルギ
ーは、IGBTとダイオードの寄生容量Cと残留キャリ
アを表わす抵抗Rで吸収されることになる。従って、リ
カバリ電流の尖頭値IRPをこれらで吸収できるような範
囲に抑えられれば、跳ね上がり電圧の尖頭値も電圧振動
も抑えることができる。
【0037】すなわち理論的に、許容できる跳ね上がり
電圧の尖頭値をVとすると、(1)式を書き直した、 IRP<√(CV2)/L …(3) を実現できるようなダイオードを選べば良いことにな
る。そして、共振現象の抑制は、リカバリ電流が尖頭値
RPから1/10の値に減衰するまでのリカバリ時間t
rrを、(2)式のTより大きい T>π√LC …(4) のリカバリ特性を有するダイオードを選べば良いことに
なり、これを計算と実験で検討した。
【0038】図3は、リカバリ時間trrと振動の跳ね上
がり電圧尖頭値Vの関係を計算で求めたものである。パ
ラメータは、リカバリ電流の尖頭値IRPであるが、図で
は規格化して示してある。図から明らかなように、リカ
バリ時間trrが(2)式の共振周期のπ√LCのところ
では跳ね上がり電圧の尖頭値Vが大きいが、リカバリ時
間trrをπ√LCの1.5 倍以上にすると跳ね上がり電
圧の尖頭値が大幅に低減している。
【0039】従ってこの図3と、許容される跳ね上がり
電圧の尖頭値から、ダイオードのリカバリ特性を選定す
ることができる。
【0040】カタログなどに示される半導体素子の特性
が、定格電圧の約1/2の試験電圧であることからも分
かるように、普通半導体素子を使う場合、定格電圧の約
1/2以下で使われることが多い。上述してきたように
スイッチング時の跳ね上がり電圧により、素子に定格電
圧を超える電圧が印加することを避けるためである。こ
のため、定格電圧の1/2の電源電圧で使用する時は、
跳ね上がり電圧尖頭値は定格電圧の1/2まで許容でき
るわけである。しかし我々の実験結果によると、それで
は駆動回路の誤動作の面で充分ではなく、定格電圧の1
/3〜1/4以下に跳ね上がり電圧の尖頭値を抑制する
と良好な結果が得られている。
【0041】このことを考慮に入れて、図3からダイオ
ードのリカバリ特性を選ぶと、リカバリ電流の尖頭値が
定格電流の0.55(IRP/IF=0.55)以下で、リカ
バリ時間trrがπ√LCの1.5 倍以上のダイオードを
選べば良いことが分かる。
【0042】なお、上述のようにダイオードのリカバリ
特性を選定すると、IGBTモジュールの電流容量が大
きくなった場合に、跳ね上がり電圧が大きくなるように
思われる。寄生容量Cが電流容量に比例して増加するの
に対して、モジュールの配線インダクタンスに蓄積され
るエネルギーがIRPの2乗で増加するためである。しか
し実験によって確認してみると、跳ね上がり電圧が飽和
することが分かった。図4に、IGBTモジュールの電
流容量と跳ね上がり電圧の尖頭値の関係を示す。モジュ
ールの電流容量は、50AのIGBTとダイオードのチ
ップの並列数によって変えた。モジュール内部の配線イ
ンダクタンスは50nH,IGBTのターンオンのライ
ズタムイは0.3μs である。図に示されているよう
に、電流容量がある程度大きくなると、跳ね上がり電圧
の尖頭値が飽和している。これは図6で示したと同様
に、ターンオンのdi/dtは素子特性の他に主回路の
インダクタンスでも抑制されるため、モジュールの電流
容量に比例してdi/dtが大きくならなくなるためで
ある。すなわち、電流容量が大きくなるにしたがって、
IGBTが保有する最大のターンオン特性を実現できな
くなる。そのため、同一のリカバリ特性を有するダイオ
ードを用いてモジュールの電流容量を大きくしても、電
流容量に比例してリカバリ電流の尖頭値IRPが大きくな
らずに、跳ね上がり電圧の尖頭値が飽和するようになる
ものである。
【0043】次に、具体的にダイオードを選定する時の
試験条件について述べる。
【0044】図7に記述したように、ダイオードのリカ
バリ特性は、リカバリ時のdi/dtによって変わるの
で、ペアとなるIGBTのターンオン特性から得られる
最大のdi/dtで選定する必要がある。そしてIGB
Tのターンオンのdi/dtを決定する試験電圧は、定
格電圧の1/2であり、測定温度は室温である。なお、
測定温度が高温になると、リカバリ電流の尖頭値は大き
くなるが、リカバリ時間trrも長くなり電圧振動がむし
ろ低減する。
【0045】また、IGBTモジュールにおいては、普
通、50A〜100Aのチップをモジュールの中で並列
にして電流容量を大きくするが、上述のようにモジュー
ルの電流容量が大きくなるにしたがって、IGBTが保
有する最大のターンオン特性を実現する試験回路が難し
くなる。その場合はIGBTのチップ当りの定格電流で
ダイオードのリカバリ特性を上述と同様に選定する。
【0046】以上、本発明はスイッチング素子のターン
オンのライズタイムが0.5μs 以下の素子を対象にし
て検討したものである。ライズタイムが0.5μs 以上
の素子であっても考え方は同じであるが、ライズタイム
が長いとフリーホイルダイオードがリカバリする時のd
i/dtが小さいので、図8で示したように同じダイオ
ードでもリカバリ電流の尖頭値IRPが小さくなってく
る。このため、ダイオードの選定が比較的容易であった
ため、従来それほど大きな問題とはならなかった。
【0047】そして、MOS−FETのようにターンオ
ンのライズタイムが0.1μs 前後の速い素子も実在し
ていた。しかし、MOS−FETは、IGBTよりオン
抵抗が大きいために、同じ電流容量でもチップ面積が大
きく、寄生容量が大きくなっていた。そして又、これら
のモジュールは〜50A程度までと比較的電流容量が小
さかった。このため、(1)式や図4から分かるよう
に、跳ね上がり電圧がそれほど大きくならない要因を持
っていた。このため、ダイオードの選定が比較的容易で
あった。
【0048】しかし、ターンオンのライズタイムが0.
5μs 以下で、しかも大きな電流容量のモジュールま
で実現できるIGBTを対象にした時、ダイオードの製
作にも工夫が必要となった。
【0049】我々の検討した結果によれば、今回実施例
で述べたような比較的定格電圧の高いスイッチング素子
と組合わせるダイオードは、従来からpn接合のダイオ
ードが用いられていた。しかし、例えば特公昭59−3518
3 号公報に示されているショットキーバリアとpn接合
を有するようなダイオードは、従来から100V〜20
0V耐圧以下のものが多かったが、今回600V以上の
耐圧のダイオードを作ってIGBTと組合わせてみると
非常に有効であることが確認できた。
【0050】また、ダイオードのリカバリ電流の尖頭値
RPを小さくする方法として、金などの不純物のドープ
や、電子線などの照射によってキャリアのライフタイム
を短くする方法があるが、この方法でも本発明のモジュ
ールを実現するダイオードができる。しかし、この方法
にはオン電圧が大きくなりすぎて、モジュールの損失が
大きくなる欠点がある。これを避けるためには、図10
に示すチップ面積の違いによるダイオードのオン電圧と
順電流の関係からも分かるように、従来IGBTに対して1
/3〜1/4にしていたダイオードのチップ面積を1/
2.5 程度まで大きくするのが有効であった。また、こ
のようにIGBTに対してダイオードのチップ面積を大
きくすれば熱抵抗が反比例して小さくなることが知られ
ており、この点からも損失による温度上昇の低減が図れ
る。
【0051】さらに、IGBTより耐圧の高いダイオー
ドを組合わせると、リカバリ時間trrが長くなり、電圧
振動を抑制するのに効果的であった。素子の耐圧はベー
ス層の厚さにほぼ依存するが、IGBTのベース層の厚
よりダイオードのベース層の厚さをおよそ1.2 倍に
した時でも、それにほぼ反比例して電圧振動が抑制でき
た。
【0052】
【発明の効果】図9に、本発明のIGBTモジュールを
インバータに実装して、ダイオードがリカバリした時の
電圧,電流波形例を示す。比較のため従来例も示してい
るが、本発明のモジュールの場合は、跳ね上がり電圧の
の尖頭値と電圧振動が大幅に低減されていることが分か
る。
【0053】そして、本発明のモジュールでインバータ
装置を構成すると、IGBTを高速で動作させても、跳
ね上がり電圧と電圧振動が抑制されるので、IGBTの
駆動回路がノイズによって誤動作するようなことがなく
なった。そして、インバータ装置の高性能化,高効率化
(スイッチング速度の高速化),高信頼性(低ノイズ
化)を実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるモジュールの構成。
【図2】ダイオードがリカバリする時のモジュールの等
価回路。
【図3】リカバリ時間と跳ね上がり電圧の関係。
【図4】モジュールの電流容量と跳ね上がり電圧の関
係。
【図5】インバータ回路。
【図6】直流電源電圧とスイッチング素子ターンオン時
におけるdi/dtの関係。
【図7】ダイオードのオフ時のdi/dtとリカバリ電
流及びリカバリ時間との関係。
【図8】IGBTとダイオードを逆並列に接続したモジ
ュールを用いたインバータにおける誤動作の事例。
【図9】本発明のモジュールを実装したインバータにお
ける電圧,電流波形例。
【図10】チップ面積の違いによるダイオードのオン電
圧と順電流の関係。
【符号の説明】
1…直流電源、2a〜5a…IGBT、2b〜5b…フ
リーホイルダイオード、2d〜5d…駆動回路、2e〜
5e…ホトカプラ、6…モータ、7…主回路配線のイン
ダクタンス、8,30…ダイオード、9…コンデンサ、
10…放電抵抗、11…制御装置、21…ベース電極、
22…絶縁板、23…コレクタ電極板、24…エミッタ
電極板、25…ゲート電極板、26…コレクタ端子、2
7…エミッタ端子、28…ゲート端子、29…IGB
T。
フロントページの続き (72)発明者 森 睦宏 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社 日立製作所 日立研究所内 (72)発明者 黒須 俊樹 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式 会社 日立製作所 日立工場内 (72)発明者 鈴木 豊 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式 会社 日立製作所 日立工場内 (72)発明者 櫻井 直樹 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社 日立製作所 日立研究所内 (72)発明者 安田 保道 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社 日立製作所 日立研究所内 (72)発明者 田中 知行 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社 日立製作所 日立研究所内 (72)発明者 恩田 謙一 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社 日立製作所 日立研究所内 (56)参考文献 特開 平3−195376(JP,A) 特開 昭59−103300(JP,A) 実開 昭56−172951(JP,U) 電気学会半導体電力変換研究会資料、 VOL.SPC−90、NO.32−41、P 55−63、1990、「高速IGBT実用上の 課題とその対策」 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01L 25/07 H01L 25/18 H02M 1/00 H03K 17/16 H02M 7/537 H02P 7/63 301 H02M 7/48 H02M 7/5387

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】同一のベース上に、IGBTとダイオード
    を逆並列に接続したモジュールにおいて、 前記ダイオードのベース層の厚さが、前記IGBTのベ
    ース層の厚さの1.2倍以上であることを特徴とするモ
    ジュール。
  2. 【請求項2】同一のベース上に、IGBTとダイオード
    を逆並列に接続したモジュールにおいて、 前記IGBT及び前記ダイオードと並列にコンデンサを
    接続し、 該コンデンサの容量が、前記IGBTと前記ダイオード
    の合計の寄生容量の2倍の値以下であることを特徴とす
    るモジュール。
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電気学会半導体電力変換研究会資料、VOL.SPC−90、NO.32−41、P55−63、1990、「高速IGBT実用上の課題とその対策」

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