JP2730260B2 - 電子管用陰極 - Google Patents

電子管用陰極

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明はTV用ブラウン管などに用いられる電子管用
陰極に関し、特に電子放射性物質層を改良した電子管用
陰極に関するものである。
〔従来の技術〕
第2図に、例えば特開昭62−88239に開示されている
従来のTV用ブラウン管や撮像管に用いられている電子管
用陰極の一例を示す。図において1はシリコン(Si)、
マグネシウム(Mg)などの還元性元素を微量含む主成分
がニッケルからなる有底筒状の基体、12はこの基体の底
部上面に被着された厚さ10μ以下の酸化スカンジウム
(Sc2O3)層で、この酸化スカンジウム層12上には少な
くともバリウム(Ba)を含み、他にストロンチウム(S
r)あるいは/及びカルシウム(Ca)を含むアルカリ土
類金属酸化物からなる電子放射物質層3が被着されてい
る。次に4は上記基体1内に配設されたヒータで、加熱
により上記電子放射物質層3から熱電子を放出させる。
かかる構成の電子管用陰極において、基体1への酸化
スカンジウム層12及び電子放射物質層3の被着は次の様
にして行なわれる。まずアルカリ土類金属(Ba,Sr,Ca)
の炭酸塩を主成分とする懸濁液を作成し、懸濁液をこの
予め電子ビーム蒸着装置あるいはスパッタリング装置な
どでその上面に酸化スカンジウム膜を形成した基体1に
塗布し、真空排気工程中にヒータ4によって加熱する。
この時、上記のアルカリ土類金属炭酸塩はアルカリ土類
金属の酸化物に変化する。その後、該アルカリ土類金属
酸化物の一部を還元し半導体的性質を有するように活性
化を行ない、基体1上にアルカリ土類金属酸化物からな
る電子放射物質層3を被着するものである。
この活性化工程においては、アルカリ土類金属酸化物
の一部は次の様に反応している。即ち基体1中に含有さ
れたシリコン,マグネシウム等の還元性元素が拡散によ
り基体1の界面に移動し、さらに酸化スカンジウム膜中
を拡散し、アルカリ土類金属酸化物と反応する。例えば
アルカリ土類金属酸化物として酸化バリウム(BaO)、
還元性元素がシリコン(Si)の場合、次式(1)の様に
反応する。
4BaO+Si→2Ba+Ba2SiO4 (1) この反応の結果、上記酸化スカンジウム膜12上に被着
形成されたアルカリ土類金属酸化物の一部が還元され、
酸素欠乏型の半導体となり電子放射が得られる。なお、
還元性元素のシリコンは次式(2)の様に酸化スカンジ
ウムと反応し、原子状のスカンジウムを生成する。
2Sc2O3+3Si→4Sc+3SiO2 (2) 次にこの原子状のスカンジウムが、次式(3)のよう
に前記式(1)で形成された中間層〔Ba2SiO4〕を分解
し、界面での酸化バリウムとシリコンの反応が寿命中の
長時間にわたって十分行なわれ、0.5〜2.0A/cm2程度の
電流密度動作における寿命特性が改善されている。
3Ba2SiO4+8Sc→6Ba+3Si+4Sc2O3 (3) 〔発明が解決しようとする課題〕 上述の如く、かかる構成の電子管用陰極においては、
還元性元素である、たとえばシリコンが、上記酸化スカ
ンジウム膜12中を拡散し電子放射物質層3との界面に達
するが、基体中のシリコンの拡散速度に比べ、酸化スカ
ンジウム中のシリコンの拡散速度が小さく、酸化バリウ
ムとシリコンの反応が不十分となり、初期エミッション
のばらつきが大でそのエミッション値も低いと云う問題
を有していた。
この発明は、かかる問題を解消した電子管用陰極を提
供することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
この発明の電子管用陰極は、少量の還元性金属を含有
する主成分がニッケルからなる基体1上に、希土類金属
酸化物と耐熱性金属との混合層2、及びバリウムを含む
アルカリ土類金属酸化物を主成分とする電子放射物質層
3をこの順に被着形成したものである。
〔作 用〕
この発明の電子管用陰極においては、基体1上に形成
された、希土類金属酸化物と耐熱性金属との混合物層2
中の、ニッケル,モリブデン,タングステンなどの耐熱
性金属が、前記基体1中に含有されたシリコン,マグネ
シウムの電子放射物質層3への拡散を容易にし、還元性
金属と電子放射物質層との反応を十分に行なわせる作用
を示すものである。
〔実施例〕
以下、この発明の一実施例を第1図に基づいて説明す
る。図において、2は基体1の底部上面に形成された希
土類金属酸化物と耐熱金属とからなる混合物層、3は該
希土類金属酸化物層上に被着され、少なくともバリウム
を含み、他にストロンチウムあるいは/及びカルシウム
を含むアルカリ土類金属酸化物を主成分とした電子放射
物質層である。
かかる構成の電子管用陰極において、上記基体1への
上記混合物層2及び電子放射物質層3の被着方法につい
て説明する。先づバリウム,ストロンチウム,カルシウ
ムの三元炭酸塩を所望の重量%比をもって、バインダー
及び溶剤を添加混合し懸濁液を作成する。そして電子ビ
ーム蒸着装置、あるいはスパッタリング装置などを用い
て、その上面に希土類金属酸化物と耐熱性金属との混合
層2を形成したニッケルを主成分とする基体1上に、ス
プレイにより該懸濁液を約80ミクロンの厚みで塗布し、
その後常法の如く炭酸塩から酸化物への分解過程、及び
酸化物の一部を還元する活性化過程を経て、電子放射物
質層3を基体1に被着形成する。
上述の希土類金属酸化物と耐熱性金属との混合層は、
具体的には、シリコン,マグネシウムを含有したニッケ
ル基体1上に重量比で10%の酸化スカンジウムと90%の
ニッケル金属との混合層をスパッタリング法で厚さ0.5
μm形成した。その後、該混合層上にバリウム,ストロ
ンチウム,カルシウムの炭酸塩〔(Ba,Sr,Ca)CO3〕を
上述の如く被着させた。得られた陰極を電子銃に組み込
み、通常の方法で排気加熱工程、及びエージング工程を
経て陰極線管を作成した。
第3図は、上記実施例陰極を実装した陰極線管と、前
述した従来例の陰極とを実装した陰極線管との初期電子
放射能力を比較した特性図であり、縦軸に最大陰極電流
を示したものである。本発明陰極を実装した陰極線管
は、図の如く最大陰極電流がばらつきも小さく高い値を
示している。このことは、本発明において、上記基体1
中の還元性元素であるシリコンが電子放射物質層3側に
拡散する際、上記混合層内の主にニッケル金属粒子近傍
の結晶粒界を通して拡散することになり、従来例の酸化
スカンジウム膜中のシリコン拡散に比べ十分速く、シリ
コンと酸化バリウムとの反応によるBaの生成が十分に行
なわれ安定で優れた初期エミッション特性が得られるこ
とを示す。
上記の酸化スカンジウムの重量比としては0.2〜40重
量%であることが望ましい。そしてまた、上記混合膜の
厚みとしては、0.005〜2.0μmが望ましい。上記耐熱性
金属としては、Ni,Mo,W,Ir,Os,Re,Ptが良好な結果を与
える。なお、上記説明においては、電子放射物質層3と
してアルカリ土類金属酸化物を例としたが、他に例えば
アルカリ土類金属酸化物と希土類金属酸化物との混合物
からなる電子放射物質層3などの構成でも本発明の効果
が得られる。
〔発明の効果〕
以上詳細に説明したように、本発明によれば、基体上
に予め希土類金属酸化物及び耐熱性金属との混合層を形
成し、その上に少なくともバリウムを含むアルカリ土類
金属酸化物を主成分とする電子放射物質層を被着させた
構成としたので、従来の電子管用陰極に比べ、初期エミ
ッション特性のばらつきが著しく少なく優れた特性を示
すとともに、従来使用不可能であった、例えば2.5A/cm2
〜3.5A/cm2の高電流密度下での寿命特性が著しく向上す
る等の効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の一実施例電子管用陰極の断面図、第
2図は従来の電子管用陰極の断面図、第3図は本発明実
施例及び従来例の最大陰極電流の比較特性図である。 1……基体、2……酸化物,金属混合層、3……電子放
射物質層。 なお、図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
フロントページの続き (72)発明者 福山 敬二 神奈川県鎌倉市大船2丁目14番40号 三 菱電機株式会社生活システム研究所内 (72)発明者 渡部 勁二 神奈川県鎌倉市大船2丁目14番40号 三 菱電機株式会社生活システム研究所内 (56)参考文献 特開 昭63−285839(JP,A) 特開 昭62−88239(JP,A) 特開 昭63−231835(JP,A) 特開 平1−195628(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少量の還元性金属を含有する主成分がニッ
    ケルからなる基体上に、希土類金属酸化物と60〜99.8重
    量%の耐熱性金属との混合層、及びバリウムを含むアル
    カリ土類金属酸化物を主成分とする電子放射物質層をこ
    の順に被着形成したことを特徴とする電子管用陰極。
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