JP2742578B2 - 冷間鍛造用高硬度ステンレス鋼 - Google Patents
冷間鍛造用高硬度ステンレス鋼Info
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Description
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は弁シート、ベアリング等に用いられる焼なま
し状態で優れた冷間鍛造性を有し、かつ耐食性、耐摩耗
性、焼入硬化能が優れた冷間鍛造用高硬度ステンレス鋼
に関する。 [従来の技術] 高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼として、一般に
SUS420J2(0.3C−13Cr)、SUS440C(1C−17Cr)が耐食
性と高硬度を有することからシャフト弁のシート、ベア
リング等に広く使用されている。 しかし、前記SUS420J2は焼なまし状態でHRB88と比較
的軟らかであるが、焼入状態ではHRC54と高硬度が得ら
れないものである。また、SUS440Cについては焼入状態
でHRC61と高硬度を有するものであるが、焼きなまし状
態ではHRB96と硬く冷間加工が困難であるという問題点
があった。このように従来鋼には冷間鍛造性、高硬度、
耐食性のいずれをも満足する鋼はなかった。 [発明が解決しようとする問題点] 本発明は従来の高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼
の前記のごとき問題点に鑑みてなされたもので、焼なま
し状態での冷間鍛造性を改善すると共に焼入れ状態での
硬さを高め、かつ耐食性についても従来鋼と劣らない冷
間鍛造用高硬度ステンレス鋼を提供することを目的とす
る。 [問題点を解決するための手段] 本発明の冷間鍛造用高硬度ステンレス鋼は、必須成分
として重量比にしてC;0.48〜0.60%、Si;0.50%以下、M
n;0.50%以下、S;0.010%以下、Cr;11.0〜12.5%、N;0.
020%以下を含有し、また、特に切削性を改善する場合
にはPb;0.30%以下、S;0.010〜0.050%、Se;0.050%以
下、Te;0.050%以下、Zr;0.20%以下のうち1種ないし
2種以上を含有し、また、特に冷間鍛造性を改善する場
合には不純物として含有するAl、O、Sのうち少なくと
も1種をAl;0.020%以下、O;0.0040%以下、S;0.001%
以下とするか、またはSi;0.20%以下、Mo;0.20%以下、
N;0.010%以下とし、また、特に耐食性を改善する場合
にはMn;2.5%以下を含有し、残部Feならびに不純物元素
からなり、焼なまし硬さがHRB 84以下であることを要旨
とする。なお、特許請求の範囲第2項では、切削性を改
善するために、Sを選択して積極添加する場合に、その
範囲を0.010〜0.050%、そうでない場合を0.010%以下
としている。 本発明者等はSUS420J2およびSUS440Cの前記のごとき
欠点を克服するために、焼入硬さ、球状化焼なまし硬
さ、耐食性に及ぼす合金元素、熱処理条件の影響につい
て鋭意研究を重ねた結果、C%およびCr%の最適含有量
を新たに見出すことにより本発明を完成するに至ったも
のである。 本発明者等は先ずCr%、C%と焼なまし状態での硬さ
の関係について調査した。その結果を第1図に示す。第
1図よりCr12.5%以下、C0.6%以下にすることにより、
焼なまし硬さをHRB84以下となし、優れた冷間鍛造性が
得られることを見出した。 次にCr%、C%と焼入硬さの関係について調査した。
その結果を第2図に示す。第2図より明らかなように、
Cを0.48%以上、Cr%を12.5%以下とすることにより、
焼入硬さHRC60以上が得られ、高硬度が確保できること
を見出した。さらに、Si、MnをSi0.20%以下、Mn0.20%
以下、N0.010%以下とすることにより、焼なまし状態で
非常にやわらかく、焼入状態ではSi、Mn、Nが焼入硬さ
に影響を与えないことを見出した。 さらに本発明者等は焼入、焼もどし状態においてCr
量、C量と40℃における海水(5%NaCl+2%H2O2)に
対する腐食速度の関係を調査した。その結果を第3図に
示す。第3図よりCrを11%以上とすることにより、使用
状態(焼入、焼もどし)での腐食速度を2.8g/m2Hr以下
とし、従来鋼と同等以上の耐食性を得ることを見出だし
たものである。 本発明はこれらの知見を基に、焼なまし状態で優れた
冷間鍛造性を有し、かつ焼入硬化能が著しく優れ耐食性
も優れた鋼を得るためのC、Si、Mn、Cr、Nの最適含有
量を見出だしたものである。 以下に本発明鋼の成分限定理由について詳しく説明す
る。 C;0.48〜0.60% Cは焼入硬さHRC60以上を確保するに必要な元素であ
り、0.48%以上必要である。しかし、0.60%を越えて含
有させると、焼なまし状態での硬さ上昇により、冷間鍛
造性が低下するので、上限を0.60%とした。 Si;0.50%以下 Siは脱酸に効果のある元素であるが、強力なフェライ
ト生成元素であり、また冷間鍛造性を低下させる元素で
もあり、その上限を0.50%とした。望ましくは、さらに
優れた冷間鍛造性を得るためには0.20%以下とすること
が好ましい。 Mn;0.50%以下 Mnは脱酸に効果のある元素であると共に強力なオース
テナイト生成元素であるが、多量に含有すると焼なまし
状態での硬さが上昇するので、その上限を0.50%とし
た。望ましくは、さらに優れた冷間鍛造性を得るために
は0.20%以下とすることが好ましい。 Cr;11.0〜12.5% Crはステンレス鋼の耐食性を付与する基本元素であ
り、この効果を得るには11.0%以上含有させる必要があ
り、下限を11.0%とした。しかし、Crを増加すると焼な
まし状態での硬さ上昇があり、冷間鍛造性を損なうので
その上限を12.5%とした。 N;0.020%以下 Nは焼なまし状態での硬さを高める元素であり、その
含有量を規制する必要があり、上限を0.020%とした。
望ましくは、さらに優れた冷間鍛造性を得るためには0.
010%以下とすることが好ましい。 S;0.010%以下、冷間鍛造性を必要とする場合は0.001%
以下であるいは切削性を必要とする場合はS;0.010〜0.0
50% SはMn Sを生成し冷間鍛造性を著しく低下させる元素
であり、特に切削性を改善する必要のある場合または特
に優れた冷間鍛造性を必要とする場合を除き、その含有
量を0.010%以下とした。なお、特に切削性を改善する
必要のある場合は、Sの含有量を増量することができる
が、冷間鍛造性、耐食性の大幅低下を防止するため、0.
050%までの範囲で添加できるものとした。また特に冷
間鍛造性を必要とする場合は、前記切削性の改善の場合
とは逆にSの含有量を厳しく制限し0.001%以下に規制
することができる。そして、Sを0.001%以下とするこ
とにより、冷間鍛造性だけでなく耐食性も改善すること
ができる。 Pb;0.30%以下 Pbは被削性を改善する元素である。しかし、0.30%を
越えて含有すると、冷間鍛造性を阻害するため上限を0.
30%とした。 Al;0.020%以下、O;0.0040%以下 Al、OはAl2O3等の酸化物を生成して冷間鍛造性を著
しく低下させる元素であり、その含有量の上限をAl0.02
0%、O0.0040%とした。 Mo;2.5%以下 Moは耐食性を向上させる有効な元素であるが、フェラ
イト生成元素で焼入性を損なうので、その上限を2.5%
とした。 Se;0.050%以下、Te;0.050%以下 Se、Teは冷間鍛造性を損なわず、快削性を向上させる
元素であるが、高価なためその上限をSe、Te共に0.050
%以下とした。 Zr;0.20%以下 Zrは快削性と結晶粒を微細化する元素であり、0.20%
以下とした。 以上説明した範囲の成分を含有する鋼の焼なまし硬さ
をHRB 84以下とすることにより、優れた冷間鍛造性を確
保できる。 [実施例] 次に本発明の特徴を従来鋼と比較鋼と比べて実施例で
もって明らかにする。 第1表はこれら供試鋼の化学成分(重量%)を示すも
のである。第1表においてA〜R鋼は本発明鋼でA〜F
鋼は第1発明鋼、G〜Lは第2発明鋼、M〜O鋼は第3
発明鋼、P鋼は第4発明鋼、Q〜R鋼は第5発明鋼であ
る。また、S〜V鋼は比較鋼であって、S鋼はC%が高
くCr%の低い鋼、T鋼はCr%の高い鋼、U鋼はCr%の低
い鋼、V鋼はC%低くCr%の高い鋼である。W〜Y鋼は
従来鋼であり、W鋼はSUS440C、X鋼はSUS420J2、Y鋼
はSUS403である。 第1表の供試鋼について880℃×4Hr保持し、冷却速度
20℃/Hrで600℃まで冷却し、次いで空冷という条件で焼
なましを施した。焼なまし硬さ(HRB)を測定すると共
に、JIS4号試験片を作成して引張強さ、伸び、絞りにつ
いて測定した。結果を第2表に示す。 第2表より明らかなように、従来鋼であるW鋼は焼な
まし状態での硬さがHRB96、または引張強さが78kgf/mm2
と高く、さらに絞りが37%と冷間鍛造性が劣るものであ
る。また、比較鋼であるS、T、V鋼は焼なまし硬さが
HRB86〜89と高く、絞りも55〜58%と低く冷間鍛造性が
劣るものである。 これに対して本発明鋼であるA〜R鋼は焼なまし状態
での硬さがHRB76〜84、引張強さが51〜57kgf/mm2と低
く、絞り値が68〜80%と高く、冷間鍛造性が優れたもの
であることが確認された。 次ぎに第1表の供試鋼について、1050℃×30分保持し
焼入(強制空冷)し、焼入硬さ(HRC)を測定した。次
いで170℃×90分焼もどしを行った後、耐食性および旋
削性について測定した。耐食性は40℃の海水(5%NaCl
+2%H2O2)に浸漬し、腐食速度g/m2Hrを測定した。ま
た、切削性については、工具として超硬チップSTi20を
用い、切り込み深さ1mm、送り0.3mm/revで旋削し。工具
寿命試験を行い、従来鋼であるW鋼を1とした指数で示
した。以上の結果を第3表に示した。 第3表から明らかなように、焼入状態での硬さは従来
鋼のHRC45〜54に対して、本発明鋼であるA〜R鋼は焼
入状態での硬さがHRC60〜61.5と優れたものである。ま
た、耐食性については従来鋼であるW、X、Y鋼の腐食
減量は0.22〜0.26g/m2Hrであるのに対して、比較鋼であ
るU鋼の腐食減量は0.60g/m2Hrと多く耐食性については
低いものである。これに対して本発明鋼であるA〜R鋼
は腐食減量で0.15〜0.22g/m2Hrと耐食性について優れた
ものである。 [発明の効果] 本発明は以上説明したように、高硬度マルテンサイト
系ステンレス鋼について、冷間鍛造性、高硬度、耐食性
を同時に満足するC、Si、Mn、Cr、Nの最適含有量を見
出だしたものであって、さらに切削性、冷間鍛造性、耐
食性を改善するために必要な元素を添加しあるいは規制
するものである。本発明鋼は焼なまし状態での硬さがHR
B85以下と低く低間鍛造性について優れたものであり、
また焼入焼もどし状態での硬さがHRC59以上と高く、強
度について優れており、その結果本発明鋼は冷間鍛造
性、高硬度、耐食性のいずれをも満足するという優れた
効果があり、弁のシート、シャフト、ベアリングなどに
好適なマルテンサイト系ステンレス鋼である。
し状態で優れた冷間鍛造性を有し、かつ耐食性、耐摩耗
性、焼入硬化能が優れた冷間鍛造用高硬度ステンレス鋼
に関する。 [従来の技術] 高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼として、一般に
SUS420J2(0.3C−13Cr)、SUS440C(1C−17Cr)が耐食
性と高硬度を有することからシャフト弁のシート、ベア
リング等に広く使用されている。 しかし、前記SUS420J2は焼なまし状態でHRB88と比較
的軟らかであるが、焼入状態ではHRC54と高硬度が得ら
れないものである。また、SUS440Cについては焼入状態
でHRC61と高硬度を有するものであるが、焼きなまし状
態ではHRB96と硬く冷間加工が困難であるという問題点
があった。このように従来鋼には冷間鍛造性、高硬度、
耐食性のいずれをも満足する鋼はなかった。 [発明が解決しようとする問題点] 本発明は従来の高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼
の前記のごとき問題点に鑑みてなされたもので、焼なま
し状態での冷間鍛造性を改善すると共に焼入れ状態での
硬さを高め、かつ耐食性についても従来鋼と劣らない冷
間鍛造用高硬度ステンレス鋼を提供することを目的とす
る。 [問題点を解決するための手段] 本発明の冷間鍛造用高硬度ステンレス鋼は、必須成分
として重量比にしてC;0.48〜0.60%、Si;0.50%以下、M
n;0.50%以下、S;0.010%以下、Cr;11.0〜12.5%、N;0.
020%以下を含有し、また、特に切削性を改善する場合
にはPb;0.30%以下、S;0.010〜0.050%、Se;0.050%以
下、Te;0.050%以下、Zr;0.20%以下のうち1種ないし
2種以上を含有し、また、特に冷間鍛造性を改善する場
合には不純物として含有するAl、O、Sのうち少なくと
も1種をAl;0.020%以下、O;0.0040%以下、S;0.001%
以下とするか、またはSi;0.20%以下、Mo;0.20%以下、
N;0.010%以下とし、また、特に耐食性を改善する場合
にはMn;2.5%以下を含有し、残部Feならびに不純物元素
からなり、焼なまし硬さがHRB 84以下であることを要旨
とする。なお、特許請求の範囲第2項では、切削性を改
善するために、Sを選択して積極添加する場合に、その
範囲を0.010〜0.050%、そうでない場合を0.010%以下
としている。 本発明者等はSUS420J2およびSUS440Cの前記のごとき
欠点を克服するために、焼入硬さ、球状化焼なまし硬
さ、耐食性に及ぼす合金元素、熱処理条件の影響につい
て鋭意研究を重ねた結果、C%およびCr%の最適含有量
を新たに見出すことにより本発明を完成するに至ったも
のである。 本発明者等は先ずCr%、C%と焼なまし状態での硬さ
の関係について調査した。その結果を第1図に示す。第
1図よりCr12.5%以下、C0.6%以下にすることにより、
焼なまし硬さをHRB84以下となし、優れた冷間鍛造性が
得られることを見出した。 次にCr%、C%と焼入硬さの関係について調査した。
その結果を第2図に示す。第2図より明らかなように、
Cを0.48%以上、Cr%を12.5%以下とすることにより、
焼入硬さHRC60以上が得られ、高硬度が確保できること
を見出した。さらに、Si、MnをSi0.20%以下、Mn0.20%
以下、N0.010%以下とすることにより、焼なまし状態で
非常にやわらかく、焼入状態ではSi、Mn、Nが焼入硬さ
に影響を与えないことを見出した。 さらに本発明者等は焼入、焼もどし状態においてCr
量、C量と40℃における海水(5%NaCl+2%H2O2)に
対する腐食速度の関係を調査した。その結果を第3図に
示す。第3図よりCrを11%以上とすることにより、使用
状態(焼入、焼もどし)での腐食速度を2.8g/m2Hr以下
とし、従来鋼と同等以上の耐食性を得ることを見出だし
たものである。 本発明はこれらの知見を基に、焼なまし状態で優れた
冷間鍛造性を有し、かつ焼入硬化能が著しく優れ耐食性
も優れた鋼を得るためのC、Si、Mn、Cr、Nの最適含有
量を見出だしたものである。 以下に本発明鋼の成分限定理由について詳しく説明す
る。 C;0.48〜0.60% Cは焼入硬さHRC60以上を確保するに必要な元素であ
り、0.48%以上必要である。しかし、0.60%を越えて含
有させると、焼なまし状態での硬さ上昇により、冷間鍛
造性が低下するので、上限を0.60%とした。 Si;0.50%以下 Siは脱酸に効果のある元素であるが、強力なフェライ
ト生成元素であり、また冷間鍛造性を低下させる元素で
もあり、その上限を0.50%とした。望ましくは、さらに
優れた冷間鍛造性を得るためには0.20%以下とすること
が好ましい。 Mn;0.50%以下 Mnは脱酸に効果のある元素であると共に強力なオース
テナイト生成元素であるが、多量に含有すると焼なまし
状態での硬さが上昇するので、その上限を0.50%とし
た。望ましくは、さらに優れた冷間鍛造性を得るために
は0.20%以下とすることが好ましい。 Cr;11.0〜12.5% Crはステンレス鋼の耐食性を付与する基本元素であ
り、この効果を得るには11.0%以上含有させる必要があ
り、下限を11.0%とした。しかし、Crを増加すると焼な
まし状態での硬さ上昇があり、冷間鍛造性を損なうので
その上限を12.5%とした。 N;0.020%以下 Nは焼なまし状態での硬さを高める元素であり、その
含有量を規制する必要があり、上限を0.020%とした。
望ましくは、さらに優れた冷間鍛造性を得るためには0.
010%以下とすることが好ましい。 S;0.010%以下、冷間鍛造性を必要とする場合は0.001%
以下であるいは切削性を必要とする場合はS;0.010〜0.0
50% SはMn Sを生成し冷間鍛造性を著しく低下させる元素
であり、特に切削性を改善する必要のある場合または特
に優れた冷間鍛造性を必要とする場合を除き、その含有
量を0.010%以下とした。なお、特に切削性を改善する
必要のある場合は、Sの含有量を増量することができる
が、冷間鍛造性、耐食性の大幅低下を防止するため、0.
050%までの範囲で添加できるものとした。また特に冷
間鍛造性を必要とする場合は、前記切削性の改善の場合
とは逆にSの含有量を厳しく制限し0.001%以下に規制
することができる。そして、Sを0.001%以下とするこ
とにより、冷間鍛造性だけでなく耐食性も改善すること
ができる。 Pb;0.30%以下 Pbは被削性を改善する元素である。しかし、0.30%を
越えて含有すると、冷間鍛造性を阻害するため上限を0.
30%とした。 Al;0.020%以下、O;0.0040%以下 Al、OはAl2O3等の酸化物を生成して冷間鍛造性を著
しく低下させる元素であり、その含有量の上限をAl0.02
0%、O0.0040%とした。 Mo;2.5%以下 Moは耐食性を向上させる有効な元素であるが、フェラ
イト生成元素で焼入性を損なうので、その上限を2.5%
とした。 Se;0.050%以下、Te;0.050%以下 Se、Teは冷間鍛造性を損なわず、快削性を向上させる
元素であるが、高価なためその上限をSe、Te共に0.050
%以下とした。 Zr;0.20%以下 Zrは快削性と結晶粒を微細化する元素であり、0.20%
以下とした。 以上説明した範囲の成分を含有する鋼の焼なまし硬さ
をHRB 84以下とすることにより、優れた冷間鍛造性を確
保できる。 [実施例] 次に本発明の特徴を従来鋼と比較鋼と比べて実施例で
もって明らかにする。 第1表はこれら供試鋼の化学成分(重量%)を示すも
のである。第1表においてA〜R鋼は本発明鋼でA〜F
鋼は第1発明鋼、G〜Lは第2発明鋼、M〜O鋼は第3
発明鋼、P鋼は第4発明鋼、Q〜R鋼は第5発明鋼であ
る。また、S〜V鋼は比較鋼であって、S鋼はC%が高
くCr%の低い鋼、T鋼はCr%の高い鋼、U鋼はCr%の低
い鋼、V鋼はC%低くCr%の高い鋼である。W〜Y鋼は
従来鋼であり、W鋼はSUS440C、X鋼はSUS420J2、Y鋼
はSUS403である。 第1表の供試鋼について880℃×4Hr保持し、冷却速度
20℃/Hrで600℃まで冷却し、次いで空冷という条件で焼
なましを施した。焼なまし硬さ(HRB)を測定すると共
に、JIS4号試験片を作成して引張強さ、伸び、絞りにつ
いて測定した。結果を第2表に示す。 第2表より明らかなように、従来鋼であるW鋼は焼な
まし状態での硬さがHRB96、または引張強さが78kgf/mm2
と高く、さらに絞りが37%と冷間鍛造性が劣るものであ
る。また、比較鋼であるS、T、V鋼は焼なまし硬さが
HRB86〜89と高く、絞りも55〜58%と低く冷間鍛造性が
劣るものである。 これに対して本発明鋼であるA〜R鋼は焼なまし状態
での硬さがHRB76〜84、引張強さが51〜57kgf/mm2と低
く、絞り値が68〜80%と高く、冷間鍛造性が優れたもの
であることが確認された。 次ぎに第1表の供試鋼について、1050℃×30分保持し
焼入(強制空冷)し、焼入硬さ(HRC)を測定した。次
いで170℃×90分焼もどしを行った後、耐食性および旋
削性について測定した。耐食性は40℃の海水(5%NaCl
+2%H2O2)に浸漬し、腐食速度g/m2Hrを測定した。ま
た、切削性については、工具として超硬チップSTi20を
用い、切り込み深さ1mm、送り0.3mm/revで旋削し。工具
寿命試験を行い、従来鋼であるW鋼を1とした指数で示
した。以上の結果を第3表に示した。 第3表から明らかなように、焼入状態での硬さは従来
鋼のHRC45〜54に対して、本発明鋼であるA〜R鋼は焼
入状態での硬さがHRC60〜61.5と優れたものである。ま
た、耐食性については従来鋼であるW、X、Y鋼の腐食
減量は0.22〜0.26g/m2Hrであるのに対して、比較鋼であ
るU鋼の腐食減量は0.60g/m2Hrと多く耐食性については
低いものである。これに対して本発明鋼であるA〜R鋼
は腐食減量で0.15〜0.22g/m2Hrと耐食性について優れた
ものである。 [発明の効果] 本発明は以上説明したように、高硬度マルテンサイト
系ステンレス鋼について、冷間鍛造性、高硬度、耐食性
を同時に満足するC、Si、Mn、Cr、Nの最適含有量を見
出だしたものであって、さらに切削性、冷間鍛造性、耐
食性を改善するために必要な元素を添加しあるいは規制
するものである。本発明鋼は焼なまし状態での硬さがHR
B85以下と低く低間鍛造性について優れたものであり、
また焼入焼もどし状態での硬さがHRC59以上と高く、強
度について優れており、その結果本発明鋼は冷間鍛造
性、高硬度、耐食性のいずれをも満足するという優れた
効果があり、弁のシート、シャフト、ベアリングなどに
好適なマルテンサイト系ステンレス鋼である。
【図面の簡単な説明】
第1図はC量、Cr量と焼なまし硬さの関係を示した線
図、第2図はC量、Cr量と焼入硬さの関係を示した線
図、第3図はC量、Cr量と焼入焼もどし状態での腐食速
度との関係を示した線図である。
図、第2図はC量、Cr量と焼入硬さの関係を示した線
図、第3図はC量、Cr量と焼入焼もどし状態での腐食速
度との関係を示した線図である。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.重量比にしてC;0.48〜0.60%、Si;0.50%以下、Mn;
0.50%以下、S;0.010%以下、Cr;11.0〜12.5%、N;0.02
0%以下を含有し、残部Feならびに不純物元素からな
り、焼なまし硬さがHRB 84以下であることを特徴とする
冷間鍛造用高硬度ステンレス鋼。 2.重量比にしてC;0.48〜0.60%、Si;0.50%以下、Mn;
0.50%以下、S;0.010%以下、Cr;11.0〜12.5%、N;0.02
0%以下を含有し、さらにPb;0.30%以下、S;0.010〜0.0
50%、Se;0.050%以下、Te;0.050%以下、Zr;0.20%以
下のうち1種ないし2種以上を含有し、残部Feならびに
不純物元素からなり、焼なまし硬さがHRB 84以下である
ことを特徴とする冷間鍛造用高硬度ステンレス鋼。 3.不純物として含有するAl、O、Sのうち少なくとも
1種を重量比にしてAl;0.020%以下、O;0.0040%以下、
S;0.001%以下としたことを特徴とする特許請求の範囲
第1項に記載の冷間鍛造用高硬度ステンレス鋼。 4.Si、Mn、Nの含有量を重量比にしてSi;0.20%以
下、Mn;0.20%以下、N;0.010%以下としたことを特徴と
する特許請求の範囲第1項に記載の冷間鍛造用高硬度ス
テンレス鋼。 5.重量比にしてC;0.48〜0.60%、Si;0.50%以下、Mn;
0.50%以下、S;0.010%以下、Cr;11.0〜12.5%、N;0.02
0%以下を含有し、さらにMo;2.5%以下を含有し、残部F
eならびに不純物元素からなり、焼なまし硬さがHRB 84
以下であることを特徴とする冷間鍛造用高硬度ステンレ
ス鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP61211191A JP2742578B2 (ja) | 1986-09-08 | 1986-09-08 | 冷間鍛造用高硬度ステンレス鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
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