JP2611992B2

JP2611992B2 - 耐食性軟磁性材料

Info

Publication number: JP2611992B2
Application number: JP62175671A
Authority: JP
Inventors: 計佐々木
Original assignee: Hitachi Metals Ltd
Current assignee: Hitachi Metals Ltd
Priority date: 1987-07-14
Filing date: 1987-07-14
Publication date: 1997-05-21
Anticipated expiration: 2012-05-21
Also published as: JPS6417839A

Description

【発明の詳細な説明】〔産業上の利用分野〕本発明は電磁弁、電子燃料噴射装置等に用いられるFe
−Cr系耐食性軟磁性材料の性能向上に関するものであ
る。

〔従来の技術〕

従来この種の腐食環境下で使用される軟磁性材料とし
ては優れた耐食性と磁気特性を有する低Ｃ、Ｎの13Cr系
（SUS410）、あるいは18Cr系（SUS430）のフェライトス
テンレス、いわゆる磁性ステンレスが広く使用されてい
る。

しかし、これらの合金は被削性が悪く、部品加工時の
切削能率、工具寿命が著しく劣るため、快削性元素であ
るＳ、Pb、Se、Te等添加し、被削性と磁気特性を兼ね備
えた磁性ステンレスが多用化されている。

〔発明が解決しようとする問題点〕

しかるに最近は、機器の高性能化とともに製品のコス
トダウンの厳しい要求にともない、部品加工の面でも従
来の切削加工主体から量産に適し、かつ安価な冷間鍛造
による成形加工が一般化しつつあり、従来の磁性、被削
性に加えて、とくに冷間鍛造性（以下冷鍛性と称す）の
優れた磁性ステンレスの要望が強くなっている。

しかし、従来の快削性の優れた磁性ステンレスでは、
冷間鍛造時に割れたり、使用中に折損事故が発生する等
の問題を有している。

〔問題点を解決するための手段〕

本発明は、以上の観点からFe−13％Cr系合金の磁気特
性と冷鍛性、被削性に及ぼす各種添加元素の影響につい
て研究した結果、合金中のMnおよびＳの適正含有による
MnS量の適量化とMg添加による硫化物の均一分散、球状
化により被削性を低下させることなく優れた軟磁性と冷
鍛性が得られることを見出したことに基づくものであ
る。

すなわち本発明は、重量％にてCr 8〜16％、Si 0.3〜
1.2％、Mn 1.0％以下、S 0.008〜0.8％、C 0.03％以
下、N 0.03％以下、Mg 0.001〜0.03％を含有し、残部が
実質的にFeよりなることを特徴とする耐食性軟磁性材料
および上記合金にさらにMo、Nb、Ｖ、Zr、Tiのうち１種
または２種以上を合計で0.1〜2.5％含有することを特徴
とする耐食性軟磁性材料である。

〔作用〕

以下、本発明の成分限定理由について述べる。

Crは本発明合金の耐食性を得る基本成分であり、本発
明の主旨である耐湿環境下、特に空気やガソリン等の弱
い腐食環境下では、８％以上含有すれば良く、またCr量
の増加に伴い、合金的には被削性、冷鍛性が低下するた
め、16％を越えると実用上好ましくなく、Crは８〜16％
とした。

Siは、磁気特性を著しく改善する元素であるが、マト
リックスを強化し硬くするため冷鍛性を著しく害する。
このため、Siは0.3〜1.2％とした。

Mnは、Si同様脱酸に必要な元素であると同時に被削性
を付与するMnSの形成に必要で、１％を越えると、磁性
を劣化させるため上限を1.0％とした。

Ｓは本発明の目的とする被削性を得るもので、少なく
とも0.008％以上含有させる必要があるが、0.08％を越
えると磁性を著しく害し、所望の磁気特性が得られない
ため、0.008〜0.08％に限定した。

Ｃ、Ｎは侵入型固溶元素で磁性を著しく害し、また炭
窒化物を形成し、冷鍛性を低下させるため、0.03％以下
とした。

Mgは本発明の目的であるMnSの球状化および均一分散
により被削性、磁性を損なうことなく冷鍛性の向上に大
きな効果を有するもので、0.001％未満では十分なる効
果が得られず、一方0.03％を越えるとその効果は、飽和
するとともに磁性および冷鍛性を害するため、0.001〜
0.03％とした。

また、Mo、Nb、Ｖ、Zr、TiはＣ、Ｎを固定化、それ自
身炭化物を微細化することにより、磁性および冷鍛性を
向上させるために含有せしめる合金元素であるが、１種
または２種以上合計で、0.1％未満ではその効果が得ら
れず、逆に2.5％を越えると被削性を著しく劣化させる
ため、0.1〜2.5％とした。

〔実施例〕

以下、本発明を実施例により詳細に説明する。

第１表に示すFe−Cr系合金を高周波誘導炉で溶解鍛造
後950℃以上の温度で鍛造、熱間圧延を行ない15mmφの
棒に圧延し、850℃で60分焼鈍を行なった。

第２表は、本発明合金11種類と比較合金３種類につい
て磁性、被削性、冷鍛性および耐食性を表わしたもので
ある。

磁性は、外径14φ、内径８φ、高さ10lのリングを採
取し、1000℃で３時間H₂ガス雰囲気中で加熱後炉中冷却
（冷却速度150℃/H）を行ない、保磁力（Hc）を測定し
た。

被削性は14φ×21の試験片を作製し、回転数1500rp
m、ドリル:SKH9（３φ）、荷重10kgで穿孔試験を行な
い、穴明けに要する時間で評価した。

冷間鍛造性については、上記被削性と同じ試験片を用
い、600tonプレスによる冷間据込み試験を行ない、ワレ
発生時の圧縮比（限界加工率）で示した。

また耐食性については、５％NaCl溶液による塩水噴霧
試験を行ない、評価は発錆のない状態を○印、表面積の
20％程度の発錆状態を△印で示した。

第２表から明らかなように、本発明合金１〜11は比較
合金に比べて優れた冷鍛性を有するとともに、良好な磁
性、耐食性、被削性を備えていることがわかる。

これに対し、Ｓの少ない比較合金１では、冷鍛性は優
れているが、被削性が著しく低下し磁性的にも低い。一
方、Siの多い比較合金３は、磁性が良好であるが、被削
性、冷鍛性が劣る。またＳ量の多い比較合金２は、磁
性、冷鍛性が著しく劣っており、いずれも−長−短の特
性を有していることが知られる。

〔発明の効果〕

以上の如く、本発明のFe−Cr系耐食性軟磁性材料は、
被削性、磁性を低下させることなく、優れた冷鍛性を有
し、電磁弁、電子燃料噴射装置の鉄心材料として高性能
化、および低コスト化に好適な特性を有し、工業上の効
果が極めて大きい。

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】重量％でCr 8〜16％、Si 0.3〜1.2％、Mn
1.0％以下、S 0.008〜0.08％、C 0.03％以下、N 0.03％
以下、Mg 0.001〜0.03％を含有し、残部が実質的にFeよ
りなることを特徴とする耐食性軟磁性材料。
【請求項２】重量％でCr 8〜16％、Si 0.3〜1.2％、Mn
1.0％以下、S 0.008〜0.08％、C 0.03％以下、N 0.03％
以下、Mg 0.001〜0.03％を含有し、さらにMo、Nb、Ｖ、
Zr、Tiのうち１種または２種以上を合計で0.1〜2.5％含
有し、残部が実質的にFeよりなることを特徴とする耐食
性軟磁性材料。