JP2769984B2 - ブローバイガスの排出構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、エンジンのクランク軸
内部にクランク室と連通したブローバイガス排出用の通
路を設け、クランク室内に設置されたウェブ内部に遠心
力を利用したブローバイガスの気液分離機構を備えたブ
ローバイガスの排出構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】エンジンの燃焼室よりピストンの外周を
介してクランク室内に漏れるガスはブローバイガスと称
し、適当な手段でエンジン外部に排出することが必要で
ある。従来、このブローバイガスの排出方法としては、
図８に示すように、ピストンＰが下降行程になった時
に、クランク室Ｋの内圧が外気圧より高くなることを利
用して、一方向弁Ｖを備えた通路Ｔ１よりブリーザーパ
イプＢを介してエンジン外部に排出する方法が一般的に
採用されている。しかし、このブローバイガスは、クラ
ンク室内で攪拌、飛抹する潤滑油と混合するため、潤滑
油が粒状あるいは霧状の状態で含まれており、これを有
効に除去することが必要となる。

【０００３】このブローバイガスの気液分離方法とし
て、実開平６−３４１０５号公報に示すものでは、図９
に示すように、通路Ｔ２の途中にバッフルプレートＦ等
を設け、これと通路壁Ｔ２１との隙間ＳをリブＲで遮っ
た、いわゆるラビリンス形状とすることにより、ブロー
バイガスの直進通路をなくして、気体分のみを容易に通
過させるようにしたものが提案されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ブローバイガスのエン
ジン外部への排出方法としては、上述したとおり、一般
的に、ピストン下降時のクランク室内圧が外気圧より高
くなることを利用して通路に設けた一方向弁により外部
に排出方法が採用されているが、潤滑油が混合されて、
一緒に外部に排出されるなどの問題を生じている。

【０００５】このため、通路をラビリンス形状として気
体分のみを容易に通過させて、気液分離する方法も提案
されているが、携帯型エンジンなどでエンジンを傾斜し
て運転するものでは、通路、一方向弁などが潤滑油に浸
かり、潤滑油が直接外部に流出して、気液分離機構は全
く役に立たないなどの問題を有している。

【０００６】そこで、本発明は、携帯型エンジンなどで
エンジンを傾斜して運転しても潤滑油が外部に流出しな
いで、気体分のみを外部に効率的に排出することができ
るブローバイガスの排出構造を提供することを目的とす
る。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、上述した従来
の欠点を除去するためになされたものであって、エンジ
ンのクランク室のブローバイガスをピストンの下降行程
時にエンジンの外部に排出するためのブローバイガスの
排出構造であって、クランク室内に設置されたウェブ内
部にクランク軸の半径方向に延びるよう形成され、ブロ
ーバイガスの気液を分離する第１通路と、クランク軸の
内部に設けられ、軸線方向に延びる第２通路と、第１通
路と第２通路を連通し、クランク軸に形成された導入孔
と、第２通路と連通するようクランク軸に形成された排
出孔とからなり、第１通路において液体と分離されたブ
ローバイガスをピストンの下降行程時に排出孔から排出
することにより、上記目的を達成しようとするものであ
る。

【０００８】

【作用】上記構成によりなる本発明においては、エンジ
ンのクランク軸内部にクランク室と連通したブローバイ
ガスの排出用の通路を設けて、かつ、クランク室内に設
置されたウェブ内部にクランク軸の半径方向に延びるよ
う形成され、ブローバイガスの気液を分離する笥１通路
としての気液分離機構を備えてなるブローバイガスの緋
出構浩とすることにより、ブローバイガスをクランク軸
の回転による比較的大きな遠心力により気体分と液体分
とに分離して、しかも液体分の潤滑油は排出用の通路に
入らないため、携帯型エンジンなどでエンジンを傾斜し
て運転しても、ブローバイガスに混入した潤滑油が外部
に流出することがなく、ブローバイガスのみを外部に効
率的に排出することができる。

【０００９】

【実施例】以下引き続き、本発明のブローバイガスの排
出構造の要旨をさらに明確にするため、図面を利用して
一実施例を説明する。図１ないし図３を利用して第一実
施例を説明する。本実施例はブローバイガスの気液分離
装置Ｋ１をクランク軸１０ａに設けたものであり、該ク
ランク軸１０ａは、軸１１ａ、１５ａ、ウェブ１２ａ、
１４ａ、クランクピン１３ａを組合せて一体に形成され
ている。

【００１０】また、第２通路としての通路５ａは、軸１
５ａの中心部に設けられており、かつ、該軸１５ａの一
端には円錐状に形成されたプラグ１７ａを設け、該プラ
グ１７ａの外周には、該通路５ａに連通する導入孔とし
ての斜孔１６ａを設けて、該通路５ａの一端はプラグ１
７ａで閉じられており、かつ、他端はブリーザーパイプ
６ａに連通している。

【００１１】さらに、１９ａはポケットで、軸１５ａを
ウェブ１４ａに圧入する孔の内周１８ａと軸１５ａの先
端円錐部間に形成されている。また、ウェブ１４ａは、
図２に示すように、第１通路としての放射状の孔２０ａ
及びスリット２１ａを有しており、前記斜孔１６ａ、該
放射状の孔２０ａ、スリット２１ａ等により気液分離機
構Ｅ１を形成している。さらに、２２ａはブローバイガ
スコレクタで、図３に示すように、軸１５ａには、ピス
トン２ａの下降行程においてピストン２ａに対向する排
出孔としての連絡口２３ａが通路５ａの出口に設けられ
ており、２４ａはブリーザーパイプ６ａに連通するポケ
ットで、ブローバイガスコレクタ２２ａの内周の連絡口
２３ａと合致する位置に設けられている。

【００１２】次に、本第一実施例の作用について説明す
る。エンジンを回転させて、ピストン２ａの下降行程で
クランク室３ａの内圧が外気圧よりも高くなると、気液
混合体Ｍ１は、気液分離機構Ｅ１におけるポケット１９
ａより斜孔１６ａを経て通路５ａに入ろうとするが、ク
ランク軸１０ａは回転しているため、気液混合体Ｍ１は
遠心力を受けて、比重の大きい液体潤滑油成分は遠心力
の作用で斜孔１６ａに入ることなく、放射状の孔２０ａ
とスリット２１ａより再びクランク室３ａに戻る。この
ため、ガス状のブローバイガスのみを通路５ａ、ブリー
ザーパイプ６ａを経由してエンジン外部に排出すること
ができる。なお、連絡口２３ａとポケット２４ａはピス
トン２ａの下降行程のみに合致するように位置づけされ
ているため、クランク室３ａの内圧が外気圧よりも高い
時のみにブローバイガスを排出するようになっている。

【００１３】図４を利用して第二実施例を説明する。本
実施例はブローバイガスの気液分離装置Ｋ２をカム軸３
２ｂに設けたものであり、１０ｂはクランク軸で、この
一端１５ｂには、これと一体に回転可能に固着されたク
ランク歯車３０ｂ、該クランク歯車３０ｂと歯合するカ
ム歯車３１ｂがあり、該カム歯車３１ｂはカム軸３２ｂ
に固着されていて、該カム軸３２ｂはクランク室３ｂに
より回転自在に支持されている。また、５ｂはカム軸３
２ｂに設けた通路であって、これの一端はクランク室３
ｂ内に開口し、他端はゴム等の弾性体でなる一方向弁４
ｂに通じており、クランク室３ｂの内圧が外気圧より高
くなると開き、その他の場合は閉じるように形成されて
おり、一方向弁４ｂの先はブリーザ通路３５ｂよりブリ
ーザーパイプ６ｂに連通している。また、通路５ｂの
奥、一方向弁４ｂの直前には、放射状の孔３６ｂ、ガイ
ド板３７ｂがカム軸３２ｂに設けられており、前記一方
向弁４ｂ、該孔３６ｂ、ガイド板３７ｂ等により気液分
離機構Ｅ２を形成している。

【００１４】次に、本第二実施例の作用について説明す
る。エンジンを回転させると、ピストン２ｂの下降行程
で、クランク室３ｂに漏れたブローバイガスに潤滑油が
混入した気液混合体Ｍ２は通路５ｂに入るが、カム軸３
２ｂの回転による遠心力で比重の大きい潤滑油は、気液
分離機構Ｅ２における放射状の孔３６ｂ、ガイド板３７
ｂを経由して再びクランク室３ｂに戻り、ガス状のブロ
ーバイガスのみを、一方向弁４ｂ、ブリーザー通路３５
ｂ、ブリーザーパイプ６ｂを経由して外部に排出するこ
とができる。

【００１５】図５ないし図７を利用して第三実施例を説
明する。本実施例は、第一実施例と類似して形成された
ブローバイガスの気液分離装置Ｋ３をクランク軸１０ｃ
に設けたものであるが、軸１５ｃの先端には円錐部がな
く、かつ、軸１５ｃの中心部よりの気液流入口がなく、
さらに、第２通路としての通路５ｃはプラグ１７ｃで閉
じられており、ウェブ１４ｃの外周に開口した第１通路
としての放射状の孔２０ｃ及びスリット２１ｃに対向し
て軸１５ｃには導入孔５０ｃが設けられて通路５ｃに連
通しており、該放射状の孔２０ｃ、該導入孔５０ｃと、
スリット２１ｃ等により気液分離機構Ｅ３を形成してい
る。

【００１６】このほか、第一実施例と同様に、クランク
室３ｃ内で回転するクランク軸１０Ｃは軸１１ｃ、ウェ
ブ１２ｃ、１４ｃ、クランクピン１３ｃ等の組合せでな
り、、通路５ｃは排出孔としての連絡口２３ｃ、ポケッ
ト２４ｃ等よりなるブローバイガスコレクタ２２Ｃを介
してブリーザパイプ６ｃに連通している。

【００１７】次に、本第三実施例の作用について説明す
る。エンジンを回転させると、ピストン２ｃの下降行程
で、ブローバイガスに潤滑油を含んだ気液混合体Ｍ３
は、クランク軸１０ｃのウェブ１４ｃの外周に向かう
が、外周部における回転体に働く遠心力は比重の大きい
液体に大きく、また、比重の小さい気体に小さいので、
液体分は分離されて、気体分のみ気液分離機構Ｅ３にお
ける放射状の孔２０ｃと、スリット２１ｃより導入孔５
０ｃを経由して通路５ｃに入り、ブリーザーパイプ６ｃ
より外部に排出される。

【００１８】なお、前記実施例では、気液分離装置をク
ランク軸あるいはカム軸に設けたがこれらにより駆動さ
れる任意の回転軸に設けてもよく、また、気液分離機構
を斜孔、放射状の孔およびスリットにより形成したもの
は、斜孔と放射状の孔あるいは斜孔とスリットでもよ
く、本発明は前記実施例のみに限定されるものではな
く、さらには、本発明に係わるブローバイガスの気液分
離装置における各構成要素の各部の形状や、その配設方
法、個数、大きさ、材質、また、作動方法等は、前記し
た目的、作用および後記する発明の効果が達成される範
囲内においてそれぞれ任意に定められてよく、これらの
変更はいずれも本発明の要旨を何ら変更するものでない
ことは申すまでもない。

【００１９】

【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明は、
エンジンのクランク軸内部にクランク室と連通したブロ
ーバイガスの排出用の通路を設けて、かつ、クランク室
内に設 置されたウェブ内部にクランク軸の半径方向に延
びるよう形成され、ブローバイガスの気掖を分離する第
１通路としての気液分離機構を備えてなるブローバイガ
スの排出構造とすることにより、ブローバイガスをクラ
ンク軸の回転による比較的大きな遠心力を利用して気体
分と液体分とを分離するため、携帯型エンジンなどで傾
斜して運転される場合でも、潤滑油が外部に流出するこ
とがなく、ブローバイガスのみを外部に有効に排出しう
る効果がある。以上説明したように、本発明は、従来に
ない独特の効果を奏し、まことに実用的で優れた発明で
ある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第一実施例を示す断面図である。

【図２】図１のＡ−Ａ断面図である。

【図３】図１のＢ−Ｂ断面図である。

【図４】本発明の第二実施例を示す断面図である。

【図５】本発明の第三実施例を示す断面図である。

【図６】図５のＣ−Ｃ断面図である。

【図７】図５のＤ−Ｄ断面図である。

【図８】従来のブローバイガスの排出機構を示す説明図
である。

【図９】従来のブローバイガスの気液分離装置を示す断
面図である。

【符号の説明】

３ａ、３ｂ、３ｃ クランク室 ５ａ、５ｂ、５ｃ 通路 ６ａ、６ｂ、６ｃ ブリーザーパイプ １０ａ、１０ｂ、１０ｃ クランク軸１４ａ、１４ｃ ウェブ １５ａ、１５ｃ 軸 １６ａ 斜孔 ２０ａ、２０ｃ 放射状の孔 ２１ａ、２１ｃ スリット ２３ａ、２３ｃ 連絡口 ５０ｃ 導入孔 Ｅ１、Ｅ２、Ｅ３ 気液分離機構 Ｋ１、Ｋ２、Ｋ３ ブローバイガスの気液分離装置

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 エンジンのクランク室のブローバイガス
   をピストンの下降行程時にエンジンの外部に排出するた
   めのブローバイガスの排出構造であって、 クランク室内に設置されたウェブ（１４ａ、１４ｃ）内
   部にクランク軸（１５ａ、１５ｃ）の半径方向に延びる
   よう形成され、ブローバイガスの気液を分離する第１通
   路（２０ａ、２１ａ、２０ｃ、２１ｃ）と、 クランク軸（１５ａ、１５ｃ）の内部に設けられ、軸線
   方向に延びる第２通路（５ａ、５ｃ）と、 第１通路（２０ａ、２０ｃ）と第２通路（５ａ、５ｃ）
   を連通し、クランク軸（１５ａ、１５ｃ）に形成された
   導入孔（１６ａ、５０ｃ）と、 第２通路（５ａ、５ｃ）と連通するようクランク軸（１
   ５ａ、１５ｃ）に形成された排出孔（２３ａ、２３ｃ）
   とからなり、 第１通路（２０ａ、２１ａ、２０ｃ、２１ｃ）において
   液体と分離されたブローバイガスをピストンの下降行程
   時に排出孔（２３ａ、２３ｃ）から排出す ることを特徴
   とするブローバイガスの排出構造。