JP2776801B2 - N−モノ置換ヒドロキシルアミンの製造方法 - Google Patents

N−モノ置換ヒドロキシルアミンの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はニトロン(nitrones)
の新規な合成方法に関するものであり、特に、第二級ア
ミンからニトロンを合成する段階を含むN−モノ置換ヒ
ドロキシルアミンの合成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】アルキルヒドロキシルアミンは還元剤お
よびフリーラジカル補足剤として知られ、重合防止剤ま
たはボイラーの水処理における腐蝕防止剤として使用さ
れている。ヒドラジンや亜硫酸ナトリウム等の従来型の
腐蝕防止剤に比較して、アルキルヒドロキシルアミンは
加熱管だけでなく凝縮装置も保護できるという利点があ
り、ボイラーの水処理プラント全体を腐蝕から保護する
ことができる。N-モノ置換アルキルヒドロキシルアミン
は種々の方法で合成できる。欧州特許第147,879 号に
は、白金ベースの水素化触媒と添加剤、例えば窒素含有
塩基および3価または5価の有機リン化合物との存在下
でニトロアルカンを還元してアルキルヒドロキシルアミ
ンを合成する方法が記載されている。しかし、アルキル
ヒドロキシルアミンは貯蔵安定性が悪く(欧州特許第 3
21,219号)、ニトロアルカンからの合成方法は選択性が
あまり高くないという欠点がある。
【0003】また、ニトロンの酸加水分解によってN-モ
ノ置換アルキルヒドロキシルアミンが生成することは知
られている。ニトロンは重要な合成中間体であると同時
に非常に優れたフリーラジカル補足剤である。第2級ア
ミンからニトロンを合成する今日までの方法は全て遷移
金属ベースの触媒を用いるものである。例えば J. Che
m. Soc. Chem. Commun. p.874(1984)で H. Mitsui達
は、30%の過酸化水素水とタングステン酸ナトリウムと
を用いてアルゴン雰囲気下、温度0℃で第2級アミンを
ニトロンへ酸化し、その後ジクロロメタンを用いて反応
混合物からニトロンを抽出している。
【0004】Shun-ichi Murahashi 達は J. Org. Che
m., 1990, 55, 1736-1744 で、タングステン酸ナトリウ
ムの存在下でジイソプロピルアミンを過酸化水素で酸化
することによってジイソプロピルニトロンを74%の収率
で合成している。反応溶媒はメタノールである。同じ著
者によれば(Tetrahedron Letters, Vol. 28, No.21,
p.2383-2386)、二酸化セレンの存在下で過酸化水素を
用いて第2級アミンを酸化する方法でもニトロンが合成
でき、メタノール中でジイソプロピルアミンを酸化する
ことによって66%の収率でジイソプロピルニトロンが生
成する。
【0005】ペルオキソタングストホスフェート(PCWP)
のようなヘテロポリオキソメタレートを用いて第2級ア
ミンをニトロンへ酸化することも知られている。この場
合の温度は0℃、溶媒はクロロホルムである(S. Sakav
e 達、Chemistry Letters, p289-292, 1992)。Marcanto
ni達は Tetrahedron Letters, Vol.36, No.20, p.3561-
3562 (1995)で、尿素−H2O2(UHP)錯体を用い、遷移金
属をベースとした触媒の存在下で第2級アミンをニトロ
ンへ酸化している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者達は、高収率
でニトロンを合成する新規な方法を見出した。この方法
では溶媒として水を用いることができ、遷移金属ベース
の触媒は用いないという利点がある。本発明はさらに、
上記のような欠点のない、第2級アミンからN-モノ置換
ヒドロキシルアミンの合成方法を提供する。本発明の他
の利点は経済的価値の高いカルボニル副生成物 (アルデ
ヒドまたはケトン) が得られるという点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の対象は、窒素原
子に対してα位にある少なくとも1つの炭素原子に少な
くとも1つの水素原子を有する第2級アミンを、酸化剤
と、二酸化炭素、炭酸水素塩および炭素塩からなる群の
中から選択される少なくとも一種の化合物とを用いて酸
化することを特徴とする第2級アミンからニトロンを合
成する方法にある。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明では下記〔化1〕の一般式
で表される第2級アミンを使用する:
【0009】
【化1】 (ここで、R1 およびR2 はそれぞれ1〜8個の炭素原
子を含む直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基、例えば
メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イ
ソブチル、 tert-ブチル、アミル、ヘキシルまたはシク
ロヘキシルラジカル、アリール基、例えばフェニルまた
はトリル基あるいはアラルキル基、例えばベンジル基を
表し、互いに同一でも異なっていてもよい) R1 とR2 基は互いに結合して置換基を有していてもよ
いリング、例えばピロリジン、ピペリジン、ヘキサメチ
レンイミンまたはヘプタメチレンイミン等の環を形成し
ていてもよい。環を形成しない第2級アミンを用いるの
が有利であり、R1 およびR2 基が同じである非環状の
第2級アミンを使用するのがさらに好ましい。R1 およ
びR2 基としては特に、メチル、エチル、プロピル、イ
ソプロピル、ブチルおよびイソブチルよりなる群の中か
ら選択されるものが挙げられ、ジイソプロピルアミンを
使用するのが好ましい。環状または非環状の第2級アミ
ンのニトロンへの変換は下記〔化2〕に示す公知の反応
式で表すことができる:
【0010】
【化2】 本発明によるニトロンの合成は溶媒なしでも行えるが、
溶媒を用いて反応を行うのが好ましい。溶媒は水または
極性の有機溶媒、例えばメタノールまたはアセトンにす
ることができる。溶媒の量は広範囲で変えることができ
る。一般には、溶媒/第2級アミンの比が 0.1〜10、好
ましくは 0.5〜1となるような量を使用する。溶媒とし
ては水を用いるのが有利である。溶媒を用いて反応を行
う場合、第2級アミンは溶媒よりも前または後あるいは
溶媒と同時に反応器に導入することができる。第2級ア
ミンおよび場合によっては溶媒を反応器に導入する時の
温度は、一般に室温〜70℃にする。第2級アミンおよび
必要な場合の溶媒は室温で導入するのが好ましい。
【0011】本発明方法で使用する酸化剤は過酸化物、
ヒドロペルオキシドおよび過酸から選択することができ
る。例としては過酸化水素、 tert-ブチルヒドロペルオ
キシドまたはメタ−クロロパー安息香酸を挙げることが
できる。濃度5〜70重量%の過酸化水素溶液を使用する
のが好ましい。過酸化水素の濃度は特に30〜50重量%が
有利である。第2級アミンをニトロンに変換するのに必
要な酸化剤の量は、一般に酸化剤/第2級アミンのモル
比で1〜4であり、好ましくは2前後である。本発明で
は、酸化剤は二酸化炭素、炭酸水素塩および炭酸塩より
なる群の中から選択される少なくとも一種の化合物と組
み合わせて使用される。この化合物は酸化剤よりも前に
反応混合物に導入するのが好ましい。炭酸水素塩として
は炭酸水素アンモニウムまたはアルカリ金属の炭酸水素
塩、例えば炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウム
等を挙げることができる。
【0012】炭酸塩としては炭酸アンモニウムまたはア
ルカリ金属炭酸塩、例えば炭酸ナトリウムまたは炭酸カ
リウムを挙げることができる。これらの反応剤は一般に
二酸化炭素および/または炭酸水素塩および/または炭
酸塩と第2級アミンとのモル比が 0.1〜1、一般には
0.1〜0.3 となるような量で使用する。二酸化炭素は酸
化剤と組み合わせて使用するのが有利である。第2級ア
ミンのニトロンへの酸化は一般に20℃〜80℃、好ましく
は50℃〜70℃で行う。第2級アミンの酸化は大気圧以上
の圧力下でも行えるが、一般には反応は大気圧下で行
う。
【0013】本発明の方法によって得られたニトロン
は、溶液中に保存するか、従来法(蒸留、抽出)で反応
混合物から単離するか、N-モノ置換ヒドロキシルアミン
へ直接加水分解することができる。従って、本発明の他
の対象は、上記で得られたニトロンを加水分解するN-モ
ノ置換ヒドロキシルアミンの合成方法にある。本発明に
よるN-モノ置換ヒドロキシルアミンの合成方法は、窒素
に対してα位にある少なくとも1つの炭素原子上に少な
くとも1つの水素原子を含む第2級アミンから、酸化剤
を用い、二酸化炭素、炭酸水素塩および炭酸塩より選択
される少なくとも一種類の化合物の存在下で合成される
ニトロンを加水分解することを特徴とする。
【0014】ニトロンの加水分解反応は無機酸または有
機酸の存在下で行うことができる。無機酸は塩酸、硫酸
またはリン酸より選択するのが有利であり、有機酸とし
ては酢酸または蓚酸を使用するのが好ましい。酸は通
常、H+ /第2級アミンで表されるモル比が 0.9〜2、
好ましくは1前後となるような量とする。加水分解温度
は第2級アミンの酸化段階で使用する温度と同一すなわ
ち50〜70℃にするのが好ましい。ニトロンの加水分解は
一般に大気圧よりも低い圧力で行われる。一定の減圧下
か、加水分解中に除々に圧力を低下させて非環状ニトロ
ンの場合に生成するカルボニル副生成物を除去するのが
好ましい。生成するN-モノ置換ヒドロキシルアミンは減
圧下で溶媒を蒸発させることによって塩の形で単離する
ことができる。非環状ニトロンの加水分解は下記〔化
3〕で表すことができる:
【0015】
【化3】 特に好ましいN-モノ置換ヒドロキシルアミンは一般式R
−NHOH(ここで、Rはメチル、エチル、プロピル、
イソプロピル、ブチルまたはイソブチル基)で表され
る。本発明方法ではイソプロピルヒドロキシルアミンを
合成するのが有利である。N-モノ置換ヒドロキシルアミ
ンの形成に必要な水はニトロンよりも前か後か、ニトロ
ンと同時に反応器に導入することができ、あるいはニト
ロン合成で溶媒として用いた水に由来してもよい。環状
ニトロンを加水分解するとカルボニル基を含む官能基を
有するN-モノ置換ヒドロキシルアミンが得られる。環状
ニトロンとは、窒素原子が環の一部を構成するニトロン
を意味するものとする。本発明は下記実施例からより明
瞭に理解されよう。
【0016】一般的方法 温度を17℃〜30℃に制御するサーモスタット付き反応器
に、水、次いで酸化すべき第2級アミンを導入する。次
いで、攪拌しながら反応器に二酸化炭素および/または
炭酸水素塩および/または炭酸塩を導入する。添加後、
反応混合物を50℃〜70℃に30分以上かけて加熱する。混
合物が所定の温度に達したところで、1時間〜3時間か
けて酸化剤を添加する。第2級アミンの変換およびニト
ロンの生成を気相クロマトグラフィーを用いてモニター
する(50メートルのChrompack CPWAX 51 CB カラム、FI
D 検出器、内部標準を使用した温度プログラミングで分
析)。生成したニトロンは第2級アミンが完全に変換さ
れた後に反応混合物から単離するか、直接加水分解する
ことができる。加水分解段階では第2級アミンが完全に
無くなってから酸を導入し、次いで、反応混合物の圧力
を 300〜500 mbarに下げる。2〜4時間後、反応混合物
の圧力を再び20〜150mbar へ下げる。さらに、減圧蒸留
してN-モノ置換ヒドロキシルアミンを塩の状態で回収す
る。
【0017】
【実施例】実施例1 サーモスタット制御された1リットル容の反応器に86g
の水と、170 gのジイソプロピルアミン (DIPA、純度99
%)とを室温で導入する。次いで17gのCO2(Air Liqu
ide N45、純度99.995%以上)を反応器に導入する。混
合物を攪拌しながら加熱する。混合物の温度が65℃に達
した時点で、45%過酸化水素水の添加を開始する。255
gの過酸化水素水を2時間30分かけて添加する。DIPAが
完全に消費されてからすなわち(反応開始から)約4時
間後、ジイソプロピルニトロンを単離する。ジイソプロ
ピルニトロンの収率は95%である。
【0018】実施例2 実施例1と同様に操作するが、ジイソプロピレンを単離
せずに直接加水分解する。すなわち、ジイソプロピルア
ミンが完全に変換した後に、37%塩酸 166gを添加す
る。その後、反応器の圧力を 350mbarまで下げて、加水
分解の副生成物であるアセトンを留出する。3時間後、
圧力を再び25mbarに下げる。水を完全に除去した後、17
0 gの結晶N-イソプロピルヒドロキシルアミンハイドロ
クロライドを回収する。これは開始物質であるアミンに
対する収率で90%に相当する。
【0019】実施例3 反応は実施例2と同様の条件で行うが、下記の反応剤を
用いる: ジエチルアミン(DEA) 125g 水 120g CO2 18g 45%H2 2 130g 37%HCl 150g 72%の収率で結晶状態のN-エチルヒドロキシルアミンハ
イドロクロライドを得る。
【0020】実施例4 実施例2と同様な操作条件で行うが、250 ml容の反応器
を使用し、加水分解に際して各種の酸を用いた。反応剤
の量は下記のとおり: DIPA 0.2 mol (20g) 水 20g CO2 2g 35% H2 2 20g 酸 0.2等量 対応するN-イソプロピルヒドロキシルアミン(NIPHA) の
塩の結晶が下記の収率で得られる: (NIPHA)2・H2SO4 収率 91 % (NIPHA) ・CH3COOH 収率 84 % (NIPHA)2・H3PO4 収率 87 % (NIPHA)2・H2C2O4 収率 88 %
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07C 239/08,291/02

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 窒素原子に対してα位にある少なくとも
    1つの炭素原子に少なくとも1つの水素原子を有する第
    2級アミンを、酸化剤と、二酸化炭素、炭酸水素塩およ
    び炭素塩からなる群の中から選択される少なくとも一種
    の化合物とを用いて酸化することを特徴とする第2級ア
    ミンからニトロンを合成する方法。
  2. 【請求項2】 酸化剤が過酸化水素である請求項1に記
    載の方法。
  3. 【請求項3】 溶媒の存在下で反応を行う請求項1また
    は2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 溶媒が水である請求項3に記載の方法。
  5. 【請求項5】 第2級アミンがジイソプロピルアミンで
    ある請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 【請求項6】 反応混合物の温度を20〜80℃にする請求
    項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 【請求項7】 反応混合物の温度を50〜70℃にする請求
    項6に記載の方法。
  8. 【請求項8】 酸化剤/第2級アミンのモル比が1〜4
    である請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 【請求項9】 二酸化炭素および/または炭酸水素塩お
    よび/または炭酸塩と第2級アミンとの間のモル比が
    0.1〜1である請求項1〜8のいずれか一項に記載の方
    法。
  10. 【請求項10】 二酸化炭素および/または炭酸水素塩
    および/または炭酸塩と第2級アミンとの間のモル比が
    0.1〜0.3 である請求項9に記載の方法。
  11. 【請求項11】 請求項1〜10にで得られたニトロンを
    加水分解することを特徴とするN-モノ置換ヒドロキシル
    アミン合成方法。
  12. 【請求項12】 ニトロンの加水分解を無機酸または有
    機酸の存在下で行う請求項11に記載の方法。
  13. 【請求項13】 H+ /第2級アミンのモル比が 0.9〜
    2である請求項12に記載の方法。
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