JP2758532B2 - 音響装置 - Google Patents

音響装置

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JP2758532B2
JP2758532B2 JP4145462A JP14546292A JP2758532B2 JP 2758532 B2 JP2758532 B2 JP 2758532B2 JP 4145462 A JP4145462 A JP 4145462A JP 14546292 A JP14546292 A JP 14546292A JP 2758532 B2 JP2758532 B2 JP 2758532B2
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禎宣 石田
英二 横山
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は音響装置のスピーカに
電気制御ループを施して特性を改善する技術に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】音響装置の出力段としてのスピーカシス
テムは、一般にキャビネット(箱体)に配置されたスピ
ーカ(振動器)を、ドライブアンプにて駆動するように
構成される。近年の軽薄短小並びに高品位化の動向か
ら、スピーカシステムも小型でかつ高性能なものが望ま
れており、これを実現させるものとして、スピーカに状
態(位置,速度,加速度)フィードバックして使用する
方法が提案され、既に多数のメーカで製品化されてい
る。
【0003】以下に、この方法を簡単に説明する。
【0004】図8は、一般的なスピーカシステムの断面
図である。図示の様に、例えば動電型直接放射スピーカ
を想定して説明を進める。図8において、1は振動板、
2は振動板1の外周ならびに内周を支持するバネ・ダン
パ要素であり、以上の構成要素によりスピーカの振動部
が構成される。3は高透磁率の磁性体で構成されたポー
ル・ピース、4は同じく高透磁率の磁性体で構成された
ヨーク、5は永久磁石、6はボイスコイルであり、ポー
ル・ピース3とヨーク4によりボイスコイル6がはいる
ギャップが構成され、永久磁石5によって磁束が供給さ
れる磁気回路となっている。7はフレームであり、前記
磁気回路と前記振動部を保持し、その位置関係を保つ役
割をする。
【0005】このシステムを制御理論のブロック線図で
伝達関数表示すると、図9になる。図において、8はス
ピーカ100の振動板1の駆動磁気回路のインピーダン
ス特性を表す伝達係数、9は前記磁気回路の電流−力変
換率である力定数を表す伝達係数である。10〜14は
スピーカ100の機械特性を示す伝達関数及び伝達係数
であり、mはスピーカ100の振動部質量、kはバネ要
素2の弾性定数、cはダンパ要素2の粘性定数、sはラ
プラス演算子を示す。14は前記駆動磁気回路の逆起電
力定数を表す伝達係数、15は前記駆動磁気回路中で物
理的に生じている駆動電流と逆起電力との関係を減算ブ
ロックで表したものである。16はスピーカ100の磁
気回路において機械的に行われている磁気回路が発生す
る力とバネ要素からの反発力と粘性要素からの反力との
力のつりあいを減算ブロックで表したものである。
【0006】実際のスピーカシステムの動作は次のよう
に考えられる。すなわち、スピーカ100の振動板1の
駆動電圧は、駆動電磁回路のボイスコイル6のインピー
ダンス特性Z(s)8によって電流に変換される。この
電流から後に述べる逆起電力を引いた電流値に、力定数
KA (N/A)9を乗算したものが、スピーカ振動部の
バネ・ダンパ・質量系で構成される機構部10,11,
12,13に加わる力となる。この力がスピーカ100
の機構部に加わり、スピーカ100のボイスコイル6に
速度変化および位置変化をさせる。この時、ボイスコイ
ル6がある速度で動くとこの速度に比例した逆起電力が
生じる。逆起電力定数をcG(A・sec/m)14と
すれば、逆起電力はスピーカ100の駆動電流にフィー
ドバックされるのと等価であることが理解できる。
【0007】また、スピーカ100の振動部は、図8で
示したバネ・ダンパ要素2によってバネ・ダンパ支持さ
れているため、振動部が変位するとフックの法則により
バネ定数k(N/m)12に比例した反発力が、さらに
可動部が速度を持つと粘性係数c(N・sec/m)1
3に比例した反発力が生じるため、各々伝達関数表示す
ると加速度フィードバックに相当することが理解でき
る。
【0008】また、スピーカシステムの音圧出力は、空
気が振動板1から受ける圧力であるから、スピーカ10
0の振動板1の加速度で与えられる。
【0009】図10にスピーカの入力電圧−出力音圧周
波数特性を示す。出力音圧の特性が平坦になるのは、ス
ピーカの一次共振周波数f0 より高い帯域となる。この
共振周波数は、 f0=(2π)-1(k/m)0.5 で与えられる。一般にスピーカを小型化してゆくと、振
動部の質量mが減少するため、f0 は大きくなり、結果
として低域の再生ができなくなる。
【0010】そこで、小型スピーカにおいても低域から
高域までフラットな高品位再生を可能にする方法とし
て、スピーカ振動板1の状態(位置,速度,加速度)検
出を行い、その状態量をフィードバックすることによっ
て、スピーカの特性を改善する提案がなされている。こ
の方法に関する文献として、JAS JOURNAL ■90・9月号P1
4〜20が挙げられる。
【0011】図11にそのシステム構成の概略図を示
す。図中、17は状態検出センサであり、スピーカ振動
板1の変位,速度あるいは加速度を検出する。18は特
性補正回路であり、積分器あるいは微分器で構成され、
状態検出センサ17から得た振動板1の状態量を所望の
状態量に変換する物である。23は状態量をスピーカ1
00の駆動電圧にフィードバックするための減算器、1
9はスピーカ100のドライブアンプである。
【0012】図11のシステムを制御理論のブロック線
図で表現すれば図12の様になる。図において、20は
振動板1の加速度を加速度センサ17で検出した信号を
フィードバックするゲインを示す伝達係数、21は振動
板1の位置を位置センサ17で検出した信号をフィード
バックするゲインを示す伝達係数、22は振動板1の速
度を速度センサ17で検出した信号をフィードバックす
るゲインを示す伝達係数である。23は各々の状態量に
対応したセンサ17からの情報を制御信号にフィードバ
ックする為の減算ブロックである。
【0013】次に従来例の作用について説明を行なう。
【0014】図13に制御を何等施さない単なる電圧駆
動した場合のスピーカ100の出力音圧−電圧特性を示
す。図から解るように、スピーカ100の機械系一次共
振周波数f0 より低い帯域において、−12dB/oc
tで低下する特性をしている。また、粘性要素13並び
に14が小さい場合は、本図のようにf0 で大きな共振
Q値をもつ。
【0015】このような特性のスピーカ100の低周波
再生能力を上げ、かつ低域での非直線歪を低減し、かつ
音圧特性を平坦にする為には、下記の状態フィードバッ
クによる方法が有効である。
【0016】図12を参照しながら、状態フィードバッ
クの効果について説明する。図において、加速度フィー
ドバックゲイン20をmf 、速度フィードバックゲイン
21をcf 、位置フィードバックゲイン22をkf
し、各々フィードバックループを閉じると、状態フィー
ドバックループ込みのスピーカ100の出力音圧−電圧
特性Pf は、次式のようになる。 Pf(s)=Z(s)・Ka・s2・((m+mf)s2+(c+cG+cf)s+(k+kf))-1 状態フィードバックを施さない、スピーカ単体の出力音
圧−電圧特性Pは、 P(s)=Z(s)・Ka・s2・(ms2+(c+cG)s+k)-1 であるから、状態フィードバックによって、実際のスピ
ーカ100の機械特性が、詳しくは質量m,粘性率c,
弾性率kが各々フィードバックゲイン分だけ増加するこ
とが解る。
【0017】この効果により、加速度フィードバックは
スピーカ100の振動部質量の増加、速度フィードバッ
クはスピーカ100の振動部ダンパの粘性係数の増加、
位置フィードバックはスピーカ100の振動部バネの弾
性係数の増加と等価である。
【0018】このことから、スピーカ100の状態量が
正確に測定できれば、電源電圧のダイナミックレンジが
許す範囲で、任意の良好な特性に電気的に改善すること
が可能になる。例えば図13中の実線で示した特性は、
図10の特性のスピーカ100に図12の状態フィード
バックを施した特性を示す。具体的には、加速度フィー
ドバックと速度フィードバックを併用し電圧ゲインを増
加させた結果、図13の様に低域再生特性を改善し、か
つフラットな音圧特性が実現できる。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】但し、これは、あくま
で、スピーカ100の状態量が正確に測定できる場合で
あって、実際の場合は、状態量観測センサの性能によっ
て状態フィードバックによる特性改善量が制限された
り、状態フィードバックループの調整を要したり、スピ
ーカ100本体の機械特性の経時変化に対してかえって
特性を改悪したりといった問題があった。
【0020】一般的に現在スピーカ100の振動部1の
状態量を観測する方法として、図14(a)〜(d)の
ように動電型,静電型,圧電型,マイクロホン等の具体
的なセンサを用いるやりかたと、図14(e)のように
ボイスコイル6に発生する逆起電力をブリッジ回路にて
取り出すセンサレスのやり方がある。民生用としてセン
サを新たに設けることはコストの面で不利であるから、
逆起電力検出によるセンサレスの方法がもっぱら用いら
れているのが現状である。
【0021】以下に、センサレスによる方法の問題点を
説明する。
【0022】図15にセンサレスで、スピーカ100の
状態量を得る方法の概略図を示す。図において、24は
スピーカ100に流れる電流量をその両端電位差によっ
て検出する電流検出用抵抗(図においてドライブアンプ
19とスピーカ100の間の電流経路中に配置、スピー
カ100と接地間でも原理的に等価)、25は電流検出
用抵抗24の両端電位差を検出し所定の増幅を行ってス
ピーカ100に流れる電流量を検出する差動増幅器、2
6は前記電流量とドライブアンプ19の駆動電圧を所定
の増幅を行って電流に換算した信号とを比較し逆起電力
即ち振動板速度を検出する差動アンプである。
【0023】既に説明したように、スピーカ100の駆
動電流には、逆起電力がフィードバックされているのと
等価な為、スピーカ100の磁気回路の静止インピーダ
ンス8から推定される駆動電流から実際の駆動電流を引
けば、逆起電流、すなわち振動部の速度に比例した信号
が得られる。
【0024】図16に図15をブロック線図に書き直し
たものを示す。図において27はスピーカ100磁気回
路の静止インピーダンス特性Z(s)を電気的に模擬し
たもので、スピーカ100の入力電圧を入力すると逆起
電力を含まない駆動電流を出力する伝達特性を有する。
28は実際のスピーカ100の駆動電流と前記逆起電流
を含まない駆動電流とを減算し、逆起電力を出力する減
算ブロックである。
【0025】さて、この際、減算ブロック28の出力
は、静止インピーダンス模擬ブロック27が正確に模擬
している場合に限って正確な速度を出力できる。逆にい
えば、静止インピーダンス模擬ブロック27が少しでも
ずれれば、または、スピーカの磁気回路が温度変化によ
って少しでも変化すれば正確な速度の推定は不可能にな
り、速度情報の中に電流情報が混入する。これを速度と
して所定のゲインでフィードバックすると、直流ゲイン
が変動したり、所望の制振効果が得られなかったりする
問題がある。
【0026】この場合、推定速度VP(図16参照)は
以下のように表される。 VP(s)=V(s)Z■(s)-(V(s)Z(s)-VR(s)) =VR(s)-V(s)Δ ただし、 Δ=Z(s)-Z■(s) V(s):駆動電圧 VR(s):真の振動板速度 ここで、前述のようにΔ≠0であることから、推定速度
には駆動電圧信号が混入することになる。
【0027】図17は振動板位置に対する振動板速度の
周波数特性を示したもので、図中の実線は真の振動板速
度、破線は推定速度である。振動板位置に対する速度の
特性は、微分特性であるから、ゲインは20dB/oc
tで増加,位相は90deg進む特性となるが、推定速
度は破線のように低域での特性が速度の次元で無くなっ
ている。この推定速度をフィードバックすると、駆動電
圧−出力音圧特性は図18の破線のように低域で急峻に
音圧が落ち、共振のQ値もさほど下がってないため、速
度フィードバックの効果が少なくなる。
【0028】本発明は、以上の問題点を解消するために
なされたもので、電磁駆動タイプのスピーカの状態量
(速度、加速度等)を、高精度・広帯域で検出でき、し
かもスピーカ磁気回路並びに機械特性の経時変化や特性
ばらつきにも充分対応できる安価な音響装置を得ること
を目的とする。
【0029】
【課題を解決するための手段】この発明(請求項1)に
係る音響装置は、スピーカと、該スピーカの測定可能な
状態量を検出する状態量検出手段と、該状態量検出手段
による検出状態量とスピーカ駆動信号とをもとに、上記
スピーカの伝達特性を模擬した内部モデルにより上記ス
ピーカの状態量を推定する状態量推定手段とを備え、該
状態量推定手段による推定状態量を用いてフィードバッ
制御をすることによりスピーカの特性改善を行なうも
のである。また、この発明(請求項2)に係る音響装置
は、請求項1に記載の音響装置において、上記状態量検
出手段は、スピーカ駆動電流を検出する電流検出手段で
あり、上記状態量推定手段は、スピーカ駆動信号である
スピーカ駆動電圧と上記検出状態量であるスピーカ駆動
電流とを基にスピーカの速度を推定する速度推定手段で
あるものである。また、この発明(請求項3)に係る音
響装置は、請求項1に記載の音響装置において、上記状
態量検出手段は、スピーカ駆動電流を検出する電流検出
手段であり、上記状態量推定手段は、スピーカ駆動信号
であるスピーカ駆動電圧と上記検出状態量であるスピー
カ駆動電流とを基にスピーカの加速度及び速度を推定す
る加速度及び速度推定手段であるものである。
【0030】またこの発明(請求項4)に係る音響装
置は請求項1に記載の音響装置において、上記状態量
検出手段は、スピーカ振動板位置を検出する位置検出手
段であり、上記状態量推定手段は、スピーカ駆動信号
振動板位置信号とを基にスピーカの速度を推定する速度
推定手段であるものである。また、この発明(請求項
5)に係る音響装置は、請求項1に記載の音響装置にお
いて、上記状態量検出手段は、スピーカ振動板位置を検
出する位置検出手段であり、上記状態量推定手段は、ス
ピーカ駆動信号と振動板位置信号とを基にスピーカの加
速度及び速度を推定する加速度及び速度推定手段である
ものである。
【0031】またこの発明(請求項6)に係る音響装
置は請求項1に記載の音響装置において、上記状態量
検出手段は、スピーカ振動板加速度を検出する加速度検
出手段であり、上記状態量推定手段は、スピーカ駆動
と振動板加速度信号とを基にスピーカの速度を推定す
速度推定手段であるものである。また、この発明(請
求項7)に係る音響装置は、請求項1に記載の音響装置
において、上記状態量検出手段は、スピーカ振動板加速
度を検出する加速度検出手段であり、上記状態量推定手
段は、スピーカ駆動信号と振動板加速度信号とを基にス
ピーカの加速度及び速度を推定する加速度及び速度推定
手段であるものである。
【0032】
【作用】この発明に於ける音響装置は、スピーカの振動
板の所望の状態量を、測定可能な状態量を状態推定
に入力する事により高精度に推定するため、理想的な
状態フィードバック制御系が実現され、スピーカの特性
を容易に改善することができる。
【0033】
【実施例】実施例1.以下この発明の一実施例を図につ
いて説明する。図1は、この実施例1の音響装置の概略
図である。図において、50は状態推定器で、電流検出
用抵抗のドライブアンプ19側の電圧すなわちスピーカ
100の駆動電圧と差動アンプ出力すなわちスピーカ1
00の駆動電流とを入力し、スピーカ100の振動板速
度並びに加速度を推定し、推定速度信号並びに推定加速
度信号として出力する本発明において特徴的なものであ
る。
【0034】以下、実施例1の作用を説明する。
【0035】本実施例1は前述した諸問題を図1に示す
システム構成にて解消したものである。図1の状態推定
器50の一例は、現代制御理論の同一次元状態推定器に
よって構成される。
【0036】状態推定器50はスピーカ100の(駆動
電圧),(駆動電流),(駆動力),(加速度),(速
度),(変位),(逆起電力)間の特性を模擬する内部
モデルをもち、それは積分器や加減算回路からなる等価
回路で構成される。また、駆動電圧を等価回路に入力し
たことにより得られる推定駆動電流量と、実測した検出
電流量を比較し、推定駆動電流量と検出電流量が一致す
るよう等価回路に推定誤差をフィードバックする構成か
らなる。
【0037】スピーカ100の動作を、アナログ電気回
路もしくは高速ディジタル演算素子においてソフトウェ
アにて模擬し、各々の状態量に相当する信号を取り出す
ことに依って、必要な状態量を模擬することができる。
【0038】このような構成の状態推定器50は、周波
数特性が実際のスピーカ100と等しいだけでなく、動
特性(時間軸での特性)をも等しくすることができる。
【0039】すなわち動特性の誤差である指定された逆
起電力を含む駆動電流と実際の信号との誤差が零に収束
するように、推定した状態量と観測した状態量との差で
ある誤差信号をハイゲインでフィードバックさせる内部
ループを持っているので、ある時間経過後は状態推定器
のフィードバックゲインの作用により、推定誤差が零に
収束する。よって等価回路の逆起電力に相当する部分を
出力すれば、それは実際のスピーカ100振動板の速度
と等価な信号となる。
【0040】また、このように状態推定器50を構成す
ると、前述の電流検出抵抗24のバラツキによる検出ゲ
イン変動やコイルの温度変化や経時変化による特性変動
が生じた場合においても、状態推定器内のフィードバッ
クループによってその変動を安定に吸収する効果がある
ため、逆起電力に相応する推定速度信号には寄与しない
という特徴がある。
【0041】よって以上のように構成された状態推定器
50は、スピーカ100の駆動電流の検出系のゲイン変
動やスピーカ100自身の特性変動に対しても、正確な
状態量を推定することが可能である。一例として、図2
にスピーカ100の駆動電流検出系のゲイン変動が50
%ある場合の速度推定特性を示す。図中、VPは推定速
度、VRは真の速度を表し、VP/VRで評価してい
る。図の様に、正確に速度を推定する事がわかる。この
ことから、量産時の推定器の個別のチューニングが不要
となる。
【0042】この推定速度並びに推定加速度を所定のフ
ィードバックゲインにてスピーカ100駆動電圧にフィ
ードバックすることにより、低域再生特性を向上させ、
かつ効果的なダンピングが可能になる。
【0043】例えば図3中の破線は、状態フィードバッ
クを施す前のスピーカ100の(電圧)/(音圧)周波
数特性図である。本実施例1の状態フィードバックを施
すと、図中の実線のように改善される。すなわち、低域
ゲインの変動はなく、1次共振周波数が低域にシフト
し、かつ共振のQ値が効果的に制振されていることが確
認される。また、上述の通り、スピーカ100の駆動電
流の検出系のゲイン変動が50%以上あっても、何ら特
性変化なく同様に特性改善することが可能である。
【0044】実施例2.実施例1では、センサレスでス
ピーカの状態量を検出する事が出来るため、安価な構成
で効果的なスピーカ特性の改善が可能なシステムについ
て説明した。実施例2では、スピーカ100に位置セン
サがある場合のシステムについて説明する。
【0045】従来例では図11のように、位置センサ1
7からの位置信号を特性補正回路18にて微分して速度
信号を、更に微分して加速度信号を得ていた。しかしな
がら、位置信号に含まれる高域のノイズが増幅されるた
め、状態フィードバック量が制限される問題があった。
【0046】図4はこの問題を解決する実施例2の音響
装置の概略図を示す図である。図において、17は状態
量観測センサであり、ここでは振動板の位置を検出する
位置センサである。50は実施例1と同様な現代制御理
論の同一次元の状態推定器で構成される状態推定器であ
る。本実施例の状態推定器50は、スピーカ100の
駆動電圧もしくは駆動電流と振動板位置とを演算してス
ピーカ100の振動板の速度並びに加速度を推定するも
のである。
【0047】このような構成は、前述のように現代制御
理論の同一次元の状態推定器として一般的に公知なもの
である。この構成によれば、内部モデルの特性と実際の
スピーカ100の特性の誤差である推定誤差が、零に収
束するように内部モデルにフィードバックループが設け
られているため、内部モデルの推定値を、周波数特性の
みならず動特性をも実際のスピーカ100と同一にする
ことができる。フィードバックゲインは状態推定器50
の収束性を自由に決定する定数であり、制御対象の極に
比べて状態推定器50の極が例えば10倍程度大きく
(負の実部の値が大きく)なるようにハイゲインに選ば
れる。こうすれば、実際のスピーカ100の周波数特性
のみならず動特性までも一致しているので、測定不可能
な状態量、例えば振動板速度並びに加速度を検出するこ
とが可能となる。
【0048】ここで推定される速度は、状態推定器50
の内部モデルの積分器の出力であるから、動特性はその
ままで位置センサからのノイズを低減する効果がある。
前述したように、従来の一般的な速度検出は、位置セン
サ出力を微分していたが、高域でセンサノイズを増幅す
るためフィードバックゲインが制限されていた。本実施
例2ではこの問題を解決することが出来る。
【0049】例えば図5はスピーカ100の振動板の速
度信号の一例を示したものであり、図のように状態推定
器50の出力は動特性はそのままでノイズだけが低減さ
れる効果が確認出来る。
【0050】こうして速度並びに加速度を高精度に低ノ
イズに得ることが可能になる。なお、こうして得た状態
量をフィードバックした効果については、実施例1と同
様なので、その説明を省略する。
【0051】本実施例は第1実施例と同様、アナログ回
路でもディジタル回路でも実現可能である。
【0052】図6に位置センサの構成例を示す。振動板
1の中心部の位置を検出出来る構成であれば、その他の
如何なる構成であってもよい。
【0053】実施例3.実施例3は振動板の加速度を検
出するセンサがある場合の一例について説明する。
【0054】従来例では図11のように、加速度センサ
17からの位置信号を特性補正回路18にて積分して速
度信号を得ていた。しかしながら、積分器の初期値が不
定であるためにオフセットが生じる問題があった。ま
た、このオフセットを除去するために、低域成分をカッ
トするハイパスフィルタを介した加速度信号の利用が考
えられるが、上記ハイパスフィルタの特性で位相がシフ
トするため所定のフィードバック効果が現われない恐れ
がある。
【0055】図7は実施例3の音響装置の概略を示す図
である。図において、17は状態量観測センサであり、
ここでは振動板の加速度を検出する加速度センサであ
る。50は第1実施例と同様な現代制御理論の同一次元
の状態推定器で構成される状態推定器である。本実施例
3の状態推定器50は、スピーカ100の駆動電圧もし
くは駆動電流と振動板加速度とを演算してスピーカ10
0の振動板の速度並びに加速度を推定するものである。
【0056】このような構成は、前述のように現代制御
理論の同一次元の状態推定器として一般的に公知なもの
である。この構成によれば、内部モデルの特性と実際の
スピーカ100の特性の誤差である推定誤差(ここでは
加速度の状態量)が、零に収束するように内部モデルに
フィードバックループが設けられているため、内部モデ
ルの推定値を、周波数特性のみならず動特性をも実際の
スピーカ100と同一にすることができる。
【0057】フィードバックゲインは状態推定器50の
収束性を自由に決定する定数であり、制御対象の極に比
べて状態推定器50の極が例えば10倍程度大きく(負
の実部の値が大きく)なるようにハイゲインに選ばれ
る。こうすれば、実際のスピーカ100の周波数特性の
みならず動特性までも一致しているので、測定不可能な
状態量、例えば振動板速度を検出することが可能とな
る。
【0058】ここで推定される速度は、推定器内部モデ
ルの積分器の出力であるから、動特性はそのままでセン
サからのノイズを低減する効果がある。前述のように、
従来の一般的な速度検出は加速度センサ出力を積分して
いたが、積分器の初期値確定不能によるオフセットが生
じる問題があった。本実施例3ではこの問題を解決する
ことが出来る。
【0059】本実施例3は実施例1と同様に、アナログ
回路でもディジタル回路でも実現可能である。
【0060】加速度センサの構成例としては、図14
(c),(d)で示した圧電形検出器(c)並びにマイ
クロホン(d)があるが、他のいかなる方法であっても
同様な効果がある。ただし、振動板加速度センサとして
マイクロホン(d)を用いる場合は、音圧が空気を伝ぱ
する際の時間遅れが無視できるように、振動板1からで
きるだけ近い位置に設置する。そのセンサ位置は、振動
板1の表でも裏でもどちらでも同様の効果があることは
言うまでもない。
【0061】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、スピー
カの状態検出手段を現代制御理論の状態推定手段の構成
にしたので、安価な回路を付加するだけで、信号処理に
よるフィードバック制御を行うので、センサレスにもか
かわらずスピーカ本体の機械的あるいは電気的なばらつ
きや電流検出系のばらつきに対しても、正確な速度並び
に加速度の検出が、複雑なゲイン調整等を要することな
く、可能になる。これによって、スピーカを任意の良好
な特性に改善することが可能になる。
【0062】また、スピーカ100の振動板の位置セン
サからの検出位置信号若しくは振動板の加速度センサか
らの検出加速度信号と駆動電圧若しくは駆動電流を用
いて、スピーカ100の振動板の速度並びに加速度を現
代制御理論の状態推定手段により推定するようにしたの
で、センサノイズを増幅する事なく信号処理により高精
度にスピーカ100の振動板速度並びに加速度を検出す
ることができる。これによって、スピーカを任意の良好
な特性に改善することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の音響装置のブロック回路図
である。
【図2】実施例1の速度推定特性図である。
【図3】実施例1の効果を示す周波数特性図である。
【図4】本発明の実施例2の音響装置のブロック回路図
である。
【図5】実施例2のノイズ抑圧効果を示す信号波形図で
ある。
【図6】実施例2の位置センサの配置例を示す断面図で
ある。
【図7】本発明の実施例3の音響装置のブロック回路図
である。
【図8】スピーカの断面図である。
【図9】スピーカの動作を伝達関数表示したブロック図
である。
【図10】スピーカの電圧−音圧特性図である。
【図11】状態フィードバックを用いた音響装置のブロ
ック回路図である。
【図12】状態フィードバックを説明するためのブロッ
ク図である。
【図13】状態フィードバックの効果を説明する電圧−
音圧特性図である。
【図14】従来の状態量検出センサの例を示す図であ
る。
【図15】従来の音響装置のブロック回路図である。
【図16】従来の音響装置を伝達関数表示したブロック
図である。
【図17】従来の速度推定能力を示す位置−速度特性図
である。
【図18】従来の状態フィードバックの効果を示す周波
数特性図である。
【符号の説明】
15 減算ブロック 16 減算ブロック 17 状態検出センサ 18 特性補正回路 19 ドライブアンプ 23 減算ブロック 24 電流検出用抵抗 25 差動増幅器 26 差動増幅器 28 減算ブロック 50 状態推定器 100 スピーカ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭58−215197(JP,A) 特開 昭55−97800(JP,A) 特開 昭57−13900(JP,A) 特開 昭60−208197(JP,A) 特開 平1−280998(JP,A) 特開 昭62−206999(JP,A) 特開 平4−348699(JP,A) 特開 昭55−149594(JP,A) 特開 昭58−12499(JP,A)

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スピーカと、 該スピーカの測定可能な状態量を検出する状態量検出手
    段と、 該状態量検出手段による検出状態量とスピーカ駆動信号
    とをもとに、上記スピーカの伝達特性を模擬した内部モ
    デルにより上記スピーカの状態量を推定する状態量推定
    手段とを備え、 該状態量推定手段による推定状態量を用いてフィードバ
    ック制御をすることによりスピーカの特性改善を行なう
    ことを特徴とする音響装置。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の音響装置において、 上記状態量検出手段は、スピーカ駆動電流を検出する電
    流検出手段であり、 上記状態量推定手段は、スピーカ駆動信号であるスピー
    カ駆動電圧と上記検出状態量であるスピーカ駆動電流と
    を基にスピーカの速度を推定する速度推定手段であるこ
    とを特徴とする音響装置。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の音響装置において、 上記状態量検出手段は、スピーカ駆動電流を検出する電
    流検出手段であり、 上記状態量推定手段は、スピーカ駆動信号であるスピー
    カ駆動電圧と上記検出状態量であるスピーカ駆動電流と
    を基にスピーカの加速度及び速度を推定する加速度及び
    速度推定手段であることを特徴とする音響装置。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の音響装置において、 上記状態量検出手段は、スピーカ振動板位置を検出する
    位置検出手段であり、 上記状態量推定手段は、スピーカ駆動信号と振動板位置
    信号とを基にスピーカの速度を推定する速度推定手段で
    あることを特徴とする 音響装置。
  5. 【請求項5】 請求項1に記載の音響装置において、 上記状態量検出手段は、スピーカ振動板位置を検出する
    位置検出手段であり、 上記状態量推定手段は、スピーカ駆動信号と振動板位置
    信号とを基にスピーカの加速度及び速度を推定する加速
    度及び速度推定手段であることを特徴とする 音響装置。
  6. 【請求項6】 請求項1に記載の音響装置において、 上記状態量検出手段は、スピーカ振動板加速度を検出す
    る加速度検出手段であり、 上記状態量推定手段は、スピーカ駆動信号と振動板加速
    度信号とを基にスピーカの速度を推定する速度推定手段
    であることを特徴とする 音響装置。
  7. 【請求項7】 請求項1に記載の音響装置において、 上記状態量検出手段は、スピーカ振動板加速度を検出す
    る加速度検出手段であり、 上記状態量推定手段は、スピーカ駆動信号と振動板加速
    度信号とを基にスピーカの加速度及び速度を推定する加
    速度及び速度推定手段であることを特徴とする音響装
    置。
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