JP2726597B2 - 溶融亜鉛に対する腐食抵抗性にすぐれる合金 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、溶融亜鉛に対する腐食
抵抗力の大きい合金に関する。

【０００２】

【従来技術及び問題点】溶融亜鉛メッキ設備における、
容器、輸送用ポンプ、シンクロール、攪拌用治具等は、
溶融亜鉛による流動摩耗と腐食作用を受けるため、溶融
亜鉛に対する抵抗力の大きい材料が望まれる。

【０００３】従来、この種材料として、高Ｃｒ−高Ｎｉ
鋼合金、13％Ｃｒステンレス鋼等が使用されていたが、
溶融亜鉛に対する腐食抵抗力が十分でなかった。

【０００４】本発明者は、溶融亜鉛と腐食との関係につ
いて鋭意研究した結果、Ｎｉは溶融亜鉛に対する腐食抵
抗性を著しく損なう元素であることを見出した。これま
での材料には、組織の調整を図り、材料の強度を確保す
るために相当量のＮｉを含んでいたため、そのＮｉの含
有によって溶融亜鉛に対する腐食抵抗性が損なわれてい
たわけである。

【０００５】しかし、Ｎｉの含有量を少なくすれば、材
料の強度が損なわれて、部材としての安定性に欠ける不
都合がある。このため、Ｎｉの含有量を少なくしても、
材料の強度を確保できるように合金成分を調整せねばな
らない。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、Ｎｉ
の含有量を少なくしても、強度の低下を招来することな
く、溶融亜鉛に対する腐食抵抗性を高めることのできる
合金を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明の合金は、重量％
にて、Ｃ：０.１５％以下、Ｓｉ：２.０％以下、Ｍｎ：
２.５〜５.５％、Ｃｒ：１０〜１５％、Ｎｉ：０.５％
以下、残部実質的にＦｅからなる。

【０００８】

【作用】本発明の合金は、Ｎｉの含有量が少ないから、
溶融亜鉛に対する腐食抵抗性は損なわれず、所望の耐溶
融亜鉛腐食性を具備することができる。また、Ｎｉ量を
少なくした代わりにＭｎの含有量を多くしたから、所定
の強度を確保できる上、耐溶融亜鉛腐食性が一層向上す
る。

【０００９】

【成分限定理由の説明】

Ｃ：０.１５％以下 Ｃは合金の強度を確保するために必要な元素である。し
かし、あまりに多く含有すると、Ｃｒと結合して炭化物
を析出し、溶融亜鉛に対する腐食抵抗性が低下する。こ
のため、上限を０.１５％に規定する。

【００１０】Ｓｉ：２.０％以下 Ｓｉは溶融亜鉛に対する腐食抵抗性の向上に効果的な元
素である。しかし、多量に含有すると材料の靱性が損な
われる。このため上限は２.０％に規定する。

【００１１】Ｍｎ：２.５〜５.５％ Ｍｎは耐溶融亜鉛腐食性の向上に有効な元素である。ま
た、Ｍｎを所定量含有させることによって、Ｎｉ量を少
なくしたことによる材料の強度低下を防ぐことができ
る。所定の強度を確保し、かつ耐溶融亜鉛腐食性の向上
を図るために、少なくとも２.５％以上含有させる。し
かし、あまりに多く含有すると、靱性の低下を招くだけ
でなく、耐溶融亜鉛腐食性も却って損なわれる。このた
め、上限は５.５％に規定する。

【００１２】Ｃｒ：１０〜１５％ Ｃｒは、溶融亜鉛に対する腐食抵抗性を大きくするのに
有効な元素である。しかし、あまりに多く含有すると、
材料の靱性が損なわれる。このため、上限は１５％に規
定する。

【００１３】Ｎｉ：０.５％以下 上述した如く、Ｎｉは溶融亜鉛に対する腐食抵抗性を著
しく低下させる。このため、Ｎｉの含有量はできるだけ
少なくすることが望ましく、本発明にあっては、０.５
％以下に規定する。

【００１４】本発明の合金は、上記成分元素を含有し、
残部は不可避的に混入する不純物元素及びＦｅからな
る。

【００１５】

【実施例】表１に示す如き成分組成の供試合金を溶製
し、機械的性質及び溶融亜鉛による合金の腐食性を調べ
た。

【００１６】供試材の機械的性質試験は、熱処理(1000
℃×１時間加熱後空冷、及び700℃×１時間加熱後空冷)
の後に行なった。引張試験片は、直径14mm、ゲージ長さ
70mmのものを使用し、衝撃試験は、ＪＩＳ２号片を使用
した。機械的性質の試験結果を表２に示す。

【００１７】腐食試験は、供試片(直径10mm、長さ40mm)
をＺｎ−0.2％Ａｌ浴中、470℃で７２時間浸漬後、酸洗
し、浸漬前の重量と、浸漬後の重量との差を腐食減量と
して求めた。腐食試験の結果を表２に併せて示す。

【００１８】

【表１】

【００１９】

【表２】

【００２０】本発明の供試材Ｎｏ．１乃至No.３は、腐
食減量が非常に少なく、溶融亜鉛に対する腐食抵抗性に
すぐれている。また、Ｎｉ量が少ないにも拘わらず、６
５．８ｋｇ／ｍｍ^２以上の耐力を備えている。これに対
し、供試材Ｎｏ．４はＮｉ含有量が多いため、腐食減量
が多く、耐溶融亜鉛腐食性に劣っている。また、供試材
No.５は、供試材No.４よりもＮｉ含有量が少ないため、
腐食減量は少なくなっているが、Ｍｎ量が少ないため、
引張強度に劣る。供試材No.６はＭｎの含有量が少ない
ため、引張強度に劣り、また腐食減量も多く、耐溶融亜
鉛腐食性に劣っている。供試材No.７はＭｎの含有量が
多すぎるため、腐食減量が多くなって、前述したように
耐溶融亜鉛腐食性が却って劣化することを示している。

【００２１】

【発明の効果】これまでの13％Ｃｒ系ステンレス鋼のＮ
ｉをＭｎと置き換えるだけで、溶融亜鉛による腐食抵抗
力を大きくし、かつ所望の強度を確保することができる
から、非常に経済的である。本発明の合金は、溶融亜鉛
メッキラインにおけるシンクロール等、耐溶融亜鉛腐食
性及び所定の強度が要求される用途に好適である。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 重量％にて、Ｃ：０.１５％以下、Ｓ
   ｉ：２.０％以下、Ｍｎ：２.５〜５.５％、Ｃｒ：１０
   〜１５％、Ｎｉ：０.５％以下、残部実質的にＦｅから
   なる、溶融亜鉛に対する腐食抵抗性にすぐれる合金。