JP2766521B2 - ピッチ系炭素繊維の製造方法 - Google Patents

ピッチ系炭素繊維の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、メソフェーズピッチを出発原料とする、高
強度、高弾性率を有する炭素繊維の製造方法に関する。
より詳しくは炭素繊維表面を改質することにより引張強
度が特に改善された、高強度、高弾性率を有する高性能
ピッチ系炭素繊維の製造方法に関する。
従来の技術 炭素繊維は、比強度および比弾性率の高い材料で近
年、航空宇宙分野、自動車工業、その他の工業分野で、
強くて軽い素材として注目を浴びている。このような分
野では高強度、高弾性率でありながら安価な材料が望ま
れている。
現在、炭素繊維はポリアクリルニトリル(PAN)を原
料とするPAN系炭素繊維と、ピッチ類を原料とするピッ
チ系炭素繊維が製造されているが、現状では高強度、高
弾性率の高性能炭素繊維としては主にPAN系炭素繊維が
使用されている。
しかしながら、PAN系炭素繊維は、さらに高弾性率化
をするには限界があり、また、その原料となるPANが高
価であり、PANから得られる炭素繊維収率が低いことな
どもあって、炭素繊維の価格が高価とならざるを得ない
という問題がある。
そこで、近年、炭素繊維収率が高く、高弾性率化が容
易なメソフェーズピッチを原料とするピッチ系炭素繊維
の高性能化の検討が種々行なわれている。
ソフェーズピッチ系炭素繊維の高性能化については、
主に、紡糸用ピッチ性状に関するもの、紡糸条件、紡糸
装置に関するもの、不融化、炭化、黒鉛化条件に関する
ものが提案されている。特にメソフェーズピッチ系炭素
繊維に特有な問題として、原料ピッチの配向性が高いた
め、通常の方法で溶融紡糸して得られる炭素繊維が、一
般にラジアル型と呼ばれる繊維断面構造をとり易く、こ
のため炭化、黒鉛化時に表面欠陥を生じ易く、引張強度
の点でPAN系炭素繊維に対して見劣りがすることが指摘
されている。
そこで、かかる表面欠陥を低下させるために、各種紡
糸方法、および炭化繊維の表面処理方法等が提案されて
いる。例えばピッチ系炭素繊維の表面を処理することに
よって表面欠陥を低下させる方法としては、特開昭61−
215716号公報に記載されているような、炭素繊維表面を
気相酸化エッチングすることによって炭素繊維表面の欠
陥を低下させることからなる炭素繊維の引張強度ならび
に弾性率を向上させる方法がある。
しかしながら、この方法では、表面処理後の炭素繊維
の取扱によって生じた欠陥に対しては効果は全く無く、
また、気相酸化エッチングによって、潜在的に存在して
いる欠陥をさらに拡大する場合もあり、その効果はあま
り大きなものではなく限定されたものとならざるを得な
い。
発明が解決しようとする課題 炭素繊維製造工程上で生ずる、潜在的欠陥、あるいは
炭素繊維製造後の取扱に際して生じる表面欠陥、いずれ
であっても、破壊靭性が向上することによって、表面欠
陥に対する応力集中の緩和あるいは亀裂伝播の阻害によ
って、炭素繊維強度の改善が図られる。本発明の目的
は、このような破壊靭性を向上させ、欠陥に対する強度
の低下が緩和された炭素繊維構造を発現させるピッチ系
炭素繊維の製造方法を提供するものである。
課題を解決するための手段 そこで、本発明者等は、表面欠陥を生じ易いピッチ系
炭素繊維に関して、表面欠陥に対する応力集中の程度を
軽減させる、あるいは欠陥の亀裂伝播を阻害させる、す
なわち、破壊靭性が改善された炭素繊維とすることによ
って、表面欠陥を生じ易いピッチ系炭素繊維に対して強
度向上を達成されるとの考えに基づいて鋭意検討を行い
本発明を完成したものである。
すなわち、本発明はメソフェーズを出発原料とするピ
ッチ繊維を、酸化ガス雰囲気下で不融化した不融化繊
維、あるいは前記の不融化繊維を不活性ガス雰囲気下で
炭化した炭化繊維を、二酸化炭素ガス雰囲気下もしくは
5体積%以上の二酸化炭素を含む混合ガス雰囲気下で、
500℃以上1000℃以下、10秒以上4時間以下で処理した
後、1300℃以上で炭素化、黒鉛化することを特徴とする
ピッチ系炭素繊維の製造方法である。
以下、本発明の内容を詳細に説明する。
本発明で用いるピッチは、コールタールピッチ、SRC
等の石炭系ピッチ、エチレンタールピッチ、流動接触触
媒分解残査油から得られるデカントオイルピッチ等の石
油系ピッチ、あるいはナフタレン等から触媒などを用い
て作られる、合成ピッチ等、各種のピッチを包含するも
のである。
本発明で使用されるメソフェーズピッチは、前記のピ
ッチを従来公知の方法でメソフェーズを発生させたもの
である。メソフェーズピッチは、紡糸した際のピッチ繊
維の配向性が高いものが望ましく、このためメソフェー
ズ含有量は40%以上、より好ましくは70%以上含有する
ものが望ましい。
また、本発明で用いるメソフェーズピッチは軟化点が
200℃以上400℃以下、より好ましくは250℃以上350℃以
下のものがよい。なお、これらのピッチは紡糸性を向上
させるために、フリーカーボン、灰分などの不純物粒子
を濾過などの周知の方法で予め除去しておくことが望ま
しい。
ピッチ繊維は前記メソフェーズピッチをこれまで知ら
れている方法にて溶融紡糸を行うことにより得られる。
例えば、前記メソフェーズピッチを粘度100ポイズ〜200
0ポイズを示す温度で、口径0.1mm〜0.5mmのキャピラリ
ーから、圧力0.1〜100kg/cm2で押し出しながら100〜200
0m/minの引き取り速度で延伸し、繊維径が5〜20μmの
ピッチ繊維を得る。
つぎにピッチ繊維は、公知の方法で不融化処理するこ
とにより熱硬化性の繊維へと転換する。例えば、空気、
空気に窒素ガス等の不活性ガス、あるいは酸素等を加え
酸素濃度を制御した酸化性ガス、またはこれらのガス
に、オゾン、二酸化窒素ガス、一酸化窒素ガス、二酸化
硫黄ガス等を混合させた、酸化性ガス雰囲気下でピッチ
の軟化点温度以下から、ピッチ繊維を酸化する不融化処
理を行う。
本発明ではこのようにして得られた不融化繊維、ある
いは不融化繊維を予め窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下
で炭化処理した炭化繊維を用いる。なお、本発明に用い
る炭化繊維は温度300℃以上1000℃以下、より好ましく
は300℃以上900℃以下で炭化処理したものがよい。炭化
温度が1000℃を超える場合では本発明による効果は著し
く減ずる。
本発明において、かかる不融化繊維、あるいは炭化繊
維を、二酸化炭素ガス含有雰囲気下で500℃以上1000℃
以下の温度で処理し、その後1300℃以上で炭化、黒鉛化
することが重要である。二酸化炭素ガス含有雰囲気下で
の温度が500℃未満では、二酸化炭素ガスによる反応は
実質的に生じない。また、1000℃超では二酸化炭素ガス
による反応が過大となり、かえって得られる炭素繊維の
強度を低下させる。
雰囲気ガスは二酸化炭素ガス単独でも良いし、二酸化
炭素ガスに窒素ガスなどの非酸化性ガスを混合した混合
ガスでもよい。このときの二酸化炭素ガス濃度は5体積
%以上、より好ましくは20体積%以上がよい。5体積%
未満では二酸化炭素濃度が低すぎ反応に長時間を要する
ようになり、また炭素繊維の引張強度の改善が少ない。
二酸化炭素ガスによって処理する時間は処理温度、あ
るいは本発明に用いる繊維種によっても異なるが、通常
10秒以上4時間以下、好ましくは1時間以下、より好ま
しくは20秒以上30分以下がよい。4時間を超える場合は
処理に時間を要し過ぎ、処理費用がかさむだけではな
く、反応が進みすぎ本発明による効果が現われない。ま
た、処理時間が10秒未満では反応が不足する、あるいは
繊維間での反応にむらが生じ好ましくない。
このようにして得られた処理繊維を、従来公知の方法
で、1300℃以上で炭化、黒鉛化することによって本発明
が達成される。かかる処理繊維の炭化温度が1300℃未満
では、炭素繊維物性の改善は少なく、1300℃以上、好ま
しくは1700℃とすることが望ましい。
以上のように、メソフェーズピッチを出発原料とする
ピッチ繊維を、酸化ガス雰囲気下で不融化した不融化繊
維、あるいはこの不融化繊維を不活性ガス雰囲気下で炭
化した炭化繊維を、二酸化炭素ガス雰囲気下、もしくは
二酸化炭素を含む混合ガス雰囲気下、500℃以上1000℃
以下で処理し、その後この処理した繊維を1300℃以上
で、炭素化、黒鉛化することによって、破壊靭性が向上
し引張強度が改善された炭素繊維が得られる。
作用 本発明において炭素繊維の引張強度が改善される理由
としては、まだ不明な点も多く定かではないが、以下の
ように考えられる。
二酸化炭素ガスによる反応は、活性炭の製造等に用い
られるように炭素材料に微細な空孔(ミクロポア)を構
成する。通常このようなミクロポアは炭素繊維強度を低
下させることは知られている。本発明に記載される条件
下で二酸化炭素ガスと反応させた場合、二酸化炭素ガス
によって生じるミクロポアは炭素繊維の表面近傍に限ら
れる。生成されるミクロポアが導入された層の厚みは、
炭素繊維強度を左右する潜在的表面欠陥の深さとほぼ等
しいものと考えられる。
このように、炭素繊維中に存在するミクロポアが繊維
表面に多く、その導入されている厚みは強度を支配する
欠陥相当と小さなものとなっており、繊維断面の大部分
にはミクロポアが導入されない繊維断面方向に分布をも
った構造をとる。二酸化炭素ガスで生じたミクロポア
は、このままの状態ではまだ大きなものと考えられ、ま
た繊維自体も炭化がまだ完全には進行していないため強
度の低いものしか得られない。
この当該繊維を、1300℃以上の温度で炭化、黒鉛化す
ることによって、ミクロポアが導入された繊維表面層は
収縮によってより緻密なものとなり、これ自身の存在に
よって強度低下をもたらすということがなくなる。
このように強度低下に結びつかないミクロポアが炭素
繊維表面近傍のみに分布することによって潜在的に存在
する強度支配欠陥、あるいは炭素繊維製造後に生じた表
面欠陥に対して、欠陥部分への応力集中は緩和される、
また、このようなミクロポアは亀裂の成長、伝播に対し
て抵抗となる。すなわち、炭素繊維自身の持つ破壊靭性
値を向上させることによって炭素繊維引張強度が改善さ
れるものと推定される。
第1図に本発明法による炭素繊維引張強度の変化を示
した。二酸化炭素ガス雰囲気下での処理時間を一定と
し、処理温度を変化させたときの炭素繊維の引張強度の
変化を例示したが、ある処理時間における最適な処理温
度が存在することが示されている。同様にある処理時間
に対する最適な処理温度が存在することは明白である。
これは、二酸化炭素ガス処理によって生じるミクロポア
が導入された層厚みに、強度を改善する最適な点が存在
するということであり、処理温度が高くなるにつれ、ミ
クロポア導入層は厚くなり、これにしたがい強度も改善
される。
さらに処理温度が高くなると潜在的に存在する欠陥の
深さよりもミクロポア導入層が厚くなり、この場合潜在
的欠陥の亀裂伝播がミクロポアによって促進され強度が
低下すると考えられ、上記に示した本発明による炭素繊
維引張強度の改善理由を示唆する結果となっている。
従来、炭素繊維の強度物性の改善方法としては、いか
に欠陥を少なくするかについて検討されてきたが、本発
明は、従来の発送とは全く逆に、炭素繊維にミクロポア
のような微小な欠陥を導入することによって、潜在的に
存在する欠陥に対して応力集中を緩和させたりする効果
によって強度を改善するという、従来にない新規な発想
によるものである。また、その効果が炭化あるいは黒鉛
化繊維製造後に、炭素繊維の取扱等で生じる欠陥に対し
てもその効果を発揮するという特徴を有する。
実施例 以下、さらに本発明を明確にするために、実施例なら
びに比較例を用いて説明する。なお、本発明において、
ピッチ系炭素繊維および原料ピッチの特性を表わすのに
用いた諸物性値は以下の定義によった。
(1)引張強度、引張弾性率、 引張強度、引張弾性率はJIS−R−7601(1986年)に
示された方法に準じて測定した。
(2)粘度、軟化点 粘度は、同心回転二重円筒粘度計を用いて測定した。
軟化点は、フローテスターを用いてハーゲン・ポアズイ
ユ式から算出される見掛けの粘度が20000ポイズとなる
温度である。
(3)メソフェーズ含有量 本発明でいうメソフェーズとは、冷却固化したピッチ
を樹脂等に埋込んで表面を研磨し、反射偏光顕微鏡を用
いて観察することによって決定できる光学的に異方性を
示す組織を指す。またメソフェーズ含有量とは前述のよ
うにして観察して認められる異方性組織の面積割合で示
す。
(4)トルエン不溶分、キノリン不溶分 トルエン不溶分、キノリン不溶分はJIS−K−2425(1
978年)に示された方法に準じて測定した。
実施例1 原料として軟化点80℃のコールタールピッチを、水素
化溶媒としてテトラヒドロキノリンを用い、120kgf/cm2
の圧力下440℃で20分間反応させた後、減圧下270℃で溶
剤および低沸点留分を除き、水素化処理ピッチを得た。
これを常圧下480℃で熱処理した後、低沸点分を除きメ
ソフェーズピッチを得た。このピッチは、軟化点が304
℃、トルエン不溶解分が85重量%、キノリン不溶解分が
14重量%、メソフェーズ含有量が95%であった。
このメソフェーズピッチを温度340℃粘度100ポイズで
精密濾過網を用いてピッチ中の不融異物を除去した。こ
のピッチを用いて従来公知の方法で、キャピラリー径0.
14mm、ノズルホール数3000のノズルパックを有する紡糸
機を用いて、メソフェーズピッチの粘度800ポイズで糸
径13μmのピッチ繊維を得た。
このピッチ繊維を空気中で200℃から300℃まで0.5℃/
minの昇温速度で昇温し、そのまま300℃に1時間保持し
不融化処理を行い不融化繊維を得た。この不融化繊維を
窒素ガス雰囲気下、300℃から500℃まで5℃/minで昇温
し、そのまま500℃に30分保持して炭化繊維を得た。
つぎにこの炭化繊維を二酸化炭素ガス50体積%と窒素
ガス50体積%の混合ガス雰囲気下の炉内で、500、600、
700、800、900、1000℃でそれぞれ15分処理し、6種類
の処理繊維を得た。その後、これらの処理繊維を各々ア
ルゴンガス雰囲気下で昇温速度40℃/minで2000℃まで昇
温し、そのまま2000℃に15分保持して6種類の黒鉛化繊
維を得た。
得られた各々の黒鉛化繊維の引張強度を第1図に示し
た。800℃で二酸化炭素ガス処理したものは引張強度お
よび引張弾性率は糸径10μm、強度320kgf/mm2、弾性率
50tf/mm2であった。
実施例2 実施例1で用いた不融化繊維を、二酸化炭素ガス100
体積%の雰囲気下で500℃から800℃まで20℃/minで昇温
し、そのまま7分処理した。その後、この処理繊維をア
ルゴンガス雰囲気下で昇温速度40℃/minで200℃まで昇
温し、そのまま15分保持して黒鉛化繊維を得た。得られ
た黒鉛化繊維の引張強度および引張弾性率を測定したと
ころ、糸径10μm、強度300kgf/mm2、弾性率50tf/mm2
あった。
比較例1 実施例1で用いた不融化繊維を窒素ガス雰囲気下で30
0℃から400℃まで5℃/minで昇温し、そのまま400℃に3
0分保持して炭化繊維を得た。つぎにこの炭化繊維をア
ルゴンガス雰囲気下で昇温速度40℃/minで2000℃まで昇
温し、そのまま2000℃に15分保持して黒鉛化繊維を得
た。得られた黒鉛化繊維の引張強度および引張弾性率を
測定したところ、糸径10μm、強度240kgf/mm2、弾性率
50tf/mm2であった。
比較例2 実施例1で用いた不融化繊維を二酸化炭素ガス50体積
%と窒素ガス50体積%の混合ガス雰囲気下、300℃から4
00℃まで5℃/minで昇温し、そのまま400℃に1時間保
持した処理繊維を得た。つぎにこの処理繊維をアルゴン
ガス雰囲気下で昇温速度40℃/minで2000℃まで昇温し、
そのまま2000℃に15分保持して黒鉛化繊維を得た。得ら
れた黒鉛化繊維の引張強度および引張弾性率を測定した
ところ、糸径10μm、強度235kgf/mm2、弾性率49tf/mm2
であった。
実施例1、2および比較例1、2から明らかなよう
に、炭素繊維、不融化繊維いずれの場合においても本発
明の効果により黒鉛化繊維の引張強度が改善される。
実施例3 石油重油留分の流動接触触媒分解装置(FCC装置)か
ら得られる分解残渣油(デカントオイル)を大気圧下で
の沸点範囲を360℃から520℃に蒸留した油を原料に、窒
素ガスを吹き込みながら圧力0.5kg/cm2、温度450℃で45
分間熱分解重合反応をさせた後、10mmHgの減圧下、温度
460℃で20分間低沸点分を取り除きメソフェーズピッチ
を得た。このピッチは、軟化点が320℃、トルエン不溶
解分が82重量%、キノリン不溶解分が35重量%、メソフ
ェーズ含有量が100%であった。このメソフェーズピッ
チを温度360℃粘度300ポイズで精密濾過網を用いてピッ
チ中の不融異物を除去した。このピッチを用いて従来公
知の方法で、キャピラリー径0.14mm、ノズルホール数20
0のノズルパックを有する紡糸機を用いて、メソフェー
ズピッチの粘度800ポイズで糸径13μmのピッチ繊維を
得た。
このピッチ繊維を空気中で150℃から300℃まで1℃/m
inの昇温速度で昇温し、不有化繊維を得た。この不融化
繊維を窒素ガス雰囲気下、200℃から500℃まで5℃/min
で昇温し、そのまま500℃に30分保持して炭化繊維を得
た。つぎにこの炭化繊維を二酸化炭素ガス20体積%と窒
素ガス80体積80%の混合ガス雰囲気下の炉内で、780℃
で25分処理した後、アルゴンガス雰囲気下で昇温速度40
℃/minで2000℃まで昇温し、そのまま2000℃に15分保持
して黒鉛化繊維を得た。得られた黒鉛化繊維の引張強度
および引張弾性率は糸径10μm、強度330kgf/mm2、弾性
率42tf/mm2であった。
比較例3 実施例3で用いた不融化繊維を、窒素ガス雰囲気下20
0℃から1000℃まで5℃/minで昇温し炭化繊維を得た
後、アルゴンガス雰囲気下で昇温速度40℃/minで2000℃
まで昇温し、そのまま15分保持して黒鉛化繊維を得た。
得られた黒鉛化繊維の引張強度および引張弾性率を測定
したところ、糸径10μm、強度250kgf/mm2、弾性率40tf
/mm2であった。
実施例1、3および比較例1、3から明らかなよう
に、出発原料が石炭系ピッチあるいは石油系ピッチにか
かわらず、本発明の効果により黒鉛化繊維の引張強度が
改善される。
実施例4 実施例1で用いたピッチ繊維を空気中に二酸化窒素ガ
スを5体積%添加した酸素ガス雰囲気中で150℃から300
℃まで1℃/minで昇温し、そのまま300℃に30分保持し
て不融化繊維を得た。この不融化繊維を窒素ガス雰囲気
下で300℃から5℃/minの昇温速度で380℃まで昇温し、
その後40℃/minで850℃まで昇温しそのまま850℃に2分
保持して炭化繊維を得た。
この炭化繊維を二酸化炭素ガス50体積%と窒素ガス50
体積%の混合ガス雰囲気下、700℃で30分処理した。そ
の後、この処理繊維をアルゴンガス雰囲気下で昇温速度
40℃/minで2000℃まで昇温し、そのまま2000℃に15分保
持して黒鉛化繊維を得た。得られた黒鉛化繊維の引張強
度および引張弾性率を測定したところ、糸径9.8μm、
強度430kgf/mm2、弾性率52tf/mm2であった。
比較例4 実施例4で得た炭化繊維をアルゴンガス雰囲気下で昇
温速度40℃/minで2000℃まで昇温し、そのまま2000℃に
15分保持して炭化繊維を得た。得られた黒鉛化繊維の引
張強度および引張弾性率を測定したところ、糸径9.9μ
m、強度360kgf/mm2、弾性率50tf/mm2であった。
実施例5 実施例4で得た二酸化炭素ガス雰囲気処理繊維をアル
ゴンガス雰囲気下で昇温速度40℃/minで1500℃まで昇温
し、そのまま1500℃に15分保持して炭素繊維を得た。得
られた炭素繊維の引張強度および引張弾性率を測定した
ところ、糸径10.4μm、強度330kgf/mm2、弾性率27tf/m
m2であった。
比較例5 実施例4で得た炭化繊維をアルゴンガス雰囲気下で昇
温速度40℃/minで1500℃まで昇温し、そのまま1500℃に
15分保持して炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の引張
強度および引張弾性率を測定したところ、糸径10.5μ
m、強度305kgf/mm2、弾性率28tf/mm2であった。
以上の実施例および比較例から明らかなように、本発
明の方法によって製造された炭素繊維は従来法に比べ優
れた引張強度を有している。
発明の効果 本発明によれば、ピッチ系炭素繊維にその繊維断面構
造上発生し易い表面欠陥に対して耐性のある、すなわち
破壊靭性の改善を図ることによって、引張強度が改善さ
れた、高性能な炭素繊維を得ることができる。また、本
発明法による炭素繊維構造では炭素繊維製造後に生じる
表面欠陥に対しても強度低下は少なく、高性能な繊維物
性が安定して得られ易い特徴を有すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明による、二酸化炭素ガス処理時間が15分
の際の処理温度と2000℃焼成後の引張強度の関係を示す
図である。
フロントページの続き (72)発明者 砂子 洋文 神奈川県川崎市中原区井田1618番地 新 日本製鐵株式會社第1技術研究所内 (72)発明者 富岡 紀夫 神奈川県川崎市中原区井田1618番地 新 日本製鐵株式會社第1技術研究所内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D01F 9/00 - 9/32

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】メソフェーズピッチから得られるピッチ繊
    維を酸化ガス雰囲気下で不融化した不融化繊維、あるい
    は前記の不融化繊維を不活性ガス雰囲気下で炭化した炭
    化繊維を、二酸化炭素ガス雰囲気下、もしくは5体積%
    以上の二酸化炭素を含む混合ガス雰囲気下で、500℃以
    上1000℃以下、10秒以上4時間以下で処理した後、1300
    ℃以上で炭素化、黒鉛化することを特徴とする、ピッチ
    系炭素繊維の製造方法。
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