JPH0639650B2 - 靭性の優れた高耐食性Ni基合金 - Google Patents

靭性の優れた高耐食性Ni基合金

Info

Publication number
JPH0639650B2
JPH0639650B2 JP61001204A JP120486A JPH0639650B2 JP H0639650 B2 JPH0639650 B2 JP H0639650B2 JP 61001204 A JP61001204 A JP 61001204A JP 120486 A JP120486 A JP 120486A JP H0639650 B2 JPH0639650 B2 JP H0639650B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
content
alloy
corrosion
environment
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP61001204A
Other languages
English (en)
Other versions
JPS62158849A (ja
Inventor
史朗 向井
昭夫 池田
康孝 岡田
正晃 五十嵐
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP61001204A priority Critical patent/JPH0639650B2/ja
Publication of JPS62158849A publication Critical patent/JPS62158849A/ja
Publication of JPH0639650B2 publication Critical patent/JPH0639650B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)
  • Rigid Pipes And Flexible Pipes (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> この発明は、腐食環境下、特に従来から注目されていた
所謂サワーガス環境(HS−CO−Cl環境)よ
りも更に腐食性が苛酷な、イオウ(S)がFeSやNi
S等の硫化物としてではなく車体として混入するサワー
ガス環境下においても良好な耐応力腐食割れ性及び耐水
素割れ性を有する、靭性に優れた油井管用高強度Ni基
合金に関するものである。
<従来技術並びにその問題点> 近年のエネルギー事情は、油井の深井戸化やサワーガス
環境下での 井が余儀なくされるところまできており、
高価ではあるが、上記苛酷な環境に十分耐えられるよう
な油井管用高強度・高耐性Ni基合金が開発され、適用
されるようになつてきた(例えば、特開昭54−107
828号公報や特開昭54−127831号公報参
照)。
ところが、最近の油井情報によれば、腐食性が苛酷であ
るとされてきた上記サワーガス環境とは別に、該サワー
ガス環境に更にイオウ(S)が単体として混入している
環境が見出され、このような環境においては、これまで
に提案された如き耐サワーガス用Ni基合金をもつてし
ても耐食性の点で十分に満足できるものでないことが明
らかとなつた。
この点について更に詳述すると、先にも説明した如く、
近年の新しい油井やガス井では油や天然ガスのほか、水
や塩類(Cl,Br等)と一緒にHSや▲CO
▼等の腐食性ガスの混在した環境が多くなる傾向にあ
つたが、地上にて実施されることか環境成分の分析結果
によると、最近、上記腐食性ガスや、水、塩類等にまじ
つてイオウ(S)が単体(FeSやNiS等の硫化物形
態をとつていない)で認められるような新たな環境に属
する油井の存在も確認されるようになつたのである。こ
のような環境に存在するイオウ(S)は、地中深くにお
いて HSxHS+Sx−1 なる式で示される如く、ポリサルフアイド(H
になるとも、S単体のまま存在するとも言われている
が、温度や圧力(特にHS分圧)の状態によつては、 4S+4HO3HS+HSO なる式の如くにS或いはHSO等の形態となつてい
ることも否定できない。
このうち、HはHSガスのリザーバー(貯蔵
役)としてHS濃度を増大させる働きがあり、一方、
SOはpHを低下させる働きがある。
ところで、これらの現象を確認するため、本発明者等も
S−CO−Cl環境下とHS−CO−Cl
−S環境下でのNi基合金(含オーステナイト系合
金)に及ぼす耐食性の差異に関する調査実験を行つた
が、その結果、イオウ(S)添加の有無によつてNi基
合金の耐食性に及ぼす影響が異なり、イオウ(S)の存
在がNi基合金の耐食性を著しく劣化すると言う事実の
確認はなされたが、イオウ(S)が共存した場合の腐食
機構については明析な解明がなされず、大別して H=HSのリザーバー説 式「HS+Sx−1」に従つてポリサルフ
アイド(H)が高温環境で発生し、HSのリザ
ーバーとして働くので、Hが材料に接すると高H
S環境と同様の作用をする。
SOによる低pH化説 HSが存在しない単体Sのみの環境下でも、水があれ
ば「4S+4HO3HS+HSO」なる式に
従つてHSが発生すると同時にHSOも生成さ
れ、これがpHを低下させる、 と言う2つの説のいずれかが有力であるとの推測の域を
脱することはできなかつた。
<問題点を解決するための手段> 本発明者等は、上述のような観点から、通常のサワーガ
ス環境(HS−CO−Cl環境)のみならず、こ
れにイオウ(S)が単体で混入している環境においても
十分に満足し得る耐食性を有した、靭性の良好な高強度
合金を提供すべく研究を続けた結果、以下に示される知
見を得るに至つたのである。即ち、 (a) サワーガス環境に更にイオウ(S)の単体が混
入する環境においては、間違いなく従来のサワーガス環
境におけるNi基合金の腐食機構と異なつた腐食形態が
存在し、単体Sは温度及び圧力(特にHS分圧)に依
存して「Sx−1+HSH」の反応に従い3
態(Sx−1,HS及びH)に変化することと
なり、Sx−1として遊離したイオウ(S)若しくはH
が存在すると、これが油井管部材に局所的に付着
し、その部分において著しい孔食が発生し、応力腐食割
れを引き起すこと、 (b) 従来のサワーガス環境においては上記反応式に
示されるようなイオウ(S)の形態変化がほとんど認め
られず、従つてSx−1或いはHによる特異な腐
食形態は生じないが、イオウ(S)の単体が混入するサ
ワーガス環境で上記のような特異な腐食形態が起きる理
由は、このような環境中においては「4S+4H
3HS+HSO」なる反応もなされて、HSが
発生すると同時にHSOも生じることとなり、該環
境のpHを低下させるためと考えられること、 (c) このような特異な腐食形態を呈する環境におい
て油井管用材料に十分な腐食性を発揮させるためには、
従来の耐サワーガス用Ni基合金において形成される耐
食性皮膜よりも更に強硬で、かつ修復性の良好な保護皮
膜を形成させることが不可欠であり、一方では、合金部
材の耐破壊特性(靭性等)を向上させて孔食の進展を阻
止し、応力腐食割れを未然に防ぐ手立てを講じる必要が
あること、 (d) サワーガス環境における従来のNi基油井管用
材料の保護皮膜強度やその修復能は、概ねCr,Mo,
Wの含有量に比例して向上するが、単体Sを含む環境で
は、これらに加えてCuの役割が極めて重要であり、
0.30%(以下、成分割合を示す%は重量%とする)
以上のCuを含有させた上で、環境温度が250℃以下
の場合には Cr(%)+10Mo(%)+5W(%)≧140 を確保し、また環境温度がより高い300℃以下の場合
には Cr(%)+10Mo(%)+5W(%)≧180 を確保しなければ、十分に強硬でしかも修復性の良好な
保護皮膜が形成されないこと、 (e) 更に、前記(c)項でも述べたように、特異な
腐食形態を緩和し合金部材の耐食性を向上させるには保
護皮膜強化策のみでは不十分であり、孔食の進展を阻止
する内質的改善が不可欠であるが、このためには前記
(d)項で示した成分調整に加えてNbの添加をも実施
し、これらによつてMo−W−Cr−C系炭化物の析出
及びそのクラスター化を抑制することが極めて有効であ
る。
しかしながら、これらの方策に加えて、通常脱酸剤とし
て添加される元素であるSiの含有量を極力(多くとも
0.050%まで)低減し、かつMn含有量を特定範囲
に調整すると、合金の凝固時におけるミクロ偏析や金属
間化合物の析出が激減する上、炭・窒化物等の粒界部へ
の2次析出も抑制されて粒界強度が高まり、この結果、
合金の靭性、加工性並びに耐食性がより一層向上するこ
と。
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、 Ni基合金を、 C:0.10%以下、Si:0.050%以下、 Mn:0.10〜1.0%、P:0.030%以下、 S:0.0050%以下、Ni:50〜60%、 Cr:15〜25%、 Mo及びWの1種以上: Moは20%以下、Wは5.0%以下であつて、かつ を満足する量、 Cu:0.30〜3.0%、Ti:0.050%以下、 Nb:0.30〜3.0%、Al:1.0%以下、 N:0.050%以下、 を含有し、必要により、更に Co:5.0%以下、 V,Ta,Zr及びHfの1種以上:各々1.0%以
下、希土類元素:0.10%以下、 Mg:0.10%以下、 Ca:0.10%以下、 Y:0.20%以下 のうちの1種以上をも含み、 Fe及び他の不可避的不純物:残り から成るとともに、 Cr(%)+10Mo(%)+5W(%)≧180 なる式を満足する成分組成に構成することにより、優れ
た靭性と高強度とを備えしめるとともに、最近見出され
た油井やガス井における如き、イオウ(S)を単体とし
て含むところの300℃以下程度のサワーガス環境下に
おいても極めて優れた耐応力腐食割れ性及び耐水素割れ
性を発揮せしめるようにした点 に特徴を有するものである。
次いで、この発明において、Ni基合金の成分組成を前
述のように数値限定した理由を説明する。
ア) C 合金中のC含有量が0.10%を超えるとMCタイプ
の炭化物量(但し、MはMo,Ni,Cr,W等であ
る)が著しく増加し、合金の延性並びに靭性を劣化する
ことから、C含有量は0.10%以下と定めた。なお、
好ましくはC含有量を0.020%以下にまで低減する
ことが推奨されるが、特にその含有量を0.010%以
下に抑制すると延性、靭性並びに耐食性はより一層顕著
に改善される。
イ) Si Siは、脱酸剤として有効な元素であるため、この種の
合金には普通に添加される成分であるが、Siの添加に
よつてミクロ偏析の増加や、σ,P,Laves相等の
延性・靭性に対して好ましくない金属間化合物(以下、
“TCP相”と略称する)が生成すやすくなる。その
上、Si含有量が多くなると合金凝固時のミクロ偏析が
助長され、前記MC及びP相の形成が著しく促進され
る傾向がみられる。このような観点からは、Si含有量
は0.30%以下程度に制限すべきと考えられるが、こ
のSi含有量を特に0.050%以下にまで低減すると
ともに、Mnの適量添加実施すると、凝固時におけるミ
クロ偏析が飛躍的に改善され、しかも炭・窒化物等の粒
界部への2次析出を抑制して粒界強度を高める効果も加
わつて、合金の靭性、加工性、耐食性並びに冷間加工に
伴う機械的性質の不均一性が一層顕著に向上することと
なる。そして、これらの効果は、Si含有量が0.05
0%を越える領域では十分でないことから、Si含有量
は0.050%以下と定めた。
なお、第1図は、この発明で規定される成分内にてSi
量及びMn量のみ変化させた合金を調整し、冷間加工に
よつて強度(0.2%耐力)を85〜90kgf/mm
とほぼ一定にしたものについて靭性(0℃における衝
撃吸収エネルギー値)を比較したものであるが、この第
1図からも、Si含有量が0.050%以下でかつMn
含有量が0.10〜1.00%の領域になると優れた靭
性を発揮することがわかる。従つて、このようなNi基
合金を油井管用に適用した場合には、寒冷地における油
井の一時生産停止時の靭性保証が確実になされることも
明らかである。
また、第2図は、同様にSi量及びMn量を変化させた
Ni基合金を真空溶製した後高温引張試験片(6mm
φ)を採取し、ε=10−2sec−1の歪速度で試験
を行つて高温絞り率を求め、熱間加工性を比較したグラ
フであるが、この第2図からも、Si含有量が0.05
0%以下でかつMn含有量が0.10〜1.00%の領
域の合金が良好な熱間加工性を示すことを確認できる。
更に、第3図は、同様にSi量及びMn量を変化させた
Ni基合金を35mm厚にまで熱間加工後、表面脱スケ
ールして31mm厚とし、その後冷間圧延を施して得ら
れた25mm厚の板材について、その肉厚方向の硬度分
布を比較したものであり(なお、板材の“0.2%耐
力”は約85〜90kgf/mm程度であつた)、次
に示す第1表は、この板材のシヤルピー衝撃試験での吸
収エネルギーの異方性を比較したものである。
この第3図及び第1表からも、Si含有量が0.050
%以下でかつMn含有量が0.10〜1.00%の領域
のNi基合金では冷間加工に伴う不均一性の少ないこと
がわかり、厚肉大径材として使用しても、また極薄材と
して使用しても極めて優れた均一性を確保し得ることが
明らかである。
ウ) Mn Mnは、通常、脱硫剤として添加される成分であるが、
その含有量が0.10%を下回つても、また1.00%
を上回つても、極低Si化とともに相乗的に醸し出され
る前記効果を確保できないばかりか、Mn含有量が1.
00%を超えた場合にはTCP相の生成が促進される傾
向がみられることから、Mn含有量は0.10〜1.0
0%と定めた。
エ) P,及びS P及びSは不可避的に混入してくる不純物であり、合金
中に多量に存在すると粒界偏析により熱間加工性を低下
させ、また耐食性をも劣化させることから、P含有量は
0.030%以下、S含有量は0.0050%以下とそ
れぞれ定めた。
しかしながら、S含有量を特に0.0007%以下に抑
制すると合金の熱間加工性が飛躍的に向上し、またP含
有量を0.0030%に抑制することで合金の耐水素割
れ性が著しく改善されるので、好ましくはP及びSの含
有量をこのようなレベルにまで低減するのが良い。
なお、第4図は、この発明で規定される成分内にてP量
のみ変化させた合金を調整し、30%程度の冷間加工に
よつて高強度としたものより、平行部が40mmφでG
L(ゲージレンクス)が30mmの試験片を採取し、こ
れに対して10気圧でHSを飽和させたところのH
S−5%NaCl溶液(25℃)中にて5mA/cm
の陰極電流を付加した状態で1×10−71/sec
の定歪速度での引張試験を行い、その耐水素割れ性を評
価したものである。
また、第5図は、この発明で規定される成分内にてS量
のみ変化させた合金を調整し、1150℃にて高温延性
試験(試験片10mmφ、歪み速度:1sec−1)を
行つて熱間加工性に及ぼす影響を示したものである。
この第4図及び第5図からも、P及びS含有量は、でき
れば極低域にまで低減するのが好ましいことが明らかで
ある。
オ) Ni この発明の合金は、Niマトリツクスに固溶強化及び加
工硬化能の良好な元素たるMo,Cr,W,Nb等を添
加して強化することを基本としているが、上記元素の多
量添加はオーステナイトの不安定化を招くため、オース
テナイト基地を安定化するに足るNi量である50%を
その含有量の下限と定めた。一方、Niはそれ自身加工
硬化能を向上させる元素であるが、60%を超えて含有
させると耐水素割れ性が劣化することから、Ni含有量
の上限を60%と定めた。
カ) Cr Crは、Moと共に合金の耐食性及び強度を向上させる
成分であるが、この効果は15%以上の割合で含有させ
ることにより顕著する。一方、25%を超えてCrを含
有させると合金の熱間加工性が低下し、更にTCP相が
生成しやすくなることから、Cr含有量は15〜25%
と定めた。
キ) Mo,及びW これらの成分は、Crとの共存下で合金の強度と耐食
性、特に耐孔食性を著しく向上させる作用を有している
ので1種以上添加含有せしめられるものであるが、その
含有量が の値で16未満であると上記作用に所望の効果が得られ
ず、他方、Mo含有量が20%を越えたり、W含有量が
5.0%を超えたり、或いは の値が20を超える場合には、Crの多量添加の場合に
みられるようなオーステナイト基地の不安定化を招く。
従つて、Mo及びWの1種以上の添加においては、Mo
は20%以下、Wは5.0%以下であつて、かつ を満足する値にその含有量を定めた。
ク) Cu イオウ(S)が単体で認められるサワーガス環境下で
は、Cr,Mo,Wと共にCuは耐食性向上に極めて有
効な成分であるが、Cu含有量が0.30%未満では所
望の耐食性が得られず、一方、3.0%を超えてCuを
含有させてもその効果が飽和してしまうことから、Cu
含有量は0.30〜3.0%と定めた。
ケ) Ti Tiは、合金中の微量Cの安定化に有効であるが、その
含有量が2.0%を超えるとTCP相が生成し易くなる
ことから、Ti含有量は2.0%以下と定めた。なお、
必要Ti量はC含有量に応じて定まるものであり、特に
その下限値が定まるものではない。
コ) Nb Nbは、イオウ(S)が単体で認められるサワーガス環
境下での合金の耐食性能を著しく向上させる成分であ
り、その上Tiと同様にCの安定化作用を有し、また強
度上昇にも寄与するものであるが、その含有量が0.3
0%未満では上記作用に所望の効果が得られず、一方、
3.0%を超えて含有させるとTCP相が生成しやすく
なることから、Nb含有量は0.30〜3.0%と定め
た。
なお、第6図は、この発明で規定される成分内にてNb
量のみを変化させ、耐応力腐食割れに及ぼすNbの効果
をみたものである。供試材は、強度(0.2%耐力)を
80〜85kgf/mmにほぼ一定としたものを用
い、4.0mmφ、GL:30mmの試験片を作成した
後、20%NaCl−0.5%CHCOOH−1g/
lS−10atmHS−20atmCOの溶液(2
50℃)中にて1×10−71/secの定歪速度引張
試験を行つて伸びを測定し、これを大気中での伸びと比
較して耐応力腐食割れ性を評価した。
この第6図からも、Nb含有量が0.30%を越えた場
合に優れた耐応力腐食割れ性が得られることは明らかで
ある。
サ) Al Alは有効な脱酸剤として添加されるものであるが、そ
の含有量が1.0%を越えるとTCP相が生成しやすく
なることから、Al含有量は1.0%以下と定めた。
シ) N 合金中のN含有量が0.050%を超えると粗大な窒化
物が形成されて延性並びに靭性が劣化するようになるこ
とから、N含有量は0.050%以下と定めた。
ス) Co,V,Ta,Zr,及びHf これらの成分には、合金の延性・靭性を改善するととと
もに耐食性をも改善する作用があるので、必要により1
種以上含有せしめられるものであるが、以下、個々の元
素について含有割合を限定した理由を特徴的な作用とと
もに説明する。
i) Co Co成分は、特に合金の耐水素割れ性の向上に有効なも
のであるが、その含有量が5.0%を超えるTCP相が
生成しやすくなることから、Co含有量は5.0%以下
と定めた。
ii) V,Ta,Zr,及びHf これらの成分はCの安定化に有効なものであるが、それ
ぞれ1%を超えて含有させるとTCP相が生成しやすく
なることから、V,Ta,Zr及びHfのうちの1種以
上の含有量は1.0%以下と定めた。
セ) 希土類元素(PEM)、Mg,Ca,及びY これらの成分は、少なくとも1種の微量添加により合金
の熱間加工性を向上させる作用を有しているので、必要
により1種以上含有せしめられるものであるが、希土類
元素含有量が0.10%を、Mg含有量が0.10%
を、Ca含有量が0.10%を、そしてY含有量が0.
20%をそれぞれ越えた場合には、低融点化合物を生成
しやすくなつて逆に熱間加工性を劣化するようになるこ
とから、希土類元素含有量は0.10%以下と、Mg含
有量は0.10%以下と、Ca含有量は0.10%以下
と、そしてY含有量は0.20%以下とそれぞれ定め
た。
ソ) Fe Feには、合金の強度を確保するとともに、Ni含有量
を低減ならしめて合金価格を引き下げる効果があるの
で、残部成分は実質的にFeとした。
タ) Cr,Mo及びWの含有量バランス HS−CO−Cl−S環境でのNi合金の溶出
(腐食)は、Cr,Ni,Mo,W,並びにCu及びN
bに依存する。即ち、耐食性はこれらの元素から成る表
面皮膜によつて確保されるものであり、この表面皮膜中
のこれらの元素の含有バランスが耐食性を左右する上で
最も重要な因子となる。上記油井環境下での応力腐食割
れに対しては、MoはCrの10倍の効果があり、また
WはCrの5倍の効果をもつており、このCr,Mo及
びWが、式 Cr(%)+10Mo(%)+5W(%)≧180 がそれぞれ満たすとともに、Crが15〜25%,Cu
が0.30〜3.0%,Nbが0.30〜3.0%,N
iが50%以上であれば、単位イオウ(S)を含んだ環
境においても応力腐食割れに対して優れた抵抗性を有す
る耐食性皮膜を得ることができる。
つまり、Cr,Mo及びWの含有量バランスが Cr(%)+10Mo(%)+5W(%)<180 の範囲では、300℃以下程度のHS−CO−Cl
−S環境において十分な耐食性能を示さなくなる。
なお、その他のB,Sn,Zn,Pb等の元素は、微量
ではこの発明の合金の特性に何ら悪影響を与えることが
ないので、不純物としてそれぞれ0.10%まで許容さ
れるが、この上限値を越えると加工性や耐食性に悪影響
を与えることになるので注意を要する。
続いて、この発明を、実施例によつて比較例と対比しな
がら説明する。
<実施例> まず、第2表に示される化学成分組成の各合金を溶製し
た後、熱間加工によつて板材とし、これに15%程度の
冷間加工を施して所望の強度(室温での0.2%耐力に
て70〜110kgf/mm)を得た。この板材か
ら、引張試験、衝撃試験及び腐食試験に供する各試験片
を採取し、下記要領にて各種試験を実施した。
なお、耐水素割れ試験に供した材料は、300℃にて1
000hrの長時間加熱処理を施した後試験片とした。
(A) 引張試験 試験温度:室温、 試験片:4.0mmφで、GLが20mm、 (B) シヤルピー衝撃試験 試験温度:0℃、 試験片:10mm×10mm×55mmの2mmVノツ
チ付、 (C) 耐応力腐食割れ試験 腐食溶液:20%NaCl−1g/lS− (0.1,1,10)atmHS−20atmC
、 試験温度:300℃、 浸漬時間:500hr、 付加応力:1σy、 試験片:10mm幅×2mm厚×75mm長のR0.2
5Uノツチ付、 (D) 耐水素割れ試験 NACE条件:5%NaCl−0.5%CHCOOH
−1atmHS、 試験温度:25℃、 浸漬時間:720hr、 付加応力:1σy、 試験片:10mm幅×2mm厚×75mm長のR0.2
5Uノツチ付。
このようにして得られた試験結果を、第1表に併せて示
す。
なお、腐食試験の結果は、“割れ又は孔食のみられなか
つたもの”を「○」、“試験後の割れ又は孔食の発生し
たもの”を「×」で示した。
第1表に示される結果からも、本発明合金は苛酷な腐食
環境下であつても優れた耐食性を示すことが明らかであ
るのに対して、合金の成分組成が本発明で規定する条件
から外れた比較合金では、いずれも十分な耐食性を示さ
ないことがわかる。
また、同時に、本発明合金が極めて優れた靭性を有して
いることも確認できる。
<総括的な効果> 以上に説明した如く、この発明によれば、イオウ(S)
が単体として存在する300℃程度のサワーガス環境下
においても抜群に優れた耐食性、特に耐応力腐食割れ性
及び耐水素割れ性を示し、しかも良好な靭性を有してい
て、油井管用として好適な高強度Ni基合金が得られる
など、産業上の有用性は極めて大きなものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は、Si及びMnを除いては本発明と同様組成の
合金におけるSi量及びMn量と靭性(vEo)との関
係を示すグラフ、第2図は、同様合金における熱間加工
性(高温絞り率)を比較したグラフ、第3図は、同様合
金から得た冷延板における肉厚方向の硬度分布を、Si
量及びMn量として整理して比較したグラフ、第4図
は、本発明合金におけるP含有量と耐水素割れ性(腐食
性溶液中での伸び/大気中での伸び)との関係を示すグ
ラフ、第5図は、本発明合金におけるS含有量と熱間加
工性(1150℃における絞り率)との関係を示すグラ
フ、第6図は、Nbを除いては本発明と同様組成の合金
におけるNb含有量と耐応力腐食割れ性(腐食性溶液中
での伸び/大気中での伸び)との関係を示すグラフであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 五十嵐 正晃 兵庫県尼崎市西長洲本通1丁目3番地 住 友金属工業株式会社中央技術研究所内 (56)参考文献 特開 昭60−110856(JP,A) 特開 昭60−2653(JP,A)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量割合にて、 C:0.10%以下、Si:0.050%以下、 Mn:0.10〜1.0%、P:0.030%以下、 S:0.0050%以下、Ni:50〜60%、 Cr:15〜25%、 Mo及びWの1種以上: Moは20%以下、Wは5.0%以下であつて、かつ を満足する量、 Cu:0.30〜3.0%、Ti:2.0%以下、 Nb:0.30〜3.0%、Al:1.0%以下、 N:0.050%以下、 Fe及び他の不可避的不純物:残り から成るとともに、 Cr(%)+10Mo(%)+5W(%)≧180 なる式を満足する成分組成に構成されたことを特徴とす
    る、靭性の優れた高耐食性Ni基合金。
  2. 【請求項2】重量割合にて、 C:0.10%以下、Si:0.050%以下、 Mn:0.10〜1.0%、P:0.030%以下、 S:0.0050%以下、Ni:50〜60%、 Cr:15〜25%、 Mo及びWの1種以上: Moは20%以下、Wは5.0%以下であつて、かつ を満足する量、 Cu:0.30〜3.0%、Ti:2.0%以下、 Nb:0.30〜3.0%、Al:1.0%以下、 N:0.050%以下 を含有し、更に Co:5.0%以下、 V,Ta,Zr及びHfの1種以上:各々1.0%以下
    のうちの1種以上をも含み、 Fe及び他の不可避的不純物:残り から成るとともに、 Cr(%)+10Mo(%)+5W(%)≧180 なる式を満足する成分組成に構成されたことを特徴とす
    る、靭性の優れた高耐食性Ni基合金。
  3. 【請求項3】重量割合にて、 C:0.10%以下、Si:0.050%以下、 Mn:0.10〜1.0%、P:0.030%以下、 S:0.0050%以下、Ni:50〜60%、 Cr:15〜25%、 Mo及びWの1種以上: Moは20%以下、Wは5.0%発下であつて、かつ を満足する量、 Cu:0.30〜3.0%、Ti:2.0%以下、 Nb:0.30〜3.0%、Al:1.0%以下、 N:0.050%以下 を含有し、更に 希土類元素:0.10%以下、 Mg:0.10%以下、 Ca:0.10%以下、 Y:0.20%以下 のうちの1種以上をも含み、 Fe及び他の不可避的不純物:残り から成るとともに、 Cr(%)+10Mo(%)+5W(%)≧180 なる式を満足する成分組成に構成されたことを特徴とす
    る、靭性の優れた高耐食性Ni基合金。
  4. 【請求項4】重量割合にて、 C:0.10%以下、Si:0.050%以下、 Mn:0.10〜1.0%、P:0.030%以下、 S:0.0050%以下、Ni:50〜60%、 Cr:15〜25%、 Mo及びWの1種以上: Moは26%以下、Wは5.0%以下であつて、かつ を満足する量、 Cu:0.30〜3.0%、Ti:0.050%以下、 Nb:0.30〜3.0%、Al:1.0%以下 N:0.050%以下 を含有し、更に Co:5.0%以下, V,Ta,Zr及びHfの1種以上:各々1.0%以下
    のうちの1種以上、並びに 希土類元素:0.10%以下、 Mg:0.10%以下、 Ca:0.10%以下、 Y:0.20%以下 のうちの1種以上をも含み、 Fe及び他の不可避的不純物:残り から成るとともに、 Cr(%)+10Mo(%)+5W(%)≧180 なる式を満足する成分組成に構成されたことを特徴とす
    る、靭性の優れた高耐食性Ni基合金。
JP61001204A 1986-01-07 1986-01-07 靭性の優れた高耐食性Ni基合金 Expired - Lifetime JPH0639650B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP61001204A JPH0639650B2 (ja) 1986-01-07 1986-01-07 靭性の優れた高耐食性Ni基合金

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP61001204A JPH0639650B2 (ja) 1986-01-07 1986-01-07 靭性の優れた高耐食性Ni基合金

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPS62158849A JPS62158849A (ja) 1987-07-14
JPH0639650B2 true JPH0639650B2 (ja) 1994-05-25

Family

ID=11494930

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP61001204A Expired - Lifetime JPH0639650B2 (ja) 1986-01-07 1986-01-07 靭性の優れた高耐食性Ni基合金

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH0639650B2 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0635639B2 (ja) * 1987-10-26 1994-05-11 新日本製鐵株式会社 硫化水素の存在する環境で高耐孔食性を有するオーステナイト合金
DE4203328C1 (ja) * 1992-02-06 1993-01-07 Krupp Vdm Gmbh, 5980 Werdohl, De
JP2588456B2 (ja) * 1992-02-20 1997-03-05 新日本製鐵株式会社 耐サワー性と低温靱性に優れたクラッド鋼板のクラッド材用高Ni超合金
DE69404937T2 (de) * 1993-09-20 1998-01-15 Mitsubishi Materials Corp Nickellegierung
US6280540B1 (en) * 1994-07-22 2001-08-28 Haynes International, Inc. Copper-containing Ni-Cr-Mo alloys
CN102732751B (zh) * 2012-06-18 2014-06-04 江苏新华合金电器有限公司 核电站蒸汽发生器用抗振合金材料及其制备方法
CN102808115B (zh) * 2012-08-24 2015-06-03 李露青 一种耐高温镍基合金
CN102808109B (zh) * 2012-08-24 2015-02-25 戴初发 一种不锈钢阀门密封面涂层用镍基合金丝材的制备方法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS57203740A (en) * 1981-06-11 1982-12-14 Sumitomo Metal Ind Ltd Precipitation hardening alloy of high stress corrosion cracking resistance for high strength oil well pipe
JPS60110856A (ja) * 1983-11-21 1985-06-17 Sumitomo Metal Ind Ltd 析出強化型ニッケル基合金の製造法

Also Published As

Publication number Publication date
JPS62158849A (ja) 1987-07-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5298093A (en) Duplex stainless steel having improved strength and corrosion resistance
EP0132055B1 (en) Precipitation-hardening nickel-base alloy and method of producing same
EP0262673A2 (en) Corrosion resistant high strength nickel-base alloy
GB2102834A (en) Alloy for making high strength deep well casing and tubing having improved resistance to stress-corrosion cracking
EP0565117B1 (en) Martensitic stainless steel for use in oil wells
JPS6230860A (ja) オ−ステナイト系快削ステンレス鋼
JPS625977B2 (ja)
JPH0639650B2 (ja) 靭性の優れた高耐食性Ni基合金
JPH08170153A (ja) 高耐食性2相ステンレス鋼
JPH0674471B2 (ja) 高耐食性Ni基合金
GB2078780A (en) Austenitic-ferritic stainless steel for handling contaminated natural gas
US5000914A (en) Precipitation-hardening-type ni-base alloy exhibiting improved corrosion resistance
JPS6261107B2 (ja)
JPH11293405A (ja) 高硬度高耐食ステンレス鋼
JPS6144133B2 (ja)
JPS61113749A (ja) 油井用高耐食性合金
JPH0674472B2 (ja) 耐食性に優れた高強度Ni基合金
JPH0674473B2 (ja) 高耐食性Ni基合金
JPS6199660A (ja) ラインパイプ用高強度溶接鋼管
GB2133419A (en) Nickel-based alloys
JPH0639649B2 (ja) 靭性の優れた高耐食性Ni基合金
JP3470418B2 (ja) 耐海水腐食性と耐硫化水素腐食性に優れた高強度オーステナイト合金
JPH0674474B2 (ja) 耐食性に優れた高強度Ni基合金
JPS6144128B2 (ja)
JPS58210155A (ja) 耐食性の優れた油井管用高強度合金