JP2761668B2 - 油脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

油脂組成物及びその製造方法

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JP2761668B2 JP2097069A JP9706990A JP2761668B2 JP 2761668 B2 JP2761668 B2 JP 2761668B2 JP 2097069 A JP2097069 A JP 2097069A JP 9706990 A JP9706990 A JP 9706990A JP 2761668 B2 JP2761668 B2 JP 2761668B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、製菓、製パン、製麺用の油脂組成物及びそ
の製造方法に関するものである。更に詳しくは、グリセ
リン脂肪酸エステルとその他の界面活性剤を含有し、且
つアミラーゼ類、プロテアーゼ類から選ばれる酵素と増
粘剤を含有してなる製菓、製パン、製麺用の油脂組成物
及びその製造方法に関するものである。
〔従来の技術と問題点〕
澱粉を主成分とする加工食品(以下、澱粉質食品と呼
ぶ)の多くは老化を伴い、生産者、消費者はともにこの
食品の老化に常に悩まされてきた。食品全般に共通して
みられる食感の悪化や、例えば餅類等の和菓子類では表
面が硬くなったり、変色したりし、パン類では内相の硬
さや増し、風味を損なったり、麺類ではほぐれ性が悪化
するなど、食品の老化現象は、菓子、パン、麺類など澱
粉質食品において顕著であり、古くから老化防止剤の検
討が行なわれてきた。
従来、澱粉質食品の老化防止剤としては、グリセリン
脂肪酸モノエステルによって代表される各種の界面活性
剤やβ−アミラーゼ、α−アミラーゼ等の酵素が利用さ
れている。これらの老化防止剤は、それぞれ単独で配合
の一部として添加したり、予めショートニングやマーガ
リンのような原料油脂に老化防止剤を配合した油脂を使
用する例も多い。しかし乍ら、これらの老化防止剤は副
作用も多く、生地が荒れたり、べたつきを生じたりして
作業性を低下させ、あるいは各食品のもつ特有の風味を
損なう等の弊害が生じるため、実際の添加量は最大の効
果が発揮される添加量に比べ、かなり低い量に抑制せざ
るを得ない状況である。
老化防止剤の代表例として、細菌由来のβ−アミラー
ゼを用い、澱粉質食品の老化を防止する方法(特開昭62
−79746号公報)が提案されており、これによれば具体
的には、糊化していない澱粉にもβ−アミラーゼが作用
することにより、大豆β−アミラーゼよりも早くから澱
粉の分解が起こり、温度上昇に伴って大豆β−アミラー
ゼを上回る澱粉分解率を示し、澱粉質食品の老化防止を
効果的に行なうことができるとされている。しかし乍
ら、逆に常温ないし生地調製段階でβ−アミラーゼが働
くことにより、生地のべたつきを生じ、作業性を損なう
という問題が残されている。また、β−アミラーゼを生
地に直接添加するので、β−アミラーゼが局部的に作用
し、その結果、製品にばらつきを生ずる恐れもある。
各種の界面活性剤、酵素以外にも澱粉質食品の老化防
止剤あるいは品質改良剤の提案がなされており、特開平
1−202234号公報及び特開平1−202235号公報では穀物
タンパク質を酸分解処理あるいは酸やアルカリの逐次的
多段分解処理して得られる穀物タンパク質部分分解物が
澱粉質食品の品質改良効果を奏するとされている。しか
し乍ら、このような穀物タンパク質の部分分解物は、穀
物タンパク質のもつ特有の色あるいは風味を充分に消去
することはできず、澱粉質食品に添加した際に澱粉質食
品そのものの色調あるいは風味を損なうことがあるた
め、添加量も少量にとどめざるを得ず、その効果が充分
に発揮されにくい。更に明細書の表2、表3(特開平1
−202234号)、及び表−5、表−6(特開平1−202235
号)に示されるように、該発明品を添加したパンは無添
加のものや比較品と軟らかさ多少異なるものの、発明
品、比較品はいずれも4日目の軟らかさの値が1日目の
それに比して3〜4倍になっており、パンの老化防止効
果は充分でない。
また、特開昭63−71133号公報には、カラヤガム、ト
ラガントガム、ペクチンから選ばれた天然ガム剤とグリ
セリン脂肪酸エステルを含有するパン用改質剤、更に特
開昭63−71134号公報には前記のパン用改質剤を用いる
パンの製造方法が開示されているが、該両公開公報の表
3に示されるように、天然ガム剤の添加により、グリセ
リン脂肪酸エステル由来のパンがねとつくという欠点を
克服し、食感の向上を図っている。しかし乍ら、パンの
老化防止においてはグリセリン脂肪酸エステルによる効
果が大部分を占めているとみられ、天然ガム剤の効果は
食感向上という面にしか現れておらず、天然ガム剤のも
つ保水力による老化遅延効果は殆ど認められない。その
ため、パンの老化防止も充分に行なわれておらず、該公
開公報のパン用改質剤の老化防止効果は不充分である。
以上のように、老化防止、作業性、食感向上の問題に
ついて、従来、それぞれ種々の検討が行なわれている
が、個々の問題についてすら未だ充分な結果は得られて
おらず、ましてや、これら3つの問題を一挙に解決する
という目的は殆ど達成されていないのが現状である。
本発明の目的は、澱粉質食品の製造において、作業性
を向上させる共に、老化の遅い、しかも食感の優れた菓
子、パン、麺類等の澱粉質食品を製造するための油脂組
成物を提供することにある。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者らはこのような実情に鑑み、上記の問題を解
決すべく鋭意研究した結果、以下のことを見出した。
(1)グリセリン脂肪酸エステル、特にグリセリン脂肪
酸モノエステルが、その他の界面活性剤、特にプロピレ
ングリコール脂肪酸エステルの共存下で澱粉に対する反
応性をより高め、且つ反応性の高い状態を維持し、グリ
セリン脂肪酸エステルの比較的少量の添加で老化に関与
する糊化デンプンの戻りを抑え、且つデンプンの糊化自
体を抑制し、糊化デンプンを減少させることにより、結
果として老化を防止できること。
上記事実は、例えば以下の実験により確認されてい
る。
即ち、適当な油脂(上昇融点約21℃)に、グリセリン
脂肪酸モノエステルのみを加えたもの、グリセリン脂肪
酸モノエステルとプロピレングリコール脂肪酸エステル
とを加えたものを準備し、それぞれを約70℃に加熱、液
化し充分混合したのち、冷却して固形の油脂組成物を得
た。これらについて30℃でのアミロース複合体指数を経
時的に調べた(最新乳化技術ハンドブック、工業技術会
発行、123〜125頁)ところ、第1表のようになり、グリ
セリン脂肪酸モノエステルがプロピレングリコール脂肪
酸エステルの共存下で澱粉に対する反応性をより高め、
且つ反応性の高い状態を維持することが認められた。
(2)増粘剤添加により、食感向上に役立つだけでな
く、生地の吸水増に役立つと共に、グリセリン脂肪酸エ
ステルによりデンプンの糊化が抑制されるために生ずる
生地中に自由水の保持にも役立ち、その結果として、老
化遅延効果もあること。
(3)アミラーゼ類は澱粉中の長鎖α−1,4グルカンや
長鎖α−1,6グルカンを分断してその再結合を妨げるの
で老化遅延効果を示し、界面活性剤との併用で老化遅延
効果が更に増大し、食品の風味にも大きな変化を及ぼさ
ないこと。また、油脂組成物とすることにより、生理調
製段階での作業性もよく、生地中に素早く練り込まれ、
均一に混合され、製品としてのばらつきもなくなるとい
う効果も併有すること。
本発明は上記知見に基づき完成されたものである。
即ち、本発明はグリセリン脂肪酸エステルとその他の
界面活性剤を含有し、且つアミラーゼ類及びプロテアー
ゼ類からなる群から選ばれる1種又は2種以上の酵素と
増粘剤を含有することを特徴とする油脂組成物を内容と
するものである。
本発明で用いられる油脂としては、食用に適する動物
性、植物性の油脂及びそれらの硬化油、エステル交換
油、分別油等が挙げられ、これらは目的に応じて単独又
は2種以上を組み合わせて用いられる。
本発明でいうグリセリン脂肪酸エステルとは、グリセ
リンと脂肪酸のエステル又はその誘導体であり、例えば
グリセリン脂肪酸モノ又はジエステル、グリセリン有機
酸脂肪酸モノエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル
及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等が挙
げられる。このようなグリセリン脂肪酸エステルを構成
する脂肪酸は、炭素数14〜22の飽和脂肪酸であることが
好ましい。
グリセリン有機酸脂肪酸モノエステルを構成する有機
酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の低級脂肪酸
で構成される脂肪酸モノカルボン酸、シュウ酸、コハク
酸等の脂肪族飽和ジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸
等の脂肪族不飽和ジカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石
酸、ジアセチル酒石酸、クエン酸等のオキシ酸、及びグ
リシン、アスパラギン酸等のアミノ酸が例示される。
本発明の目的には、上記いずれのグリセリン有機酸脂
肪酸モノエステルを構成する有機酸でも有効であるが、
特にグリセリン有機酸脂肪酸モノエステルを構成する有
機酸としては、酢酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸が好
適である。
ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリン
と脂肪酸のモノ、ジ、ポリエステルの混合物で巾広いHL
Bを有するが、HLB8以下のものを用いるのが好ましい。
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルはポリグ
リセリンと縮合リシノレイン酸とのエステルであり、通
常、グリセリン重合度2〜3のポリグリセリンと縮合度
3〜5の縮合リシノレイン酸とのモノもしくはジエステ
ルの混合物が用いられる。また、本発明でいうグリセリ
ン脂肪酸エステルはその添加量が組成物全体に対して1
〜55重量%であり、好ましくは2〜30重量%が適当であ
る。
本発明で用いられる、その他の界面活性剤とは、ショ
糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピ
レングリコール脂肪酸エステル、レシチン等が挙げら
れ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いられ
る。ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステ
ル、プロピレングリコール脂肪酸エステルを構成する脂
肪酸は、炭素数16〜22の飽和脂肪酸であることが好まし
い。
また、ショ糖脂肪酸エステルとは、ショ糖と脂肪酸と
のモノエステルを主とするジポリエステル混合物で、巾
広いHLBを有するが、油相に添加する場合にはHLB8以下
のものを用いるのが好ましい。
ソルビタン脂肪酸エステルとは、ソルビタンと脂肪酸
とのエステルであり、通常、ソルビタン1分子に1〜3
個の脂肪酸が結合したエステルのことである。
プロピレングリコール脂肪酸エステルとは、プロピレ
ングリコールと脂肪酸とのエステルであり、通常、プロ
ピレングリコールの1つの水酸基に脂肪酸が結合したエ
ステルのことである。
レシチンとは、フォスファチジルコリン、フォスファ
チジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトー
ル、フォスファチジン酸、リゾレシチン、リゾフォスフ
ァチジン酸等のリン脂質のことであり、大豆あるいは卵
黄から得られるレシチンが代表的なものである。これら
は1種又は2種以上組み合わせて用いられる。また、本
発明において、その他の界面活性剤は、その添加量が組
成物全体に対して0.1〜45重量%が好ましく、より好ま
しくは1〜20重量%である。
本発明で用いられる酵素は、アミラーゼ類及びプロテ
アーゼ類から選ばれる1種又は2種以上の酵素である。
本発明で用いられるアミラーゼ類とは、α−アミラー
ゼ、β−アミラーゼ、イソアミラーゼ、及びグルコアミ
ラーゼ等であり、これらは1種又は2種以上組み合わせ
て用いられる。本発明におけるα−アミラーゼ、β−ア
ミラーゼ、グルコアミラーゼとしては、Bacillus属、As
pergillus属、Rhizopus属由来のものが好ましく、イソ
アミラーゼとしては、Pseudomonas属、Bacillus属由来
のものが好ましい。
また、アミラーゼ類としては、市販のアミラーゼ剤の
いずれも使用することが出来る。例えば、α−アミラー
ゼとしては、天野製薬(株)のアミラーゼA「アマ
ノ」、ナガセ生化学工業(株)のデナチームSA−7、ダ
イキン工業(株)ダビアーゼ、ノボインダストリーのフ
ァンガミル等、β−アミラーゼとしては天野製薬(株)
のビオザイムM、ビオザイムC、(株)ヤクルト本社の
ユニアーゼL等、イソアミラーゼとしては、天野製薬
(株)のプルラナーゼ「アマノ」、DB−250等、グルコ
アミラーゼとしては、天野製薬(株)のグルクザイムAF
6、グルクザイムNL、新日本化学工業(株)のスミチー
ムAL等が挙げられる。尚、上記酵素名はいずれも商品名
である。アミラーゼ類の添加量については、食品の種
類、希望する効果の程度、界面活性剤の含有量等により
異なるが、後記する活性測定法を用いて測定したアミラ
ーゼ活性が組成物1kgに対して100〜50000単位が好まし
く、より好ましくは1000〜30000単位の範囲である。
本発明で用いられるプロテアーゼ類としては、Asperg
illus属、植物由来のものが好ましく、市販されている
各種のプロテアーゼ剤のいずれでも用いることができ
る。例えば新日本化学工業(株)のスミチームMP、スミ
チームLP、天野製薬(株)のプロテアーゼA「アマ
ノ」、プロテアーゼP「アマノ」等が挙げられ、これら
は1種又は2種以上組み合わせて用いられる。尚、上記
酵素名称はいずれも商品名である。プロテアーゼ類の添
加量についても、食品の種類、希望する効果の程度、界
面活性剤の含有量等により異なるが、後記する、一般に
用いられるプロテアーゼ活性測定法にて測定したpH5.5
でのプロテアーゼ活性が組成物1kgに対して100〜50000
単位が好ましく、より好ましくは1000〜20000単位の範
囲である。
酵素の添加は、冷却された油脂組成物に粉末のまま添
加する方法、油脂に分散後、これを冷却された油脂組成
物に添加する方法等のいずれでもよく、50℃以下の低温
で添加されれば特に限定はない。この場合、50℃以下の
低温度下で添加するため、酵素は耐熱性のものである必
要はなく、いずれの酵素も用いることができる。
以下に、アミラーゼ活性測定法及びプロテアーゼ活性
測定法を示す。
「アミラーゼ活性測定法」 (1)α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラ
ーゼ 1)基質及び試薬 基質:2wt%可溶性澱粉液 緩衝液:M/10酢酸緩衝液(pH5.0) A液:0.24M CuSO4・5H2O B液:1.22Mロッシェル塩と2.575M NaOHの混液 C液:30wt%KI水溶液 D液:25wt%H2SO4水溶液 滴定液:N/20チオ硫酸ナトリウム液 2)活性測定法 (3)活性算出 アミラーゼ活性(BL−AV)×1.6×F=生成グルコース
(mg) 生成グルコース(mg)×稀釈倍率 ×1/10=力価(単位/g) 注)BL:盲検値(B液添加後、酵素溶液添加したもの) F :N/20チオ硫酸ナトリウムのfactor (2)イソアミラーゼ 注1)熱失活の酵素を含む反応液のヨウ素ヨウ化カリウ
ム反応液を盲検とした。
注2)酵素力価(単位/g)は、1時間に吸光度が0.1増
加するに要する酵素量を1単位として算出した。
「プロテアーゼ活性測定法(Folin法)」 (1)反応試薬 A液:0.4M TCA溶液 B液:0.4M Na2CO3溶液 C液:Folin試薬 (2)酵素活性の測定法 注1)基質として変性ヘモグロビンを使用した。
注2)酵素力価はチロシン基準曲線から算出した遊離チ
ロシン量を用いて、下記の式により酵素力価を算出し
た。
酵素力価(単位/g)=1ml中のチロシン量(μg) ×4×酵素稀釈倍率×1/反 応酵素液量(ml) ×反応時間(min) 本発明で用いられる増粘剤とは、タンパク質、多糖類
等であり、これらは1種又は2種以上組み合わせて用い
られる。具体的には、カゼイン、ナトリウムカゼイン、
ゼラチン、卵白、卵黄、全卵、血しょうタンパク質、ア
ルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール
エステル、澱粉リン酸エステルナトリウム、カルボキシ
メチルセルロース、メチルセルロース、アラビノガラク
タン、アラビアゴム、カラギーナン、ローカストビーン
ガム、キサンタンガム、グアーガム、タマリンド種子多
糖類、タラカントガム、カラヤガム、デキストリン、α
化澱粉、澱粉、ペクチン、寒天、カードラン、カティガ
ム等が挙げられる。これら増粘剤の添加量は組成物全体
に対して、0.1〜20重量%が好ましく、より好ましくは
0.2〜10重量%である。
本発明の油脂組成物は、例えば以下の方法で得ること
ができる。即ち、適当な食用油脂にグリセリン脂肪酸エ
ステル、その他の界面活性剤を加え、加熱溶解させた
後、増粘剤を加え均一に分散させる。これを急冷可塑化
あるいは徐冷して常温で固形あるいは半流動化の油脂組
成物を得る。一方、アミラーゼ類及び/又はプロテアー
ゼ類を、40〜50℃に加熱液化した油脂に均一に分散し、
約25℃に冷却したものを上記油脂組成物に添加、混合
し、捏和して本発明の油脂組成物を得る。
〔作用〕
本発明の油脂組成物は、生地に添加した場合、常温な
いし生地調製段階でグリセリン脂肪酸エステルが、その
他の界面活性剤との共存でグリセリン脂肪酸エステル単
独よりもさらに澱粉との親和性を増し、一方、酵素(ア
ミラーゼ類、プロテアーゼ類)は油脂でコーティングさ
れているため、生地に対してあまり作用せず、生地のべ
たつきが抑制される。
そして、高温ないし生地を加熱する段階で界面活性剤
が糊化した澱粉あるいはアミラーゼ類により低分子化さ
れた糊化澱粉と複合体を形成し、糊化澱粉の戻りを抑制
する。更に、界面活性剤によって糊化抑制された澱粉は
吸水、膨潤しないため、それだけ水分が余り、その水分
が増粘剤に保持され、生地中の水分蒸散が抑制され生地
の保水性が増大する。
このようにして、本発明の油脂組成物は、菓子、パ
ン、麺類等の澱粉質食品の老化防止等の品質改良を極め
て効果的に行なうことができる。
即ち、本発明の油脂組成物は、通常、菓子、パン、麺
類等の澱粉質食品の製造工程において添加して用いら
れ、老化防止効果だけでなく、乾燥によって生じ得る澱
粉質食品の硬化を防止、又は遅延する保水性向上効果、
生地のきめの細かさや粘りを適度に調製する生地調整効
果、界面活性剤を用いたときに生ずる食感劣化を防止す
る食感改良効果等の品質改良効果を得ることができる。
〔実施例〕
次に、実施例、比較例及び使用例に基づいて本発明を
更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限
を受けるものではない。尚、実施例中、「部」は重量部
を示す。
実施例1〜6、比較例1〜3 第2表に示す配合の油脂組成物の調製法について説明
する。
第2表に示す油脂使用割合で混合した油脂にグリセリ
ン脂肪酸エステル、その他の界面活性剤を加え、加熱溶
解した後、増粘剤を加え均一に分散させた。これを徐冷
して常温で固形の組成物〔以下、油相(A)と記す〕を
得た。また、第2表に示す後合わせ油脂使用割合で混合
した油脂を40℃に加熱、液化し第2表に示す添加量の酵
素を均一に分散させ25℃に冷却し、組成物〔以下、油相
(B)と記す〕を得た。
上記油相(A)と油相(B)を混合、捏和し、本発明
の油脂組成物を得た。尚、比較例については油相(A)
のみとした。
注) 1)太陽化学(株)製 サンソフトNo.8000 2)理研ビタミン(株)製 ポエムB−10 3)理研ビタミン(株)製 ソルマンS−300 4)理研ビタミン(株)製 リケマールPS−100 5)理研ビタミン(株)製 レシオンP 6)ナガセ生化学工業(株)製 デナチームSA−7 7)天野製薬(株)製 ビオザイムM 8)天野製薬(株)製 プルラナーゼ「アマノ」 9)新日本化学工業(株)製 スミチームAL 10)新日本化学工業(株)製 スミチームMP 使用例1:だんご 餅粉100部、上新粉200部、馬鈴薯澱粉5部、水200部
に第3表に示すように所定の油脂組成物を各10部加え、
均一に練り、20gずつ分割、成型後密閉容器中で60℃に
て1時間保持後、セイロを用いて20分蒸煮し、10℃で保
存後官能評価を行なった。結果を第3表に示す。
使用例2:食パン 第4表に示す配合に基づき、70%中種法で食パンを製
造し、パンの評価を行なった。
このパンの製造工程は次の通りである。
焼成後、パンを20℃で1時間冷却した後、ビニール袋
に入れ密閉し、更に20℃で48時間保存し食パンサンプル
とした。この食パンサンプルについて、官能評価、パン
の硬さ、及びパンの糊化度を測定した。尚、パンの硬さ
の測定は、パンを2cmにスライスし1cmまで圧縮した時の
応力をレオナー(山電(株)製)を用いて測定し、糊化
度の測定については、パンを脱水、脱脂処理した後、ヨ
ウ素電流滴定法により測定した。得られた食パンサンプ
ルの評価結果を第5表に示す。
使用例3:うどん 麺用小麦粉100部、食塩2部、水32部に、第6表に示
すように所定の油脂組成物を各3部加え、常法により混
捏、成型、ロール圧延を行なって得た、厚さ2.5mmの麺
帯をNo.10の切刃を用い細切してうどんの麺線とし、長
さ250mmに切断したものを沸騰水中で20分間ゆで、5℃
で保存した後、沸騰水中で2分間湯洗し、官能評価を行
なった。結果を第6表に示す。
以上、使用例1〜3を示したが、第3表、第5表、第
6表からそれぞれわかるように、本発明の油脂組成物を
用いることにより、食感の悪化を抑制したり、老化を防
止することが可能となる。更に第5表において、本発明
の油脂組成物は比較例の油脂組成物に比べ、パン中の澱
粉の糊化を抑制していることが明らかであり、このこと
からも本発明の油脂組成物に含有されるグリセリン脂肪
酸エステルが、通常よりも澱粉との反応性が高いという
ことが言える。
〔発明の効果〕
叙上の通り、本発明の油脂組成物は、菓子、パン、麺
類の老化を防止し、しかも製造工程において、均一に、
素早く練り込まれ、且つ従来の方法で界面活性剤あるい
はアミラーゼ等の酵素を多用した場合に起こる生地のべ
たつき、ダレを起こさず、作業性を損なうことがない等
の多くの効果を奏する。更に、本発明の油脂組成物を含
む製品は食感がよい、外観がよい等の効果をも併有する
ものである。

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】グリセリン脂肪酸エステルとその他の界面
    活性剤を含有し、且つアミラーゼ類及びプロテアーゼ類
    からなる群から選ばれる1種又は2種以上の酵素と増粘
    剤を含有することを特徴とする油脂組成物。
  2. 【請求項2】グリセリン脂肪酸エステルが、グリセリン
    脂肪酸モノ又はジエステル、グリセリン有機酸脂肪酸モ
    ノエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びポリ
    グリセリン縮合リシノレイン酸エステルからなる群から
    選ばれる1種又は2種以上の化合物であり、その添加量
    が組成物全体に対して1〜55重量%である請求項1記載
    の油脂組成物。
  3. 【請求項3】その他の界面活性剤が、ソルビタン脂肪酸
    エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコー
    ル脂肪酸エステル及びレシチンからなる群から選ばれる
    1種又は2種以上の化合物であり、その添加量が組成物
    全体に対して0.1〜45重量%である請求項1記載の油脂
    組成物。
  4. 【請求項4】アミラーゼ類がα−アミラーゼ、β−アミ
    ラーゼ、イソアミラーゼ、及びグルコアミラーゼからな
    る群から選ばれる1種又は2種以上のアミラーゼであ
    り、その添加量が組成物1kgに対して100〜50000単位の
    範囲である請求項1記載の油脂組成物。
  5. 【請求項5】プロテアーゼ類の添加量が組成物1kgに対
    して100〜50000単位の範囲である請求項1記載の油脂組
    成物。
  6. 【請求項6】増粘剤がタンパク質及び多糖類からなる群
    から選ばれる1種又は2種以上の化合物であり、その添
    加量が組成物全体に対して0.1〜20重量%である請求項
    1記載の油脂組成物。
  7. 【請求項7】油脂にグリセリン脂肪酸エステル及びその
    他の界面活性剤を溶解させた後増粘剤を加え均一に分散
    させ、急冷可塑化又は徐冷して得られる常温で固形もし
    くは半流動状の組成物と、油脂にアミラーゼ類及びプロ
    テアーゼ類からなる群から選ばれる1種又は2種以上の
    酵素を均一に分散させ冷却して得られた組成物とを混合
    ・捏和することを特徴とする油脂組成物の製造方法。
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