JP2724848B2 - 粒状物を用いた免震装置 - Google Patents

粒状物を用いた免震装置

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は、ビル等の大型建築構造物の基礎施工の分
野において、地震エネルギーを吸収せしめ地震力が建築
構造物へ入力するのを防いで建築構造物を地震から保護
するために構造体基礎とその上部構造との間に設置して
使用される免震装置に係り、さらにいえば、拘束された
粒状物の弾塑性的なせん断変形性能を利用して減衰力を
発生するダンパー作用部と、構造物を支持する支承部と
を一体的に構成した、粒状物を用いた免震装置に関す
る。
従来の技術 従来の免震装置は、ダンパー作用部に粘性ダンパーを
用いたもの(特開昭60−168875号公報)、又は塑性変形
をする棒状ダンパーを用いたもの(特開昭61−151377号
公報)、又は鉛の塑性変形で地震エネルギーを吸収する
鉛ダンパーを用いたもの(特公昭61−17984号公報)等
々が知られている。
この他、可撓性のケーシングに充填した砂とかステン
レスビーズ、ガラスビーズ等の粒状物の弾塑性的なせん
断変形性能を利用して減衰力を発生する粒状物ダンパー
を用いた免震装置も既に広く公知に属する(例えば特開
昭61−36466号、特開昭62−211471号、特開昭63−11478
1号公報など)。
本発明が解決しようとする課題 従来の粒状物ダンパーを用いた免震装置は、第4図と
第5図に例示したように、構造物aを基礎dの上に地震
の振動方向への移動が自在に支持する支承部bの中心部
に空洞を設け、この空洞に粒状物cを充填した、支承部
とダンパー作用部の一体型として構成されている。
ところで、粒状物ダンパーの減衰力は、粒状物の内部
拘束圧の大きさと、同粒状物を収容したケーシングの長
さ及び横断面積の大きさに比例し、実際に変数となる粒
状物の内部拘束圧の大きさに左右され、又は内部拘束圧
の大きさでダンパー性能をコントロールできることが知
られている。
しかるに、例えば特開昭61−364667号公報に記載され
た免震装置は、第4図に例示したように、構造物aの鉛
直荷重の一部が直接に載荷拘束圧として粒状物cに働く
構成なので、施工上載荷拘束圧を定量的に設定すること
は至難である。のみならず、施工誤差とか支承体bの製
作誤差又は経年変化(沈下量)とか構造物の重量の変化
等々の諸要因によっても載荷拘束圧が変化し、ダンパー
性能が変化するという欠点がある。その上、施工後にお
いてダンパー性能んを調節し直すことは不可能であるか
ら問題は深刻である。
この点、特開昭63−114781号公報に記載された免震装
置は、第5図に例示したように、構造物aの鉛直荷重は
支承体bにのみ負荷せしめることが可能で、粒状物cに
はボルトeと押圧板fとで構造物の鉛直荷重からは完全
に絶縁された拘束圧を負荷する構成なので、上記の欠点
は一応解決されている。しかし、地震力によって免震装
置がせん断変形を発生した場合でも、支承体bの高さは
せん断変形の前後においてほとんど変化しない構成であ
るが、粒状物cの高さレベルはせん断変形によって低く
なり、両者の差分だけ拘束圧が変化するので、結局はダ
ンパー性能が地震時に変化するという重大な欠点あり、
この点が解決すべき課題となっている。
したがって、本発明の目的は、構造物の鉛直荷重の大
きさとは無関係に粒状物に対する拘束圧の設定(付与)
を定量的に正確に容易に行なうことができ、しかも地震
時(変形時)にもダンパー性能(減衰力)に変化を生じ
ない構成に改良した、粒状物を用いた免震装置を提供す
ることにある。
課題を解決するための手段 上記従来技術の課題を解決するための手段として、こ
の発明に係る粒状物を用いた免震装置は、図面の第1図
〜第3図に好適な実施例を示したとおり、 構造物1を振動方向への移動が自在に支持する支承部
2と、拘束された粒状物の弾塑性的なせん断変形性能を
利用するダンパー作用部3とから成る免震装置におい
て、 支承部2とダンパー作用部3とは一体的に構成され、
構造物1の鉛直荷重は全て支承部2…でのみ受けている
こと、 ダンパー作用部3は、支承部2の中心部軸方向に粒状
物の収納空洞5が設けられ、この収納空洞5の中に粒状
物6が充填され、この粒状物6には構造物1又は基礎4
のいずれか一方のみに支持反力をとった調圧機構7を通
じて所定大きさの内部拘束圧が付与されていること、 前記調圧機構7は、構造物1又は基礎4と自在継手8
で連結された引張材9に粒状物6の加圧板10を自在継手
11を介して取付け、前記加圧板10は緩衝バネ12を介して
締付けるナット13により加圧力を調節して支持されてい
る構成であること、をそれぞれ特徴とする。
作用 構造物1の鉛直荷重は全て支承部2…でのみ支持す
る。支承部である積層ゴム柱2は、構造物1を地震の振
動方向へほとんど抵抗せず移動自在に支持するが、鉛直
荷重によってはほとんど沈下しない。
ダンパー作用部3は、支承部2の収納空洞5の中に充
填した粒状物6を、構造物1又は基礎4の一方のみに支
持反力をとった調圧機構7を通じて所定大きさの内部拘
束圧が付与するので、地震入力時のせん断変形によって
粒状物6の高さレベル変化しても、粒状物6のせん断変
形と共に引張材9が傾き、この傾きに起因する分だけ加
圧板10が変位されて前記粒状物6のレベル変化をそ相殺
し、拘束圧力をほぼ一定に保つので、ダンパー性能(減
衰力)には変化を生じない。つまり、一旦調圧機構7で
設定した拘束圧は、地震時にも変化せず、一定のダンパ
ー性能(減衰力)を発揮する。勿論、拘束圧の設定は、
施工の前後を問わず、ナット13を回すことにより何時で
も自由自在に正確に行える。
実 施 例 次に、図示した本発明の実施例を説明する。
まず、第1図は、本発明の実施例を主要部について示
したものである。この免震装置は、ビル等の建築構造物
1を地震の振動方向(水平方向)への移動が自在(あま
り抵抗せず)に基礎4上に支持する支承部2と、該支承
部2の中へ一体的に組込まれた粒状物の弾塑性的なせん
断変形性能を利用して減衰力を発生するダンパー作用部
3との一体型として構成されている。
支承部2は、鋼板とゴムシートを交互に重ね合わせ、
かつ接着して柱状に積層した公知の積層ゴム柱である。
積層ゴム柱2は、構造物1の鉛直荷重はあまり沈下せず
に支持し、しかも地震入力による振動方向への移動は自
在に、即ちあまり抵抗せずに支持する特性を有する。こ
の免震装置は、支承部2で構造物1の全鉛直荷重をバラ
ンスよく支持する配置で構造物1と基礎4の間に多数設
置される。
ダンパー作用部3の構造の詳細は、第2図A,Bに示し
たとおりである。基礎4の上面にボルト18で取り付けて
固定した台座14の上に、中空円筒形状の積層ゴム柱2を
接着して立て、その中空部が粒状物の収納空洞5に形成
されている。積層ゴム柱2の上端には上記収納空洞5と
一連の空洞17aをもつペデスタル17を接合して取り付
け、このペデスタル17が構造物1の下面にボルト18で取
り付け固定されている。
積層ゴム柱2の収納空間5は、その筒壁内面に第2図
Bの如くコイル状の補強鋼線16aを埋設したラバー16を
内張りして水平方向(地震の振動方向)にのみ変形可能
で粒状物6の内部拘束圧や地震入力時に異様な変形を生
じないし、油液が漏れない構成の収納空洞5が形成され
ている。ラバー16は、地震時の粒状物6の運動に対して
積層ゴム柱2を保護し耐久性を高める働きも有する。
上記ペデスタル17の空洞17a内に、加圧板10を云わば
ピストンの如く上下動が可能な状態に設置し、その下に
砂粒とかステンレスビーズ又はガラスビーズ等、あるい
はこれらと油の混合物である粒状物6が台座14の上の収
納空洞5内に一杯に充填されている。
前記加圧板10は、下方の台座14、つまり基礎4に支持
反力をとった調圧機構7を介して支持され、粒状物6に
所定大きさの内部拘束圧を付与する構成とされている。
即ち、台座14の上面中央部に自在継手であるボールジョ
イント8を介して抗張力が大きい鋼棒9を傾動自在に設
け、この鋼棒9の上部に第3図に詳細を示した構成のボ
ールジョイント11を介して加圧板10の略中央部が自在に
支持されている。鋼棒9は加圧板10を貫通して上方に延
びている。
加圧板10の上面には、前記ボールジョイント11の位置
を大きく包囲する形でフランジ10aが突設されている。
このフランジ10aの上面に圧縮用の緩衝バネ12が当接さ
れ、この緩衝バネ12の上にバネ受板19を当てがい、鋼棒
9の上端部に形成した雄ねじ部9aへねじ込んだナット13
の締付力で加圧板10を支持せしめた構成とされている。
つまり、ナット13を締付ける強さ(トルク)の加減に
より、緩衝バネ12を介して加圧板10を下向きに押し、加
圧板10の下に充填された粒状物6に所望大きさの内部拘
束圧を付与することができ、当該ダンパー作用部3のダ
ンパー性能(履歴特性=減衰力)をコントロールするこ
とができる。緩衝バネ12は、粒状物6の緩み防止にも効
果を奏する。
一方、地震力によって上記支承部2がせん断変形した
場合は、実質上収納空間5を形成するラバー16がせん断
変形を生じ、ひいてはその中に充填され、かつ加圧板10
を通じて所定の内部拘束圧で拘束された粒状物6に弾塑
性的なせん断変形を生じさせ、応力・ひずみの履歴特性
(ヒステリシスループ)で地震エネルギーを吸収しダン
パー性能(減衰力)を発揮するのである。
このとき、鋼棒9はその上下のボールジョイント8,11
によってラバー16及び粒状物6の変形に追従して自在に
傾動する。そして、せん断変形のため粒状物6の高さレ
ベルが変化する(小さくなる)のに対し、鋼棒9の前記
傾きに起因して加圧板10も変位され、前記高さレベルの
変化を相殺するので、粒状物6の内部拘束圧はほとんど
変わらず、地震入力時には初期設定のダンパー性能をそ
のまま発揮するのである。
この免震装置は、台座14をボルト18で基礎4へ固定
し、ペデスタル17をボルト18で構造物1の下面へ取り付
けることにより設置されるのであり、構造物1の鉛直荷
重はダンパー作用部3へは一切負荷されない。ダンパー
作用部3は、当該免震装置の設置に先立って、予め粒状
物6に対する内部拘束圧だけをナット13で適正に調節し
た上で設置できるのである。また、施工後でも、ナット
13に電動コントロール装置を附属せしめることにより、
又はペデスタル17の空所からコントロール装置を挿入し
てナット13を回すことにより拘束圧のコントロールが容
易にできるのである。
異なる実施態 本発明の免震装置は、上記第2図に実施例を正反対に
倒立させた構成で実施することも可能であり、この場合
に奏する作用効果は上記実施例と変わりがない。
本発明が奏する効果 以上に実施例と併せて詳述した通りであって、本発明
に係る粒状物を用いた免震装置によれば、ダンパー作用
部3のダンパー性能に重要な粒状物6の内部拘束圧の設
定値は、構造物1の鉛直荷重とは完全に絶縁された状態
で簡単に、かつ正確に設定することができる。しかも施
工誤差とか支承部2の製作(寸法)誤差、あるいは経年
変化、構造物1の重量変化などが原因で拘束圧が変化す
る恐れは全くなく、供用期間中は常に安定した免震効果
を期待することができる。その上、供用期間中において
もダンパー性能の調節が容易に可能であり、メンテナン
スが容易である。
この免震装置は、その施工に先立ち、ダンパー作用部
3について、予め粒状物6の拘束圧を適正に設置するこ
とが可能であり、よって施工がすこぶる容易で高精度に
できる。
また、地震力により粒状物6がせん断変形して高さレ
ベルが変化する場合でも、引張材9の傾きにより加圧板
10も変位されるので、粒状物6の前記高さレベルの変化
は相殺され、拘束圧に変化を生じさせないので、地震時
にもダンパー作用部3のダンパー性能(減衰力)が変化
するようなことはなく、常時安定した高品質のダンパー
性能を期待することができ、構造物1を地震から効果的
に保護できるのである。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明に係る免震装置の実施例を示した立面
図、第2図A,Bは免震装置の全断面図と収納空洞の構造
詳細を示した断面図、第3図はボールジョイント及び調
圧機構の構成を詳示した拡大断面図、第4図と第5図は
従来の免震装置を示した断面図である。 1……構造物、2……支承部 3……ダンパー作用部、4……基礎 5……収納空洞、16……ラバー 6……粒状物、7……調圧機構 8……自在継手(ボールジョイント) 9……引張材(鋼棒)、10……加圧板 11……自在継手、12……緩衝バネ 13……ナット
フロントページの続き (72)発明者 東野 雅彦 東京都江東区南砂2丁目5番14号 株式 会社竹中工務店技術研究所内 (72)発明者 永山 毅 東京都中央区銀座八丁目21番1号 株式 会社竹中土木内

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】構造物を振動方向への移動が自在に支持す
    る支承部と、拘束された粒状物の弾塑性なせん断変形性
    能を利用するダンパー作用部とからなる免震装置におい
    て、 支承部とダンパー作用部とは一体的に構成され、構造物
    の鉛直荷重は支承部でのみ受けていること、 ダンパー作用部は、支承部の中心部軸方向に粒状物の収
    納空洞が設けられ、この収納空洞の中に粒状物が充填さ
    れ、この粒状物には構造物又は基礎に支持反力をとった
    調圧機構を通じて所定大きさの内部拘束圧が付与されて
    いること、 前記調圧機構は、構造物又は基礎と自在継手で連結され
    た引張材に粒状物の加圧板を自在継手を介して取付け、
    前記加圧板は緩衝バネを介して締付けるナットにより加
    圧力を調節して支持されている構成であること、をそれ
    ぞれ特徴とする粒状物を用いた免震装置。
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