JP3202895B2 - 高Al含有Znメッキ浴での耐食性にすぐれる合金 - Google Patents

高Al含有Znメッキ浴での耐食性にすぐれる合金

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Al含有量の多い
Znメッキ浴において使用される部材の材料として好適
な合金に関する。
【0002】
【従来の技術】Znメッキ浴に使用されるシンクロール
等の部材は、一般的に、13Crステンレス鋼が使用さ
れている。また、Al含有量の多いZnメッキ浴では、
比較的安価なSUS316L相当材も広く使用されてい
る。
【0003】Al濃度が約5%以下の一般的なZnメッ
キ浴では、操業温度が比較的低温(500℃以下)で行な
われることもあり、メッキ液による部材の腐食は比較的
緩慢で、ある程度のロール寿命が得られる。これに対
し、Al濃度が例えば約50%にも達するZnメッキに
おいては、約550℃以上の高温で操業されるため、メ
ッキ浴による部材の腐食進行が速く、ロール寿命が短く
なる。耐食性を改善するために、溶射等により、ロール
表面に高耐食性材料の層を形成して表面改質を施したシ
ンクロールも提案されているが、構造的に、ロールの内
面とメッキ浴の接触を避けることはできず、ロール内面
からの腐食によってロールの廃却径が大きくなり、結果
的にロール寿命が短くなる。このように、ロール寿命は
表面改質の有無に拘わらず、ロール本体材料の耐食性に
支配されることになるから、ロール本体材料の耐食性の
改善を図ることが極めて重要なものとなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、Al
含有量の多いZnメッキ浴の如き腐食環境の厳しい環境
下での使用において、高耐食性を具備するシンクロール
用材料を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の合金は、重量%
にて、C:0.1〜1.0%、Si:0.5〜2.0%、M
n:0.5〜2.0%、Cr:20〜30%、Ni:15
〜30%、B:0.5〜3.0%、Mo:0.5〜3.0%
を含有し、残部実質的にFeからなる。この合金は、必
要に応じて、Al:0.01〜1.0%をさらに含有させ
ることができる。
【0006】本発明の合金は、適量のBの含有によっ
て、粒界に金属硼化物を析出させて粒界を強化した点に
最大の特徴を有しており、Al及びZnによる腐食に対
して高い抵抗性を具備している。
【0007】
【成分限定理由の説明】
C:0.1〜1.0% Cは、耐食性に有効な炭化物の形成に必要な元素であ
り、0.1%以上含有させる。しかし、1.0%を超えて
含有すると材料の脆化を招き、ロール組立て時の溶接作
業が困難になる虞れがある。このため、Cの含有量は
0.1〜1.0%に規定する。
【0008】Si:0.5〜2.0% Siは、中、高温域で安定な酸化物を形成し、マトリッ
クスを強化することにより耐食性の向上に寄与する。こ
のため、少なくとも0.5%を含有させる。しかし、含
有量が2.0%を超えると、耐食性向上効果は飽和する
だけでなく、フェライトの生成を促進し、材料の脆化を
招く虞れがある。このため、上限は2.0%に規定す
る。
【0009】Mn:0.5〜2.0% Mnは、鋳造性の確保と組織の安定化のために少なくと
も0.5%以上含有させる。しかし、あまりに多く含有
すると、材料の靱性が損なわれる虞れがあるので、上限
は2.0%に規定する。
【0010】Cr:20〜30% Crは、耐食性の向上に有効な元素である。Crはマト
リックスに固溶するか、或は炭化物として存在し、材料
の寿命向上に寄与する。このため、20%以上含有させ
る。しかし、30%を超えて含有しても、含有量の増加
に対応する効果が得られず、材料としての安定性を損な
う虞れがあるため、30%を上限とする。
【0011】Ni:15〜30% Niは、オーステナイト生成元素であり、Alに対する
耐食性の向上に寄与する。また、約550℃を超える高
温での操業を考えると、475oC脆性による脆性破壊を
防止して部材の安定性確保するために、フェライト量を
多くすることは好ましくない。これらの理由からオース
テナイト生成元素であるNiを15%以上含有させる。
しかし、Niの含有量があまりに多くなると、Znとの
反応が活発になり耐食性が損なわれるので、上限は30
%とする。
【0012】B:0.5〜3.0% Bは、MB、MB2等の金属硼化物の形態(Mは、Fe、
Cr等)で粒界に存在し、結晶粒界を強化して耐食性を
向上させる。本発明合金のようなオーステナイト組織を
有する材料のAl、Znによる腐食は、炭化物の析出に
よって耐食性向上元素の濃度が低下した粒界近傍(例え
ば、Cr炭化物が粒界に析出すると、粒界近傍のマトリ
ックス中のCr濃度が不足する)において優先的に進行
する。この腐食は、量的にはあまり多くないが、浸食深
さが深いという特徴を有しており、高Al含有Znメッ
キ浴に使用されるシンクロールの寿命は、浸食深さに支
配されてしまう。そこで、粒界強化を図り、所望の耐食
性を確保するために、本発明においては、Bを0.5%
以上含有させる。一方、3.0%を超えると割れ感受性
が高くなり、固液相間隔が大きくなって鋳造欠陥を内在
し易くなるため、3.0%を上限とする。
【0013】Mo:0.5〜3.0% Moは、Crと同様に耐食性の向上に有効な元素であ
る。Moはマトリックスに固溶するか、或は炭化物とし
て存在し、材料の寿命向上に寄与する。このため、0.
5%以上含有させる。一方、Moは強力なフェライト形
成元素であり、3.0%を超えて含有すると、材料の脆
化を引き起こす虞れがあるので、上限は3.0%に規定
する。
【0014】Al:0.01〜1.0% Alは、Siと同様、中、高温域で安定な酸化物を形成
し、マトリックスを強化して耐食性の向上に寄与する作
用を有する。しかし、含有量が多くなると鋳造性の低下
を招く虞れがある。このため、0.01〜1.0%の範囲
で、必要に応じて含有させる。
【0015】本発明の合金は、上記各成分を含有し、残
部は、不可避的に混入するP、S等の不純物及びFeか
らなる。
【0016】
【実施例】表1に示す各成分組成の供試材を溶製し、遠
心力鋳造にて鋳造管を作製した後、遠心鋳造管から供試
片(20×30×5mm)を切り出した。供試片を、50%
Alを含有するZnメッキ浴(温度600oC)の中に72
時間浸漬後、供試片を切断し、その断面を顕微鏡により
観察して、腐食による浸食深さを測定した。その試験結
果を、表1に併せて示す。
【0017】
【表1】
【0018】表1中、供試No.1及びNo.2は本発明の実
施例、No.3〜No.5は比較例であり、No.3は13Cr
相当材、No.4はSUS316L相当材及びNo.5はSU
S310S相当材である。表1の結果から明らかなよう
に、約600oCもの高温における高Al含有Znメッキ
浴中において、腐食による浸食深さは、本発明の実施例
は比較例に比べて非常に軽微であることがわかる。
【0019】
【発明の効果】本発明の合金は、Al含有量の多いZn
メッキ浴の如き高温の苛酷な腐食環境下で使用しても、
すぐれた耐食性を具備している。このため、高Al含有
Znメッキ浴に使用されるシンクロール、その他の構造
部材の材料として好適である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 C22C 38/54

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%にて、C:0.1〜1.0%、S
    i:0.5〜2.0%、Mn:0.5〜2.0%、Cr:2
    0〜30%、Ni:15〜30%、B:0.5〜3.0
    %、Mo:0.5〜3.0%を含有し、残部実質的にFe
    からなる高Al含有Znメッキ浴での耐食性にすぐれる
    合金。
  2. 【請求項2】 重量%にて、C:0.1〜1.0%、S
    i:0.5〜2.0%、Mn:0.5〜2.0%、Cr:2
    0〜30%、Ni:15〜30%、B:0.5〜3.0
    %、Mo:0.5〜3.0%、Al:0.01〜1.0%を
    含有し、残部実質的にFeからなる高Al含有Znメッ
    キ浴での耐食性にすぐれる合金。
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