JP2733449B2 - 新ゼリー食品、およびその製造方法 - Google Patents

新ゼリー食品、およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、球状の形態を有し、そ
の表面部が均質なゲル皮膜を形成し、内部に組織化され
た果実様の構造を有することを特徴とするゼリー食品お
よびその製造方法に関する。特に果実様の外観および組
織を有する球状ゼリー食品およびその製造方法に関し、
さらに詳しくは、球状の形態のゲル化物を緩やかに凍結
させ氷晶を形成させることにより、ゲル内部の組織変性
を誘発せしめ、その後氷晶部分を解凍させることによ
り、強制的に離水させることで、その表面部が均質なゲ
ル皮膜を形成し、内部に組織化された果実様の構造を形
成せしめた、果実様の外観および食感を有する球状ゼリ
ー食品およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ゼリーは、寒天、ゼラチン、カラギーナ
ン、ローカストビーンガムなどのゲル化剤と果汁や糖液
を混合したゾル状の液を冷却し、固化させた凝固性の食
品である。このゲルは通常滑らかで、均質な組織を有し
ており、デザートや冷菓として広く愛好されているもの
である。このゼリーを凍結させることにより、凍結変性
が生じて、均質で滑らかなゼリー組織が破壊されて網目
構造のものになって、果肉状の組織を形成させる技術が
開発され、果肉様テクスチャーを有する食品として市販
されている。
【0003】上記の技術を利用した果肉状の組織を有す
るゼリー状デザート食品は、特開昭57─189653
号公報や特開昭57─36950号公報、あるいは特開
昭63─3768号公報、特開平1─165347号公
報等に開示されている。これらの公報に開示されたゼリ
ー食品は、果汁類にカラギーナンやローカストビーンガ
ム、コンニャクマンナンなどのゲル化剤を加えた混合ゾ
ル状物をカップ状の容器に充填し、冷却あるいは塩類添
加によりゲル化させた後、凍結を行い氷晶を形成させ
て、均質な組織を凍結変性させるとともに、ゼリー組織
又はその一部を破壊し、次いで、解凍することにより果
肉様の組織を有し、さらに果肉様の食感を有するゼリー
食品を製造するものである。この従来の技術で調製され
たゼリー食品には、凍結変性により形成された三次元の
網目構造が縦横に走っており、この網目構造中に果汁や
糖液を含有させて、果肉様の風味付けをおこなっている
ものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の凍結・解凍技術
により調製されたゼリー食品は、単なるゼリーと比較し
た場合、果肉様の食感を有しているが、かならずしも天
然の果肉あるいはそのシロップ漬けなどに近い組織を有
するものではなかった。そこで、より果肉に近い食感を
有するものが望まれていた。本発明は、従来のこのよう
な果肉様組織を有するゼリー食品と異なる、新しい組織
を有しており、より果肉に近い食感を有する、新規なゼ
リー食品を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記のよ
うな状況に鑑み、天然の果肉に近似した新規な果実様組
織を有するゼリー食品を提供すべく鋭意研究の結果、球
状形態のゲル化物を凍結させ内部に氷晶を形成させ組織
を破壊して、強制的に水分を分離滲出させることにより
天然の果実様組織とジューシー感を味わえるゼリー食品
が得られることを見出し、本発明をなすに至った。すな
わち、本発明は、球状の形態を有し、その表面が均質な
薄いゲル皮膜を形成し、内部に組織化された果実様の構
造を有することを特徴とするゼリー食品である。さら
に、本発明は、球状の形態のゲル化物を、−25℃以上
の温度で緩やかな速度で凍結することにより、表面部に
ゲル皮膜を形成し、その内部に同心円状又は層状の氷晶
を形成させ、次いで解凍させることを特徴とするゼリー
食品の製造方法である。また、本発明は、球状の形態の
ゲル化物を、緩やかな速度で凍結させ、表面にゲル皮
膜、内部に氷晶を形成させ、次いで解凍させることによ
り、ゲル内に内封された、果汁や水分を離水させること
を特徴とするゼリー食品の製造方法である。このよう
に、本発明のゼリー食品は、球状に成型したゲル化物を
緩慢に凍結させ、ゲル組織内に氷晶を形成させ、これを
解凍させ離水させる方法で得ることができる。従来の技
術のように、カップ状の容器中で単に凍結させることに
より形成された果肉様組織のものと全く異なり、その表
面に均質なゲル皮膜を形成し、内部は、同心円状又は層
状の氷晶分散構造を有しているものである。これによ
り、球状に成型したゲル化物は果実あるいはそのシロッ
プ漬けなどの果実組織の食感により近くなる。しかも内
部の同心円状又は層状の氷晶分散構造の組織中に容易に
糖液や果汁が吸収され、さらにこの含有されている果汁
や糖液を離水し易い組織にしたものである。
【0006】尚、本発明は球状のゲル化物を緩慢に凍結
させて表面に薄いゲル被膜を形成させるものであるが、
凍結によってできるゲル化物表面のゲル被膜は厚さが1
mm程度のものからそれよりも薄いものまで様々なもの
が出来る。すなわち、球状ゲル化物に強制的に冷風を直
接吹き付けて凍結させる場合には表面が凍結すると同時
に乾燥することにより、被膜は硬いものになる。反対に
球状ゲル化物を冷凍雰囲気下でそのままあるいは果汁、
シロップに浸漬して凍結させる場合には非常に薄いもの
になるかほとんど目視できない程度のものになる。この
ように、球状に成型したゲル化物を、緩慢な速度で凍結
させることによって、新規な表面部に均質なゲル皮膜を
形成し、内部に同心円状又は層状の氷晶分散構造を有す
る組織を形成させ、次に解凍させることで強制的に離水
を起こさせることにより、その表面が均質な薄いゲル被
膜を形成し、内部に同心円状又は層状に組織化された果
実様の組織を有するものである。しかもこのゼリー食品
が従来のゼリー食品と比較して、果実により近い食感を
有することは、本発明者らが初めて見いだしたものであ
る。また、従来のゼリー食品ではゼリーからの離水を極
力おさえ、離水のないものが良質のゼリー食品とされて
いたが、本発明においては逆にゼリー食品の組織を破壊
して強制的に離水を起こさせることによって結果として
果実様の組織を形成させるものであり、このような知見
も本発明により初めて得られたものである。さらに、本
発明の球状ゼリー食品は、−25℃以上の温度で緩やか
な速度で凍結することにより、球状の外側から水分が凍
って粗大な氷晶を形成させ組織を破壊して、果汁液は、
凍結濃縮によって球状ゼリーの中心部に高濃度の果汁液
が集まる。次いで解凍させることにより、果汁や水分を
離水させて、球状の中心部の凍結濃縮した果汁液は、食
する時果実の種があるような果実様組織の食感により近
くなることは、本発明により初めて得られたものであ
る。
【0007】従来の凍結により氷晶を形成させる方法
は、一定の形状のゲルを凍結させるものではなく、上記
に述べたように、方形の容器や、カップ状の容器に入れ
たゾル状物を冷却や、塩の添加によりゲル化させたもの
を凍結させる方法を採用していた。このような容器に入
れて凍結させると、ゲルの部位ごとの冷却速度が、形成
されたゲルの形状や容器の形状によって異なり、氷晶の
状態は一定とはならず、このため網目構造は不均一なも
のとなった。このような従来の凍結方法を本明細書にお
いては静置法と呼ぶ。
【0008】本発明は静置法とは全く異なった発想によ
る凍結変性組織化を採用した。すなわち、本発明は、果
汁類、糖類、ゲル化剤を含むゾル状物を球状にゲル化さ
せた後、緩慢に凍結させることにより表面にゲル皮膜
を、内部に氷晶を形成させ、その後解凍することによ
り、その表面部の均質なゲル皮膜、内部の組織化された
果実様の氷晶分散構造組織が維持され、より果実組織に
近くしたものである。このように球状の形態にして凍結
させることにより、冷却による氷晶の発生は、球の内部
に同心円状又は層状に均一に進む。一方、静置法による
氷晶の形成は、容器の上部や底部または容器に接触した
面から進んで行く。さらに、このようにして形成された
組織化物を、凍結し解凍させた後、切断したりして小片
化した場合、それぞれの小片の組織の状態はそれぞれ異
なることが確認された。これに対して、本発明のよう
に、球状に成型し、凍結させた場合には、温度降下は表
面から内部に均一の方向性をもって伝わる。さらに本発
明の明細書で定義するような緩やかな凍結条件では、氷
晶の形成は中心に向かう一定の形状を有する。このよう
な凍結変性させた組織は、球の表面部分では比較的速や
かな凍結が起こるため滑らかなゲル皮膜が形成され、内
部は同心円状又は層状の氷晶分散構造の組織となる。ま
た、球の一部を冷凍板などに接触させた場合はまず雰囲
気による冷凍のため球の表面部分ではゲル皮膜が形成さ
れるが内部は冷凍板と平行した層状の氷晶分散構造の組
織となる。このようにして調製された球状のゼリー食品
を中心部から半分に切断した時の組織の模式図を図1、
図2に示した。一方、静置法による組織は図3に示す単
なる網目構造として区別することができる。
【0009】さらに球状ゲル内に内封されていた果汁や
水分は凍結状態から解凍させることにより離水を起こす
が、球状を呈し、しかも表面部が均質なゲル皮膜で、内
部に同心円状又は層状の氷晶分散構造を有することによ
り、離水は、静置法によって形成された単なる網目構造
のものと比較して、より速やかに行われる。これは、同
心円状又は層状の氷晶分散構造によって、内部の水分の
通路が形成されるためであると考えられる。氷晶分散構
造からの離水が早いことは、組織の変性がより進んでい
ることを意味する。このことは逆に、糖液や果汁をより
吸引し易くなることでもある。このゼリー食品を内容物
より濃度の薄いシロップや果汁に浸漬すると果汁やシロ
ップが吸引されやすい。またゼリー中に含有される果汁
やシロップは滲出しやすい。このため、このゼリー食品
を、食した時に、内部からシロップや果汁が潤沢に滲出
し、あたかもシロップ漬けの果実を食した時のような歯
ごたえと、果汁の滲出感を味わえ、より果実に近い食感
を有するものが得られる。
【0010】球状ゲル化物の調製は、水と糖液を加温し
てさらに、カラギーナン、マンナン、寒天、ゼラチン、
ローカストビーンガム等のゲル化剤、果汁や香料等を混
合し加熱溶解させて得たゾル状物を球状製氷器に入れて
成形し冷却することにより行える。あるいは、ゾル状物
を直径10mm以上の口径を有するノズルを使用して、
該ゾル状物のゲル化する温度よりも低温に冷却した糖液
中に滴下することでも球状ゲル化物とすることができ
る。また、カルシウム塩等を用いて球状にゲル化させる
こともできる。球状に成型したゲル化物を得る方法であ
ればどのようなゲル化方法であっても採用できる。
【0011】本発明で用いられる果汁類としては、天然
又は人工の果汁、濃縮果汁、ピューレ、濃縮ピューレ及
び果肉ペースト等を例示することができ、これらの2種
以上の混合物も使用し得る。また、果汁様の風味付けを
行った糖液であっても良い。本発明で用いられる糖類と
しては、蔗糖混合異性化糖、砂糖、ブドウ糖、果糖、ソ
ルビトール、麦芽糖、マルチトール又はアスパルテーム
のような高倍率甘味料等を例示することができる。また
これらの2種以上の混合物も使用可能である。本発明で
用いられるゲル化剤としては、カラギーナン、ローカス
トビーンガム、寒天、グルコマンナン、ペクチン、ゼラ
チン、キサンタンガム、タラガム、ジェランガム等を例
示することができるし、これ以外のゲル化剤であっても
食品の用途に使用できるものであればよい。さらにこれ
らのゲル化剤の2種以上の混合物であっても良い。また
糖液を含有しない、ゲル化物であっても良い。このよう
な、甘味を有しない、本発明のゲル化食品は、まったく
新しい調理素材として利用することができる。
【0012】本発明においては、球状ゼリーを緩慢凍結
し、ゲル内部に十分に氷晶を成長せしめ、その後速やか
に解凍することで、目的とする表面部に均質なゲル皮膜
を形成し、内部に同心円状又は層状の氷晶分散構造の組
織を形成したゼリー食品を得ることができる。得られた
ゼリー食品は、果実様の外観を有しており、例えば、ブ
ドウやライチあるいは、白桃等の果実様ゼリーを作った
場合、その果実の外観と組織をよく維持している。また
ゼリー食品は離水し易く、さらに果汁や糖液などを吸収
しやすい特性を有している。ゼリー食品の、表面部に均
質なゲル被膜を形成し、内部に同心円状又は層状の氷晶
分散構造の組織を形成させるためには、球状のゼリーを
凍結させる速度が重要である。球状ゼリーを−25℃〜
−5℃の温度で冷却すると、その表面約1mmの部分で
は滑らかなゲル構造が破壊されずに凍結される。その結
果、凍結、解凍後に滑らかなゼリーの皮膜を形成する。
さらに、氷晶の形成により内部に同心円状又は層状の組
織形成がおこる。これは緩慢な凍結操作により行うこと
ができる。ここでいう緩慢凍結とは凍結速度から以下の
式Iで定義できる。
【0013】
【数 1】v=(H/2)/Z (I) v:凍結速度(cm/hr) H:球体の直径(cm) Z:球の中心部の温度が0℃から−5℃まで下がるのに
要する時間(hr)
【0014】本発明においては、vの値が2cm/hr
以下の場合を緩慢凍結と定義する。vが2cm/hr以
上の場合、氷晶の発達が十分でないため、目的とする組
織形成を起こしにくい。v=2cm/hr以下の条件
で、球状のゼリーを凍結させると、本発明のゼリー食品
を得ることができる。このような、緩慢な凍結速度を達
成するためには、室温程度まで冷却した球状のゲル化物
の直径と、凍結方法を制御することで行うことができ
る。例えば直径3cm程度に成型したゲル化物を例とし
た場合、好ましくは−25℃〜−5℃に設定した冷凍庫
中で凍結させる。この凍結温度設定はあらかじめ、成型
した球状のゼリーを凍結させ、その中心の温度変化曲線
を求めておき、この温度変化曲線からvの値を求め、定
めることができる。温度変化曲線は通常、球状ゼリーの
中心部に温度センサーを挿入し、自動的に記録する方法
が簡便であるが、これ以外の方法であっても良い。特
に、表3の配合により調製したゼリーを各種温度で凍結
させた時の、温度降下曲線を測定した結果を図4に示し
た。この温度曲線で−5℃に達した時の時間から上記の
vを求める。尚、図4の(1)〜(4)は、5mの風が
常時吹いている冷凍庫での測定値であり、(5)は、時
々送風する冷凍庫での測定値である。氷晶が形成された
後は、温度を上記設定温度より低くしても差し支えな
い。また、この凍結状態で長期保存を行う事もできる。
【0015】さらに、本発明者らの検討では、本発明の
果実様ゼリー食品の食感は、解凍させた時の離水量と対
応していることが明らかとなった。離水量は上記の凍結
速度に依存しており、凍結速度(v)が2.0cm/h
rより早すぎると離水が少なく、果実様組織が形成され
ないことを確認した。官能試験の結果では、果肉様の食
感は離水量が多いものほど良いことが判明した。下記表
1に直径30mmの球状ゼリーについて、凍結速度を変
化させた場合の果実様の食感および離水率に及ぼす影響
を示した。離水率は5℃で20時間かけて解凍したとき
の離水量が全重量に対して占める割合で示した。
【0016】
【表1】 ・凍結速度の果実様食感および離水率に及ぼす影響 ────────────────────────────── 凍結速度v(cm/hr) 果実様食感 離水率(%) ───────────────────────────── 0.85 ○(有り) 15 1.93 △(やや有り) 11 2.19 ×(なし) 9 2.44 ×(なし) 8 3.91 ×(なし) 8 ─────────────────────────────
【0017】さらに、凍結・解凍条件が同じでも、原料
の配合により、形成される氷晶分散組織の状態を変更す
ることが可能である。細かな均一氷晶分散模様から鬆の
入ったような氷晶分散模様までその原料の配合により自
由に調製することができる。これは、配合組成物中の多
糖やシロップの種類や濃度によって氷晶の大きさと成長
の仕方が異なるためである。特に、ゲル化性の強い多糖
類の濃度が高いと鬆が入った状態の氷晶分散組織にな
る。以下、実施例を示し、本発明のゼリー食品について
さらに詳細に説明する。
【0018】
【実施例1】本発明のゼリー食品に各種果実様の食感を
付与する目的で22%の糖液に、ゲル化剤の配合を次の
ように変えたものを調製した。各種濃度のカラギーナ
ン、ローカストビーンガム及び寒天を用いて、直径30
mmの球状ゲル化物を調整し、これを凍結速度v=0.
85cm/hrで凍結させ、ついでゲルの凍結解凍後の
性状を観察した結果を示す。
【0019】
【表2】 ・各種濃度のカラギーナン、ローカストビーンガム及び寒天を用いて調製したゲ ルの凍結解凍後の性状 ゲル化剤配合(%) 凍結解凍後のゲルの性状 ─────────────────────────────────── C L A1 A2 ─────────────────────────────────── 1. 0.3 0.2 0.5 0 やや硬いゲル、氷晶大 2. 0.3 0.1 0.5 0 非常に砕けやすい脆いゲル、氷晶小 3. 0.3 0 0.5 0 2より更に砕けやすい脆いゲル、氷晶小 4. 0.3 0.2 0 0.5 やや硬いゲル、氷晶大 ──────────────────────────────────── C:カラギーナン、L:ローカストビーンガム、A1:寒天、A2:ウルトラ寒 天(伊那食品工業(株)製)
【0020】ローカストビーンガムはゼリーの粘り強さ
に、寒天は脆さに大きく関与することから、ローカスト
ビーンガムの添加量を変えることで粘り強いゲルから脆
いゲルまで特性の異なるゲルが調製できることが明らか
となった。やや粘り強いゲルは巨峰風のゲルとなり、脆
いゲルはすりおろしリンゴ風、あるいは洋梨風の食感に
なることがわかった。また、表2に示した配合に加えグ
ルコマンナンを添加するとやや硬い食感になり、ライチ
風になることがわかった。
【0021】
【実施例2】表3に示した配合組成で、直径30mmの
ゲルを調製し、これを凍結速度v=0.85cm/hr
で凍結後、解凍することによってライチ様または巨峰様
の風味と食感を有するゼリー食品を得た。
【0022】
【表3】 ・ライチおよび巨峰の配合(重量%) 巨峰 ライチ ────────────────────────────── 6倍濃縮果汁 5.85 5.80 蔗糖混合異性化糖 22.00 22.00 クエン酸 0.10 0.15 ゲル化剤 (*) 1.00(1) 1.00(2) 水 71.00 71.00 香料 微量 微量 ────────────────────────────── *(1)カラギーナン、ローカストビーンガムの等量混合物 (2)カラギーナン、ローカストビーンガム、及びグルコマンナンの混合物 (45:45:1)
【0023】
【実施例3】本実施例においては、球状のゲル化物を容
器に充填後凍結、解凍操作を行い、ゼリー食品を調製し
た例を示す。上記表3に示した配合組成からなるゾル状
物を加熱殺菌した後、直径30mmの20穴の球状製氷器
にいれ、これを室温まで冷却してゲル化させた後、製氷
器から取り出し、容器に5粒づつ入れたあとシールし
た。その後−25℃の冷凍庫で約10時間凍結した。ゼ
リーの中心に温度センサーを挿入し、温度の降下曲線を
得て、計算式Iから、ゼリーの凍結速度vを求めたとこ
ろ、0.85cm/hrであった。その後、5℃の冷蔵
庫に移し解凍した。解凍後の球状ゼリーは、離水が生じ
るため、ゼリーをジュースにわずかに漬けたような状態
になっていた。この食品は、一口サイズで食べやすく、
見た目も果実様であり、それぞれ巨峰およびライチのよ
うな果実様の食感を持っていた。
【0024】
【参考例】実施例3と同一の組成のゼリーミックスを調
製し、これを、従来の静置法に従い、15cm×20c
m×10cmの大きさの角形のバットに充填し、−40
℃の冷凍庫中で凍結させた。次いで得られた凍結物を約
1cm角に切断し、室温で解凍させ、果実様組織を有す
るゼリー食品を得た。実施例3で得られたゼリー食品
と、本参考例で得られたゼリー食品を中央部から切断
し、その組織形成状態を肉眼および顕微鏡で観察した。
実施例3で得られたものは、球の表面部が均質なゲル層
を形成し、内部に同心円状又は層状の組織が観察された
のに対して、本参考例で調製したものは、このような組
織を有していなかった。また10名のパネルを用いて、
両者の食感を比較したところ、実施例3のものが、果実
様の歯触りにより近い風味を有しているとの評価であっ
た。
【0025】
【発明の効果】本発明は、球状ゲル化物を凍結組織化し
た後解凍することで、新しい果実様の外観および食感を
有する球状ゼリー食品を得ることができる。得られた球
状ゼリーは、容器内では、離水したシロップ液又は果汁
液中に浸漬している状態となり、果実のシロップ漬け様
の外観を呈している。巨峰あるいはライチのような果実
様の外観および食感を有するゼリー食品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で得られたゼリー食品の組織形成を示す
模式図である。
【図2】本発明で得られたゼリー食品の組織形成を示す
模式図である。
【図3】静置法で得られたゼリー食品の組織形成状態を
示す模式図である。
【図4】球状ゼリーの温度降下曲線を示す。
【符号の説明】
1、3、5 組織化層 2、4 均質なゲル被膜

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】球状の形態を有し、その表面が均質な薄い
    ゲル皮膜を形成し、内部に組織化された果実様の構造を
    有することを特徴とするゼリー食品。
  2. 【請求項2】球状の形態のゲル化物を、−25℃以上の
    温度で緩やかな速度で凍結することにより、表面部にゲ
    ル皮膜を形成し、その内部に同心円状又は層状の氷晶を
    形成させ、次いで解凍させることを特徴とするゼリー食
    品の製造方法。
  3. 【請求項3】球状の形態のゲル化物を、緩やかな速度で
    凍結させ、表面にゲル皮膜、内部に氷晶を形成させ、次
    いで解凍させることにより、ゲル内に内封された、果汁
    や水分を離水させることを特徴とするゼリー食品の製造
    方法。
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