JP2721817B2 - ヒト/ヒト・ハイブリドーマ及びその生産する抗体 - Google Patents
ヒト/ヒト・ハイブリドーマ及びその生産する抗体Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】本発明は、たとえば、人の抗原性疾患の予
防、治療、診断などの医学及び薬学分野や生化学的試
薬、生体高分子の精製試薬など薬理学分野、生化学分野
等の如き広い分野において有用な抗原特異的ヒト免疫グ
ロブリンの生産をヒト体外で工業的に行うことを可能と
するヒト/ヒト・ハイブリドーマの創製、その他各種の
融合細胞株の形成に利用できる融合パートナー(Fusion
partner)として有用な新規なヒトBセル・リンパ芽球
細胞変異株に関する。 【0002】本発明はまた、この新規なヒトBセル・リ
ンパ芽球細胞変異株を利用して創製される抗原特異的ヒ
ト免疫グロブリン生産性ヒト/ヒト・ハイブリドーマ、
更には該ハイブリドーマが生産する抗原特異的ヒト免疫
グロブリンにも関する。 【0003】更に詳しくは、本発明はヒトBセル・リン
パ芽球細胞から導かれた変異株であつて、且つ下記
(i)〜(v) (i) 6−チオグアニン耐性である、(ii) ウワバ
イン耐性である、(iii) HATO含有培地で死滅す
る、(iv) 免疫グロブリンIgG及びIgMを実質的
に生産しない、(v) 基礎培地RDF中にインシユリ
ン、トランスフエリン、セレニウム、エタノールアミ
ン、β−メルカプトエタノール及び血清アルブミンを含
む無血清培地において増殖可能である、 の形質(phenotype)特性を有することを特徴とするヒ
トBセル・リンパ芽球細胞変異株に関する。 【0004】本発明はまた、この新規なヒトBセル・リ
ンパ芽球細胞変異株を融合パートナーとするヒト/ヒト
・ハイブリドーマ、たとえば、ヒト胃癌患者のヒトリン
パ球細胞の如き悪性腫瘍患者のヒトリンパ球細胞と該融
合パートナーとのヒト/ヒト融合細胞株である抗原特異
的ヒト免疫グロブリン生産性ヒト/ヒト・ハイブリドー
マ、更には、このようなヒト/ヒト・ハイブリドーマが
生産する抗原特異的ヒト免疫グロブリンにも関する。 【0005】従来、ヒト/ヒト・ハイブリドーマの形成
に利用できるヒトリンパ系株化細胞についていくつか知
られている。そのような融合パートナーとして利用でき
るヒトリンパ系株化細胞の例としては、Immunology Tod
ay, vol. 4、No. 3、1983、73頁のTABLE
IIに記載のSKO−007(Igε,λ)、TM−
H2(Igλ,κ)、DHMC(Igγ,λ)、GM1
500(Igγ2,κ)、KR−4(Igγ,κ)、L
ICR−LON−HMy2(Igγ1,κ)、GM04
67.3(Igμ,λ)、H351.1(Igμ,κ)、
UC729−6(Igμ,κ)、GM4672(Igγ
2,κ)などを挙げることができる。しかしながら、こ
れら従来公知のヒトリンパ系株化細胞は、上記文献のT
ABLEIIに記載され、上記にカツコで示したよう
に、程度の差こそあれ免疫グロブリンを実質的に生産す
る点で、その融合パートナーとしての利用に好ましい株
とは言い難く、その利用に制約をうける。その理由は、
これらの融合パートナーと例えば癌患者のヒトリンパ球
細胞とから導かれるヒト/ヒト・ハイブリドーマが生産
するヒト免疫グロブリンは、該融合パートナーが本来生
産する免疫グロブリンが、該癌患者のヒトリンパ球細胞
に由来する目的とする免疫グロブリンに混入したポリ・
クロナリテイ(polyclonality)形態で得られるため、
目的とする免疫グロブリンの単一性(mono-clonality)
が失われるからである。 【0006】本発明者は、上述のような制約から解放さ
れた融合パートナーを創製すべく研究を行つてきた。 【0007】その結果、ヒトBセル・リンパ芽球細胞か
ら導かれた変異株であつて、免疫グロブリンを実質的に
生産しない新しいヒトリンパ系株化細胞を創製すること
に成功した。 【0008】本発明者は、それ自体公知のヒトBセル・
リンパ芽球細胞WI−L2[微工研寄託受託拒否通知
書、通知番号:60微寄文第1621号]から、薬剤耐
性化手法を利用した特定の変異株形成操作を経て、それ
自体増殖能を有するが免疫グロブリンを実質的に生産し
ない新規ヒトリンパ系株化細胞を創製し且つこの新規ヒ
トBセル・リンパ芽球細胞変異株は、ヒト/ヒト・ハイ
ブリドーマの創製その他各種の融合細胞株の形成に利用
できる融合パートナーとして、前述の如き制約から解放
された単一性の高い免疫グロブリンの生産を可能とする
融合細胞株の形成に有用な新規ヒトBセル・リンパ芽球
細胞変異株であることを発見した。 【0009】更に、本発明者は、このヒトBセル・リン
パ芽球細胞変異株を用いて、ヒト胃癌患者のヒトリンパ
球細胞と該ヒトBセル・リンパ芽球細胞変異株とのヒト
/ヒト融合細胞株である抗原特異的ヒト免疫グロブリン
生産性ヒト/ヒト・ハイブリドーマの創製に成功し、且
つ該抗原特異的ヒト免疫グロブリンの生産に成功した。 【0010】従つて、本発明の目的は、医学、薬理学、
生化学分野等の広い分野において有用な新規ヒトBセル
・リンパ芽球細胞変異株を提供するにある。 【0011】本発明の他の目的は、上記新規ヒトBセル
・リンパ芽球細胞変異株と悪性腫瘍患者のヒトリンパ球
細胞から導かれる抗原特異的ヒト免疫グロブリン生産性
ヒト/ヒト・ハイブリドーマ、更にはその生産する抗原
特異的ヒト免疫グロブリンを提供するにある。 【0012】本発明によれば、ヒトBセル・リンパ芽球
細胞から導かれた変異株であつて、且つ下記(i)〜
(v) (i) 6−チオグアニン耐性である、(ii) ウワバ
イン耐性である、(iii) HATO(ヒポキサンチン、
アメソプテリン、チミジン及びウワバイン)含有培地で
死滅する、(iv) 免疫グロブリンIgG及びIgMを
実質的に生産しない、(v) 基礎培地RDF中にイン
シユリン、トランスフエリン、セレニウム、エタノール
アミン、β−メルカプトエタノール及び牛血清アルブミ
ンを含む無血清培地において増殖可能である、 の形質特性を有することを特徴とするヒトBセル・リン
パ芽球細胞変異株が提供できる。 【0013】本発明の新規Bセル・リンパ芽球細胞変異
株は、例えば、ヒトBセル・リンパ芽球細胞を無血清培
地で培養適応させ、適応した細胞群から実質的に免疫グ
ロブリン生産能を欠如する細胞をスクリーニングし、こ
のスクリーニングした細胞を6−チオグアニン含有無血
清培地で培養適応させ、斯くて形成された6−チオグア
ニン耐性細胞を突然変異剤で処理したのち、ウワバイン
含有無血清培地で培養適応させ、得られた耐性細胞を6
−チオグアニン及びウワバインの両者を含有する無血清
培地でクローン化することにより創製することができ
る。 【0014】この際利用する無血清培地の例としては、
基礎培地RDF(基礎培地RPMI1640:基礎培地
DME:基礎培地F12=2:1:1の混合基礎培地)
に、インシユリン、トランスフエリン、セレニウム、エ
タノールアミン、β−メルカプトエタノール及び牛血清
アルブミンの適量を配合した無血清培地を好ましく例示
することができる。他の無血清培地も利用でき、培養適
応させるヒトBセル・リンパ芽球細胞及び基礎培地の種
類、上記他の配合成分の種類及びそれらの量などに応じ
て、実験的に適宜に選択、変更、決定して利用すること
ができる。又、利用する突然変異剤の例としては、MN
NG(N−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグアニ
ジン)、EMS(メチルスルホン酸エチル)、AAB
(4−アミノアゾベンゼン)、AAF(2−アセチルア
ミノフルオレン)、AF−2(2−(2−フリル)−3
−(5−ニトロ−2−フリル)アクリルアミド)、BP
ox(ベンゾピレンオキシド)、BZD(ベンチジン)、
DAB(N,N′−ジメチルアミノアゾベンゼン)、D
AN(ジアミンアニソール)、DBA(ジベンズアント
ラセン)、DBE(ジブロモエタン)、DBP(ジブロ
モクロロプロパン)、DMN(ジメチルニトロサミ
ン)、ENNG(N−エチル−N′−ニトロ−N−ニト
ロソグアニジン)、ENU(エチルニトロソウレア)、
HFA(N−ハイドロキシ−2−アセチル−アミノフル
オレン)、3MCA(3−メチルコランスレン)、MM
S(メチルスルホン酸メチル)、2NA(2−ナフチル
アミン)、NAAAF(N−アセトオキシアセチルアミ
ノフルオレン)、NBA(N−ニトロソジブチルアミ
ン)、4NQO(4−ニトロキノリン−1−オキシ
ド)、OAT(o−アミノアゾトルエン)、PI(プロ
ピレンイミン)、TCE(トリクロロエチレン)、TD
S(トルエンジアミノスルフエイト)、TOX(トキサ
フエン)、VC(ビニルクロライド)などの公知変異剤
を例示することができる。 【0015】培養適応は、例えば37℃、5%CO2条
件下で行なうことができ、また、クローン化はそれ自体
公知の例えば限界希釈法を利用して行なうことができ
る。培養適応手段、スクリーニング手段、突然変異剤処
理手段などの各単位手段それ自体はよく知られており、
適宜に選択利用することができる。 【0016】上記において利用するヒトBセル・リンパ
芽球細胞の例としては、前述したそれ自体公知のヒトB
セル・リンパ芽球細胞WI−L2(微工研寄託受託拒否
通知書、通知番号:60微寄文第1621号)のほか
に、例えば、ヒトBセル・リンパ芽球細胞IM−9(A
TCC CCL 159)、ヒトBセル・リンパ芽球細
胞NC−37(ATCC CCL 214)及びヒトB
セル・リンパ芽球細胞CCRF−SB(ATCC CC
L 120)などの如き公知株化細胞を例示することが
できる。 【0017】上述のようにして得ることのできる前記
(i)〜(v)の形質特性を有するヒトBセル・リンパ
芽球細胞WI−L2から導かれた変異株の1つはHIH
/TO1株(微工研寄託受託拒否通知書、通知番号:6
0微寄文第1198号)と命名された。 【0018】本発明によれば、上述のようにして得られ
るヒトBセル・リンパ芽球細胞変異株を融合パートナー
として利用し、抗原特異的ヒト免疫グロブリンの生産を
ヒト体外で工業的に行うことを可能とするヒト/ヒト・
ハイブリドーマの創製を包含して、たとえば悪性腫瘍患
者のヒトリンパ球細胞と該変異株とのヒト/ヒト・ハイ
ブリドーマの創製、その他各種の融合細胞株を創製する
ことができる。 【0019】以下、そのような融合細胞株創製の一態様
について述べる。例えば、ヒト胃癌患者のヒトBセルを
用い、これを本発明のヒトBセル・リンパ芽球細胞変異
株と人間の体外で融合させ、たとえば胃癌、肺癌、悪性
黒色腫細胞などの癌関連抗原に特異的に結合するヒト免
疫グロブリン生産能を有するヒト/ヒト・ハイブリドー
マを産生することができる。 【0020】この融合細胞を産生する融合操作それ自体
はよく知られており、本発明で利用することができる。
例えば、溶媒中で融合促進剤の存在下に、ヒト胃癌患者
のヒトBセルと本発明のヒトBセル・リンパ芽球細胞変
異株とを接触させることにより行うことができる。この
ような融合方法の例としては、たとえば仙台ビールス
(HVJ)、ポリエチレエングリコールなどの如き融合
促進剤を用いる方法を例示できる。更に、高電圧で電気
的に融合する方法[例えば、U. Zimmerman et. al.,
“Electric Field-Mediated Cell Fusion”;The Journ
al of Biological Physics, 10,43−50,198
2。U. Zimmerman et. al., “Electric Field-Induced
Cell-to-Cell Fusion”;The Journal of Membrene Bi
ology, 67,165−182,1982。U. Zimmerma
n,“Electric Field Mediated Fusion and Related El
ectrical Phenomena”;Biochimica et Biophysica Act
a 694,227−277,1982。等]を利用して
行なうこともできる。 【0021】前者の態様に於ては、例えば、水性媒体
中、上記例示の如き融合促進剤の存在下、所望によりお
だやかな撹拌を加えて系を均一にし、前記ヒト胃癌患者
のヒトBセルと本発明変異株から成る融合細胞が産生さ
れる時間、たとえば数分間のオーダーで両者を接触させ
ることにより、所望の融合細胞を産生することができ
る。利用する水性媒体の例としては、水、生理食塩水、
5%ジメチルスルホキシド水溶液、5%グリセロール水
溶液などを例示することができる。 【0022】斯くて所望の融合細胞が産生された系を、
たとえば遠心分離して細胞群を採取し、再び適当な培地
たとえば10%仔牛血清を含有させた。前記(v)無血
清培地にHATOを加えた培地に、採取した該細胞群を
分散させ、この分散液を例えばマイクロ・タイター・プ
レートの穴に、夫々、一定量づつ分取注入し、たとえば
5%CO2の存在下、37℃で培養し、各穴中の培養液
を例えば3日毎に新しい培養液と取りかえ、たとえば2
週間培養を続けたのち、顕微鏡下で融合細胞の有無を調
べ、コロニーの認められた試料の培養液を採取し、ヒト
免疫グロブリンの有無をたとえば125Iを用いたラジオ
・イムノ・アツセイや酵素抗体法により検出することに
より、所望のコロニーを選別することができる。 【0023】このようにして選別されたヒト免疫グロブ
リンの生産の認められたコロニーを、新しい培養液に移
して培養し、融合細胞を増殖させることにより融合細胞
クローンを取得することができる。更に、必要に応じ
て、サブ・クローニングして、所望のヒト胃癌、肺癌、
悪性黒色腫などの癌関連抗原に特異的に結合するヒト免
疫グロブリン生産性クローンを得ることができる。 【0024】上述の態様で、ヒト胃癌患者のヒトB−セ
ルと本発明ヒトBセル・リンパ芽球細胞変異株から産生
された抗原特異的免疫グロブリン生産性ヒト/ヒトハイ
ブリドーマTOS/G5株の細胞生化学的性質を以下に
示す。 【0025】(1) ヒト免疫グロブリンM(IgM)分
泌(生産)、(2) 倍加時間(ダブリング・タイム)
[於(v)無血清培地]約40時間、(3) DNA含量
が正常ヒトリンパ球の2倍以上、(4) 上記(1)のI
gMはヒト株化細胞KATO−III(胃癌)に対して
結合性を示す、(5) HATO含有培地(ヒポキサンチ
ン、アメソプテリン、チミジン及びウワバイン含有培
地)中で分裂増殖可能である。 【0026】尚、相対DNA含量(正常ヒトリンパ球の
DNA含量に対する比率)は、ハイブリドーマをプロピ
ジウム・アイオダイドで染色したのち、フローサイトメ
ーター(flow cytometer)で分離分析する方法によつて
決定された。 【0027】本発明によれば、上述のようにして産生す
ることのできるたとえばヒト胃癌患者のヒトBセルと本
発明ヒトBセル・リンパ芽球細胞変異株から導かれた抗
原特異的免疫グロブリン生産性ヒト/ヒト融合細胞株を
利用して、抗原特異的ヒト免疫グロブリンを得ることが
できる。該抗原特異的ヒト免疫グロブリンは上記ヒト/
ヒト融合細胞株を培地に培養し、その培養物より抗原特
異的ヒト免疫グロブリンを採取することにより製造でき
る。 【0028】例えば、上記ヒト/ヒト融合細胞株を適当
な培地たとえば前記(v)の培地で培養し、培養液を採
取することによりヒト胃癌、肺癌、悪性黒色腫の如きガ
ン関連抗原に特異的に結合する免疫グロブリン含有物質
を得ることができる。精製はたとえば、硫安分画法、ア
フイニテイークロマトグラフイー、ゲル濾過、イオン交
換クロマトグラフイー、電気泳動法などの如き生体液か
ら免疫グロブリンを採取、精製する際に利用できると同
様な精製手段を利用して行なうことができる。本発明に
よれば、前述した融合細胞クローン又はその培養液から
ガン関連抗原に特異的に結合するヒト免疫グロブリン含
有物質又は該免疫グロブリンを取得するに際し、抗原性
組織(例えば癌組織)を一度、免疫物質生産能を欠如す
るか若しくは生産能の極めて弱い生体たとえばヌード・
マウス(nude mouse)などに植えつけ組織を維持した
後、その組織に対して或いは培養系にもどされた組織に
対して反応するヒト免疫グロブリン(抗体)を探し出
し、これを分離するのが有利である。 【0029】上記ヒト/ヒトハイブリドーマの培養に利
用できる培地の例としては、前記(v)の無血清培地の
ほかに、例えば、基礎培地RDFに牛胎児血清、仔牛血
清、成牛血清、ヒト血清などの如き血清を含有させた培
地、基礎培地RPMI1640に上記の如き血清を含有
させた培地などを例示することができる。又、培養条件
としては、たとえば5%CO2の存在下で37℃の条件
を例示できる。 【0030】上述のようにして得ることのできる本発明
のガン関連抗原特異的ヒト免疫グロブリンの例として、
前述したヒト/ヒト・ハイブリドーマTOS/G5株の
生産する本発明の抗原特異的ヒト免疫グロブリンを例示
できる。その特性を以下に示す。 【0031】(イ) ヒト免疫グロブリンM(IgM)で
あつて、(ロ) ヒト株化細胞KATO−III(胃癌)
及びヒト株化細胞A549(肺癌)に対して結合力を示
す、(ハ) H鎖(heary chain)及びL鎖(light chai
n)より成り、分子量が約18万である。 【0032】上記ヒト株化細胞KATO−III(胃
癌)はATCC HTB103として、又ヒト株化細胞
A549(肺癌)はATCC CCL185としてAT
CC(アメリカン・タイプ・カルチヤー・コレクシヨ
ン)から自由に入手できる。 【0033】本発明の抗原特異的ヒト免疫グロブリン
は、たとえばヒト胃癌、肺癌、脳腫瘍、悪性黒色腫など
の如きヒト癌への作用抗体或いはそれ自体の作用でこれ
ら癌細胞の増殖抑制、癌細胞の死滅を行わせたり、更
に、ヒト体外で量産されたこれらの癌組織認識抗体に補
体もしくはT−リンパ球(マクロフアージ)の助けをか
りて癌細胞の増殖抑制や癌細胞死滅のはたらきをさせた
りすることができる。更にまた、ヒト体外で量産された
これら癌特異的抗体をキヤリアーとして利用して、例え
ば化学療法剤結合−ヒト・モノクロナル抗体、インター
フエロン結合−ヒト・モノクロナル抗体、高分子毒素結
合−ヒト・モノクロナル抗体、薬物入りリポゾーム結合
−ヒト・モノクロナル抗体などの形で癌細胞の増殖抑制
や死滅のはたらきをさせたりするのに有用である。ま
た、本発明のヒト・モノクロナル抗体をキヤリアーとし
て利用し、これに放射線感受性物質を結合させて患者に
投与し、癌細胞に選択的に集まる性質を利用して患部を
検知し放射線療法に利用することができる。このような
癌に対する利用に際しては、ヒト・モノクロナル抗体と
して完全な抗体を用いてもよいし、抗体を化学的な手法
で特異的抗原認識部位を含むより小さな分子に切断して
用いたり、或は、そのような小さな分子もしくは特異的
抗原認識部位のみを他の抗体の非特異的抗原認識部分と
結合させて、より有効性のある修飾ヒト・モノクロナル
抗体を化学的手法で創製して用いることもできる。 【0034】以下、実施例により、本発明の数態様につ
いて更に詳しく説明する。 【0035】 【実施例】実施例1 ヒトBセル・リンパ芽球細胞変異株。 【0036】ヒトBセル・リンパ芽球細胞WI−L2
(微工研寄託受託拒否通知書、通知番号:60微寄文第
1621号)を、基礎培地RDF中にインシユリン、ト
ランスフエリン、セレニウム、エタノールアミン、β−
メルカプトエタノール及び牛血清アルブミンの適量を含
有する無血清培地で培養適応させる。該無血清培地を分
注した96穴マイクロタイタープレートに1 cell/wel
lとなるように植えこみ、5%CO2、37℃の条件下で
限界希釈法によりクローニング操作を行なう。約1ケ月
経過後、増殖してきた50穴より免疫グロブリンIgG
及びIgMを実質的に培地中に生産していないクローン
を1つ選び出した。 【0037】このクローンを、まず0.1μMの6−チ
オグアニンを含む前記と同様な無血清培地中で培養適応
させる。培養は5%CO2、37℃の条件下で、継代培
養をくり返すごとに、6−チオグアニン濃度を0.2μ
M、0.5μM、1μM、2μM、4μM、10μM、
15μM、20μMと段階的に上げて行ない、最終的に
20μMの6−チオグアニン含有無血清培地中で増殖可
能な単クローンを、前記と同様な限界希釈法によるクロ
ーニング操作で選別する。 【0038】この細胞を、1μg/mlの突然変異剤M
NNG(N−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグア
ニジン)を含有する基礎培地RDF中で、5%CO2、
37℃の条件下で3時間培養した後、前記と同様な無血
清培地で洗浄し、洗浄した細胞を20μMの6−チオグ
アニン及びウワバインを含む前記と同様な無血清培地中
で培養適応させる。培養は5%CO2、37℃の条件下
で、継代培養をくり返すごとに、ウワバインの濃度を
0.1μM、0.2μM、0.5μM、1μM、5μMと
段階的に上げて行ない、最終的に20μMの6−チオグ
アニン及び5μMのウワバインを含む無血清培地中で増
殖可能な単クローンを、前記と同様な限界希釈法による
クローニング操作で選別する。 【0039】斬くて創製されたヒトBセル・リンパ芽球
細胞変異株は前記(i)〜(v)の形質特性を示し、H
IH/TO1株と命名された。 【0040】実施例2 胃癌患者から手術の際に癌組織周辺のリンパ節を入手し
た。リンパ節をハサミで細かく切りきざみ、内部のリン
パ球を培地RDF(RPMI1640:DME:F−1
2=2:1:1)中に分散させ、続いて2重のガーゼを
用いて、濾過を行い、脂肪層を除いた後に、濾液中の細
胞(リンパ球>80%)を遠心法によつて集める。その
後、癌患者由来のリンパ球分画(ドナーBセル)を20
%牛胎児血清および、10%ジメチルスルホオキサイド
(DMSO)を含むRDF培地中で凍結(−130℃)
し、細胞融合を行う日まで保存した。 【0041】ドナーBセルと免疫グロブリン生産能を実
質的に欠損している前記実施例1で得た親ヒトB−セル
(HIH/TO1)のそれぞれを1×107および2×
107個混合し、35%ポリエチレングリコール150
0の存在下に融合を完了させる。その後、100×g、
10分間の遠心処理を行つてポリエチレングリコールを
除き、新たに、10%牛胎児血清および、ヒポキサンチ
ン、アメソプテリン、チミジン、ウワバイン(HAT
O)を含むRDF培地を加える。この細胞群を含む培養
液200μl(この中には1×105個のセルを含む)
づつを96個の穴をもつミクロプレートに分注し、約2
0日間、37℃、5%CO2条件下のインキユベーター
で培養した。この間、HATO及び10%牛胎児血清を
含むRDF培地を3日に1度交換した。親B−セル(H
IH/TO1)はアメソプテリン存在下ではヒポキサン
チンホスホリボシールトランスフエラーゼを欠損してい
るため、生きることが出来ない。またドナーBセルは、
ウワバインを含むRDF+10%牛胎児血清中では永続
的に増殖し生きのびることができない。よつてHATO
を含む培地で永続的に増殖した細胞はドナーBセルと親
B−セル(HIH/TO1)の融合した細胞である。3
週間培養の後、ミクロプレートの96個の穴の中に7個
のハイブリドーマのサブクローンが見られた。このうち
の1個のハイブリドーマサブクローンは更にクローン化
されるために、集められ、新たに10%牛胎児血清及
び、HATOを含むRDF培地を加え、懸濁させる。こ
の細胞群を含む培養液を96個の穴をもつミクロプレー
トに各穴に3個の細胞が入るよう分注し、約1ケ月、3
7℃、5%CO2条件下のインキユベーターで培養し
た。この間、HATO及び10%牛胎児血清を含むRD
F培地を6日に1度交換した。生じたサブクローンのう
ち最も増殖率のよいものを選び、TOS/G5と命名し
た。これがハイブリドーマであることをさらに確認する
ために、細胞内DNA含量を調べた。その方法を以下に
説明する。 【0042】遠心管の中に培養細胞液を入れ遠心処理に
より上清を除去する。70%エタノール溶液で30分以
上固定を行う。遠心処理により上清を除き、RNA分解
酵素(RNase)溶液を加え、静かに振盪し、RNA
を分解する。37℃で30分間反応させた後、再蒸留水
で2度洗浄する。プロピデイウムイオダイド(PI)を
加え、室温で20分間、染色した後再蒸留水で2度洗浄
する。再蒸留水で希釈し、セルソーターを用いて分析し
た結果、TOS/G5にはドナーBセルの2倍以上のD
NA含量が認められた。以上の結果より、TOS/G5
はハイブリドーマであることが確認された。 【0043】このTOS/G5がヒト免疫グロブリン
(HuIg)を産出していることを酵素抗体法を用いて
確めた。以下、その方法を説明する。 【0044】ミクロタイタープレートの中に抗ヒト免疫
グロブリン抗体を滴下(50μl)し、37℃で1時間
プレートに吸着させる。0.3%のゼラチンを含む10
mMPBS(ゼラチン緩衝液)で3回洗浄した後、5%
牛血清アルブミン溶液を滴下(200μl)し、37℃
で1時間吸着させる。ゼラチン緩衝液で3回洗浄し、未
吸着のものを除去する。次に検液(培養上清)を滴下
(50μl)して、37℃で1時間反応後、ゼラチン緩
衝液で3回洗浄する。ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒト
Ig抗体を滴下(50μl)して、37℃で30分間反
応させ、培養上清中のヒトIgと結合させる(酵素抗体
法)。ゼラチン緩衝液で3回洗浄後、過酸化水素とo−
フエニレンジアミンを含む基質溶液を加え、暗室で10
分間反応させる。5N H2SO4(50μl)を加え反
応を止める。もしミクロプレート上にペルオキシダーゼ
結合ヤギ抗ヒトIg抗体が残つている場合、すなわちそ
れに結合されるヒトIgが残つている場合には490n
mに吸収をもつ黄色の基質反応物が生産される。この量
を吸光度計を用いて測定し、ハイブリドーマ培養上清中
に含まれるヒトIgの量を知る。ハイブリドーマ培養上
清中にヒトIgが存在しない場合には、ペルオキシダー
ゼ結合ヤギ抗ヒトIg抗体は洗浄の段階で洗い流され
る。 【0045】以上の測定方法を用いた結果TOS/G5
はヒトIgMを生産していることがわかつた(ドナーB
−セルと同形質のIg)。 【0046】1ケ月後にTOS/G5を24個の穴をも
つミクロプレート(2ml/穴)に植えかえた後さらに
1週間培養を続けた。その培養液の上清を採取し、種々
の株化細胞を標的細胞としてヒトハイブリドーマから生
産されるIgの特異性を調べた。その方法を以下に説明
する。 【0047】ヒトの種々の株化培養細胞を、DF培地
(DME:F−12=1:1)に10%牛胎児血清を加
えた培地で培養する。細胞の数が5×106〜1×107
になつた段階でトリプシンを用いて細胞をシヤーレの底
面から剥がし、遠心法を用いて細胞を集め、培地でよく
洗浄する。96個の穴をもつミクロタイタープレートの
各穴に細胞を一定数(105/100μl)ずつ分注
し、37℃で1晩、プレートに吸着させる。次に3%グ
ルタルアルデヒド溶液を滴下(50μl)し、37℃で
20分間、細胞の固定を行う。遠心法(200g、10
分間)で細胞をおとし、ゼラチン緩衝液で3回洗浄した
後、1%牛血清アルブミン溶液を滴下(200μl)
し、37℃で1時間プレートに吸着させる。ゼラチン緩
衝液で3回洗浄し、未吸着のものを除去する。その後、
検液(培養上清)を細胞の上に滴下(50μl)し、3
7℃で1時間反応させ、ゼラチン緩衝液で3回洗浄す
る。続いてペルオキシダーゼ結合抗ヒトIg抗体を滴下
(50μl)し、37℃で30分間、反応させる。ゼラ
チン緩衝液で3回洗浄を行つた後、先述の酵素抗体法で
述べた方法によつて細胞に結合する培養液中のヒトIg
の量を測定する。 【0048】以上の方法によつてTOS/G5のIgM
の標的細胞特異性をそれぞれ調べた結果、TOS/G5
の培養液中のIgMは胃癌由来の株化細胞KATO−I
II及びAGSに対して結合力を有しており、本発明者
の検討によれば胃癌以外の株化細胞であるA549(肺
癌)に対しても結合力を有する。 【0049】すなわち、ドナーB−セルは体内に胃癌を
もつ患者から採取されたものであるので、細胞融合法に
よつて作り出された自己増殖性をもつハイブリドーマの
クローンからは、ドナーB−セルと同形質のかつ特定の
抗原結合部位をもつモノクロナール(単一)抗体を生産
していることを示している。 【0050】約4週間後に、ハイブリドーマの培地から
HATOを除きRDFを基礎培地とする前述(v)の無
血清培地で培養、倍加時間40時間で、TOS/G5は
1×106個/ml細胞が倍地で生育する時約1μg/
mlの量でヒトIgMを生産し続けている。 【0051】ハイブリドーマの多量培養液を70%の硫
酸アンモニウムで沈殿させ、粗Ig分画を集めた。得ら
れた沈殿を生理食塩水に溶かし、ヤギ抗ヒトIgMを結
合させたセフアロースを用いてアフイニテイクロマトグ
ラフイーの手法でIgMを精製した。TOS/G5の培
養液1lから精製したIgM1mgが得られた。この精
製したIgM標品をSDS−電気泳動法で分析した結
果、ヒトIgと同形質の分子量180,000のIgM
を生産していることが確かめられた。 【0052】実施例3 上記実施例2における胃癌患者とは別の胃癌患者から入
手したリンパ節を用いるほかは、実施例2と同様に行つ
て、実施例2と同様な抗原特異的ヒト免疫グロブリンを
生産する実施例2と同様なヒト/ヒト・ハイブリドーマ
TOS/H8(微工研寄託受託拒否通知書、通知番号:
61微寄文第844号)が得られた。
防、治療、診断などの医学及び薬学分野や生化学的試
薬、生体高分子の精製試薬など薬理学分野、生化学分野
等の如き広い分野において有用な抗原特異的ヒト免疫グ
ロブリンの生産をヒト体外で工業的に行うことを可能と
するヒト/ヒト・ハイブリドーマの創製、その他各種の
融合細胞株の形成に利用できる融合パートナー(Fusion
partner)として有用な新規なヒトBセル・リンパ芽球
細胞変異株に関する。 【0002】本発明はまた、この新規なヒトBセル・リ
ンパ芽球細胞変異株を利用して創製される抗原特異的ヒ
ト免疫グロブリン生産性ヒト/ヒト・ハイブリドーマ、
更には該ハイブリドーマが生産する抗原特異的ヒト免疫
グロブリンにも関する。 【0003】更に詳しくは、本発明はヒトBセル・リン
パ芽球細胞から導かれた変異株であつて、且つ下記
(i)〜(v) (i) 6−チオグアニン耐性である、(ii) ウワバ
イン耐性である、(iii) HATO含有培地で死滅す
る、(iv) 免疫グロブリンIgG及びIgMを実質的
に生産しない、(v) 基礎培地RDF中にインシユリ
ン、トランスフエリン、セレニウム、エタノールアミ
ン、β−メルカプトエタノール及び血清アルブミンを含
む無血清培地において増殖可能である、 の形質(phenotype)特性を有することを特徴とするヒ
トBセル・リンパ芽球細胞変異株に関する。 【0004】本発明はまた、この新規なヒトBセル・リ
ンパ芽球細胞変異株を融合パートナーとするヒト/ヒト
・ハイブリドーマ、たとえば、ヒト胃癌患者のヒトリン
パ球細胞の如き悪性腫瘍患者のヒトリンパ球細胞と該融
合パートナーとのヒト/ヒト融合細胞株である抗原特異
的ヒト免疫グロブリン生産性ヒト/ヒト・ハイブリドー
マ、更には、このようなヒト/ヒト・ハイブリドーマが
生産する抗原特異的ヒト免疫グロブリンにも関する。 【0005】従来、ヒト/ヒト・ハイブリドーマの形成
に利用できるヒトリンパ系株化細胞についていくつか知
られている。そのような融合パートナーとして利用でき
るヒトリンパ系株化細胞の例としては、Immunology Tod
ay, vol. 4、No. 3、1983、73頁のTABLE
IIに記載のSKO−007(Igε,λ)、TM−
H2(Igλ,κ)、DHMC(Igγ,λ)、GM1
500(Igγ2,κ)、KR−4(Igγ,κ)、L
ICR−LON−HMy2(Igγ1,κ)、GM04
67.3(Igμ,λ)、H351.1(Igμ,κ)、
UC729−6(Igμ,κ)、GM4672(Igγ
2,κ)などを挙げることができる。しかしながら、こ
れら従来公知のヒトリンパ系株化細胞は、上記文献のT
ABLEIIに記載され、上記にカツコで示したよう
に、程度の差こそあれ免疫グロブリンを実質的に生産す
る点で、その融合パートナーとしての利用に好ましい株
とは言い難く、その利用に制約をうける。その理由は、
これらの融合パートナーと例えば癌患者のヒトリンパ球
細胞とから導かれるヒト/ヒト・ハイブリドーマが生産
するヒト免疫グロブリンは、該融合パートナーが本来生
産する免疫グロブリンが、該癌患者のヒトリンパ球細胞
に由来する目的とする免疫グロブリンに混入したポリ・
クロナリテイ(polyclonality)形態で得られるため、
目的とする免疫グロブリンの単一性(mono-clonality)
が失われるからである。 【0006】本発明者は、上述のような制約から解放さ
れた融合パートナーを創製すべく研究を行つてきた。 【0007】その結果、ヒトBセル・リンパ芽球細胞か
ら導かれた変異株であつて、免疫グロブリンを実質的に
生産しない新しいヒトリンパ系株化細胞を創製すること
に成功した。 【0008】本発明者は、それ自体公知のヒトBセル・
リンパ芽球細胞WI−L2[微工研寄託受託拒否通知
書、通知番号:60微寄文第1621号]から、薬剤耐
性化手法を利用した特定の変異株形成操作を経て、それ
自体増殖能を有するが免疫グロブリンを実質的に生産し
ない新規ヒトリンパ系株化細胞を創製し且つこの新規ヒ
トBセル・リンパ芽球細胞変異株は、ヒト/ヒト・ハイ
ブリドーマの創製その他各種の融合細胞株の形成に利用
できる融合パートナーとして、前述の如き制約から解放
された単一性の高い免疫グロブリンの生産を可能とする
融合細胞株の形成に有用な新規ヒトBセル・リンパ芽球
細胞変異株であることを発見した。 【0009】更に、本発明者は、このヒトBセル・リン
パ芽球細胞変異株を用いて、ヒト胃癌患者のヒトリンパ
球細胞と該ヒトBセル・リンパ芽球細胞変異株とのヒト
/ヒト融合細胞株である抗原特異的ヒト免疫グロブリン
生産性ヒト/ヒト・ハイブリドーマの創製に成功し、且
つ該抗原特異的ヒト免疫グロブリンの生産に成功した。 【0010】従つて、本発明の目的は、医学、薬理学、
生化学分野等の広い分野において有用な新規ヒトBセル
・リンパ芽球細胞変異株を提供するにある。 【0011】本発明の他の目的は、上記新規ヒトBセル
・リンパ芽球細胞変異株と悪性腫瘍患者のヒトリンパ球
細胞から導かれる抗原特異的ヒト免疫グロブリン生産性
ヒト/ヒト・ハイブリドーマ、更にはその生産する抗原
特異的ヒト免疫グロブリンを提供するにある。 【0012】本発明によれば、ヒトBセル・リンパ芽球
細胞から導かれた変異株であつて、且つ下記(i)〜
(v) (i) 6−チオグアニン耐性である、(ii) ウワバ
イン耐性である、(iii) HATO(ヒポキサンチン、
アメソプテリン、チミジン及びウワバイン)含有培地で
死滅する、(iv) 免疫グロブリンIgG及びIgMを
実質的に生産しない、(v) 基礎培地RDF中にイン
シユリン、トランスフエリン、セレニウム、エタノール
アミン、β−メルカプトエタノール及び牛血清アルブミ
ンを含む無血清培地において増殖可能である、 の形質特性を有することを特徴とするヒトBセル・リン
パ芽球細胞変異株が提供できる。 【0013】本発明の新規Bセル・リンパ芽球細胞変異
株は、例えば、ヒトBセル・リンパ芽球細胞を無血清培
地で培養適応させ、適応した細胞群から実質的に免疫グ
ロブリン生産能を欠如する細胞をスクリーニングし、こ
のスクリーニングした細胞を6−チオグアニン含有無血
清培地で培養適応させ、斯くて形成された6−チオグア
ニン耐性細胞を突然変異剤で処理したのち、ウワバイン
含有無血清培地で培養適応させ、得られた耐性細胞を6
−チオグアニン及びウワバインの両者を含有する無血清
培地でクローン化することにより創製することができ
る。 【0014】この際利用する無血清培地の例としては、
基礎培地RDF(基礎培地RPMI1640:基礎培地
DME:基礎培地F12=2:1:1の混合基礎培地)
に、インシユリン、トランスフエリン、セレニウム、エ
タノールアミン、β−メルカプトエタノール及び牛血清
アルブミンの適量を配合した無血清培地を好ましく例示
することができる。他の無血清培地も利用でき、培養適
応させるヒトBセル・リンパ芽球細胞及び基礎培地の種
類、上記他の配合成分の種類及びそれらの量などに応じ
て、実験的に適宜に選択、変更、決定して利用すること
ができる。又、利用する突然変異剤の例としては、MN
NG(N−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグアニ
ジン)、EMS(メチルスルホン酸エチル)、AAB
(4−アミノアゾベンゼン)、AAF(2−アセチルア
ミノフルオレン)、AF−2(2−(2−フリル)−3
−(5−ニトロ−2−フリル)アクリルアミド)、BP
ox(ベンゾピレンオキシド)、BZD(ベンチジン)、
DAB(N,N′−ジメチルアミノアゾベンゼン)、D
AN(ジアミンアニソール)、DBA(ジベンズアント
ラセン)、DBE(ジブロモエタン)、DBP(ジブロ
モクロロプロパン)、DMN(ジメチルニトロサミ
ン)、ENNG(N−エチル−N′−ニトロ−N−ニト
ロソグアニジン)、ENU(エチルニトロソウレア)、
HFA(N−ハイドロキシ−2−アセチル−アミノフル
オレン)、3MCA(3−メチルコランスレン)、MM
S(メチルスルホン酸メチル)、2NA(2−ナフチル
アミン)、NAAAF(N−アセトオキシアセチルアミ
ノフルオレン)、NBA(N−ニトロソジブチルアミ
ン)、4NQO(4−ニトロキノリン−1−オキシ
ド)、OAT(o−アミノアゾトルエン)、PI(プロ
ピレンイミン)、TCE(トリクロロエチレン)、TD
S(トルエンジアミノスルフエイト)、TOX(トキサ
フエン)、VC(ビニルクロライド)などの公知変異剤
を例示することができる。 【0015】培養適応は、例えば37℃、5%CO2条
件下で行なうことができ、また、クローン化はそれ自体
公知の例えば限界希釈法を利用して行なうことができ
る。培養適応手段、スクリーニング手段、突然変異剤処
理手段などの各単位手段それ自体はよく知られており、
適宜に選択利用することができる。 【0016】上記において利用するヒトBセル・リンパ
芽球細胞の例としては、前述したそれ自体公知のヒトB
セル・リンパ芽球細胞WI−L2(微工研寄託受託拒否
通知書、通知番号:60微寄文第1621号)のほか
に、例えば、ヒトBセル・リンパ芽球細胞IM−9(A
TCC CCL 159)、ヒトBセル・リンパ芽球細
胞NC−37(ATCC CCL 214)及びヒトB
セル・リンパ芽球細胞CCRF−SB(ATCC CC
L 120)などの如き公知株化細胞を例示することが
できる。 【0017】上述のようにして得ることのできる前記
(i)〜(v)の形質特性を有するヒトBセル・リンパ
芽球細胞WI−L2から導かれた変異株の1つはHIH
/TO1株(微工研寄託受託拒否通知書、通知番号:6
0微寄文第1198号)と命名された。 【0018】本発明によれば、上述のようにして得られ
るヒトBセル・リンパ芽球細胞変異株を融合パートナー
として利用し、抗原特異的ヒト免疫グロブリンの生産を
ヒト体外で工業的に行うことを可能とするヒト/ヒト・
ハイブリドーマの創製を包含して、たとえば悪性腫瘍患
者のヒトリンパ球細胞と該変異株とのヒト/ヒト・ハイ
ブリドーマの創製、その他各種の融合細胞株を創製する
ことができる。 【0019】以下、そのような融合細胞株創製の一態様
について述べる。例えば、ヒト胃癌患者のヒトBセルを
用い、これを本発明のヒトBセル・リンパ芽球細胞変異
株と人間の体外で融合させ、たとえば胃癌、肺癌、悪性
黒色腫細胞などの癌関連抗原に特異的に結合するヒト免
疫グロブリン生産能を有するヒト/ヒト・ハイブリドー
マを産生することができる。 【0020】この融合細胞を産生する融合操作それ自体
はよく知られており、本発明で利用することができる。
例えば、溶媒中で融合促進剤の存在下に、ヒト胃癌患者
のヒトBセルと本発明のヒトBセル・リンパ芽球細胞変
異株とを接触させることにより行うことができる。この
ような融合方法の例としては、たとえば仙台ビールス
(HVJ)、ポリエチレエングリコールなどの如き融合
促進剤を用いる方法を例示できる。更に、高電圧で電気
的に融合する方法[例えば、U. Zimmerman et. al.,
“Electric Field-Mediated Cell Fusion”;The Journ
al of Biological Physics, 10,43−50,198
2。U. Zimmerman et. al., “Electric Field-Induced
Cell-to-Cell Fusion”;The Journal of Membrene Bi
ology, 67,165−182,1982。U. Zimmerma
n,“Electric Field Mediated Fusion and Related El
ectrical Phenomena”;Biochimica et Biophysica Act
a 694,227−277,1982。等]を利用して
行なうこともできる。 【0021】前者の態様に於ては、例えば、水性媒体
中、上記例示の如き融合促進剤の存在下、所望によりお
だやかな撹拌を加えて系を均一にし、前記ヒト胃癌患者
のヒトBセルと本発明変異株から成る融合細胞が産生さ
れる時間、たとえば数分間のオーダーで両者を接触させ
ることにより、所望の融合細胞を産生することができ
る。利用する水性媒体の例としては、水、生理食塩水、
5%ジメチルスルホキシド水溶液、5%グリセロール水
溶液などを例示することができる。 【0022】斯くて所望の融合細胞が産生された系を、
たとえば遠心分離して細胞群を採取し、再び適当な培地
たとえば10%仔牛血清を含有させた。前記(v)無血
清培地にHATOを加えた培地に、採取した該細胞群を
分散させ、この分散液を例えばマイクロ・タイター・プ
レートの穴に、夫々、一定量づつ分取注入し、たとえば
5%CO2の存在下、37℃で培養し、各穴中の培養液
を例えば3日毎に新しい培養液と取りかえ、たとえば2
週間培養を続けたのち、顕微鏡下で融合細胞の有無を調
べ、コロニーの認められた試料の培養液を採取し、ヒト
免疫グロブリンの有無をたとえば125Iを用いたラジオ
・イムノ・アツセイや酵素抗体法により検出することに
より、所望のコロニーを選別することができる。 【0023】このようにして選別されたヒト免疫グロブ
リンの生産の認められたコロニーを、新しい培養液に移
して培養し、融合細胞を増殖させることにより融合細胞
クローンを取得することができる。更に、必要に応じ
て、サブ・クローニングして、所望のヒト胃癌、肺癌、
悪性黒色腫などの癌関連抗原に特異的に結合するヒト免
疫グロブリン生産性クローンを得ることができる。 【0024】上述の態様で、ヒト胃癌患者のヒトB−セ
ルと本発明ヒトBセル・リンパ芽球細胞変異株から産生
された抗原特異的免疫グロブリン生産性ヒト/ヒトハイ
ブリドーマTOS/G5株の細胞生化学的性質を以下に
示す。 【0025】(1) ヒト免疫グロブリンM(IgM)分
泌(生産)、(2) 倍加時間(ダブリング・タイム)
[於(v)無血清培地]約40時間、(3) DNA含量
が正常ヒトリンパ球の2倍以上、(4) 上記(1)のI
gMはヒト株化細胞KATO−III(胃癌)に対して
結合性を示す、(5) HATO含有培地(ヒポキサンチ
ン、アメソプテリン、チミジン及びウワバイン含有培
地)中で分裂増殖可能である。 【0026】尚、相対DNA含量(正常ヒトリンパ球の
DNA含量に対する比率)は、ハイブリドーマをプロピ
ジウム・アイオダイドで染色したのち、フローサイトメ
ーター(flow cytometer)で分離分析する方法によつて
決定された。 【0027】本発明によれば、上述のようにして産生す
ることのできるたとえばヒト胃癌患者のヒトBセルと本
発明ヒトBセル・リンパ芽球細胞変異株から導かれた抗
原特異的免疫グロブリン生産性ヒト/ヒト融合細胞株を
利用して、抗原特異的ヒト免疫グロブリンを得ることが
できる。該抗原特異的ヒト免疫グロブリンは上記ヒト/
ヒト融合細胞株を培地に培養し、その培養物より抗原特
異的ヒト免疫グロブリンを採取することにより製造でき
る。 【0028】例えば、上記ヒト/ヒト融合細胞株を適当
な培地たとえば前記(v)の培地で培養し、培養液を採
取することによりヒト胃癌、肺癌、悪性黒色腫の如きガ
ン関連抗原に特異的に結合する免疫グロブリン含有物質
を得ることができる。精製はたとえば、硫安分画法、ア
フイニテイークロマトグラフイー、ゲル濾過、イオン交
換クロマトグラフイー、電気泳動法などの如き生体液か
ら免疫グロブリンを採取、精製する際に利用できると同
様な精製手段を利用して行なうことができる。本発明に
よれば、前述した融合細胞クローン又はその培養液から
ガン関連抗原に特異的に結合するヒト免疫グロブリン含
有物質又は該免疫グロブリンを取得するに際し、抗原性
組織(例えば癌組織)を一度、免疫物質生産能を欠如す
るか若しくは生産能の極めて弱い生体たとえばヌード・
マウス(nude mouse)などに植えつけ組織を維持した
後、その組織に対して或いは培養系にもどされた組織に
対して反応するヒト免疫グロブリン(抗体)を探し出
し、これを分離するのが有利である。 【0029】上記ヒト/ヒトハイブリドーマの培養に利
用できる培地の例としては、前記(v)の無血清培地の
ほかに、例えば、基礎培地RDFに牛胎児血清、仔牛血
清、成牛血清、ヒト血清などの如き血清を含有させた培
地、基礎培地RPMI1640に上記の如き血清を含有
させた培地などを例示することができる。又、培養条件
としては、たとえば5%CO2の存在下で37℃の条件
を例示できる。 【0030】上述のようにして得ることのできる本発明
のガン関連抗原特異的ヒト免疫グロブリンの例として、
前述したヒト/ヒト・ハイブリドーマTOS/G5株の
生産する本発明の抗原特異的ヒト免疫グロブリンを例示
できる。その特性を以下に示す。 【0031】(イ) ヒト免疫グロブリンM(IgM)で
あつて、(ロ) ヒト株化細胞KATO−III(胃癌)
及びヒト株化細胞A549(肺癌)に対して結合力を示
す、(ハ) H鎖(heary chain)及びL鎖(light chai
n)より成り、分子量が約18万である。 【0032】上記ヒト株化細胞KATO−III(胃
癌)はATCC HTB103として、又ヒト株化細胞
A549(肺癌)はATCC CCL185としてAT
CC(アメリカン・タイプ・カルチヤー・コレクシヨ
ン)から自由に入手できる。 【0033】本発明の抗原特異的ヒト免疫グロブリン
は、たとえばヒト胃癌、肺癌、脳腫瘍、悪性黒色腫など
の如きヒト癌への作用抗体或いはそれ自体の作用でこれ
ら癌細胞の増殖抑制、癌細胞の死滅を行わせたり、更
に、ヒト体外で量産されたこれらの癌組織認識抗体に補
体もしくはT−リンパ球(マクロフアージ)の助けをか
りて癌細胞の増殖抑制や癌細胞死滅のはたらきをさせた
りすることができる。更にまた、ヒト体外で量産された
これら癌特異的抗体をキヤリアーとして利用して、例え
ば化学療法剤結合−ヒト・モノクロナル抗体、インター
フエロン結合−ヒト・モノクロナル抗体、高分子毒素結
合−ヒト・モノクロナル抗体、薬物入りリポゾーム結合
−ヒト・モノクロナル抗体などの形で癌細胞の増殖抑制
や死滅のはたらきをさせたりするのに有用である。ま
た、本発明のヒト・モノクロナル抗体をキヤリアーとし
て利用し、これに放射線感受性物質を結合させて患者に
投与し、癌細胞に選択的に集まる性質を利用して患部を
検知し放射線療法に利用することができる。このような
癌に対する利用に際しては、ヒト・モノクロナル抗体と
して完全な抗体を用いてもよいし、抗体を化学的な手法
で特異的抗原認識部位を含むより小さな分子に切断して
用いたり、或は、そのような小さな分子もしくは特異的
抗原認識部位のみを他の抗体の非特異的抗原認識部分と
結合させて、より有効性のある修飾ヒト・モノクロナル
抗体を化学的手法で創製して用いることもできる。 【0034】以下、実施例により、本発明の数態様につ
いて更に詳しく説明する。 【0035】 【実施例】実施例1 ヒトBセル・リンパ芽球細胞変異株。 【0036】ヒトBセル・リンパ芽球細胞WI−L2
(微工研寄託受託拒否通知書、通知番号:60微寄文第
1621号)を、基礎培地RDF中にインシユリン、ト
ランスフエリン、セレニウム、エタノールアミン、β−
メルカプトエタノール及び牛血清アルブミンの適量を含
有する無血清培地で培養適応させる。該無血清培地を分
注した96穴マイクロタイタープレートに1 cell/wel
lとなるように植えこみ、5%CO2、37℃の条件下で
限界希釈法によりクローニング操作を行なう。約1ケ月
経過後、増殖してきた50穴より免疫グロブリンIgG
及びIgMを実質的に培地中に生産していないクローン
を1つ選び出した。 【0037】このクローンを、まず0.1μMの6−チ
オグアニンを含む前記と同様な無血清培地中で培養適応
させる。培養は5%CO2、37℃の条件下で、継代培
養をくり返すごとに、6−チオグアニン濃度を0.2μ
M、0.5μM、1μM、2μM、4μM、10μM、
15μM、20μMと段階的に上げて行ない、最終的に
20μMの6−チオグアニン含有無血清培地中で増殖可
能な単クローンを、前記と同様な限界希釈法によるクロ
ーニング操作で選別する。 【0038】この細胞を、1μg/mlの突然変異剤M
NNG(N−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグア
ニジン)を含有する基礎培地RDF中で、5%CO2、
37℃の条件下で3時間培養した後、前記と同様な無血
清培地で洗浄し、洗浄した細胞を20μMの6−チオグ
アニン及びウワバインを含む前記と同様な無血清培地中
で培養適応させる。培養は5%CO2、37℃の条件下
で、継代培養をくり返すごとに、ウワバインの濃度を
0.1μM、0.2μM、0.5μM、1μM、5μMと
段階的に上げて行ない、最終的に20μMの6−チオグ
アニン及び5μMのウワバインを含む無血清培地中で増
殖可能な単クローンを、前記と同様な限界希釈法による
クローニング操作で選別する。 【0039】斬くて創製されたヒトBセル・リンパ芽球
細胞変異株は前記(i)〜(v)の形質特性を示し、H
IH/TO1株と命名された。 【0040】実施例2 胃癌患者から手術の際に癌組織周辺のリンパ節を入手し
た。リンパ節をハサミで細かく切りきざみ、内部のリン
パ球を培地RDF(RPMI1640:DME:F−1
2=2:1:1)中に分散させ、続いて2重のガーゼを
用いて、濾過を行い、脂肪層を除いた後に、濾液中の細
胞(リンパ球>80%)を遠心法によつて集める。その
後、癌患者由来のリンパ球分画(ドナーBセル)を20
%牛胎児血清および、10%ジメチルスルホオキサイド
(DMSO)を含むRDF培地中で凍結(−130℃)
し、細胞融合を行う日まで保存した。 【0041】ドナーBセルと免疫グロブリン生産能を実
質的に欠損している前記実施例1で得た親ヒトB−セル
(HIH/TO1)のそれぞれを1×107および2×
107個混合し、35%ポリエチレングリコール150
0の存在下に融合を完了させる。その後、100×g、
10分間の遠心処理を行つてポリエチレングリコールを
除き、新たに、10%牛胎児血清および、ヒポキサンチ
ン、アメソプテリン、チミジン、ウワバイン(HAT
O)を含むRDF培地を加える。この細胞群を含む培養
液200μl(この中には1×105個のセルを含む)
づつを96個の穴をもつミクロプレートに分注し、約2
0日間、37℃、5%CO2条件下のインキユベーター
で培養した。この間、HATO及び10%牛胎児血清を
含むRDF培地を3日に1度交換した。親B−セル(H
IH/TO1)はアメソプテリン存在下ではヒポキサン
チンホスホリボシールトランスフエラーゼを欠損してい
るため、生きることが出来ない。またドナーBセルは、
ウワバインを含むRDF+10%牛胎児血清中では永続
的に増殖し生きのびることができない。よつてHATO
を含む培地で永続的に増殖した細胞はドナーBセルと親
B−セル(HIH/TO1)の融合した細胞である。3
週間培養の後、ミクロプレートの96個の穴の中に7個
のハイブリドーマのサブクローンが見られた。このうち
の1個のハイブリドーマサブクローンは更にクローン化
されるために、集められ、新たに10%牛胎児血清及
び、HATOを含むRDF培地を加え、懸濁させる。こ
の細胞群を含む培養液を96個の穴をもつミクロプレー
トに各穴に3個の細胞が入るよう分注し、約1ケ月、3
7℃、5%CO2条件下のインキユベーターで培養し
た。この間、HATO及び10%牛胎児血清を含むRD
F培地を6日に1度交換した。生じたサブクローンのう
ち最も増殖率のよいものを選び、TOS/G5と命名し
た。これがハイブリドーマであることをさらに確認する
ために、細胞内DNA含量を調べた。その方法を以下に
説明する。 【0042】遠心管の中に培養細胞液を入れ遠心処理に
より上清を除去する。70%エタノール溶液で30分以
上固定を行う。遠心処理により上清を除き、RNA分解
酵素(RNase)溶液を加え、静かに振盪し、RNA
を分解する。37℃で30分間反応させた後、再蒸留水
で2度洗浄する。プロピデイウムイオダイド(PI)を
加え、室温で20分間、染色した後再蒸留水で2度洗浄
する。再蒸留水で希釈し、セルソーターを用いて分析し
た結果、TOS/G5にはドナーBセルの2倍以上のD
NA含量が認められた。以上の結果より、TOS/G5
はハイブリドーマであることが確認された。 【0043】このTOS/G5がヒト免疫グロブリン
(HuIg)を産出していることを酵素抗体法を用いて
確めた。以下、その方法を説明する。 【0044】ミクロタイタープレートの中に抗ヒト免疫
グロブリン抗体を滴下(50μl)し、37℃で1時間
プレートに吸着させる。0.3%のゼラチンを含む10
mMPBS(ゼラチン緩衝液)で3回洗浄した後、5%
牛血清アルブミン溶液を滴下(200μl)し、37℃
で1時間吸着させる。ゼラチン緩衝液で3回洗浄し、未
吸着のものを除去する。次に検液(培養上清)を滴下
(50μl)して、37℃で1時間反応後、ゼラチン緩
衝液で3回洗浄する。ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒト
Ig抗体を滴下(50μl)して、37℃で30分間反
応させ、培養上清中のヒトIgと結合させる(酵素抗体
法)。ゼラチン緩衝液で3回洗浄後、過酸化水素とo−
フエニレンジアミンを含む基質溶液を加え、暗室で10
分間反応させる。5N H2SO4(50μl)を加え反
応を止める。もしミクロプレート上にペルオキシダーゼ
結合ヤギ抗ヒトIg抗体が残つている場合、すなわちそ
れに結合されるヒトIgが残つている場合には490n
mに吸収をもつ黄色の基質反応物が生産される。この量
を吸光度計を用いて測定し、ハイブリドーマ培養上清中
に含まれるヒトIgの量を知る。ハイブリドーマ培養上
清中にヒトIgが存在しない場合には、ペルオキシダー
ゼ結合ヤギ抗ヒトIg抗体は洗浄の段階で洗い流され
る。 【0045】以上の測定方法を用いた結果TOS/G5
はヒトIgMを生産していることがわかつた(ドナーB
−セルと同形質のIg)。 【0046】1ケ月後にTOS/G5を24個の穴をも
つミクロプレート(2ml/穴)に植えかえた後さらに
1週間培養を続けた。その培養液の上清を採取し、種々
の株化細胞を標的細胞としてヒトハイブリドーマから生
産されるIgの特異性を調べた。その方法を以下に説明
する。 【0047】ヒトの種々の株化培養細胞を、DF培地
(DME:F−12=1:1)に10%牛胎児血清を加
えた培地で培養する。細胞の数が5×106〜1×107
になつた段階でトリプシンを用いて細胞をシヤーレの底
面から剥がし、遠心法を用いて細胞を集め、培地でよく
洗浄する。96個の穴をもつミクロタイタープレートの
各穴に細胞を一定数(105/100μl)ずつ分注
し、37℃で1晩、プレートに吸着させる。次に3%グ
ルタルアルデヒド溶液を滴下(50μl)し、37℃で
20分間、細胞の固定を行う。遠心法(200g、10
分間)で細胞をおとし、ゼラチン緩衝液で3回洗浄した
後、1%牛血清アルブミン溶液を滴下(200μl)
し、37℃で1時間プレートに吸着させる。ゼラチン緩
衝液で3回洗浄し、未吸着のものを除去する。その後、
検液(培養上清)を細胞の上に滴下(50μl)し、3
7℃で1時間反応させ、ゼラチン緩衝液で3回洗浄す
る。続いてペルオキシダーゼ結合抗ヒトIg抗体を滴下
(50μl)し、37℃で30分間、反応させる。ゼラ
チン緩衝液で3回洗浄を行つた後、先述の酵素抗体法で
述べた方法によつて細胞に結合する培養液中のヒトIg
の量を測定する。 【0048】以上の方法によつてTOS/G5のIgM
の標的細胞特異性をそれぞれ調べた結果、TOS/G5
の培養液中のIgMは胃癌由来の株化細胞KATO−I
II及びAGSに対して結合力を有しており、本発明者
の検討によれば胃癌以外の株化細胞であるA549(肺
癌)に対しても結合力を有する。 【0049】すなわち、ドナーB−セルは体内に胃癌を
もつ患者から採取されたものであるので、細胞融合法に
よつて作り出された自己増殖性をもつハイブリドーマの
クローンからは、ドナーB−セルと同形質のかつ特定の
抗原結合部位をもつモノクロナール(単一)抗体を生産
していることを示している。 【0050】約4週間後に、ハイブリドーマの培地から
HATOを除きRDFを基礎培地とする前述(v)の無
血清培地で培養、倍加時間40時間で、TOS/G5は
1×106個/ml細胞が倍地で生育する時約1μg/
mlの量でヒトIgMを生産し続けている。 【0051】ハイブリドーマの多量培養液を70%の硫
酸アンモニウムで沈殿させ、粗Ig分画を集めた。得ら
れた沈殿を生理食塩水に溶かし、ヤギ抗ヒトIgMを結
合させたセフアロースを用いてアフイニテイクロマトグ
ラフイーの手法でIgMを精製した。TOS/G5の培
養液1lから精製したIgM1mgが得られた。この精
製したIgM標品をSDS−電気泳動法で分析した結
果、ヒトIgと同形質の分子量180,000のIgM
を生産していることが確かめられた。 【0052】実施例3 上記実施例2における胃癌患者とは別の胃癌患者から入
手したリンパ節を用いるほかは、実施例2と同様に行つ
て、実施例2と同様な抗原特異的ヒト免疫グロブリンを
生産する実施例2と同様なヒト/ヒト・ハイブリドーマ
TOS/H8(微工研寄託受託拒否通知書、通知番号:
61微寄文第844号)が得られた。
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所
C07K 16/42 C12P 21/08
C12P 21/08 G01N 33/53 K
G01N 33/53 33/577 A
33/577 9282−4B C12N 15/00 B
(C12P 21/08
C12R 1:91)
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.ヒトBセル・リンパ芽球細胞から導かれた変異株で
あつて、且つ下記(i)〜(v) (i) 6−チオグアニン耐性である、 (ii) ウワバイン耐性である、 (iii) HATO含有培地で死滅する、 (iv) 免疫グロブリンIgG及びIgMを実質的に
生産しない、 (v) 基礎培地RDF中にインシユリン、トランスフ
エリン、セレニウム、エタノールアミン、β−メルカプ
トエタノール及び血清アルブミンを含む無血清培地にお
いて増殖可能である、の形質特性を有するヒトBセル・
リンパ芽球細胞変異株HIH/TO1と、ヒト胃癌患者
のヒトリンパ球細胞とのヒト/ヒト融合細胞株である抗
原特異的ヒト免疫グロブリン生産性ヒト/ヒト・ハイブ
リドーマTOS/G5またはTOS/H8。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7138943A JP2721817B2 (ja) | 1995-05-15 | 1995-05-15 | ヒト/ヒト・ハイブリドーマ及びその生産する抗体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7138943A JP2721817B2 (ja) | 1995-05-15 | 1995-05-15 | ヒト/ヒト・ハイブリドーマ及びその生産する抗体 |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP60293595A Division JP2599123B2 (ja) | 1985-12-28 | 1985-12-28 | 新規なヒトbセル・リンパ芽球細胞変異株 |
Related Child Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP9233272A Division JP2830976B2 (ja) | 1997-08-15 | 1997-08-15 | 癌関連抗原特異的ヒト免疫グロブリン |
Publications (2)
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---|---|
JPH0833481A JPH0833481A (ja) | 1996-02-06 |
JP2721817B2 true JP2721817B2 (ja) | 1998-03-04 |
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ID=15233786
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP7138943A Expired - Fee Related JP2721817B2 (ja) | 1995-05-15 | 1995-05-15 | ヒト/ヒト・ハイブリドーマ及びその生産する抗体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2721817B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN101869574B (zh) * | 2010-07-24 | 2011-12-21 | 南京大学 | 哇巴因在增强非小细胞肺癌细胞敏感性中的应用 |
Family Cites Families (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS60141285A (ja) * | 1983-12-29 | 1985-07-26 | Hironori Murakami | ヒトハイブリド−マ作成用親細胞株 |
JPS60203186A (ja) * | 1984-03-28 | 1985-10-14 | Green Cross Corp:The | ヒト−ヒトハイブリド−マ |
-
1995
- 1995-05-15 JP JP7138943A patent/JP2721817B2/ja not_active Expired - Fee Related
Non-Patent Citations (1)
Title |
---|
PROC.NATL.ACAD.SCI.USA,VOL.79,(1982),P.6651−6655 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0833481A (ja) | 1996-02-06 |
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