JP2779108B2 - 外壁目地部の防水構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、壁材又は壁パネルと
隣の壁材又は壁パネルとの間の隙間を塞いで防水するた
めの外壁目地部の防水構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】壁材又は壁パネルを複数枚並べて建物の
壁部分に取り付けると、壁材又は壁パネルと隣の壁材又
は壁パネルとの間に目地と称する隙間が生じる。このよ
うな隙間（以下、目地部隙間という）をそのままに放置
していると、この目地部隙間から雨水が浸入し、室内が
濡れたり、また、寒期においては、浸入した雨水が壁の
中で凍結膨張して、壁内の微小隙間を広げ、壁材又は壁
パネルを破砕する等のいわゆる凍害が発生する。そこ
で、従来から、目地部隙間を防水するための工夫が数多
くなされているが、目地部隙間に屋外側からガスケット
を挿入する、いわゆる乾式の防水構造が、セメントモル
タル等を塗り込む、いわゆる湿式の防水構造よりは、施
工が簡単であり、施工後、乾燥してひび割れ等がないた
め、広く採用されている。ところで、前者の構造、すな
わち、乾式の防水構造の一つとして、例えば、特開平３
−２６０２４０号公報に記載されているように、目地部
隙間をファスナー付きの防水シートで塞ぎ、さらに、外
側からガスケットを挿入して防水する方式のものが知ら
れている。

【０００３】上記公報記載の防水施工をするには、予め
工場において、防水シートの長手側の一側縁部に、噛合
片がゴムで被覆されているファスナーを取り付けた後、
この防水シートの他の側縁部を壁パネルを構成する屋外
側の面材と縦枠との間に介挿させて接着することによ
り、ファスナーの付いた防水シートを壁パネルの垂直木
口面に取り付ける。次に、建築現場において、防水シー
ト付きの上記壁パネルを複数枚並べた後、 まず、形
成されたそれぞれの目地部隙間から互いに対をなす２枚
の防水シートを引き出し、 互いのファスナーを噛み
合わせて両者を接合する。次いで、 接合によって一
体化された防水シートを再びそれぞれの目地部隙間へ挿
入し、この後、 ガスケットを屋外側から挿入する。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公
報記載の防水施工にあっては、上記したように、 防
水シートの引き出し作業、 ファスナーの噛み合わせ
作業、 防水シートの再挿入作業、及び ガスケット
の挿入作業等、４つの施工工数を必要とするため、目地
部隙間が狭小な場合には、とりわけ、手間がかかり煩雑
であるという不都合があった。また、壁パネルの垂直木
口面は、建物の外観を構成しないため、不陸のままであ
る。加えて、表面塗装時に付着した塗液の飛沫が固化し
て、凸部や凹部を形成している。それ故、挿入されたガ
スケットと垂直木口面との間には、小さな隙間が点在
し、激しい風雨の際には、この隙間から風雨が進入し
て、防水シートを膨らませ、これにより、ファスナーの
噛合が緩んで雨水が進入する畏れがある。

【０００５】この発明は、上述の事情に鑑みてなされた
もので、簡易かつ迅速に施工できると共に、激しい風雨
に対しても、完全かつ確実に防水を達成することができ
る外壁目地部の防水構造を提供することを目的としてい
る。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、請求項１記載の外壁目地部の防水構造は、隙間を隔
てて互いに向かい合う、壁材又は壁パネルの垂直木口
面、及び隣の壁材又は壁パネルの垂直木口面に、一対の
薄板状の水切り材が設けられ、これら一対の水切り材
は、それぞれの屋内側側縁部が、互いに向かい合う側に
かつ屋外側に向けて折り返され、かつ、これら一対の水
切り材の間にガスケットが屋外側から挿入されているこ
とを特徴としている。

【０００７】また、請求項２記載の外壁目地部の防水構
造は、上記各水切り材と、対応する上記垂直木口面との
間に、防水層を設けるようにしたことを特徴としてい
る。

【０００８】さらにまた、請求項３記載の外壁目地部の
防水構造は、上記ガスケットを、防水性発泡体から形成
するようにしたことを特徴としている。

【０００９】

【作用】この発明の構成において、各水切り材は、予め
工場等において、例えば、（請求項２記載の防水層に相
当する）防水性粘着層を介して、壁材又は壁パネルの垂
直木口面に粘着固定される。また、上記ガスケットは、
建築現場等において、壁材又は壁パネルを複数枚並べる
ことにより生じた、それぞれの目地部隙間に屋外側から
挿入される。ガスケットは、各水切り材の折り返された
屋内側側縁端に突き当たるところまで、挿入される。上
記発明の構成によれば、上記従来の防水構造においては
必要とされる、防水シート（水切り材）の引き出し作
業、 ファスナーの噛み合わせ作業、防水シートの
再挿入作業等が不要となるので、簡易かつ迅速に施工で
きる。また、壁材又は壁パネルの垂直木口面が、不陸で
ある場合でも、水切り材（又は防水層及び水切り材）を
被覆することにより、不陸が緩和されるので、ガスケッ
トの挿入が一段と容易となる。また、壁材又は壁パネル
の垂直木口面が、不陸であるために、水切り材と垂直木
口面との間（又は防水層と垂直木口面との間、又は水切
り材と防水層との間）に小さな隙間が多数存在する場合
でも、例えば発泡体からなるガスケットを挿入すると、
水切り材（及び防水層）がガスケットの弾力により押圧
されるので、隙間は完全に塞がれる。さらに、ガスケッ
トと水切り材との間も、ガスケットの柔軟性と弾力性と
により確実に塞がれる。ガスケットに欠陥があるため、
ガスケットと水切り材との間に、万が一、隙間が生じて
も、水切り材の屋内側側縁部が屋外側へ折り返されてい
るので、その部位から先への雨水の進入は阻止される。
それ故、完全かつ確実に防水を達成することができる。
なお、目地部隙間が比較的広幅な場合には、目地部が形
成された後に、防水性粘着層、水切り材等を取付固定す
ることも可能である。

【００１０】

【実施例】以下、図面を参照してこの発明の実施例につ
いて説明する。図１は、この発明の一実施例である外壁
目地部の防水構造を示す水平断面図、図２は、同防水構
造に適用されるガスケットを示す斜視図、図３は、同防
水構造に適用される水切り材の取付状態を示す斜視図、
また、図４は、同防水構造の施工手順を示す水平断面図
である。図１において、符号１は、この例の防水施工の
対象である外壁目地部を示し、この外壁目地部１は、建
築現場においてユニット建物を組み立てる際に、基礎の
上に据え付けられる部屋ユニットの壁パネル２と、その
隣に据え付けられる部屋ユニットの壁パネル３との間に
生じる。ユニット建物とは、一棟の建物を予めいくつか
の部屋ユニットや屋根ユニットに分けて工場生産し、こ
れらを建築現場において施工、組立する方式の建物であ
る。部屋ユニットとは、床パネルの側縁部に壁パネルを
立設して構成される、建物の居間、食堂、寝室等の各部
屋部分となる箱型の建物ユニットのことである。また、
各壁パネル２，３は、上枠、下枠及び複数の縦枠２１，
３１によって組み立てられた壁枠組の内外両側に石膏ボ
ードや木片セメント板等の面材２２，３２を取り付ける
ことによって耐力壁として構成されている。

【００１１】上記外壁目地部１は、１０ｍｍ〜２０ｍｍ
の範囲に設定される目地部隙間１１と、この目地部隙間
１１を挟んでそれぞれ対置される、最外側の縦枠２１，
３１と、面材２２，３２の側縁部とから概略構成されて
いる。ここで、上記縦枠２１及び面材２２は、壁パネル
２の構成部材であり、上記縦枠３１及び面材３２は、壁
パネル３の構成部材である。なお、面材２２，３２の表
面は、外観を美麗にするためと、雨水を吸い込むと面材
２２，３２が朽ちるので、塗膜２３，３３によって被覆
されている。

【００１２】次に、外壁目地部１の防水構造は、目地部
隙間１１を画定する両側の目地壁に粘着固定した一対の
ブチルゴム膜４，５と、これらブチルゴム膜４，５に粘
着固定された一対の水切り材６，７と、これら水切り材
６，７の間に挿入されたガスケット８とから概略構成さ
れている。上記ブチルゴム膜４，５は、耐候性と防水性
とに優れる、厚さ略２ｍｍ程度の粘着部材であり、互い
に向かい合って目地壁を構成する左右の面材２２，３２
の垂直木口面に、それぞれ長手方向に沿って、粘着固定
して自着するようにされている。

【００１３】上記水切り材６，７は、例えばポリプロピ
レン等の合成樹脂素材を押出成形して一体的な薄板状の
もの（厚さ略１ｍｍ）として得られ、それぞれ、固定片
６１，７１と、係止片６２，７２と、水切り片６３，７
３とから構成されている。上記固定片６１，７１は、目
地壁に沿って設けられ、ブチルゴム４，５を介して、面
材２２，３２の垂直木口面に粘着固定されている。上記
係止片６２，７２は、面材２２，３２（塗膜２３，３
３）の表面に当接して防水目的を果たす他、水切り材
６，７を取り付ける際の位置決めを容易にするための係
止機能を有し、固定片６１，７１の屋外側側縁端に、互
いに外向きに屈曲連設されている。また、上記水切り片
６３，７３は、ガスケット８の位置決め機能を果たす
他、万が一、雨水が内部に進入した場合に、雨水がさら
に先へ進むのを阻止するためのもので、固定片６１，７
１の屋内側側縁端に、互いに内向きに、かつ屋外に向け
て折り返された状態で連設されている。

【００１４】また、上記ガスケット８は、ＥＰＤＭ（エ
チレン−プロピレン−ジエン−ターポリマ）と称する耐
候性の良い合成ゴムの素材に発泡剤を加えて押出成形す
ることにより、中空円柱型状の発泡体（図２参照）とし
て得られ、弾力性と柔軟性と防水性とに優れる。なお、
ガスケット８の外径寸法は、目地部隙間１１の横幅寸法
よりも長め目に設定されている。

【００１５】次に、この例の防水構造の施工手順につい
て説明する。まず、工場において、床パネルの側縁部に
壁パネル２を立設して部屋ユニットを形成した後に、図
３に示すように、係止片６２を面材２２（塗膜２３）の
表面に当接させた状態で、固定片６１を予め貼着された
ブチルゴム４に粘着固定することにより、水切り材６を
面材２２の木口面に取付固定する。なお、他の壁パネル
の側縁部に対しても、同様の作業手順により、水切り材
６と同一構成同一形状（又は対称形）の水切り材を取付
固定する。次に、上記部屋ユニットは、建築現場に輸送
されて、ユニット建物を構成するために基礎の上に据え
付けられる。このとき、複数の部屋ユニットが隣接して
据え付けられると、図４に示すように、目地部隙間１１
が形成される。この後、外壁目地部１の防水施工時、形
成された目地部隙間１１へ、同図に示すように、外側か
らガスケット８を、その前面が水切り片６３，７３の側
縁端に突き当たるところまで、挿入する。最後に、図５
に示すように、化粧板９によって、目地部隙間１１を覆
い隠して外観を美麗にする。

【００１６】このように、上記構成によれば、建築現場
においては、ガスケット８の挿入作業と化粧板９の取付
作業のみで防水施工が完了するので、施工が簡易かつ迅
速となる。また、壁パネル２，３（面材２２，３２）の
垂直木口面が、不陸であるために、ブチルゴム膜４，５
と垂直木口面との間、又は水切り材６，７とブチルゴム
膜４，５との間に小さな隙間が多数存在する場合でも、
発泡体故に、弾力性のあるガスケット８を挿入すると、
水切り材６，７及びブチルゴム膜４，５がガスケット８
により押圧されるので、隙間は完全に閉塞される。さら
に、ガスケット８と水切り材６，７との間も、ガスケッ
ト８の柔軟性と弾力性とにより確実に閉塞される。ガス
ケット８に欠陥があるため、ガスケット８と水切り材
６，７との間に、万が一、隙間が生じても、屋外側に折
り返された水切り片６３，７３によって、その部位から
先への雨水の進入は阻止される。それ故、完全かつ確実
に防水を達成することができる。

【００１７】以上、この発明の実施例を図面により詳述
してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られるもの
ではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変
更等があってもこの発明に含まれる。例えば、ガスケッ
トの形状は、中空円柱形状に限らず、中空楕円柱形状で
も良く、単なる円柱形状、楕円柱形状でも良い。また、
上述の実施例においては、ガスケット８を発泡性のＥＰ
ＤＭから成形するようにした場合について述べたが、こ
れに限らず、他の合成ゴム、天然ゴム等のゴムや、軟質
ウレタン樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、アクリル酸樹脂等
の軟質合成樹脂等から発泡成形するようにしても良い。
また、ブチルゴム４，５に代えて、アクリル系粘着部材
を用いるようにしても良い。また、水切り材６，７の係
止片６２，７２は、適宜、省略することも可能である。

【００１８】

【発明の効果】以上説明したように、この発明の外壁目
地部の防水構造によれば、上記従来の防水構造において
は必要とされる、 防水シート（水切り材）の引き出
し作業、 ファスナーの噛み合わせ作業、 防水シー
トの再挿入作業等が不要となるので、簡易かつ迅速に施
工できる。また、壁材又は壁パネルの垂直木口面が、不
陸である場合でも、水切り材（又は防水層及び水切り
材）により上記垂直木口面を被覆することにしたので、
不陸が緩和されるので、ガスケットの挿入が一段と容易
となる。また、壁材又は壁パネルの垂直木口面が、不陸
であるために、水切り材と垂直木口面との間（又は防水
層と垂直木口面との間、又は水切り材と防水層との間）
に小さな隙間が多数存在する場合でも、例えば発泡体か
らなるガスケットを挿入すると、水切り材（及び防水
層）がガスケットの弾力により押圧されるので、隙間は
完全に塞がれる。さらに、ガスケットと水切り材との間
も、ガスケットの柔軟性と弾力性とにより確実に塞がれ
る。ガスケットに欠陥があるため、ガスケットと水切り
材との間に、万が一、隙間が生じても、水切り材の屋内
側側縁部が屋外側へ折り返されているので、その部位か
ら先への雨水の進入は阻止される。それ故、完全かつ確
実に防水を達成することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施例である外壁目地部の防水構
造を示す水平断面図である。

【図２】同防水構造に適用されるガスケットを示す斜視
図である。

【図３】同防水構造に適用される水切り材の取付状態を
示す斜視図である。

【図４】同防水構造の施工手順を示す水平断面図であ
る。

【図５】同防水構造を示す水平断面図である。

【符号の説明】

１ 外壁目地部 １１ 目地部隙間（隙間） ２ 壁パネル（壁材又は壁パネル） ３ 隣の壁パネル（隣の壁材又は壁パネル） ４，５ ブチルゴム膜（防水層） ６，７ 水切り材 ６３，７３ 水切り片（水切り材の屋内側側縁部） ８ ガスケット

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 壁材又は壁パネルと隣の壁材又は壁パネ
   ルとの間の隙間を塞いで防水するための外壁目地部の防
   水構造であって、 前記隙間を隔てて互いに向かい合う、前記壁材又は壁パ
   ネルの垂直木口面、及び前記隣の壁材又は壁パネルの垂
   直木口面に、一対の薄板状の水切り材が設けられ、これ
   ら一対の水切り材は、それぞれの屋内側側縁部が、互い
   に向かい合う側にかつ屋外側に向けて折り返され、か
   つ、 これら一対の水切り材の間にガスケットが屋外側から挿
   入されていることを特徴とする外壁目地部の防水構造。
2. 【請求項２】 前記各水切り材と対応する前記垂直木口
   面との間には、防水層が設けられていることを特徴とす
   る請求項１記載の外壁目地部の防水構造。
3. 【請求項３】 前記ガスケットは、防水性発泡体からな
   るものであることを特徴とする請求項１又は２記載の外
   壁目地部の防水構造。