JP2739595B2 - 紙葉類繰出装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は紙幣或いはこれに類する紙葉類の払出機など
において、機内にて積層状態に収納された紙葉類を一枚
づつ繰り出すことのできる紙葉類繰出装置に関する。

（従来の技術） 従来、例えば紙幣払出機或いは入金機には種々の装置
が用いられているが、この種の装置においては何れの場
合も紙幣等を正確に一枚づつ送り出すことが要求され
る。従って、この要求に答えることのできる装置が、こ
れまで種々提案されており、例えば、特開昭56−65734
号、同63−282032号、実開昭63−183136号等に紙葉類の
繰出装置が開示されている。

特開昭56−65734号に記載された装置は、紙葉類を一
枚ずつ取り出すために、複数のフリクションロールを用
いると共に従来よりも簡略化した構成の逆転ベルトをこ
のフリクションロールの反対側に設けた構成である。特
開昭63−282032号においても、紙葉類を一枚づつ取り出
すために、紙葉類の送り出し方向に沿って前後方向に複
数のフリクションロールを並べ、且つゲートローラにバ
ネ機構を内蔵した比較的複雑な構造が採用されている。
さらに、実開昭63−183136号においても、紙葉類を一枚
づつ取り出すために、紙葉類の送り出し方向に沿って前
後方向に並べた複数のフリクションロールを設け、更に
後方のロールの両側近傍に二枚目（最表部に下側の紙
葉）の紙葉を抑える制動パッドを設けた構造である。

（発明が解決しようとする課題） このように紙幣等の繰出装置にあっては、基本的な構
造として繰出ロールを設ける一方で裏面側にてその繰り
出しを抑える手段を設けることにより、如何にして二枚
出し現象（重なり送り出し）を防止するかが最重要の課
題である。また、これに加えて装置構造の複雑化の回避
し信頼性を向上させることが大きな課題である。また、
紙葉類の二枚送り出しを防止するには、紙葉と繰り出し
ロールとの当接力をあらゆる状況下で常に安定に保つこ
とができるかも大きな要因であり、この安定した当接力
を得るのに如何に複雑な構造を用いることなく達成でき
るかも大きな課題であった。特に、近年においては前記
紙葉類を収納するバケット部分及びこれに付随する部分
が一つのユニットとして、例えば紙幣払出機等に着脱自
在に構成された装置が汎用されて来ており、この装置構
造の簡略化ならびに軽量化等の要望はこれまで以上に大
きくなって来ている。又、メンテナンス性の向上ならび
に廉価性の追求も切望されている。

このような状況下において、本発明は紙葉類の二枚出
し現象を確実に防止することができると共に装置構造の
簡素化ができ、また装置のメンテナンス性の向上ならび
に廉価性を達成できるように構成された紙葉類繰出装置
を提供することを目的とするものである。

（課題を解決するための手段） 本発明の上記目的は、紙葉類収納室にて紙葉類を積層
状態で保持すると共に移動可能に支持された載置台が弾
性部材によって一定方向に付勢されており、該付勢力に
対向する側に設けられた繰出ロールにより、前記紙葉類
を表面側から順次一枚づつ送り出しをするように構成さ
れた紙葉類繰出装置において、前記繰出ロールは前記紙
葉類の最表部を押圧することにより前記載置台を一時的
に反付勢方向に押し戻す回転自在な凸部材と、前記紙葉
類の最表部のものを僅かに前進させるべく摩擦係合可能
で且つ弾性手段にて回転が抑制された予備送出ロール
と、前記紙葉類に摩擦係合し該紙葉類を繰出方向へ大き
く前進させる高摩擦部材からなる繰出部材とがロール外
周面或いは該外周面の延長面から突出するようにロール
回転方向に対して前記順序にて前記紙葉類に当接するよ
うに構成されたことを特徴とする紙葉類繰出装置により
達成することができる。

以下、添付図面に示した本発明の実施例について説明
する。

第１図は本発明の紙葉類繰出装置の一実施例における
概略側面図、第２図は繰出ロールの斜視図であり、第３
図は繰出ロールの作用を順次示した概略動作図である。

第１図に示す紙葉類繰出装置１は箱型のユニットとし
て構成されており、例えば紙幣払出機等に着脱自在にな
されている。この紙葉類繰出装置１は紙葉20の収納空間
である収納室18内を上下移動自在に載置台２が設けら
れ、収納室18の上方には、載置台18上に積層された紙葉
20を一枚づつ送り出すための繰出ロール９が設けられ、
この繰出ロール９の下流側（紙葉搬送方向の下流側）に
近接して供給ロール３及び分離ロール４が設けられてお
り、紙葉20を一枚づつユニット外の所定の搬送路に供給
できるように構成されている。

載置台２は図示しない複数の支柱等にスライダブルに
支持されていると共に、図中左端の適所に取りつけられ
たコイルバネ５により上方に引っ張られている。したが
って、載置台２は紙葉20を繰出ロール９に押しつけるよ
うに作用することができる。又、コイルバネ５はその先
端がユニット右上端に設置された係止ピン６に引っ掛け
られ、且つその略中断部分がユニット左上端に設けられ
たピン７、８により挟むように保持されてほぼ直角に屈
曲され、ユニット上端に沿う水平部分とユニット側面に
沿った垂直部分とを有するように取り付けられて極めて
長い構成となっている。このようにコイルバネ５をユニ
ットのスペース最大限に生かして長いものを使用するこ
とができることにより、コイルバネ５の伸縮の際に単位
長さ当たりの変形量を小さく抑えることができるので、
載置台２が上下動する範囲において、このコイルバネ５
が最も伸びた状態（載置台が最下方にある状態）と、さ
ほど伸びていない状態（載置台が上方にある状態）とに
おけるバネ力の変動が少なく、載置台２の位置に関係な
く常に安定した付勢力を作用させることが可能である。

前記繰出ロール９は回転軸16を中心にして回転する円
筒体であり、夫々別々の機能を持った三つの要素を備え
ている。その三つの要素とは、第一及び第二の要素とし
て、繰出ロール９の胴部の両側端に比較的小さいロール
状の凸部材10と、この凸部材10に比べて大き目の予備送
出ロール12とを一対ずつ夫々備えており、更に、第三の
要素として胴部外周面17に、表面が波状に形成された繰
出部材15が設けられている。

凸部材10はロール半径方向に金属製の胴部外周面17の
延長面よりもロール半径方向に突出するように支軸11に
より回転可能に取りつけられている。この凸部材10は表
面が滑り易い金属あるいは硬質プラスチック等により構
成されており、繰出ロール９の回転時に、積層されてい
る紙葉20の最表面を下方に押圧することにより、コイル
バネ５の付勢力に抗して載置台２を動かして、このコイ
ルバネ５に衝撃（一時的な振動）を与える機能を有して
いる。

予備送出ロール12は凸部材10と同様にその外周面が胴
部外周面17の延長面よりもロール半径方向外側に突出す
るように位置している。この予備送出ロール12は表面が
比較的摩擦係数の高いゴム材にて形成されている。そし
て、予備送出ロール12は、頭部が大径に構成された調整
螺子14を回転軸として回転可能に取りつけられており、
更に、この調整螺子14の頭部と予備送出ロール12の側面
との間には、該ロール12を側面から適宜押圧するコイル
状の調整バネ13が取りつけられている。従って、調整螺
子14のねじ込み調整により、調整バネ13の押圧力を適宜
調整でき、予備送出ロール12の回転力が制御できるよう
になっている。この結果、予備送出ロール12は繰出ロー
ル９が回転したときに紙葉に接して僅かに回転しながら
適宜摩擦力にて最表部の紙葉20aを僅かに前進させるこ
とが出来る。

繰出部材15は予備送出ロール12と比較して摩擦力が大
きくなるようにその材質或いは形状も適宜構成されてお
り、例えばゴム等の高摩擦部材にて形成さており、その
表面形状は紙葉と接したときに摩擦力が高くなるように
紙葉供給方向に沿った垂直断面が波形に形成されてい
る。なお、繰出部材15は、波型の再表部分が胴部外周面
17よりもロール半径方向に僅かに突出し、また、ロール
１周の略1/4程度の角度を占めるように胴部外周面に嵌
め込むように固定されている。

また、繰出ロール９の幅（ｌ）は、例えば、予備繰出
ロール12が紙葉20の両端縁近傍に接するような寸法に構
成されていることがその作用を最大限に発揮できること
から望ましく、又、少なくとも予備繰出ロール12間の幅
（L₁）が紙葉20の幅を越えないように構成されているこ
とは勿論である。

前記した繰出ロール９、供給ロール３及び分離ロール
４は各ロールの回転軸に設けられたギアにタイミングベ
ルトを適宜掛け渡し、図示しない１つのモータにより各
ロールの所望とする回転スピードにて駆動されている。

上記のように構成された紙葉類繰出装置１の要部の動
作について第３図を参照して詳細に説明する。

上記に紙葉類繰出装置１を備えた紙幣払出機の操作に
より発生した適宜作動信号により、所定の回転位置で停
止していた繰出ロール９が回転を開始する。そして、こ
の回転により先ず始めに凸部材10が積層された紙葉20の
上面を押圧し（第３図のＡ）、ロール回転と共にすぐに
この押圧は解除される。この押圧により載置台２は下方
に押された後すぐにコイルバネ５により上方に戻され、
該コイルバネ５に一時的に振動が発生することにより、
コイルバネ５の伸びがその全長にわたって均一化するこ
とができる。すなわち、コイルバネ５はその長さを長く
するために前述のようにピン７、８により強制的に屈曲
されて取りつけられているために、該ピン７、８のとこ
ろにてバネの付勢力（弾性力）が分断されてしまい、該
ピン７、８より下方部分の弾性に大きく依存してしまう
ような所謂コイルバネ５の引っ掛かり現象が発生し易い
が、凸部材10による振動によりこの引っ掛かり現象を防
止することができる。従って、コイルバネ５の本来の長
さを有効に使用することができる。

凸部材10の当接の後、所定の時間（本実施例において
は繰出ロールがほぼ90゜回転する時間）をおいて、予備
繰出ロール12が極めて微妙なタッチで接触する（第３図
のＢ）。すなわち、コイルバネ５の予め設定された安定
した付勢力条件の下にて調整バネ13の押圧により僅かな
回転を伴って紙葉に接することができるので、強すぎず
且つ弱すぎない微妙な接触で最表部の紙葉20aの上面を
押圧且つロール回転方向に引きずることができる。この
柔軟な当接作用により、例えば、上下隣合う紙葉（最表
部の紙葉とその下の紙葉）に折り目等の如き相互の引っ
掛かりを生じ易い要因があっても、最表部の紙葉20aは
そのすぐ下部の紙葉と確実に分離されるべくずれを生じ
ることができる。このように、本発明の装置によれば、
従来のように何れの場合も最表部の紙葉の移動し始めに
おいて該最表部の下の紙葉が連動することを完全に防止
できなかった装置にくらべて、上述の予備繰出ロール12
の柔軟な当接作用によって最表部の紙葉の移動始めから
二枚繰り出しを回避しており、二枚送り出し防止の信頼
性は極めて高くできるものである。

また、繰出ロール12は作動時のこの僅かな回転動によ
り、紙葉に対して常に異なった面が接触面となり、片減
りや偏心がなく長期にわたって所期の作用を安定維持す
ることができ且つその寿命を長くできる。

予備繰出ロール12の接触に引き続いて、繰出部材15が
紙葉20aに当接することにより（第３図のＣ）、ずれ始
めた紙葉20aは紙葉供給方向に送り出され、そして、繰
出ロール９よりも高速で正回転している供給ロール３と
逆転している分離ロール４との間に挟み込まれるように
更に前進させられる。

なお、供給ロール３と分離ロール４とは夫々円周方向
に沿った複数の溝を有した凹凸形状であり、この凹と凸
が互い違いに非接触に対向するように構成されている。

このように構成された供給ロール３と分離ロール４に
挾持された紙葉20aは、分離ロール４よりも摩擦係数の
高い材質にて形成された供給ロール３に引きずられて繰
り出され、所定の搬送路に引き出されていく。また、こ
のとき供給ロール３に対向して紙葉20aの引き出し方向
とは逆向きになるように回転している分離ロール４によ
り、二枚送りを更に確実に防止するように構成されてい
る。

尚、供給部材15と紙葉20aとの当接力は、繰出ロール
９の回転の度に凸部材10が作用しているので、いつも安
定したコイルバネ５の力が作用され、紙葉送り出しの良
好な条件が維持されている。

以上、一実施例について本発明を説明したが、本発明
はこれのみに限定されるものではなく、例えば、コイル
バネの取付け構造や、繰出ロールの位置、さらには凸部
材の数など種々変更できるものであり、又、本発明は上
記実施例の如き紙幣の繰出装置に限らず、複写機等のあ
らゆる装置に適用できるものである。

（発明の効果） 以上述べたように、本発明の装置は、繰出ロールが紙
葉類の最表面を押圧することにより載置台に振動を与え
る回転自在な凸部材と、紙葉類の最表部のものを僅かに
前進させるべく摩擦係合可能に弾性手段にて回転が抑制
された予備送出ロールと、高摩擦部材からなり紙葉類に
摩擦係合し該紙葉類を収納室から繰り出す繰出部材とが
該順序にてロール外周面或いは該外周面の延長面から突
出するように構成されている。従って、凸部材による衝
撃により、折り曲げるように取りつけられた長いバネの
有効利用ができて、安定した付勢力を得ることができる
ので、紙葉と繰出ロールの各部分との当接力が安定し紙
葉の繰出条件を常に安定させることができる。また、従
来のように最表部の紙葉の移動し始めにおいて該最表部
の下の紙葉が連動することを完全に防止できなかった装
置にくらべて、予備繰出ロールの柔軟な当接によるずら
し作用によって最表部の紙葉の移動し始めから二枚繰り
出し防止動作が行われるので、二枚送り出し防止の信頼
性が向上する。また、繰出ロールは紙葉のずらし作動時
に僅かな回転動が伴うので、紙葉に対して常に異なった
面が接触面となり、片減りや偏芯がなく長期にわたって
所期の作用を安定維持することができ且つその寿命を長
く保つことができる。

また、紙葉の正確な送り出しを行うための３要素が繰
出ロールに集約されているので、装置構造の簡素化がで
き、また装置のメンテナンス性等の向上を図ることがで
きる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の紙葉類繰出装置の一実施例における概
略側面図、第２図は繰出ロールの斜視図であり、第３図
は繰出ロールの作用を順次示した概略動作図である。 （図中符号） １……紙葉類繰出装置、２……載置台、 ３……供給ロール、４……分離ロール、 ５……コイルバネ、６……係止ピン、 ７、８……ピン、９……繰出ロール、 10……凸部材、11……支軸、 12……予備繰出ロール、 13……調整バネ、14……調整螺子、 15……繰出部材、16……回転軸、 17……胴部外周面、18……収納空間、 20……紙葉類、20a……最表部の紙葉。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】紙葉類収納室にて紙葉類を積層状態で保持
   すると共に移動可能に支持された載置台が弾性部材によ
   って一定方向に付勢されており、該付勢力に対向する側
   に設けられた繰出ロールにより、前記紙葉類を表面側か
   ら順次一枚づつ送り出しをするように構成された紙葉類
   繰出装置において、前記繰出ロールは前記紙葉類の最表
   部を押圧することにより前記載置台を一時的に反付勢方
   向に押し戻す回転自在な凸部材と、前記紙葉類の最表部
   のものを僅かに前進させるべく摩擦係合可能で且つ弾性
   手段にて回転が抑制された予備送出ロールと、前記紙葉
   類に摩擦係合し該紙葉類を繰出方向へ大きく前進させる
   高摩擦部材からなる繰出部材とがロール外周面或いは該
   外周面の延長面から突出するようにロール回転方向に対
   して前記順序にて前記紙葉類に当接するように構成され
   たことを特徴とする紙葉類繰出装置。