JP2743009B2 - ボンド磁心用フェライト粒子粉末及びその製造法 - Google Patents

ボンド磁心用フェライト粒子粉末及びその製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、ボンド磁心用フェライト粒子粉末及びその
製造法に関するものであり、詳しくは、平均粒径が5〜
15μmの結晶粒によって形成されている平均粒子径20〜
150μmのFe2O347〜55モル%、NiO10〜23モル%及びZnO
25〜40モル%の組成をもつニッケル・亜鉛フェライト球
状粒子粉末であり、且つ透磁率が25以上であるボンド磁
心用フェライト粒子粉末及びその製造法に関するもので
ある。
本発明に係るボンド磁心用フェライト粒子粉末の主な
用途は、コンピュータ、通信機器、民生用機器等の各種
電子機器の誘導コイル、変圧器等の磁心材料に用いられ
る。
〔従来の技術〕
周知の如く、ボンド磁心は焼結磁心に比べ、寸法精
度、加工性及び脆弱性等に優れている為に小型、薄型、
そして複雑な形状品でも容易に量産化できる利点があ
り、近年、エレクトロニクスの発展とともにこれらの利
点を生かしての軽量化、小型化及び精密化の要求が一層
強まって来ている。
一般にボンド磁心は、磁性材料粉末とナイロン、フェ
ノール等の樹脂とを混練した後、加熱成型や射出成型し
て成型体を得ることにより製造されている。
上記磁性材料粉末としては、Mn−Zn系フェライト、Ni
−Zn系フェライト等の酸化物系のものが使用されてお
り、通常、主原料であるFe2O3、MnO、ZnO及びNiO等を所
望の組成になるように予め湿式又は乾式で配合混合し、
造粒した後、焼成を行い、続いて、平均粒子径が数μm
〜数百μm程度の大きさまで粉砕を施す方法により得ら
れている。
ボンド磁心は、前述した通り磁性材料粉末がナイロ
ン、フェノール等の樹脂によって結合されているもので
あり、焼結磁心と比較してボンド磁心の諸特性、特に透
磁率は、用いられる磁性材料粉末の特性と密接な関係に
あり大きく影響することが知られている。
従って、大きな透磁率を有するボンド磁心を得るため
には、大きな透磁率を有するフェライト粒子粉末を磁性
材料粉末として使用することが有利である。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、前記従来法によって得られるボンド磁心用フ
ェライト粒子粉末は、Fe2O3、NiO、ZnO等の各原料を配
合混合した後、径が数mm〜数十mm程度の造粒物を作製
し、この造粒物を高温度焼成して得られるものである
が、得られたフェライト粒子は結晶粒が数百μmと巨大
に成長して不均一になっており、しかも該結晶粒内には
多くの空孔を内包しており、これら結晶粒の不均一と空
孔の存在により透磁率は低下し、結果的に磁性粉として
透磁率の小さいフェライト粒子粉末が得られてしまい、
また、磁性粉自体、粉砕されたことによって角はばった
粒子粉末となっているため、射出成型の際には流動性の
悪いものであって、ボンド磁心用の磁性材料粉末として
好適とは言えないものであった。
従って、前記従来法によって得られた透磁率の小さい
フェライト粒子粉末をボンド磁心用の磁性材料粉末とし
て使用した場合には、高々20程度の透磁率を有したボン
ド磁心しか得ることが出来なかった。
もっとも、透磁率の大きなボンド磁心を得るために使
用される好ましい磁性材料粉末も提案されている。
例えば、特開昭55−103705号公報に記載の方法は、高
透磁率を有する成形体(ボンド磁心)を得るため磁性材
料粉末として粒径100μ乃至5mmの範囲で大きさの異なる
粒子群の混合物より形成されている混合フェライト粒子
粉末が用いられている。
しかし、この混合フェライト粒子粉末は、粒径の大き
な(5mm)粒子が含まれているため、射出成型によって
ボンド磁心を製造する場合の磁性材料粉末としては好適
なものではない。しかも、混合する以前の各フェライト
粒子粉末は共に前記した従来法によって得られたフェラ
イト粒子であって、その透磁率は小さいものである。
従って、透磁率の大きなボンド磁心を射出成型により
得るのに好適な透磁率の大きいフェライト粒子粉末が強
く要求されている。
〔課題を解決する為の手段〕
上述した現況に鑑み、本発明者は、ボンド磁心用磁性
材料粉末としての透磁率の大きいフェライト粒子粉末を
得るべく探究してきた。
その探究過程において、フェライト粒子構造とその透
磁率との関連について着目した。即ち、本発明者は、透
磁率の大きなフェライト粒子粉末を製造する為には、結
晶粒が均一で、しかも適度の大きさを有し、空孔が存在
しないフェライト粒子粉末を得ることが必要であり、そ
の為には焼成時において、空孔が拡散し易い。焼成
雰囲気との平衡が容易である。熱を均一に受け易いと
いう諸条件を満たす球状を呈した造粒物を用いることが
重要であると考え、実質的に球状に造粒することができ
る噴霧乾燥について着目し、検討を進めて来た。
そして、Fe2O347〜55モル%、NiO10〜23モル%、ZnO2
5〜40モル%なる組成のフェライト形成用混合粉末を、
当該フェライト形成用混合粉末重量に対して0.2〜1.0重
量%の界面活性剤を含有する水に分散混合し、スラリー
濃度が40〜60重量%の水分散スラリーに調製した後、こ
れを噴霧乾燥して得た平均粒子径25〜180μmの球状の
造粒物を1100〜1350℃の温度範囲で焼成を行う場合に
は、平均粒径が5〜15μmの結晶粒によって形成されて
いる平均粒子径20〜150μmのFe2O347〜55モル%、NiO1
0〜23モル%及びZnO25〜40モル%の組成をもつニッケル
・亜鉛フェライト球状粒子粉末であり、且つ透磁率が25
以上であるボンド磁心用フェライト粒子粉末が得られる
ことを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
即ち、本発明は、平均粒径が5〜15μmの結晶粒によ
って形成されている平均粒子径20〜150μmのFe2O347〜
55モル%、NiO10〜23モル%及びZnO25〜40モル%の組成
をもつニッケル・亜鉛フェライト球状粒子粉末であり、
且つ透磁率が25以上であることを特徴とするボンド磁心
用フェライト粒子粉末及びその製造法である。
〔作用〕 先ず、本発明において最も重要な点は、平均粒径が5
〜15μmの結晶粒によって形成されている平均粒子径20
〜150μmのFe2O347〜55モル%、NiO10〜23モル%及びZ
nO25〜40モル%の組成をもつニッケル・亜鉛フェライト
球状粒子粉末は、25以上の透磁率が得られるという点で
ある。
本発明において透磁率が25以上であるニッケル・亜鉛
フェライト球状粒子粉末が得られる理由について、本発
明者は、本発明方法により得られるニッケル・亜鉛フェ
ライト球状粒子粉末は、結晶粒が均一でしかも適度の大
きさを有し、空孔の存在が少ない粒子となっていること
によるものと考えている。
また本発明におけるボンド磁心用フェライト粒子粉末
は、従来の角ばっている不定形のフェライト粒子粉末と
異なり、適度の大きさを有し、球状の形態を呈した粒子
であるため流動性に優れており、従って、この粉末と樹
脂とを混練した後、成型するに際して、特に射出成型法
を用いた場合には複雑な形状の成型体を容易に製造する
ことが可能となる。
次に、本発明実施にあたっての諸条件について説明す
る。
先ず、本発明におけるボンド磁心用フェライト粒子粉
末は、Fe2O347〜55モル%、NiO10〜23モル%、ZnO25〜4
0モル%で表される組成をもつフェライト粒子からな
り、この範囲の組成のフェライト粒子粉末はボンド磁心
用のフェライト材料として使用できるが、この範囲外で
は透磁率が低くなり実用上好ましくない。
本発明における出発原料の一つである酸化鉄として
は、α−Fe2O3、γ−Fe2O3又はFe2O4、含水酸化鉄とし
ては、γ−FeOOH、β−FeOOH、γ−FeOOHが使用でき
る。最も好ましいのはα−Fe2O3である。
本発明におけるボンド磁心用フェライト粒子粉末は、
平均粒径が5〜15μmの結晶粒によって形成されている
平均粒子径20〜150μmのFe2O347〜55モル%、NiO10〜2
3モル%及びZnO25〜40モル%の組成をもつニッケル・亜
鉛フェライト球状粒子粉末ででなければならない。後出
実施例及び比較例に示す通り、結晶粒の平均粒径が5μ
m未満の場合、15μmを越える場合のいずれの場合にも
透磁率が低下する。20μm未満の場合には、粒子成長が
不充分となり好ましくない。150μmを越える場合に
は、結晶粒が異常成長し、しかも空孔が残り易くなり透
磁率が低下する為好ましくない。
上記した本発明の目的とするボンド磁心用フェライト
粒子粉末を得るためには、焼成前の造粒物の平均粒子径
は25〜180μmの範囲に制御しておく必要がある。
その為には、フェライト形成用混合粉末を、0.2〜1.0
重量%(フェライト形成用混合粉末の重量に対して)の
界面活性剤を含有する水に分散混合し、スラリー濃度が
40〜60重量%の水分散スラリーに調製した後、該スラリ
ーを噴霧乾燥しなければならない。スラリー濃度が40重
量%未満の場合には、噴霧乾燥効率が悪くなり生産性が
低下し、60重量%を越える場合には供給が困難となり噴
霧乾燥が不可能となり、本発明の目的とするボンド磁心
用フェライト粒子粉末が得難くなる。
本発明における界面活性剤としては、カルボン酸塩、
スルホン酸塩、アミン塩、アンモニウム塩の界面活性剤
が使用でき、その使用量はフェライト形成用混合粉末重
量に対して0.2〜1.0重量%が好ましい。
本発明における焼成温度は1100〜1350℃の範囲であ
る。1100℃未満の場合には、フェライト生成が不充分で
結晶粒の大きいものが得られない。1350℃を越える場合
には、結晶粒の異常成長が促進され、不均一で空孔が多
く発生する為好ましくない。
〔実施例〕
次に、実施例並びに比較例により本発明を説明する。
尚、以下の実施例並びに比較例におけるフェライト粒
子粉末の透磁率は、フェライト粒子粉末とポリビニルア
ルコールとの混合物を造粒し、1 ton/cm2の圧力で外径3
6mmφ×内径24mmφ×高さ10mmの円筒形にプレス成型し
た圧粉成型体を測定試料に巻線を施し、インピーダンス
アナライザー4194A(横河・ヒューレット・パッカード
(株)製)を用い、周波数1 MHzの条件下で測定した値
である。
実施例1 酸化鉄(α−Fe2O3)33.85kgと酸化ニッケル6.10kg及
び酸化亜鉛10.95kgとを混合してFe2O3:50.1モル%、Ni
O:18.7モル%、ZnO:31.2モル%の組成を有したフェライ
ト形成用混合粉末を作製した。次いで、該混合物をポリ
カルボン酸アンモニウム塩(SNディスパーサント5468
サンノプコ社製)0.3重量%(フェライト形成用混合粉
末重量に対して)を溶解した60.5lの水溶液中に投入し
た。水溶液中におけるスラリー濃度は45.7重量%であっ
た。続いて該スラリーを噴霧乾燥して平均粒子径105μ
mの造粒物を得た。
得られた造粒物を1320℃の温度で3時間焼成してフェ
ライト化を行い、ニッケル・亜鉛フェライト球状粒子粉
末からなるボンド磁心用フェライト粒子粉末を得た。
得られたボンド磁心用フェライト粒子粉末の透磁率は
32.7であり、図1に示す走査型電子顕微鏡写真での観察
の結果、平均粒径が12.2μmの結晶粒によって形成され
ている平均粒子径80μmのニッケル・亜鉛フェライト球
状粒子であり、空孔の少ないものであることが確認でき
た。
実施例2〜6、比較例1〜7 フェライト形成用混合粉末の組成比、界面活性剤の種
類及び量、フェライト形成用混合スラリー濃度、造粒物
の大きさ並びに焼成温度を種々変化させた以外は実施例
1と同様にしてボンド磁心用フェライト粒子粉末を得
た。
この時の主要製造条件及びボンド磁心用フェライト粒
子粉末の特性を表1に示す。
尚、実施例3に於ける酸化鉄原料はFe3O4を用い、実
施例5に於ける界面活性剤はポリカルボン酸ナトリウム
塩(ノプコサントK サンノプコ社製)を用いた。
また、比較例7はフェライト形成用混合粉末を噴霧乾
燥せずに従来法で5mm程度の造粒物を作製し、この造粒
物を1250℃の温度範囲で焼成し、次いで、焼成物を粉砕
して平均粒子径38.8μmで空孔の多いボンド磁心用フェ
ライト粒子粉末を得た。
〔発明の効果〕 本発明に係るボンド磁心用フェライト粒子粉末は、前
出実施例に示した通り、フェライト組成の範囲Fe2O347
〜55モル%、NiO 10〜23モル%、ZnO 25〜40モル%に於
いて、平均粒径が5〜15μmの結晶粒によって形成され
ている平均粒子径20〜150μmのニッケル・亜鉛フェラ
イト球状粒子粉末であり、透磁率が25以上のボンド磁心
用フェライト粒子粉末を得ることができるので、現在要
求されているボンド磁心用のフェライト粒子粉末として
好適である。
【図面の簡単な説明】
図1乃至図6は、いずれも走査型電子顕微鏡写真(×65
00)であり、図1は実施例1、図2は実施例2、図3は
実施例4で得られたボンド磁心用フェライト粒子粉末の
粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真であり、図4は比
較例3、図5は比較例4、図6は比較例7で得られたフ
ェライト粒子粉末の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写
真である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】平均粒径が5〜15μmの結晶粒によって形
    成されている平均粒子径20〜150μmのFe2O347〜55モル
    %、NiO10〜23モル%及びZnO25〜40モル%の組成をもつ
    ニッケル・亜鉛フェライト球状粒子粉末であり、且つ透
    磁率が25以上であることを特徴とするボンド磁心用フェ
    ライト粒子粉末。
  2. 【請求項2】出発原料として酸化鉄又は含水酸化鉄、酸
    化ニッケル及び酸化亜鉛の粉末を用い、Fe2O3に換算し
    たとき47〜55モル%となる量の酸化鉄又は含水酸化鉄粉
    末、NiOに換算したとき10〜23モル%となる量の酸化ニ
    ッケル粉末及びZnOに換算したとき25〜40モル%となる
    量の酸化亜鉛粉末からなるフェライト形成用混合粉末
    を、該フェライト形成用混合粉末重量に対して0.2〜1.0
    重量%の界面活性剤を含有する水に分散混合し、スラリ
    ー濃度が40〜60重量%の水分散スラリーに調製した後、
    噴霧乾燥して平均粒子径25〜180μmの球状の造粒物と
    した後、当該造粒物を1100〜1350℃の温度範囲で焼成す
    ることによって平均粒径が5〜15μmの結晶粒によって
    形成されている平均粒子径20〜150μmのニッケル・亜
    鉛フェライト球状粒子粉末であり、且つ透磁率が25以上
    であることを特徴とするボンド磁心用フェライト粒子粉
    末の製造法。
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