JP2741747B2 - 酸化物単結晶とその製造方法 - Google Patents

酸化物単結晶とその製造方法

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JP2741747B2
JP2741747B2 JP31987495A JP31987495A JP2741747B2 JP 2741747 B2 JP2741747 B2 JP 2741747B2 JP 31987495 A JP31987495 A JP 31987495A JP 31987495 A JP31987495 A JP 31987495A JP 2741747 B2 JP2741747 B2 JP 2741747B2
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秀夫 木村
健則 沼澤
充典 佐藤
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科学技術庁金属材料技術研究所長
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、酸化物単結晶と
その製造方法に関するものである。さらに詳しくは、こ
の発明は、レーザー素子や波長変換素子などに好適に用
いることのできる、優れた非線形光学特性を有する新し
い酸化物単結晶とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】従来より、低温相のBaB2
4 単結晶は、化学量論組成の融液から、平衡状態図に
おける相転移温度(925℃)以上融点(1100℃)
以下の温度範囲において準安定相として製造されてい
る。しかしながら、このような従来の製造方法では、低
温相のBaB2 4 単結晶は、相転移温度以上において
準安定相として製造されるため、再現性良く製造するこ
とができず、製造される単結晶の品質が不安定であり、
ロッド毎に異なったものとなってしまうといった問題が
あった。
【0003】また、このような問題点を解決するため
に、Na2 O等のフラックスを化学量論組成の融液に添
加することにより相転移温度を下げて安定相として低温
相のBaB2 4 単結晶を製造する方法も行われてい
る。しかしながら、この製造方法では、低温相のBaB
2 4 単結晶は安定相として製造されるために再現性良
く製造することができるものの、フラックスが不純物と
して単結晶に混入してしまうために良質な単結晶を製造
することができないといった問題があった。
【0004】そこで、この発明は、上記のような事情に
鑑みてなされたものであり、従来のBaB2 4 単結晶
の問題点を解消し、優れた非線形光学特性を有する新し
いBa−B系酸化物単結晶と、その酸化物単結晶を再現
性良く、高純度で製造することのできる製造方法を提供
することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題
を解決するものとして、一般式Ba(B1-X X 2
4 (但し、MはAl、Ga、およびInの少くとも1種
以上で、xは0.001<x<0.15である)により
示されることを特徴とする酸化物単結晶を提供する。
【0006】また、この発明は、BaB2 4 に対して
Al、GaおよびInの1種以上を添加して結晶育成
し、低温相のBa(B1-X X 2 4 単結晶を製造す
ることを特徴とする酸化物単結晶の製造方法をも提供す
る。
【0007】
【実施の形態】この発明の酸化物単結晶は、上記の通
り、一般式Ba(B1-X X 2 4 で示されることを
特徴としており、MはAl、Ga、およびInから選択
される少くとも1種以上で、xは0.001<x<0.
15であって、これらAl、Ga、InはBの同族元素
であるため、Ba(B1-X X 2 4 において不純物
的作用をしない。従って、この発明の酸化物単結晶は、
BaB2 4 と同様の優れた非線形光学特性を有するも
のとなる。
【0008】そして、この発明の製造方法では、BaB
2 4 のBをAl、Ga、Inの1種類または2種類以
上の組み合わせで置換することにより低温相のBa(B
1-XX 2 4 単結晶を製造する。実際には、Bと同
族元素であり、BaB2 4 に対して低温相生成促進効
果を有するAl、Ga、Inを1種類、または2種類以
上組合せたものを、0.001<x<0.15の範囲
で、例えば、BaB2 4 にこれら元素を添加すること
によりBの部分置換を行う。そして、この部分置換され
たBa(B1-X X 24 を用いて、例えば、高周波
加熱引き上げ装置や、ハロゲン加熱浮遊帯溶融装置等に
より低温相のBa(B1-X X 2 4 を安定相として
製造する。
【0009】低温相生成促進元素として用いるAl、G
a、Inは置換対象となるBと同族元素であるため、B
a(B1-X X 2 4 において不純物的作用をせず、
良質なBa(B1-X X 2 4 単結晶を製造すること
ができ、また、低温相生成促進効果により、結晶化温度
を相転移温度(925℃)以下に下げることができるた
め、従来より準安定相として製造されていた低温相を、
安定相として製造することができ、よって、再現性良く
単結晶を製造することができる。
【0010】以下、実施例を示し、さらに詳しくこの発
明の実施の形態について説明する。もちろんこの発明は
以下の例によって限定されるものではない。
【0011】
【実施例】
(実施例1)この発明の製造方法により一般式Ba(B
1-X X 2 4 により示される酸化物単結晶を生成し
た。製造装置としては高周波加熱引き上げ装置を用い
た。まず、化学量論組成のBaB2 4 に低温相生成促
進元素であるAlとGaとInを、それぞれx=0.0
5で添加し、BaB2 4 のBを各元素で部分置換する
ことによりBa(B0.95Al0.052 4 、Ba(B
0.95Ga0.052 4、Ba(B0.95In0.052 4
とする。次に、これら3種類のBa(B0.95 0.052
4 50gを、高周波加熱引き上げ装置における直径5
0mm、高さ50mmの白金るつぼ中において大気中で
融解する。この時の融点はそれぞれ1098℃、109
7℃、1096℃である。そして、これらの融液中に、
直径2mm、長さ50mmの種結晶を20rpmで回転
させながら上方から浸し、30分後にこの種結晶を20
rpmで回転させながら融液中から上方へ5mm/hの
速度で引き上げる。この行程を12時間行う。
【0012】このようにして、種結晶の先に直胴部で直
径20mm、長さ40mmの結晶欠陥の少ない低温相の
Ba(B0.950.052 4 単結晶を製造することがで
きた。これら3種類のBa(B0.950.052 4 単結
晶はいずれも、純BaB2 4 の相転移温度である92
5℃以下の880〜900℃で成長した。3種類のBa
(B0.950.052 4 中では、Alを添加した場合の
Ba(B0.95Al0.052 4 が最も結晶生成温度が低
く、大きな低温相生成促進効果が得られた。
【0013】また、生成された低温相のBa(B0.95
0.052 4 単結晶を粉末化し、X線回折を行った。図
1は、低温相のBa(B0 .95 Al0 .05 2 4 単結
晶と高温相の純BaB2 4 と低温相の純BaB2 4
の各X線回折を示したものである。図2は、その部分拡
大図である。この図1および図2から明らかなように、
この発明により製造された低温相のBa(B
0.950.052 4 単結晶は、低温相の純BaB2 4
に相当するものであることがわかる。
【0014】つまり、低温相生成促進元素であるAl、
Ga、Inを添加することにより、低温相の純BaB2
4 と類似の、結晶欠陥の少ない高純度の低温相Ba
(B1- X X 2 4 単結晶を安定相として製造するこ
とができた。また、低温相生成促進元素の添加をBaB
2 4 の融解後に行った場合も、同様に、結晶欠陥の少
ない高純度の低温相Ba(B1-X X 2 4 単結晶を
安定相として製造することができた。 (実施例2)この発明の製造方法により一般式Ba(B
1-X X 2 4 により示される酸化物単結晶を生成し
た。製造装置としては高周波加熱引き上げ装置を用い
た。
【0015】まず、化学量論組成のBaB2 4 に低温
相生成促進元素であるAlとGaとInの2種類を組み
合わせたものをx=0.05で添加し、BaB2 4
Bを各元素組合せで置換することによりBa(B0.95
0.052 4 とする。2元素の組み合わせの比率は1:
1とする。次に、このBa(B0.950.052 4 50
gを、高周波加熱引き上げ装置における直径50mm、
高さ50mmの白金るつぼ中において大気中で融解す
る。この時の融点は1095〜1098℃である。そし
て、これらの融液中に、直径2mm、長さ50mmの種
結晶を20rpmで回転させながら上方から浸し、30
分後にこの種結晶を20rpmで回転させながら融液中
から上方へ5mm/hの速度で引き上げる。この行程を
12時間行う。
【0016】このようにして、種結晶の先に直胴部で直
径20mm、長さ40mmの結晶欠陥の少ない低温相の
酸化物単結晶を製造することができた。これらのBa
(B0. 950.052 4 単結晶はいずれも、純BaB2
4 の相転移温度である925℃以下の850〜900
℃で成長し、実施例1における低温相生成促進元素を単
独で添加させた場合と比べ、それと同等あるいはそれ以
上の低温相生成促進効果が得られた。また、生成された
Ba(B0.950.052 4 単結晶は、X線回折の結
果、低温相の純BaB2 4 に相当するものであった。
【0017】つまり、低温相生成促進元素であるAl、
Ga、Inを2種類組み合わせて添加することにより、
結晶欠陥の少ない高純度の低温相Ba(B1-X X 2
4単結晶を安定相として製造することができた。さら
に、低温相生成促進元素のAlとGaとInの3種類を
組み合わせて添加して単結晶製造を行った場合も、ま
た、低温相生成促進元素2種類以上の組合せをBaB2
4 の融解後に添加して単結晶製造を行った場合も、同
様に、結晶欠陥の少ない高純度の低温相Ba(B1-X
X 2 4 単結晶を安定相として製造することができ
た。 (実施例3)この発明の製造方法により一般式Ba(B
1-X X 2 4 により示される酸化物単結晶を生成し
た。製造装置としてはハロゲン加熱浮遊帯溶融装置を用
いた。
【0018】原料BaB2 4 の融解前に、低温相生成
促進元素AlとGaとInとを単独で原料に添加する場
合と、低温相生成促進元素AlとGaとInを2種類以
上組み合わせて原料に添加する場合の両条件において単
結晶を製造した。その結果、実施例1、実施例2と同様
に、結晶欠陥の少ない高純度の低温相Ba(B
1-X X 2 4 単結晶を安定相として製造することが
できた。
【0019】また、原料BaB2 4 の融解後に、低温
相生成促進元素AlとGaとInとを単独で原料に添加
する場合と、低温相生成促進元素AlとGaとInを2
種類以上組み合わせて原料に添加する場合の両条件にお
いて単結晶を製造した。その結果、実施例1、実施例2
と同様に、結晶欠陥の少ない高純度の低温相Ba(B
1-X X 2 4 単結晶を安定相として製造することが
できた。 (実施例4)この発明の製造方法により、化学量論組成
のBaB2 4 のBをAlで置換する際にBa(B1-X
X 2 4 のxを変化させ、単結晶の製造を行った。
【0020】化学量論組成のBaB2 4 に、低温相生
成促進元素であるAlをx=0.001、0.01、
0.1、0.15でそれぞれ添加し、Ba(B0.999
0.00 1 2 4 、Ba(B0.99Al0.012 4 、B
a(B0.9 Al0.1 2 4 、Ba(B0.85Al0.15
2 4 とする。次に、これら4種類のBa(B1-X Al
X 2 4 50gを、高周波加熱引き上げ装置における
直径50mm、高さ50mmの白金るつぼ中において大
気中で融解する。この時の融点は1090〜1098℃
である。そして、これらの融液中に、直径2mm、長さ
50mmの種結晶を20rpmで回転させながら上方か
ら浸し、30分後にこの種結晶を20rpmで回転させ
ながら融液中から上方へ5mm/hの速度で引き上げ
る。この行程を12時間行う。
【0021】これにより、種結晶の先に直胴部で直径2
0mm、長さ40mmの固体が成長した。 成長したこ
れら4種類の固体を調べたところ、x=0.001、
0.01、0.1でAl置換した場合の固体は、どれも
低温相のBa(B1-X AlX 2 4 単結晶であった
が、x=0.15の場合の固体は、単結晶ではなかっ
た。図3は、x=0.15の場合の成長固体のX線回折
を示したものである。この図3から明らかなように、こ
の固体のX線回折には結晶を示すピークが存在していな
い。つまり、この固体は結晶ではなく、ガラスである。
【0022】また、x=0.001の場合には、結晶生
成温度が相転移温度(925℃)以上の1030℃であ
ったため、低温相生成促進効果が認められなかった。x
=0.01と0.1の場合には、実施例1と同様に、結
晶欠陥の少ない高純度の低温相Ba(B1-X X 2
4 単結晶を安定相として製造することができた。つま
り、BをAl、Ga、Inで置換する際に、xが、0.
001<x<0.15の範囲になるように調整すること
により良質の低温相Ba(B1-X X 24 単結晶を
安定相として製造することができる。
【0023】
【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明の酸
化物単結晶は、従来のBaB2 4 単結晶の代わりとな
る、優れた非線形光学特性を有するものであり、このよ
うなこの発明の酸化物単結晶を用いることにより、レー
ザー素子や波長変換素子の技術分野における利用範囲を
拡大することができ、また、この発明の製造方法によ
り、BaB2 4 のBと同族元素であるAl、Ga、I
nを低温相生成促進元素として単独で、または2種類以
上の組合せで置換することにより、良質な低温相Ba
(B1-X X 2 4 酸化物単結晶を安定相として再現
性良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例である低温相のBa(B
0 .95 Al0 .05 2 4 単結晶、および従来の高温相
の純BaB2 4 と低温相の純BaB2 4 の各X線回
折を例示した図である。
【図2】図1の低温相のBa(B0 .95 Al0 .05 2
4 単結晶のX線回折の結果を拡大して示した図であ
る。
【図3】Ba(B0.85Al0.152 4 のX線回折を例
示した図である。
フロントページの続き (56)参考文献 H.KIMURA,ET AL.," MELT SUPERCOOLING BEHAVIOR AND CRYST AL GROWTH OF BA(B1 −XMX)204(M:AL OR G A)”,JOURNAL OF CRY STAL GROWTH,1997,VO L.174,NO.1−4,P.308−312

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式Ba(B1-X X 2 4 (但
    し、MはAl、Ga、およびInの少くとも1種以上
    で、xは0.001<x<0.15である)により示さ
    れることを特徴とする酸化物単結晶。
  2. 【請求項2】 BaB2 4 に対してAl、Gaおよび
    Inの少くとも1種以上添加して結晶育成して請求項1
    の単結晶を製造することを特徴とする酸化物単結晶の製
    造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2010009581A1 (zh) 2008-07-25 2010-01-28 中国科学院福建物质结构研究所 掺杂的低温相偏硼酸钡单晶体、其制备方法及其变频器件

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
H.KIMURA,ET AL.,"MELT SUPERCOOLING BEHAVIOR AND CRYSTAL GROWTH OF BA(B1−XMX)204(M:AL OR GA)",JOURNAL OF CRYSTAL GROWTH,1997,VOL.174,NO.1−4,P.308−312

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