JP2797780B2 - 染色物 - Google Patents

染色物

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JP2797780B2
JP2797780B2 JP3287735A JP28773591A JP2797780B2 JP 2797780 B2 JP2797780 B2 JP 2797780B2 JP 3287735 A JP3287735 A JP 3287735A JP 28773591 A JP28773591 A JP 28773591A JP 2797780 B2 JP2797780 B2 JP 2797780B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は染色物に関する。更に詳
しくは、昇華性染料によって表面を染色したプラスチッ
ク材料であって、紫外線によって変褪色することがな
く、可塑剤の浸入によるブリードの怖れもない染色物に
関する。
【0002】
【従来の技術】いわゆる昇華性染料を用いてプラスチッ
ク材料を染色する方法は周知である。例えば、染料はバ
インダー樹脂と共にインキ化されて仮の支持体上に印刷
され、この印刷物をプラスチック材料に重ねて加熱する
ことによりインキ中の染料のみがプラスチック材料中に
浸透し、染着する(転写染色法)。この際、インキは転
写されず、仮の支持体と共に剥離除去される。
【0003】あるいは染料を含むインキを直接プラスチ
ック材料上の印刷した後、加熱して染料をプラスチック
内部に浸透させ、染着させる(浸透印刷法)。インキ層
はそのまま残存させたり、あるいは剥離除去されるが、
いずれの場合も染料はプラスチック内部に浸透してお
り、画像は残存する。
【0004】染料は昇華性であると信じられており、固
体状態から直接気体状態に変化し、かかる気体状染料が
プラスチック材料中に浸透すると考えられている。この
ため、染料は一般に昇華性染料と呼ばれている。もっと
も、固体状態と気体状態の間に液体状態が存在しないこ
とは厳密には確認されていない。またプラスチック材料
への浸透が気体状態で生じるか、あるいは液体状態で生
じるかも明らかではない。このため、染料は気化性染料
もしくは熱溶融移行性染料と呼ばれることもある。
【0005】プラスチック材料内部へ染料を浸透させる
加熱手段には、加熱盤、加熱ロール、赤外線パネルヒー
ター等が使用される。近年に到って、熱応答性の優れた
染料が開発されたことやサーマルヘッドの改良により、
転写リボン上の染料をサーマルヘッドの発熱によりプラ
スチック材料中へ浸透させて画像を形成する方法が開発
された。プラスチック材料はプラスチックフィルムや、
身分証明カード等の塩ビカードである。
【0006】しかしながら、染料は一般に分散染料又は
油溶性染料である。かかる染料は極性が小さく、このた
め加熱により容易に気体に変化してプラスチック材料中
に浸透する反面、プラスチック材料との結合力も小さ
く、可塑剤や有機薬品等によって犯されたり、引っ掻き
等による機械的損傷を受けやすい。さらにまた、光、特
に紫外線によって染料が分散され、変色あるいは褪色す
る。
【0007】かかる問題点を防止するため、プラスチッ
ク材料表面にポリエステル樹脂を主成分とする受像層を
設けて染料を固定したり、あるいは染料を改良して堅牢
度を向上している。
【0008】しかし、いずれの方法によっても本質的に
外部からの化学的または機械的損傷を防止することがで
きず、紫外線などの光線を避けることもできない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、か
かる昇華性染料で染色されたプラスチック表面の染色画
像の化学的及び機械的損傷を防止でき、光による変褪色
も防止でき、しかも昇華性染料による染色画像の色調は
損なわれない優れた染色物を提供することを目的とす
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するた
め、請求項1に記載の発明は、表面を昇華性染料で染色
したプラスチック基材の表面に、超微粒子の紫外線吸収
剤を含む接着層を介して、昇華性染料の拡散防止層及び
表面保護層が順次積層されて成る染色物を提供する。
【0011】また、請求項2記載の発明は、表面保護層
が耐摩擦剤と熱可塑性樹脂から成り、その熱可塑性樹脂
がポリメチルメタアクリレートまたは、エポキシ樹脂で
あることを特徴とする請求項1記載の染色物を提供す
る。
【0012】また、請求項3記載の発明は、昇華性染料
の拡散防止層が、ニトロセルロースであることを特徴と
する上記染色物を提供する。
【0013】更に、請求項4記載の発明は、接着層が
0.001〜0.05μmの超微粒子の酸化亜鉛/酸化
チタン等の紫外線吸収剤と、ガラス転移点が50℃以上
の熱可塑性樹脂であることを特徴とする上記染色物を提
供する。
【0014】プラスチック基材は、好ましくは、身分証
明カード、キャッシュカード等のカードであり、この時
特に本発明の特徴を生かすことができる。使用条件が厳
しく、しかも耐久性を必要とするからである。
【0015】かかるカードは一般に表面が透明な硬質ポ
リ塩化ビニルから構成されている。例えば白色ポリ塩化
ビニルシートの両面に、透明硬質ポリ塩化ビニルシート
を接着剤又は熱融着により積層したものである。
【0016】プラスチック基材として身分証明カードを
用いた場合の例を図1に示す。(1)はカード本体から
成る基材であり、部分的に昇華性染料で顔写真が染色さ
れている(1a)。
【0017】基材表面の染色は、昇華性染料を含むイン
キを印刷した後加熱したり、あるいは昇華性染料を含む
インキを印刷した印刷物(転写箔)を重ね、加熱して染
料のみを浸透させる方法(転写染色法)により可能であ
る。基材が上述のカード又はエンボスフィルムの場合に
は、リボン状の転写箔(転写リボン)を重ね、サーマル
ヘッドで加熱する方法が簡便である。
【0018】イエローの昇華性染料としては Kayacet Y
ellowAG、Kayakut Yellow TDN(以上日本化薬(株)
製)、PTY52 、Dianix Yellow 5R-E、Dianix Yellow F3
G-E 、Dianix Brilliant Yellow 5G-E(以上三菱化成
(株))、プラスト Yellow 8040、DY108 (以上有本化
学(株)製)、Sumikaron Yellow EFG、Sumikaron Yell
owE-4GL (以上住友化学(株)製)、FORON BrilliantY
ellow S6GLPI (Sand 社製)等が例示できる。
【0019】マゼンタの昇華性染料としては、例えば K
ayacet Red 026、Kayacet Red 130、Kayacet Red B
(以上日本化薬(株)製)、Oil Red DR-99 、Oil Red
DK-99(以上有本化学(株)製)、Diacelliton Pink B
(三菱化成(株)製)、Srmikaron Red E-FBL (住友化
学(株)製)、Latyl Red B (du pont社製)、Sudan Re
d 7B (BASF社製) 、Resolin Red FB、Ceres Red 7B (以
上 Bayer社製)等が例示できる。
【0020】また、シアンの昇華性染料としては、例え
ば、Kayalon Fast Blue FG、Kayacet Blue FR 、Kayace
t Blue 136、Kayacet Blue 906(以上日本化薬(株)
製)、Oil Blue 63 (有本化学(株)製)、HSB9(三菱
化成(株)製)、Disperse Blue #1(住友化学(株)
製)、MS Blue 50(三井東圧(株)製)、Ceres Blue G
N(Bayer社製)、Duranol Brilliant Blue 2G (ICI
社製)等が例示できる。
【0021】転写リボンを用いる場合には、インキ中の
バインダーとしてポリビニルアルコールの架橋物を用い
ることが望ましい。サーマルヘッドの熱でプラスチック
基材に接着しないからである。例えばポリビニルアセタ
ール、ポリビニルブチラール等である。なお、転写リボ
ンの基材としてはポリエステルフィルム又はポリウレタ
ンのアンカーコート層を設けたポリエステルフィルムが
使用できる。
【0022】かかる転写リボンをカード等のプラスチッ
ク基材に重ね、サーマルヘッドで押圧しながら加熱する
ことにより染色できる。発熱条件は5〜50Vで良い。
かかる染色方法は特開昭63−22693号公報、もし
くは特開平3−79384号公報に記載されている。
【0023】接着層(2)はプラスチック材料表面に接
着すると共に紫外線を遮断して染料による画像の変褪色
を防止するもので、可塑剤の浸入の促進を防ぐため、拡
散防止層(3)とは別個に、しかも拡散防止層(3)よ
りプラスチック材料よりに設けられる。かかる理由から
紫外線吸収剤と熱可塑性樹脂の混合物から成る。
【0024】紫外線吸収剤は光による染料の変褪色を防
止するものである。すなわち、粒径が0.001〜0.
05μmの超微粒子の酸化亜鉛/酸化チタン/酸化珪素
が用いられる。なお、酸化珪素(SiOX )は、Xが
1.5±0.3程度であると紫外線吸収効果が大きい。
【0025】超微粒子にすることにより、可視領域にお
いて透明性を付与し、昇華性染料の画像の色調を損なわ
ず、紫外吸収能をもたせる効果がある、耐候性の優れた
透明性紫外線遮蔽被膜を形成することができる。
【0026】図3に超微粒子酸化亜鉛の分光特性を示
す。図3から明らかなように、400nm以下の紫外部
の幅広い領域に渡って紫外線を吸収する特性を有してお
り、一方可視光の吸収はほとんど見られず、良好な透明
性を有している。
【0027】接着層(2)に使用する熱可塑性樹脂はガ
ラス転移点(Tg)が50以上のものが使用できる。ガ
ラス転移点の温度が50℃未満の樹脂を使用すると、転
写の後、この樹脂により染料のマイグレーションが生
じ、画像のにじみが発生する。また、ガラス転移点11
0℃以下のものが好ましい。ガラス転移点が110℃を
超える樹脂を使用すると転写の際に高い温度を必要と
し、転写機に負荷がかかるだけでなく、ポリ塩化ビニル
カードなどのプラスチック材料が熱により変形すること
がある。
【0028】接着層(2)に使用する熱可塑性樹脂とし
ては、例えば、線状飽和ポリエステルなどのポリエステ
ル、ポリ塩化ビニルや塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹
脂などの塩化ビニル系樹脂、ポリアクリル酸、ポリアク
リル酸−2−メトキシエチル、ポリアクリル酸メチル、
ポリアクリル酸−2−ナフチル、ポリアクリル酸イソボ
ルニル、ポリメタクリロメチル、ポリアクリロニトリ
ル、ポリメチルクロロアクリレート、ポリメタクリル酸
メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸−
tert−ブチル、ポリメタクリル酸イソブチル、ポリ
メタクリル酸フェニル、メタクリル酸メチルとメタクリ
ル酸アルキル(ただしアルキル基の炭素数は2〜6)の
共重合樹脂などのアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリ
ジビニルベンゼン、ポリビニルベンゼン、スチレン−ブ
タジエン共重合樹脂、スチレンとメタクリル酸アルキル
(ただしアルキル基の炭素数は1〜6)などのビニル系
樹脂などである。
【0029】接着層(2)は、その固形分総量100重
量部に対して熱可塑性樹脂50〜90重量部、紫外線吸
収剤10〜50重量部で良い。塗布量は1〜3g/m2
が好ましい。
【0030】また昇華性染料の拡散防止層(3)は塩ビ
等のプラスチック表面に昇華性染料で染色された画像の
外部への拡散を防ぐために設けたものである。昇華性染
料の拡散を防止するためには、セルロース等の天然高分
子が適用され、通常の熱可塑性樹脂との接着性、耐熱
性、耐水性を考慮するとニトロセルロースが最適であ
る。
【0031】仮に、拡散防止層(3)がないと、長期放
置時に接着層(2)を介して、表面保護層(4)まで染
料が拡散し、可塑剤等を含んでいる消しゴムや軟質塩ビ
等にはさんでおくと消しゴムや軟質塩ビ等へ拡散転写さ
れ、画像の退色の原因になる。
【0032】また、表面保護層(4)のバインダーとし
て耐可塑剤性のない樹脂を使用すると表面保護層(4)
まで可塑剤が浸透し、画像のにじみや転写層(5a)の
機械的強度の劣化の原因になり、表面保護層(4)、拡
散防止層(3)は各々の役割分担において耐可塑剤性が
付与されるものである。また、拡散転写層(3)は接着
層(2)の役目はない、何故なら、ニトロセルロースは
耐熱性があるため、基材へ感熱転写・接着しない。
【0033】拡散転写層(3)はニトロセルロース単体
であり、その塗布量は0.5〜1.5g/m2 で良い。
【0034】また、表面保護層(4)は保護膜の機能を
果たす必要が有る。保護膜の機能とは染料による画像の
外部からの化学的及び機械的損傷を防ぐことである。こ
の両者の機能を満たすためには耐摩擦剤と熱可塑性樹脂
の混合物を使用すれば良い。
【0035】熱可塑性樹脂は可塑剤や薬品の透過を防止
すると共に引っ掻きによる傷を減少させるものである。
【0036】かかる熱可塑性樹脂としては、ポリメチル
メタアクリレートまたは、エポキシ樹脂が使用できる。
ポリメチルメタアクリレート及びエポキシ樹脂は既存の
熱可塑性樹脂の中で耐可塑剤性が優れ、これらの樹脂を
表面保護層(4)に用いることにより、画像上に軟質塩
化ビニルシートやプラスチック消しゴムなどを接触させ
た時にこれらに含まれる可塑剤の移行を防止できる。ま
た、酸、アルカリ、アルコール、灯油などの薬品の浸透
を防ぎ、画像への影響を防止することができる。
【0037】また、耐摩擦剤は耐磨耗性や耐性スクラッ
チ性の向上のために添加するものである。例えば、テフ
ロンパウダー、ポリエチレンパウダー、動物系ワック
ス、植物系ワックス、鉱物系ワックス、石油系ワックス
などの天然ワックス、合成炭化水素系ワックス、脂肪族
アルコールと酸系ワックス、脂肪酸エステルとグリセラ
イト系ワックス、水素化ワックス、合成ケトン系ワック
ス、アミン及びアマイド系ワックス、塩素化炭化水素系
ワックス、合成動物ロウ系ワックス、アルファーオレフ
ィン系ワックスなどの合成ワックス、及びステアリン酸
亜鉛などの高級脂肪酸の金属塩などをあげることができ
る。
【0038】表面保護層(4)は、熱可塑性樹脂と耐摩
擦剤の合計量100重量部に対して熱可塑性樹脂85〜
95重量部、耐摩擦剤5〜15重量部で良い。
【0039】表面保護層(4)は、転写箔を利用する場
合には、転写時の切れを向上するために剥離改善剤混合
することもできる。例えば線状飽和ポリエステル樹脂で
ある。ただし添加剤は上記熱可塑性樹脂と耐摩擦剤の合
計量100重量部に対し、0〜3重量部に限るべきであ
る。
【0040】なお、表面保護層(4)にはこの他の添加
物、例えば紫外線吸収剤等を添加しないことが望まし
い。添加により耐薬品性がおちたり、または可塑剤の浸
入が容易になり、表面保護層(4)の機械的強度劣化の
原因となるからである。
【0041】また、表面保護層(4)の塗布量は1〜3
g/m2 で良い。
【0042】接着層(2)と表面保護層(4)はプラス
チック基材(1)上に直接成形しても良いが、一旦他の
ベースシート上に剥離容易に形成して転写箔とし、プラ
スチック基材表面に転写する方法が簡便である。この場
合には表面保護層(4)はベースフィルムから剥離容易
に形成されている必要がある。
【0043】なお、転写箔のベースフィルム(5)は、
転写時の熱圧で軟化変形しない耐熱性を必要とする。か
かるベースフィルム(5)は公知であり、例えば厚さ3
〜30μmの二軸延伸したポリエチレンテレフタレート
フィルムを使用できる。
【0044】転写箔(6)は、まず、表面保護層組成物
を適当な溶剤により塗料化し、その塗料をベースフィル
ム(5)上にグラビア塗布、ロールコーティング塗布、
またはバーコート塗布などの塗布方法で塗布乾燥し、次
いで接着剤組成物を塗料化して塗布すれば良い。接着剤
組成物の塗料化及び塗布方法は表面保護層組成物の塗料
化及び塗布方法と同様である。
【0045】こうして得られる転写箔(6)は、図1に
示すように、ベースフィルム(5)、表面保護層
(4)、拡散防止層(3)、接着層(2)から成る。
【0046】この転写箔(6)は、昇華性染料で染色さ
れたプラスチック基材に重ね、熱圧した後、ベースフィ
ルム(5)のみを剥離除去して、転写し、本発明の染色
物を得ることができる。転写は接着層(2)に含まれる
熱可塑性時油脂の軟化点以上の温度に加熱して行なうこ
とができる。通常150〜250℃である。時間は1〜
10秒程度で良い。
【0047】なお、本発明の染色物は、カードに限ら
ず、昇華性染料で染色された任意のプラスチック材料に
適用できることは明らかであろう。
【0048】
【実施例】
<実施例1> 表面保護層塗料の組成 ポリメチルメタアクリレート(Tg:105℃) 10 重量部 (三菱レーヨン製 BR−80) テフロンパウダー 1 〃 トルエン/2−ブタノン(1/1) 40 〃
【0049】 拡散防止層塗料の組成 ニトロセルロース 15 重量部 (ダイセル化学工業製 セルラインFM200) トルエン/2−ブタノン(1/2) 85 〃
【0050】 接着層塗料の組成 塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(Tg:65℃) 10 重量部 (積水化学製 エストックA) 超微粒子酸化亜鉛(住友セメント社製 酸化亜鉛) 2.5 〃 トルエン/2−ブタノン(2/1) 40 〃
【0051】厚さ12μmのポリエチレンテレフタレー
トフィルム上に、グラビアコーターを用いて、上記表面
保護層塗料を乾燥重量2.5g/m2 になるように塗布
乾燥して表面保護層(4)を形成した。その層上に上記
拡散防止層塗料をグラビアコーターで乾燥重量が0.8
g/m2 になるように塗布乾燥して拡散防止層(3)を
形成した。さらにその層上に、上記接着層塗料をグラビ
アコーターで乾燥重量が1.8g/m2 になるように塗
布乾燥して接着層(2)を形成して転写箔を製造した。
【0052】ポリ塩化ビニルカード上にカラーサーマル
プリンターを用いて昇華転写リボンによりイエロー、マ
ゼンタ、シアンの各色を転写染色した。この染色面に上
記転写箔をラミネーター(明光商会製MSパウチH−1
40)により150℃、2秒の条件でラミネートし、ベ
ースフィルムを除去し、染色物を作成した。なお、昇華
転写リボンは厚さ6μmのポリエステルフィルム上に染
料とポリビニルブチラールから成る三色の昇華性インキ
を塗布したもので、イエローの染料はKacet Ye
llowAG(日本化薬製)、マゼンタの染料はKay
acet Red 026(日本化薬製)、シアンの染
料はHSB9(三菱化成製)である。
【0053】<実施例2> 表面保護層塗料の組成 エポキシ樹脂(軟化点169℃) 10 重量部 (シェル化学社製 エピエ−ト E−1010) ポリエチレンパウダー 0.5 〃 トルエン/2−ブタノン(1/2) 40 〃
【0054】 拡散防止層塗料の組成 ニトロセルロース 15 重量部 (ダイセル化学工業製 セルラインFM200) トルエン/2−ブタノン(1/2) 85 〃
【0055】 接着層塗料の組成 線状飽和ポリエステル樹脂(Tg:65℃) 10 重量部 (ユニチカ製 UE−3200) 超微粒子酸化チタン(出光興産社製 出光チタニア) 6 〃 トルエン/2−ブタノン(1/1) 40 〃
【0056】厚さ16μmのポリエチレンテレフタレー
トフィルム上に上記各塗料を実施例1と同様に塗布して
転写箔を製造し、実施例1と同様な方法で染色物を作成
した。
【0057】<実施例3>Tg:65℃の飽和ポリエス
テル樹脂の代わりにTg:47℃の飽和ポリエステル樹
脂(東洋紡製バイロン300)を使用した以外は実施例
2と同様に転写箔を製造し、実施例1と同様な方法で染
色物を作成した。
【0058】<実施例4>熱可塑性樹脂と耐摩擦剤の合
計量100重量部に対し、剥離改善剤として線状飽和ポ
リエステル樹脂(東洋紡製バイロン300)を2重量部
添加した表面保護層を使用した外は実施例1と同様に転
写箔を製造し、実施例1と同様な方法で染色物を作成し
た。
【0059】<比較例1>転写箔を使用せず、染色した
カード自体を比較例1とした。
【0060】<比較例2> 紫外線吸収剤としては2−(2’−ヒドロキシ−5’−
メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを使用した。この
こと以外は、実施例1と同様に転写箔を製造し、実施例
1と同様な方法で染色物を作成した。
【0061】<比較例3> 表面保護層塗料の組成 ニトロセルロース 4 重量部 (ダイセル化学工業製 セルラインFM200) ポリメチルメタアクリレート(Tg:105℃) 6 〃 (三菱レーヨン製 BR−80) テフロンパウダー 1 〃 トルエン/2−ブタノン(1/1) 40 〃
【0062】 接着層塗料の組成 塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(Tg:65℃) 10 重量部 (積水化学製 エスレックA) 超微粒子酸化亜鉛 2.5 〃 (住友セメント社製 酸化亜鉛) トルエン/2−ブタノン(2/1) 40 〃
【0063】厚さ12μmのポリエチレンテレフタレー
トフィルム上にグラビアコーターを用いて、上記表面保
護層塗料を乾燥重量3.0g/m2 になるように塗布乾
燥して表面保護層を形成した。その層上に上記接着層塗
料をグラビアコータで乾燥重量が1.8g/m2 になる
ように塗布乾燥して接着層を形成して転写箔を製造し、
実施例1と同様な方法で染色物を作成した。
【0064】実施例1〜3及び比較例1〜2の耐スクラ
ッチ性、耐磨耗性、耐溶剤性、耐熱性、耐光性を表1に
示す。なお、各データは以下の方法により試験したもの
である。
【0065】
【表1】
【0066】耐スクラッチ性…Hの鉛筆により鉛筆試験
機を用いて表面をひっかき、強度を測定。傷が付かない
ものを○、傷が付いたものを×。
【0067】耐磨耗性…学振式堅牢度試験機(摩擦材と
して金属を使用)にてカード表面を2000回こすり、
表面の変化を観察。変化のないものを○、変化のあるも
のを×。
【0068】耐可塑剤性…軟質ポリ塩化ビニルシートを
カード表面に接触させて、荷重200g/cm2 をか
け、40℃、90%R.H.の環境下に24時間、48
時間及び100時間各々保存し、画像の色の変化及び褪
色、にじみ等を観察。変化しないものを○、変褪色やに
じみのあるものを×。
【0069】耐溶剤性…フレオン、エタノール、ガソリ
ンを綿棒にしみこませ、カード表面をこすり、変化を観
察。全く変化の無いものを○、一度でも変化したものを
×。
【0070】耐熱性…50℃、90%R.H.の環境下
に48時間保存し、画像の変褪色を観察。変化無いもの
を○、変褪色のあるものを×。
【0071】耐光性…フェードメーターにて紫外線を4
0時間照射後、画像の反射濃度の減少率を測定。
【0072】この表から明らかなように、実施例1〜4
では画像の光による変褪色を防止すると共に、可塑剤を
含んだプラスチック等の外部への画像の拡散移行を防ぐ
ことができ優れた耐可塑剤性を付与し、さらに耐スクラ
ッチ性、耐磨耗性、耐溶剤性等の各種化学的および機械
的損傷を防止することができる。また、実施例1、2お
よび4では、これに加えて熱によるブリードの生じない
プラスチック染色物を製造することができる。
【0073】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、昇華性
染料で染色したプラスチック材料上に転写されて耐可塑
剤性と共に、耐スクラッチ性、耐磨耗性、耐溶剤性など
の各種化学的及び機械的損傷を防止し、また紫外線等の
光による変褪色を防ぐことが出来、しかも、そのプラス
チック材料上に転写された層は透明性に優れており昇華
性染料による染色画像の色調を損なわれない優れた染色
物が得られる。
【0074】また、これに加えて、接着層にガラス転移
点50℃以上の熱可塑性樹脂を使用すれば、熱による画
像変化を生じないという効果を奏することができる。
【0075】このため、プリペイドカードや身分証明カ
ード等の情報記録カード等に利用することができる。
【0076】
【図面の簡単な説明】
【図1】染色物の断面図である。
【図2】転写箔の断面図である。
【図3】超微粒子酸化亜鉛の分光特性を示す説明図であ
る。
【符号の説明】
1 プラスチック基材 1a 部分的な昇華性染料による顔写真 2 接着層 3 染料の拡散防止層 4 表面保護層 5 ベースシート 6 転写箔 6a 転写層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B32B 27/18 B32B 27/18 A (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D06P 5/00 B32B 7/02 103 B32B 27/18

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】表面を昇華性染料で染色したプラスチック
    基材の表面に、超微粒子の紫外線吸収剤を含む接着層を
    介して、昇華性染料の拡散防止層及び表面保護層が順次
    積層されて成る染色物。
  2. 【請求項2】表面保護層が耐摩擦剤と熱可塑性樹脂から
    成り、その熱可塑性樹脂がポリメチルメタアクリレート
    または、エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1
    記載の染色物。
  3. 【請求項3】昇華性染料の拡散防止層がニトロセルロー
    スであることを特徴とする請求項1または2記載の染色
    物。
  4. 【請求項4】接着層が0.001〜0.05μmの超微
    粒子の酸化亜鉛/酸化チタン/酸化珪素等の紫外線吸収
    剤と、ガラス転移点が50℃以上の熱可塑性樹脂から成
    ることを特徴とする請求項1または2または3記載の染
    色物。
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