JP2721192B2 - 耐食性軟磁性材料 - Google Patents

耐食性軟磁性材料

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は電磁弁、電子燃料噴射装置等に用いられるFe
−Cr系耐食性軟磁性材料の性能向上に関するものであ
る。
〔従来の技術〕
以下、本発明で言う磁性とか磁気特性は軟磁性を意味
し、主に保磁力(Hc)で評価される特性である。
従来腐食環境下で使用される軟磁性材料としては、優
れた耐食性と磁気特性を有する低C、Nの13Cr系(SUS4
10)、あるいは18Cr系(SUS430)のフェライトステンレ
ス、いわゆる磁性ステンレスが広く使用されている。
しかし、これらの合金は磁性的に優れているものの被
削性が悪く、部品加工時の切削能率、工具寿命が著しく
劣るため、快削性元素であるS、Pb、Se、Te等を添加
し、被削性と磁気特性を兼ね備えた磁気ステンレス(例
えば13Cr−2Si−0.08S−0.02C鋼や13Cr−1Si−0.2Pb−
0.01C鋼等)が開発され、多用化されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかるに最近は、機器の高性能化とともに製品のコス
トダウンの厳しい要求にともない、部品加工の面でも従
来の切削加工主体から、量産に適しかつ安価な冷間鍛造
による成形加工が一般化しつつある。特性的にも従来の
磁性、被削性に加えて、とくに冷間鍛造性(以下冷鍛性
と称す)の優れた磁性ステンレスの要望が強くなってい
る。
しかし、従来の被削性の優れた磁性ステンレスでは、
快削性を付与する介在物が原因で、例えばS添加快削鋼
では、MnSが加工方向に細長く伸長し、この伸長硫化物
に沿って、冷間鍛造時の加工工程で割れたり、使用中に
折損事故やガス漏れが発生する等の問題点を有するの
で、複雑形状部品への適用が困難であること、あるいは
磁気特性が著しく劣る等十分満足できるものではなかっ
た。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、以上の観点からFe−13%Cr系合金の磁気特
性と冷鍛性、被削性に及ぼす各種添加元素の影響につい
て研究した結果、次に述べる新たな知見を得たものであ
る。
すなわち、冷鍛性と磁性とは相反する性質が有り、従
来この種の材料では磁性の向上を目的としてSiが添加さ
れている。ところが、冷鍛性を改善しようとしてSi量の
添加量を低めると磁性が著しく低下してしまうことが知
られている。これに対して、低SiのFe−13Cr合金にMn,A
lを複合添加すると良好な冷鍛性を保持しながら、高Si
(1.5〜2.0%)のFe−13Cr合金に匹敵する磁性が得られ
ることを見出したもので、さらにSi、Mn、AlおよびSの
適正含有によるMnS量の適量化と均一分散化を検討した
結果、より被削性を損なうことなく優れた軟磁性と冷鍛
性が得られたことに基づくものである。
すなわち本発明は、重量%にてCr8〜16%、Si0.3〜1.
2%、Mn0.5を越え1.0%以下、Al0.2〜1.5%、S0.008〜
0.06%、C0.03%以下、N0.03%以下を含有し、残部が実
質的にFeからなることを特徴とする耐食性軟磁性材料お
よび上記合金にさらにMo、V、Tiのうち1種または2種
以上を合計で0.1〜1.5%含有することを特徴とする耐食
性軟磁性材料である。
〔作用〕
以下、本発明の成分限定理由について述べる。
Crは本発明合金の耐食性を得る基本成分であり、本発
明の主旨である耐湿環境下、特に空気やガソリン等の弱
い腐食環境下では、8%以上含有すれば良く、またCr量
の増加に伴い、被削性、冷鍛性が低下するため、16%を
越えると実用上好ましくなく、Crは8〜16%とした。
Siは、磁気特性を著しく改善する元素であるが、マト
リックスを強化し硬くするため冷鍛性を著しく害する。
冷鍛性の点からは低いほど望ましいが、0.3%未満で
はMn、Alを添加しても目的とする軟磁性が得られず、1.
2%を越えると冷鍛性を害するので、Siは0.3〜1.2%と
した。
Mn、Alは本発明の主要な元素で冷鍛性、被削性を損な
うことはなく、磁性の向上に大きな効果を有するもので
ある。Mnは特に被削性を付与するMnSの形成に必要な元
素であると同時にSi同様、磁性改善に効果を有するもの
で、0.5%未満ではその効果が得られず、1%を越える
と逆に磁性を劣化させるため、0.5を越え1.0%以下とし
た。
Alは冷鍛性を損なうことなく、磁性の向上に大きな効
果を有するもので、特にSi、Mnとの複合添加でその効果
は顕著となる。0.2%未満では目的とする磁性が得られ
ず、一方1.5%を越えるとその効果は飽和するとともに
冷鍛性および被削性を害するため、0.2〜1.5%とした。
Sは本発明の目的とする被削性を得るもので、少なく
とも0.008%以上含有させる必要があるが、0.06%を越
えると磁性を著しく害し、所望の磁気特性が得られない
ため、0.008〜0.06%に限定した。
C、Nは侵入型固溶元素で磁性を著しく害し、また炭
窒化物を形成し、冷鍛性を低下させるため、それぞれ0.
03%以下とした。
また、Mo、V、TiはC、Nを固定化し、それ自身炭化
物を微細化することにより、磁性および冷鍛性を向上さ
せるために含有せしめる合金元素であるが、1種または
2種以上を合計で、0.1%未満ではその効果が得られ
ず、逆に1.5%を越えると被削性を著しく劣化させるた
め、0.1〜1.5%とした。
〔実施例〕
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
第1表に示すFe−Cr系合金を高周波誘導炉で溶解鋳造
後950℃以上の温度で鋳造、熱間圧延を行ない15mmφの
棒に圧延し、850℃で60分焼なましを行なった。
第2表は、本発明合金12種類と比較合金4種類につい
て磁性、被削性、冷鍛性および耐食性を表わしたもので
ある。
磁性は、外径14mmφ、内径8mmφ、高さ10mmlのリング
を採取し、1000℃で3時間、H2ガス雰囲気中で加熱後炉
中冷却(冷却速度150℃/H)を行ない、保磁力(Hc)を
測定した。
被削性は14mmφ×21mmφの試験片を作製し、回転数15
00rpm、ドリル:SKH51(3mmφ)、荷重10kgで穿孔試験を
行ない、穴明けに要する時間で評価した。
冷間鍛造性については、上記被削性と同じ形状(14mm
φ×21mml)の試験片を用い、それぞれプレスで500ton
の一定荷重を負荷して圧縮変形させ、これらの据込率を
評価した。
また耐食性については、5%NaCl溶液による塩水噴霧
試験を行ない、評価は発錆のない状態を○印、表面積の
20%程度の発錆状態を△印で示した。
第2表から明らかなように、本発明合金1〜12は比較
合金に比べて優れた冷鍛性を有するとともに、良好な磁
性、耐食性、被削性を備えていることがわかる。
本発明合金1〜3の低Si材においては、Mn、Alの複合
添加により優れた磁性が得られている。これに対しSi量
が少なく、Mn、Alの少ない比較合金13では、冷鍛性は優
れているものの被削性、磁性が劣り、一方Si量の多い比
較合金14、15は磁性的には高くなるが、冷鍛性が劣って
いる。
またS量の多い比較合金16は、被削性は良好である
が、磁性、冷鍛性が著しく劣っており、比較合金はいず
れも一長、一短の特性を有していることが知られる。
〔発明の効果〕
以上の如く、本発明のFe−Cr系耐食性軟磁性材料は、
被削性、磁性を低下させることなく、優れた冷鍛性を有
し、電磁弁、電子燃料噴射装置の鉄心材料として高性能
化、および低コスト化に好適な特性を有し、工業上の効
果が極めて大きい。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%でCr8〜16%、Si0.3〜1.2%、Mn0.5
    を越え1.0%以下、Al0.2〜1.5%、S0.008〜0.06%、C0.
    03%以下、N0.03%以下を含有し、残部が実質的にFeよ
    りなることを特徴とする耐食性軟磁性材料。
  2. 【請求項2】重量%でCr8〜16%、Si0.3〜1.2%、Mn0.5
    〜1.0%、S0.008〜0.06%、C0.03%以下、N0.03%以
    下、Al0.2〜1.5%を含有し、さらにMo、V、Tiのうち1
    種または2種以上を合計で0.1〜1.5%含有し、残部が実
    質的にFeよりなることを特徴とする耐食性軟磁性材料。
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